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アビリティ.1「火炎」

どうも、薬斗です。


記念すべき第一話。


ばら撒いた伏線を回収できるように頑張ります。


最後まで見ていただけたら幸いです、よろしくお願いします。

目が覚めた。


周りを見渡すと、狭い部屋の二段ベッドの上にいるらしい。


(ここはどこだ...?今までどの位寝てたんだろう...)


その時、ベッドの下方から顔が飛び出してきた。


「うわァ!!」


「やっと目ェ覚めたか。お前は俺と同じ部屋になったからヨロシクな。」


話しかけてきた少年は、髪が後ろに結ってあり、眉毛を短く整え、瞳が綺麗な赤色だった。


「俺の名前はハヤブサ。お前は?」


「え、俺?えーっと...あれ??」


名前が思い出せない。


しかも、思い出せないのは名前だけじゃない。


ここへ来る前の記憶もない。


ーーーーーーーしばらく沈黙が続いた。


「お前、名前思い出せないのか?じゃあちょっとついてこい」


まるで名前が思い出せないのは当然だとでも言うようにハヤブサは手招きした。


「待て、ここはどこなんだ!?」


狭い部屋をでてすぐにある長い廊下で歩きながら尋ねた。


「ここは能力者学校ヴァイスシュロース能力者メサーが集まる学校だ。」


能力者メサーが集まる!?そんな施設が存在したのか!!」


「ああ、能力者メサーはその能力から友達もいない、身内もいないって奴らばかりだからな。世間から捨てられた奴らの集まりってことだ。」


「じゃあ...あんたも能力アビリティを...?」


恐る恐る尋ねる。


その瞬間、ハヤブサの姿が消えた。


「!?」


「後ろだ。」


振り返るとハヤブサが表情を変えずに立っていた。


「あんたの能力アビリティ、瞬間移動だろ!」


「いや、正確には【高速移動】だ。」


何が違うのかはよく分からなかったが、納得した後にまた廊下を進み始めた。


「お前に能力アビリティはあるのか?」


今度はハヤブサに尋ねられた。


「それも思い出せないな。」


「まぁ、思い出さない方がいいだろう。」


「なぜ?」


「お前はその能力アビリティのおかげで記憶喪失になったんだろうからな。」


ハヤブサがこちらを振り返り、ギラリと赤い目を向けて笑った。


(記憶喪失...そうか俺は何かのキッカケで記憶喪失になったのか)


少し寒気がしたのを感じた。


「ここだ、着いたぞ。」


着いた先には大きな扉があり、上の方に「校長室」と書いてある看板が貼ってあった。


「校長室...!?」


「そうだ。校長は少し常人とは違う格好をしているが、無礼のないようにな。」


そう言って扉を開ける。


入ると、大きい部屋の真ん中に重々しい机と椅子があるだけで、他には何もないという殺風とした部屋だった。


そして椅子に座っているのはカメレオン...ではなく、カメレオンの着ぐるみを着た小さな子供だった。


「おい、あれが校長!?あんな小さい子供が!?一応は能力者メサーの長なんじゃねえの??」


小声でハヤブサに尋ねる。


「だから言ったろ、常人と違う。」


「何をこそこそとしとるんじゃ?」


確かに子供の声だが、喋り口調は古臭いものだった。


「すみません、校長。例の少年が目覚めたので連れて参りました。」


「あんがとよ。」


例の少年という言い方に引っかかるものがあったが、何となく校長なるものを観察してみることにした。


「ハヤブサはもう行っていいぞ。」


「はい。」


ハヤブサが出て行った。


「お前、記憶がないのか?」


「え、あ、はい。」


いきなり話しかけられたこともあったが、自分が記憶喪失だという現実を受け止められていないのか、返事が口籠った。


「お前の名前はこれからタイヨウじゃ。」


「へ?」


余りにも唐突すぎる決定に阿呆のような声が出た。


「これからお前はここで暮らすんだぞ。問題を起こさないようにな。」


「は、はぁ...」


こうして何も分からないまま名前はタイヨウになった。


「記憶を取り戻せたらいいな。もう部屋に戻っていいぞ。」


「は、はぁ...」


何もかもが分からなかった。


とりあえずやらなくてはいけないことは記憶を取り戻すこと。


それに尽きる。


それまではこの学校にとどまることにしよう。


そう決心した時に、帰りの廊下で可愛らしい少女に会った。


「あ、君!起きたんだ!」


(俺はどんだけ有名なんだよ...)


「私はダフネっていうの。校長に面白い名前つけられちゃってさ~」


(この子も校長につけられたのか...)


