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第12話 焦げたご飯と、永遠の誓い

時間、年齢、そして死という概念が存在しない、別の次元の空間。

ハルトはゆっくりと目を開けた。

耳を劈くような吹雪の音はもうない。東京の冬の夜の、骨まで凍るような寒さもない。そして不思議なことに、何トンもの鉄の塊に背骨を押し潰された時の、肉が裂け骨が砕けるようなあの激痛も、完全に消え去っていた。

彼の周りにあるのは、ただ見渡す限り真っ白な空間だけだった。魂がすべてを投げ出してしまいたくなるほど、静寂で、穏やかで、清らかだった。

魂の世界の中心で、威厳に満ちた輝く人影が腕を組んで彼を見下ろしていた。まばゆい光にもかかわらず、ハルトはすぐにそれが誰か分かった。カミだ。かつて彼の頭上に九度の残酷な契約を下した、輪廻の支配者。

しかし今日、その至高の神はもはや嘲りの笑みを浮かべてはいなかった。戦国時代の冷たい雪の上で、愛する女の亡骸を抱きしめる浪人を見下ろした時の、あの憐れみや冷酷な裁きの眼差しはそこにはない。現在のカミの目は湖面のように静かで、ちっぽけな命に対する深い敬意を帯びていた。

「やり遂げたな」カミの声が響き渡った。重厚なその響きは、真っ白な空間のあらゆる方向からこだました。「守るという誓いは、命をもって実行された。真実の告白は語られた。そして、同意は確認された。お前の九度の契約は……正式に完了した。彼女の魂は、永遠に保全された」

ハルトはそこに立ち、自分の両手を見下ろした。血はない。九度の人生で作られたタコもない。千年の苦難を経て初めて、彼の肩にのしかかっていた千斤の重荷が突然消え去った。彼はもう狂いたくなかったし、神々を恨んだり呪ったりしたくもなかった。愛する人……彼女は安全なのだ。それで十分だった。

「ありがとうございます」ハルトは軽く頭を下げた。運命の前に謙虚さを学んだ、傲慢な男の心からの礼だった。「これで終わりですね。私は命の借りを返し終えました」

「そうだ。終わったのだ」カミは頷き、一歩前に出た。「私は前世で『苦悶の羅針盤』を回収し、お前からすべての超自然的な特権を剥奪した。しかし、お前は定命の者としての盲目さと不屈の精神だけで、彼女を見つけ出した。お前はもう、記憶を背負うという呪いを受けることはない。お前の魂は今浄化され、終わりのない輪廻の流れへと溶け込むだろう」

ハルトの唇の端が微かに上がり、笑みを浮かべた。しかしその笑顔には、果てしない悲しみが満ちていた。彼は顔を上げ、果てのない虚空を見つめ、静寂の世界で声を詰まらせながら言った。

「私は満足しています。本当に……あのトラックの前に飛び出したことを後悔していません。もし千回やり直すことになっても、私は自分の命と彼女を交換することを選ぶでしょう。ですが……神よ……」

ハルトの声が突然震えた。目頭が熱くなった。魂の涙が溢れ出し、熱を帯びて白い空間の床にこぼれ落ちた。

「ご存知ですか……最も残酷なのは死ではないということを。最も残酷なのは……私がようやく彼女を見つけたばかりだということです。数ヶ月間彼女のそばにいて、口論をして、彼女が笑うのを見て……それなのに、私がすべてを悟り、彼女がすべてを思い出したその瞬間に、私は行かなければならないなんて」

ハルトは白い床に片膝をつき、両手で顔を覆い、広い肩を激しく震わせた。

「私は彼女を守り抜きました……でも、彼女の人生の最後までそばにいることはできない。心の中で約束したんです。毎朝起きて、ナツミが寝坊している姿を見たいと。彼女が作った焦げた料理を食べたいと。来年の春は、彼女と手をつないで桜の下を歩きたいと……九度の闘いの代償が、吹雪の中でのほんの数秒の喘ぎだけだなんて。この代償……支払うことに異存はありません……でも、なぜこんなにも苦しいのですか、カミよ……」

