此処で会ったが百年目
この世は理不尽で溢れている。自分の思い通りに事が運ばないのは世の常である。理不尽とは何の前触れもなく、不意にやってくる抗いのようのない天災のようなものだ。
そんな俺、黒井紋はそんな理不尽に対して極力巻き込まれないよう高校入学まで慎重に大人しく生きてきた。正直当たり障りのないつまらない人生かもしれないが、今のところ心身ともに問題ないので概ね満足している。
他者からも基本的に「いい人」と思われていればいいし、影が薄くても全然構わない。下手に注目されて理不尽な目に遭うくらいなら目立たない方がマシである。大人になってから卒業アルバムを見返した時に「そんな奴もいたな」と思ってくれるだけで何ら問題ない。とにかく高校卒業まで「平穏無事」であればそれで良いのだ。
無論これまで色恋沙汰には縁もなかったし、さして興味も湧かなかった。あったとしても女児向けアニメで「ブリデュオ」シリーズにドハマりしている俺を見たら大抵の女子はドン引きするに決まってる。なお、俺が「ブリデュオ」シリーズにハマっているのを知っているのは幼い頃からの親友である前橋君だけだ。俺の両親にさえ、この趣味についてはひた隠しにしている。
まあ、前置きはそのくらいにしておいて、何故俺が理不尽について言及したかをこれから説明せねばならない。
全ては俺の通う高校に転校してきたとあるお嬢様のせいだ。お嬢様の転校初日の放課後に体育館裏へ呼びつけられたかと思うと、いきなり物騒な宣告を受けたことに始まる。
「黒井紋…此処で会ったが百年目。貴方のお命頂戴します」
「……………はっ??お、俺の命…?!」
「お覚悟!!」
………ほぼ初対面の人間からこんなことを言われたら、一体どうリアクションすればいい?これこそ理不尽極まりないと思わないだろうか?
どうにもこのお嬢様が俺のクラスにやって来た時から嫌な予感はしていた。こういう時の嫌な予感というものはこれでもかと言うくらい当たるものである。
とにかく俺の人生最大の理不尽は、何の前触れもなく正に天災の如くやって来た。