「君は名前何ていうの?」


「タイヨウ...」


慣れない。自然と小声になった。


「タイヨウか。私みたいに変な名前!」


笑われた。なぜか知らないけど笑った顔に少しホッとした。


「じゃ、また後で!能力研究室に行かなきゃ!私先生に呼ばれちゃったんだぁ!」


そういってダフネは去っていった。


能力アビリティ聞きたかったなぁ。」


タイヨウはしばらくぼーっとしていた。


しばらして部屋に戻ると、ハヤブサはテレビを見ていた。


「テレビなんか見んだな」


「暇つぶしがそれしかないからな。んで、名前決まったか?」


タイヨウは名前含め色々説明した。


するとハヤブサは笑って言った。


「ここには名前も無い孤児たちが集められるからな。そういうやつには校長が勝手に名前つけんだよ。それより、タイヨウ。ダフネ見なかったか?言いたいことがあったのだが。」


「ああ、丁度さっき見たよ。言いたいことって何だ?」


もしかしたらマズイかもしれないと思ったが、気になったから聞いてみた。


「あいつ今朝に、やっとお母さんに会える、なんてこと言うから気にかかってな。」


(お母さん...?)


此処ヴァイスシュロースでは地上に降りちゃいけないことになってるんだ。人間が能力者メサーを消しにかかってるからな。」


(地上ってそんな怖いところなのか...)


「で、俺が気にかかってんのはそこじゃなくて。...あいつは母親死んでるはずなんだよ。」


「!?」


「人を生き返らせるなんてそんな都合のいい能力アビリティなんてないしな。」


最後に見たダフネの顔が不安で雲がかっていった。


「能力研究室に行くっていってた!!俺たちも行こう!!」


タイヨウとハヤブサは部屋を飛び出していった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「来たか、ダフネ。」


「はい、先生。お願いします。」


能力アビリティに関する本が大量に並べられている部屋にダフネはいた。


「先生、お母さんを生き返らせる方法が分かったんですね...?」


「ああ、奥の部屋だ。」


薄い黄色の髪をした眼鏡の教師と共に、ダフネは能力研究室の奥に入っていった。


奥の部屋には、大きく円を描かれたような図形と、様々な器具が用意されていた。


「どうすればいいんですか? 先生。」


ダフネが尋ねると、教師は薄く笑った。


「君の遺伝子の情報が必要だ...円の中に入ってくれるかね...?」


「はい...」


ダフネは言われるがままに円の中央に立った。


「じゃあ始めるよ?」


そう言って教師は大きく手をかざした。


激しく光る電気がダフネを包んだ。


「キャァァァァアアア!!」


ダフネを激痛が襲う。


「それで良いんだ...」


教師が薄気味悪く笑う。


その時、円の中からダフネの姿が消えた。


「な、何だ!?」


「何やってんだよ、アンタ。」


そこには意識を失ったダフネを抱きかかえるハヤブサの姿があった。


「おお、高速移動のハヤブサ君か...。なーに、ダフネの母を生き返らせる儀式をしていただけだ。見ての通りだよ。」


声色を明るくして教師は言った。


「そんな能力アビリティはねぇことぐらい知ってんだよ。」


「優秀な子はこれだから困る。」


「!?」


教師の表情が豹変した。


「早くダフネを返すことだ。渡さないなら力づくで行かせてもらうよ。」


「お前のモンじゃねえだろ!!」


ハヤブサが叫ぶ。


「威勢のいい...。私の能力アビリティも知らないくせに...。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おーい!!ハヤブサーー!?」


タイヨウは、ダフネの叫び声がしてから一瞬にして消えたハヤブサと能力研究室を探していた。


(おかしいな...。叫び声がしたのはこっちの方なんだけど...。この学校は迷路みたいだな。)


30分ほど探し回り、ようやく「能力研究室」という板が貼ってある部屋を見つけた。


「ここかァ!!」


勢いよくドアを開けるが、部屋の中にいたのは大量の本だけだった。


(あれ...??どっか行ったのか??)


タイヨウが帰ろうとした瞬間、大きな音が奥の方で響いた。


「こっちかァ!!」


勢いよくドアを開けると、そこには、この世のものとは思えないような怪物と、血だらけのハヤブサがいた。


「おう、タイヨウ。来たか。武器があればこんなヤツ余裕なんだがよ...。一発お前の力で何とかなんねェか...?」


ハヤブサが弱々しい声で言った。


そして言い終わったと同時に意識を失った。


(いやいやいや、待てー!!この状況どうすりゃいいんだよ!!)


タイヨウが戸惑っている中、怪物がこちらを睨んできた。


「例の少年...。運が悪かったな。お前はここで死ぬ運命だ!!」


声がおどろおどろしい。


(くそー。俺も能力アビリティがあれば戦えるが。こんなヤツに普通の俺が戦えるワケない!!)