ハルトの泣き声が虚無の中に響き渡った。運命に打ち勝ったのに、時間に負けてしまったことを彼は悲しんでいた。

カミは静かに立っていた。至高の神は、足元で崩れ落ちる定命の生ける者を見下ろした。初めて、造物主の真の愛情に満ちた温かい笑顔が、その唇に咲いた。

カミはゆっくりと歩み寄った。神は手を伸ばし、指先でハルトの額に軽く触れた。

ティン。

千年の刻印がまばゆい光を放ち、何万ものきらめく黄金の塵となって砕け散り、虚空へと消えていった。

ハルトは呆然として顔を上げた。

「愚かな定命の者よ」カミは厳かな声で言った。「責任の契約は終わった。お前は九度の誓いを果たしたのだ。しかし……お前たち二人の愛の運命がこれで閉ざされたと、一体誰が言った?」

ハルトは目を丸くした。「神よ……それはどういう……」

「愛は契約書ではない。義務が終わった時、それこそが自由な愛が始まる時なのだ」カミが袖を振ると、まばゆい光が爆発し、巨大な竜巻となってハルトの魂を巻き込み、彼を激しく後ろへと引き戻した。

「戻るがいい、恋に狂った放浪者よ」カミの声が響き、次第に小さくなりながらも、極めて鮮明に聞こえた。「お前の愛する女の元へ帰れ。お前が渇望してやまないあの焦げたご飯を味わい、定命の者の報酬というものを、お前自身で体験してくるがいい!」

バンッ……ドン!!

高圧の電流がハルトのむき出しの胸を直撃し、彼の体を救急車のストレッチャーから跳ね上がらせた。

真っ白な世界が砕け散った。代わりに、鼻を突く消毒液の匂い、生臭い血の匂い、そして目を射るような救急車のまばゆい天井の光が彼を襲った。

「心拍ゼロ!まだ脈ふれません!充填!300ジュール!離れて!」

バンッ……ドン!!

二度目の電気ショックが打ち下ろされた。凍りつくような冷たい空気が、ぺちゃんこになっていたハルトの肺に流れ込んだ。背骨からは、鼓膜を引き裂くような激痛が伝わってきた。

ピー……ピー……ピー……

心電図モニターが、ゆっくりと、しかし規則的な鼓動音を鳴らし始めた。救急隊員の安堵の溜息に混じって、ハルトの耳には、絶望の中で彼の名前を叫び、かすれた声で泣きじゃくるナツミの嗚咽が聞こえてきた。

「脈拍戻りました!酸素投与継続!患者、戻りました!」

ハルトは重い瞼を半分開けた。景色は血で滲んでいた。言葉を発することはできなかったが、酸素マスクで覆われた口の端には、弱々しい笑顔がゆっくりと咲きほころんだ。

俺は帰ってきたぞ、ナツミ。

その年の4月は、新宿御苑の沿道に儚い桜の花びらを散らす、暖かな風を運んできた。東京はまばゆい薄紅色に包まれ、冬の残酷な寒さを完全に吹き飛ばしていた。

満開の桜の下で、ハルトは車椅子に座り、腰椎を固定するコルセットを隠すための薄手のセーターを着ていた。3度の大きな手術を受け、4ヶ月間寝たきりだったにもかかわらず、今の彼の顔色は信じられないほど輝いていた。

彼の後ろでは、ナツミが忍耐強く車椅子を押していた。彼女は小花柄の軽やかなワンピースを着ていた——ハルトが最近ようやく拝むことができるようになった、珍しく女性らしいスタイルだ。

「おい、もっとゆっくり押せよおばさん、俺の背中が悲鳴を上げてるぞ」ハルトは新品のデジタルカメラを手に持ちながら、からかうように笑った。彼はレンズを向け、シャッターを切り続け、舞い落ちる桜の花びらが彼女の茶色い髪に止まるすべての瞬間を捉えていた。

「傷病兵のくせによく喋るわね!あんたが死にかけてた時にどうしてもって言うから、わざわざ花見に連れ出してあげたのに、文句ばっかり!」ナツミは彼を睨みつけたが、その口角は上がって満面の笑みを浮かべていた。彼女は大きな木の下まで車椅子を押し、レジャーシートを広げて、手作りの弁当箱を取り出した。

卵焼きは少し塩辛く、ウインナーの端は少し焦げていたが、ハルトは欠片一つ残さず夢中で平らげた。ナツミは彼が食べるのを見つめ、無意識に彼の上着の肩に落ちた花びらを払った。彼女は身をかがめ、後ろから彼の肩越しに腕を回し、彼の髪に自分の頬をすり寄せた。「本当に綺麗ね、ハルト」

