操り人形は女装男子
夜中の学園。辺りは街灯の明かりのみで森の中は暗い。
扉からは小さい悪魔が入ってきている。
扉の隙間から火花が散ると影が伸びて人型になる。
「うふっ、きちゃった」
赤い髪に濃いめの化粧をした悪魔が楽しげに笑いながら夜の闇へと消えていく
定期テストが終わったばかりなのかクラス内の話題はテストの結果で持ちきり
「三島、テストどうだった?俺、全然ダメ」
三島の隣の席の男子が声をかけてきてあまりに出来なかったのか諦めたように机に突っ伏してげんなりした顔を向ける
「俺もそんなに…多分普通くらい。英語は棗に聞いたけど…」
「あー…片桐は英語科だもんな。いいな教えてもらって」
「流暢すぎて聞き取れないけどな…ちょっとトイレ行ってくる」
席を立ち教室を出てトイレへ向かう三島
廊下や他の教室でもテスト明けの開放感からか放課後遊びにいく話をする生徒や部活の話をする生徒がちらほらいる
三島がトイレに入ったところを赤毛の派手な生徒がニヤリと笑いながら見つめている
「見つけたわよ」
三島がトイレから出てくると赤毛の生徒と目が合う
(普通科にこんな派手な人いたかな…?)
特に気にせず通りすぎようとすると腕を掴まれ振り返るとにっこり笑う赤毛の生徒
「見つけたわよ可愛い私のお人形さん」
「え?」
午前の授業を終えお昼休みになり普通科にいる三島を誘いにいく棗と宙也
「おーい健メシいくぞー」
声を掛けるが教室をみても三島の姿はない
「いないな…」
二人に気がついたクラスメイトが二人に話し掛ける
「三島なら3時限目終わった時からいないぜ」
「え、そうなの?」
棗と宙也が顔を見合わせ先に食堂に行ったのかと思い二人で食堂に向かう
「うーん…」
広い上に生徒がごちゃごちゃとたくさんいるが制服の上に赤いパーカーを羽織っている三島は見つけやすい部類に入るが三島の姿はなく
「どこ行ったんだ?」
「携帯にもとくに連絡きてないね」
宙也がポケットから携帯を取り出してメールなどが来ていないか確認するが三島からの連絡はない
そこへ双樹が二人を見付けて駆け寄ってくる
「あの先輩…十夜見かけませんでした?」
「え?十夜?見てないけど」
「そう…ですか…」
十夜の情報がなく小さくため息をつく双樹
「十夜もいなくなったの?」
「え?」
「こっちは健がいなくなって食堂にもいないみたいだし」
「そうなんですか…」
「二人でどっか行ったのか?」
「どうだろうな。悪魔だったらそれこそ連絡くるだろ…」
「そうですよね…」
いじっていた携帯をポケットにしまうと二人をみて笑顔を向ける宙也
「まぁ、とりあえず飯食おうぜ!」
宙也が颯爽と食券売場の方へ歩いていく
「…悪い宙也。俺探してくるわ」
「先輩僕も行きます」
やはり何も言わずいなくなった二人が気になったのか引き返して他の場所を探しに行く棗
それに続いて双樹も後ろについて食堂を出て行ってしまう
「何だよ…先にメシ食っちゃうからなー」
少しむくれながら呟くと食券売り場の方へ行く宙也
二人を探して色々な場所を覗いてみると中庭辺りの廊下でタクトが歩いているのが見え近づき声を掛ける
「おーい!タクト!」
棗と双樹のコンビに少し不思議がり眉を寄せる
「…どうしたんですか?珍しい組み合わせですね」
「健と十夜みなかったか?」
「いえ、みてませんけど…」
「そうか…どこ行ったんだ…」
盛大にため息をついて両手を膝につけてがっくり肩を落とす棗
「いないんですか?」
「はい、三島先輩は3時限目以降から十夜は4時限目の体育の時間にいなくなったみたいです」