容赦なく怪物が襲いかかってくる。


タイヨウはなす術もなく部屋の隅に飛ばされる。


「クソ...!!」


ゆっくりと怪物が近づいてくる。


(何かできることはないのかよ...ッ!!)


タイヨウは怪物に四肢をつかまれ、天井付近まで持ち上げられた。


「く...ッ!!」


「お前の能力に興味はない...。」


怪物から尖った刃物の様なものが突き出る。


その時、タイヨウの脳裏に何かが浮かんだ。


(これ...何か思い出しそうだ...。)


タイヨウは瞬間的にポケットからサングラスを取り出す。


サングラスをかけると、今まで黒かった髪は一気に真っ白に染め上がり、身体中からは炎が噴き出した。


「な、何だ!?」


タイヨウの足が地面に降り立つ。


「そうだよ、これだ。俺の能力アビリティ!!【火炎】!!」


「こいつ、運がいいな...。」


「かかって来いよ、ゲテモノ!」


指で挑発する。


「貴様...ッ!!」


怪物が伸ばした腕を、背中を逸らし華麗に避ける。


その流れで炎をまとった足が怪物の頭を直撃した。


「ぐおおおお...ッ!!」


怪物が倒れこむ。


「アンタ、見た目の割には大したことねェな。弱いヤツとしか戦ったことないんだろ。」


タイヨウは続けて挑発した。


「くそ...ッ」


怪物が教師の姿に戻りながら、部屋から逃げ出そうとした。


「待てよ!!」


タイヨウの体が今までよりも大きく炎上した。


教師の方向の風だけがゆっくりとタイヨウに引き込まれる。


【上昇気流】!!


教師の体が勢いよくタイヨウの風に吸い込まれる。


「くっそおおおおおお!!」


「アンタ、運が悪いな。」


タイヨウの炎が右腕に集中した。


【炎の鉄拳】!!


炎を纏い破壊力が増した拳が教師の顔面にクリーンヒットした。


「っしゃあああああ!!」


タイヨウはガッツポーズをし、サングラスを外した。


炎もそれに合わせて消える。


「それにしても何が起こったんだ...?」


タイヨウは気絶しているハヤブサとダフネを見つめる。


「まあ、とりあえず。あんなに本がたくさんあるのが悪いんだな!!」


そう言って、再びサングラスをかけ、隣の部屋のありったけの本を燃やし尽くした。


「これでよし!」


能力研究室には殺風景が広がっていた。


その時、廊下に続く扉が開いた。


校長が立っている。


「タイヨウ、2年間メシ抜きじゃ!」


「えええええええええ!?なっがぁぁぁぁあああああ!!」


こうしてダフネの一件は片付いた。





「これはこれはアガレス先生じゃありませんか。」


あの事件から数日後。


学校にある一番広い部屋、司法裁判室で裁判が行われていた。


「校長、信じてください。あれは子供たちのイタズラでして...。」


「奥の部屋にあった魔法陣をみればわかるわい。あんたが【模倣】の能力アビリティだったってことくらい。しかもあの怪物の姿は他の能力者メサーのもの。ダフネの能力アビリティを奪おうとしてたんじゃろ?奪われた方は死ぬらしいが。」


「そ、そんなわけないでしょう。そもそもダフネの能力アビリティなんて分からないじゃないですか。」


「ダフネの能力アビリティが分からない?能力研究学者の先生なら分かるじゃろ?生まれつき自分の能力アビリティを理解していないのは唯一、ダフネの能力アビリティの特徴じゃ。」


「く...ッ!!」


「そして先生が【シュヴァルツ】からのスパイだって情報も仕入れておる。」


「な、何!?誰がそんなこと!!」


「アガレス。永久追放じゃ。」


カン!!


小槌ガベルが裁判の終わりを告げる。







タイヨウは、ハヤブサのイビキが響く狭い部屋の二段ベッドの上で物思いにふけっていた。


(何であの時、俺は咄嗟にサングラスを取り出したんだろうか。)


サングラスを片手に持ち、じっと眺めていた。


(これは大切な物のような気がする。)


この学校にいれば、どことなく何かを思い出せそうな気がした。


~おまけ~

タ=タイヨウ ハ=ハヤブサ




タ「それにしてもお前の判断力はすごいな。」


ハ「まあな。俺の危険察知能力を侮るな。」


タ「いや、そこじゃなくて。」


ハ「?」


タ「他に助けが来ないように扉閉めといたんだろ?」


ハ「Σ(゜д゜lll)」

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