「ああ、本当に綺麗だ」ハルトはカメラを下ろし、自分の肩に置かれた彼女の手を握った。「約束は守れよ。これからの人生、春になったら必ず俺を花見に連れて行くこと」

「バカね。一生私から逃げられると思わないでよ」

時間は穏やかに流れ、春の花びらを運び去り、蝉の鳴き声と7月の猛暑に場所を譲った。夏の空は澄み渡り、輝かしく、そして情熱的だった——ナツミの性格と全く同じように。

この頃には、ハルトは車椅子を外し、歩行を補助する小さな杖をつくだけになっていた。二人は世田谷の居心地の良い小さなアパートで、正式に同棲を始めていた。

隅田川花火大会の夜、ナツミは花火柄の紺色の浴衣を着て、片手で巾着を持ち、もう片方の手でハルトの手をしっかりと握りしめながら、混雑する人混みをすり抜けていた。屋台で立ち止まると、ナツミは嬉しそうにアツアツのたこ焼きを二パック買い、フーフーと息を吹きかけてからハルトの口に運んだ。彼女の生命力が彼にも伝染したのか、かつてはいつも物思いに沈んでいた男は、今では絶えず笑い声を上げていた。

夜空で最初の花火が爆発し、隅田川を照らし出した時、ハルトは杖を手放し、ナツミをそっと腕の中に引き寄せた。

「暑い!ちょっと離してよ、このバカ!」ナツミは汗だくになりながら文句を言い、彼の手を振り払おうとしたが、その体は大人しく彼の胸に寄りかかっていた。

「自分の彼女を抱きしめるのも禁止なのか?」ハルトは大笑いし、小気味よい花火の爆発音の中、身をかがめて彼女の額に軽くキスをした。

その夜、家に帰り、エアコンが涼しく効いた小さな寝室で、ナツミは部屋の隅のコンセントに電子蚊取り器を熱心に差し込んでいた。「夏は蚊がひどいし、あんたはまだ背中が痛むんだから、これをつけてぐっすり寝なさい。絶対に抜いちゃダメだからね!」彼女はぶつぶつと指示を出した。その現実的で少し乱暴な気遣いが、ハルトの心を溶かした。夏の猛暑の中、彼らの愛は、最もありふれた痴話喧嘩によって育まれ、熱く、そして真実に燃え上がっていた。

そして、10月がドアを叩き、猛暑は次第に退いていった。秋の風が肌寒い空気を運び、街路樹のイチョウを黄色く染め上げた。

彼らの小さなアパートは、今や本当の家庭の姿をしていた。ハルトの健康は8割方回復し、彼は自宅でデザインの仕事を受け始めた。二人の作業スペースは、絶対的な調和の証だった。窓際の広い木製の机の上で、ナツミはスペースの大半を彼のモニターとペンタブレットに譲り、自分は机の反対側の端でノートパソコンを抱えて座っていた。静かな秋の午後、彼が仕事をしている時、時折机の下で足を伸ばして彼女の足をつつき、からかうことがあった。返ってくるのは鋭い睨みだったが、その目には笑みが隠されていた。

そしてもちろん、秋の夕食はいつもお決まりの口論から始まった。

「おいおい!また焦げてるぞ、ナツミ!」キッチンから煙が立ち上る中、ハルトは激しく咳き込んだ。

「フライパンのせいよ!私のせいじゃないわ!」ナツミは顔に煤をつけ、真っ黒に焦げたサンマの塩焼きが乗った皿をテーブルに運びながら、負けじと言い返した。

「わかったよ、そこに置いて。俺が白い身のところを選んで食うから」ハルトは苦笑し、自分でご飯をよそい、焦げた尻尾の部分を大人しく口に運んだ。焦げ臭い苦味が口に広がったが、彼の胸には感動的なほどの満足感がこみ上げてきた。これこそが、カミが約束してくれた報酬なのだ。

食後、ナツミはハルトを追い立ててソファにうつ伏せにさせ、袖をまくり上げて、今でもよく痛む彼の腰をマッサージした。彼女はツボを優しく押し、そして無意識のうちに手を伸ばし、遠い昔に犬のマックスを慰めた時と全く同じように、彼の耳の後ろを掻いた。淡い秋の陽光の下、放浪の旅人の世界は、ついに永遠の安息の地を見つけたのだ。