「悪魔の仕業でしょうか?」
「結界って可能性もあるけど、とりあえず校内探してみてる」
「あの、結界ってなんですか?」
聞きなれない言葉に双樹が二人に問いかける
「悪魔が時折してくる攻撃の一つだ。動物の種類によって内容は様々だけど基本的には閉じ込められる」
「こ、怖いですね…」
棗の話を聞いて顔が青ざめる双樹
「大丈夫だ。結界は守護動物たちが見つけて出してくれる」
「そうなんですか…良かった」
二人の話を聞かず一人考え込んでいたタクトがぼそっと小さく呟く
「あ、そう言えば…いやでも…」
「何ですか?」
「らしき人ならみましたよ教室の窓から」
「いつ?」
「4時限目始まったくらいに…いや、でも違うかも知れません」
歯切れの悪いタクトの答えに棗が眉を寄せる
「なんだよ。何か気になんのか?」
「教えてください先輩」
双樹がタクトを見上げ心配そうな顔を向けると腰に手を当てて小さくため息をもらす
「僕が見たときは三島先輩らしき人が何かを探しながら歩いている姿です。赤いガーディガンに黒い髪飾りをつけて女子の制服をきて食堂の方に歩いていきました」
「え?スカート?」
「はい、だから違うかもしれないですけど…歩き方とか体格が似ていたので」
「ウチ男子校だけど…?え?スカート?」
「放課後になれば隣の女子高との境界はなくなりますけど…授業中なのにおかしいですね」
「忍び込んできた割にはあそこは教室の目の前ですし…」
考え込み少し黙り込んでしまう三人
「そういえば水城先輩は?」
「食堂で飯食ってるんじゃないか?」
「全員で探しませんか?」
不安そうな双樹が二人に提案すると棗が双樹の背中を叩いて励ます
「そうだな。無事ならそれでいいし全員で探そう」
再度食堂に戻るとざわめきと共に人だかりが出来ている
人をかきわけて見てみると女子の制服を着た十夜と三島が机に突っ伏した宙也を見下ろしている
「健と十夜……何でスカート」
「十夜!!」
双樹の呼びかけには答えず三島が宙也の体を担ぎ上げると窓に足をかけて外へと出て行ってしまう
「待て!!」
タクトがテーブルを飛び越えて出て行った二人を追おうとするが十夜がタクトの前に立ちはだかりそばにあった椅子を投げつける
「っ!!」
テーブルの影に隠れて椅子を避けるがその間に十夜も外へ行ってしまう
双樹が窓の外を見ると十夜は走って扉がある森の方角へと走っていく
「大丈夫か?タクト」
「はい」
「森の方へ走っていきました」
全員顔を見合わせると騒がしい食堂を出て十夜と三島が走っていった森へと向かう
三島と十夜が扉の前にやってくると派手な見た目の赤毛の学生が二人に近寄り、三島が担いでいた宙也を地面に転がす
「お疲れ様。いい子達ね」
無表情の三島と十夜の頬を撫でると地面に転がっている宙也に目をむけてしゃがんでじっと見つめる
「うーん…顔立ちは悪くないけど身長がギリギリかしらね」
少し不満そうな顔をしながらも立ち上がり指を動かすと操り人形のように宙也が糸でつられる
「可愛い操り人形にしてあげるわ」
ふふふと不気味な笑いを漏らしながら宙也の服を女子の制服に着替えさせていく
三人が食堂から森の中へと入るが三島と十夜の姿は見当たらない
「いませんね…」
「一体なんなんだ?」
「僕がみた三島先輩は見間違いではなかったみたいですね」
「あぁ…十夜は違和感なかったな」
二人の女装姿を思い出して十夜の違和感のなさに頷く棗
「先輩そんな考察いいですから早く探しに行きましょう!」
「捜すったってどこを?」
「それは…」