最後の黄色い葉が落ちた時、北風が戻ってきた。再び12月が訪れ、東京を真っ白な冬の雪で覆い尽くした。

あの生死を分けた出来事からちょうど一年。

クリスマスイブの夜、ハルトは散歩に行きたいと言い訳をして、ウールのマフラーでぐるぐる巻きになったナツミを外へ連れ出した。光り輝く通りを歩き、そして渋谷のスクランブル交差点で立ち止まった。——一年前、あのトラックが二人の距離を押し潰した、まさにその場所で。

雪が降り始めた。真っ白な雪の結晶は一つ一つが軽く、純粋だった。今回の雪は、死も別れももたらさなかった。今年の冬の雪は、祝福の花びらのように穏やかに舞い落ちてきた。

ナツミはハルトの手をきつく握りしめた。彼女の視線が道路をかすめ、一瞬の身震いが蘇った。しかし、ハルトの大きな手が彼女の手を温かく包み込んだ。

「なんでこんな所に連れてきたのよ?凍え死んじゃうわ、家に帰ってヒーターつけましょうよ」ナツミは白い息を吐きながら文句を言った。

ハルトはすぐには答えなかった。彼は彼女の手を離し、一歩後ろへ下がり、深呼吸をした。そして、行き交う人でごった返す交差点の真ん中で、かつては天をも恐れぬほど傲慢だったその男は、冷たい雪の上にゆっくりと片膝をついた。

「きゃっ!このバカ!何やってんの?!」ナツミはパニックになって叫び、反射的に彼を支えようと飛び出した。「ちょっと、腰!腰のコルセットを外したばかりなのに、何で膝なんか!背骨が折れちゃうわよ!早く立って!」

「静かにしろおばさん、あと一分だけカッコつけさせてくれ」ハルトは腰に走る痛みに顔をしかめたが、それでも断固としてトレンチコートのポケットに手を入れ、赤いベルベットの箱を取り出した。

彼は箱の蓋をパカッと開けた。小さなダイヤモンドの指輪が、街灯の下でキラキラと輝いていた。

ナツミは固まった。彼を引っ張り上げようと伸ばした手が、空中で止まった。彼女の目尻に涙が溜まり始めた。

「去年、まさにこの場所で、俺たちは告白しただけだった」ハルトは彼女を見上げ、その瞳には千年の輪廻で蓄積された深い愛情が込められていた。「ルールでは、ちゃんとしたプロポーズをして、指輪を渡して初めて妻と呼べるらしいからな。俺は四百年以上も、君にこの瞬間を借りっぱなしだったんだ」

ハルトは軽く咳払いをしていつものおどけた口調に戻ったが、その目は絶対的に真剣だった。

「ナツミ……九度の人生で、俺はいつも君を泣かせてばかりだった。今世では、毎日口喧嘩できるように、君を怒らせることしかしないと誓うよ。君は……この腰痛持ちの厄介者を夫として迎え入れて、一生俺のために焦げたご飯を炊いてくれることに同意してくれますか?」

ナツミは声を上げて泣きじゃくった。感動すると同時に、このバカの型破りなプロポーズが可笑しくてたまらなかった。

「誰があんたのために焦げたご飯なんか炊くもんですか!」ナツミは泣きながら笑い、震える手を差し出した。「早くはめて、立ちなさい!また椎間板ヘルニアになったら、見捨ててやるんだから!」

ハルトは満面の笑みを浮かべた。彼は慎重に彼女の薬指に指輪をはめ、ナツミに支えられながらよろめき立ち上がると、その女の子をすっぽりと胸の中に抱きしめた。真っ白な雪が舞い散る中、二人は情熱的なキスを交わした。今年の冬は、もう寒くなかった。

4ヶ月後。2027年の春が再び日本にやってきた。

東京郊外の小さな教会は、暖かい春の日差しに包まれていた。ガラス窓の外では、満開の桜が舞い散っていた。

花嫁の控室では、ナツミが鏡の前に座っていた。純白のウェディングドレス姿の彼女は息を呑むほど美しかった。普段のボサボサの茶色い髪は、丁寧に上品なウェーブに巻かれ、繊細で可愛らしい小さな花が散りばめられていた。