双樹が返答に困っているとタクトが腕組みして真剣に考えぼそっと真顔で呟く
「じゃあ双樹を囮に使いましょう」
「ええっ!!」
真剣な顔で急に言ってきたタクトに驚きの声を上げる双樹
「そうだな」
「ええええ!!」
「何が目的かわかりませんが、敵はおそらく僕たちが一人になったところを狙ってくるハズです」
先ほど宙也が一人だったところが狙われたため一人だとまた現れると予想して考えを口にして
「で、でも囮なんて…」
「大丈夫!大丈夫!俺達がみててやるから」
安心させるように双樹の背中をポンポン叩く棗
「何かあればすぐに出て行くよ」
「…はい」
タクトにも言われてしまいやるしかない状態になってしまう
二人が双樹から離れて近くの茂みに身を潜めると双樹は扉がある方向へ歩いていく
暫く歩くと木の影から三島、十夜、宙也が女装したまま双樹の前に現れる
「…っ」
武装した三人がゆっくり歩いて双樹に近づく
「あらぁー?」
近づく三人に警戒していたがどこからともなく高めの声にきょろきょろと周りを見渡す双樹
「貴方もなかなか可愛いじゃない?お肌スベスベね」
双樹の後ろから耳元で赤毛の派手な生徒が声を掛ける
「わっ!!」
驚いて生徒から離れて派手な見た目に警戒を強めて身構える
「そんなに怯えなくていいのよ?悪いようにはしないわ」
派手な生徒が三島たちに目配せすると双樹を囲み取り押さえる
「ちょっ!水城先輩!三島先輩!十夜もやめて!!」
離そうとバタバタもがくがびくともしないまま赤毛の生徒が笑みをたたえたまま双樹に近寄る
「…あなた、なんなんですか!」
「私?ウフフ…私は悪魔のスカーレット。お人形集めが趣味なの」
「悪魔!!」
双樹が驚いて声をあげると草むらから棗が走りこみスカーレットめがけて刀を振る
「…っ!」
瞬時にスカーレットの前に三島が現れ刀を受け止める
「テメェ…何やってんだ健…」
「……」
三島は真顔のまま棗の刀を押し返そうと力を込めている
「残念だったわね…」
風がふわっと吹いたかと思うとスカーレットの目の前で竜巻が起こり土煙で視界が悪くなる
「な、なに…?」
棗は間一髪その場から離れて捕まっている双樹の元へ向かう
「かまいたち」
タクトがさらに扇を振るうとスカーレットの元へ強風が吹き何かを切るような風が吹き荒れる
その風を三島が傘を開いてガードしスカーレットを攻撃から守るが強風に押されて少しずつ後退していく
「きゃああぁ!セットが乱れちゃうぅ!」
双樹を押さえつけてた十夜が遠くにいるタクトに近づき殴りかかる
「おっと危ない」
一直線に動く十夜をタクトが軽々避けていると風が止み砂埃も落ち着いてしまう
「この!」
宙也を蹴りつけると双樹を連れてスカーレットから離れる
「片桐先輩…有難うございます」
「あいつら操られてんのか?」
ぶわっと再び強風が吹き後ろを向くと十夜が吹っ飛ばされて三島の前まで転がっていく
「しつこいですね…」
髪をセットしなおしたスカーレットが三人をみてニヤリと笑う
「もしかして、あなた達がルプス?」
武器を構えてスカーレットを見据える棗たち三人
「こんな形で会うなんてね…イケメン揃いで嬉しいわ」
「健たちを元に戻せオカマ野郎!」
「嫌よ。せっかく手に入れたのに…もう少し色々したいわ」
指で無表情に棗たちを見据えている三島の顔を撫でてくすっと楽しそうに笑う
「あなた達も私のものにしてあげる!行きなさい私のお人形たち!あの子達を捕まえるのよ!」
スカーレットが指をさすと三島たちが一斉に棗たちに向けて攻撃を仕掛けていく
「くっそ…!」