ドアがわずかに開いた。パステルピンクのイブニングドレスを着た、信じられないほど誇り高き雰囲気の女性が中に入ってきた。フユカだ。

「フユカ!」ナツミは、動きにくい長いドレスにもかかわらず飛び上がって歓声を上げた。

「ナツミ!おめでとう!」フユカは輝くような笑顔で、歩み寄ってナツミをきつく抱きしめた。二人の女の子は抱き合い、そこに気まずさや距離感は微塵もなかった。

フユカはナツミのブライズメイドを務めるため、パリから東京へ深夜便で直行してきたばかりだった。この一年余り、地球の半周も離れていたにもかかわらず、彼女たちは最も親しい友人のままだった。今日ゲストの手にある精巧な結婚式の招待状も、新婚夫婦の家のインテリアデザインも、すべてフユカが自ら描き、プレゼントしたものだった。

「すごく綺麗だよ、ナツミ」フユカは一歩下がり、親友を見つめた。その目は誠実さでキラキラと輝いていた。「ハルトくんは本当に幸せ者ね」

「幸せ者どころか、昨日の夜も私から布団を奪い取ってたわよ」ナツミは顔を赤くして文句を言ったが、幸せな笑顔は隠しきれなかった。

三人の中にある理解と尊重は、嫉妬という偏見をすべて打ち砕いていた。ハルトはフユカが世界へ羽ばたくための勇気を与え、フユカはナツミとハルトが見つかり合うために自ら手を離し、ナツミは自分の命を懸けてフユカを死神の鎌から突き飛ばした。彼らは皆、それぞれの幸福の頂点に立っていたのだ。

礼拝堂の外で、教会の鐘が鳴り響いた。

ハルトは祭壇に立っていた。新郎のタキシード姿がよく似合っていた。背骨は完全に治癒し、彼の背中は山のようにまっすぐで、揺るぎなかった。

木製のドアが開いた。ブライズメイド役のフユカが微笑みながら先に入場し、彼女の後に……ナツミが続いた。

純白のウェディングドレスを着て、微笑みながら自分に向かって歩いてくるナツミの姿を見た瞬間、ハルトの目頭が熱くなった。八度の苦難の人生のあらゆる光景が脳裏をよぎったが、今回、それはもう悲劇の色を帯びてはいなかった。それは偉大な待ちわびの証だった。

白いレースの手袋をしたナツミの手が彼の手の中に置かれ、きらめく結婚指輪に触れた時、ハルトはそれを強く握りしめた。

「泣いてるの、バカ?」ナツミは囁き、少し背伸びをしてからかうように微笑んだ。

「後で君が手作りしたケーキをどうやって飲み込もうか考えてて忙しいんだよ」ハルトは口角を上げて言い返したが、涙は止めどなく流れ落ちた。

ハリネズミ夫婦のいつもの口論に、会場全体がドッと笑いに包まれた。そばに立っていたフユカも口元を覆い、クスクスと笑っていた。

神の証人の下、そしておそらくは別の次元にいるカミの証人の下、誓いの言葉が響き渡った。

「ハルト、あなたはナツミを妻とし、健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、生涯彼女を愛し、敬うことを誓いますか?」

ハルトはナツミの輝く瞳を深く見つめた。千年の輪廻を生き抜いた放浪の旅人は、深呼吸をし、一文字一文字をはっきりと、力強く絞り出した。

「誓います。今世も、そして永遠に」

「ナツミ、あなたは……」

神父が言葉を言い終える前に、ナツミは泣き出し、何度も頷いた。それは、あの年の吹雪の中心での頷きと全く同じだった。

「誓います!九度でも十度でも、私は誓います!」

礼拝堂全体に割れんばかりの拍手が沸き起こった。ハルトは身をかがめ、ナツミの唇に深いキスを落とした——千年の苦難を閉じ、最も輝かしい未来を開くキスを。

時間の円環は完璧に閉じた。九度の誓いの物語は終わりを告げ、代わりに、極めて人間臭く、口喧嘩と笑い声、そして温かい人情に溢れた焦げたご飯でいっぱいの生活へと席を譲ったのだ。

なぜなら、運命の破片たちの魂は、ついに永遠に属すべき場所を見つけたのだから。

(完)


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

九度の人生を駆け抜けたハルトとナツミの物語は、これにて完結です。


吹雪の中で言えなかった一言が、四百年以上の時を越えて、ようやく届きました。

二人のこれからは、きっと口喧嘩と焦げたご飯でいっぱいです。


もし少しでも心に残るものがあれば、★評価や感想をいただけると、

次の作品を書く大きな力になります。

また次の物語でお会いできますように。


余韻えいしゅん

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