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その乙女、機動要塞 ~転生女王は超文明で滅びゆく王国を救う~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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ガーディアン②

ここまで読んでいただきありがとうございます。

本作は「女王による国家運営」と「SF超文明」を組み合わせた戦記ファンタジーです。

内政、外交、巨大兵器、ロボット、戦争などがお好きな方に楽しんでいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 ◇


「エリス~3号室と4号室のお掃除とベッドメイキング終わったよ~」

「ありがとうユナ~」


 バンダナを巻いて掃除をしていたユナはちょうど一仕事終わったというところで、エリスとハイタッチしてからコロコロと笑った。


「ユナちゃん、いつもありがとね」

「最近こられなくておばちゃんごめんね」

「何言ってんの、ユナちゃんは大変なお仕事してるんだから」

「小さい頃からエリスと遊ぶ時間確保するためにがんばってお仕事覚えたもんね」

「まあお料理はずーっと苦手なままだけどね~」

「このぉ言ったなエリス~」


 二人はきゃっきゃと年頃の娘たちのようにはしゃぎながらじゃれている。


 ユナにとってここは、唯一、年頃の少女でいられる数少ない居場所。

 エリスはユナが女王になってからもず変わらず接してくれる、気遣いのできる優しい娘だった。


「あれ? シバタは? また昼寝してんのあいつ?」

「護君はお母さんに言われて屋根の雨漏り修理してくれてるの」

「そっか、身軽だもんね」

「そうなんだよひょいひょいって屋根に上っちゃうんだすごいよね」


 エリスが護のことを話すときの表情は、どこか遠くを見るようにぽーっとしている。

 ユナはそれが仲良しだぐらいにしか思っていなかったが、当人たちはほぼ関心がない。


「ほいっと、おばさーん屋根の修理終わったよ~」

「あら護ちゃん、助かったわ! 休憩のお茶にしましょ」


「腹減った~」

「なんだか護ちゃんの 腹減った~を聞くと安心するわ」

「そうなの?」


 羊のはらわた亭 という若干スプラッタな心象を受ける名前だが、宿屋の評判はすこぶる良い。気立ての良い看板娘のエリスとおかみ自慢の料理と寝心地が良いベッドが値段の割りには充実し質が高い。


 そのため冒険者ギルドや商人たちから紹介された身元が確かそうな女性の利用者が多い。


 午後のお茶を飲みながら、最近の流行や大分治安が良くなってみんな喜んでるという話をしていた時のことだった。


 爆発音や轟音と衝撃波が羊のはらわた亭を揺らす。


「何!? またトロールが来たの!?」

 エリスが不安そうな声を出すが、すぐにユナが微笑む。

「大丈夫、すぐに確認してくるから。いくわよシバタ!」


「おう!」


 ユナとシバタが通りへ駆けだすと、避難訓練で慣れた人々はすぐに地下室へ隠れたり指定避難所へ子供たちを連れて向かい始めていた。


「ユナ、中央広場ぽいぞ」

「ノルン、状況分かる?」

 『どうやら中央通りで戦闘が行われているようです。先ほど観測された高エネルギーはレーザー兵器に類似したものと思われます』


「レーザー!? この世界にそんな!? 急ぐわよシバタ」


「時間がなさそうだ。ほいっと」

「わわっ!」

 護はユナをお姫様だっこすると、そのまま跳躍し屋根に飛び乗った。

 ユナを抱えたまま、護は屋根の上を走り跳躍し中央通りへと一直線に駆けていく。


「もう無茶しないで! ってうわっ! レーザーぶっぱなしてる! 結構被害出てるじゃない!」


「あれは!」


 状況からして何かが戦っているようだが、迎撃部隊? 騎士団の誰かなのかとユナが不安になる中でノルンの報告が入る。


 『敵の外観を確認。自律型 多脚式ガードロボットのような兵器のようですが、戦闘しているのは1人、生体データから、ガルドのようです』


「よりによってあの借金まみれが!?」

「ユナ! あのおっさん、ロボット相手にがんばってるみたいだ!」


「色々言いたいことはあるけどノルン! PB-04 で一気に撃ち抜くわ、ウィークポイントを教えて」

 『データが不足しています』


 この時、ユナの感覚に妙なものがこみ上げてきた。

 ガーディアンの頭頂部に何かのマークが浮き出ている。

 それはユナの脳内にだけ生じている現象、つまり……機動要塞の能力的な何かである可能性を一瞬で考慮したのだ。


「多分あそこ、分からないけど分かるから、シバタ全力であいつの真上へジャンプ!」

 『マスターへ対空攻撃の恐れが』


「おう! いくぞユナ!」


 護の跳躍で一気に飛び上がった二人。

 そのままフォトンブラスターを手にしたユナを肩に担ぎ直すと、射線を下へ向けてくれる護。


 ユナの射撃感覚とオレンジのターゲットマーカーが一瞬だけリンクした。


 そこにすかさず改良を重ねてよりエネルギーの収束率が増した青白いフォトンビームの光条がガーディアンの頭頂部を貫いた。


 そして数秒動きを止めた後に、糸を切ったマリオネットのようにガシャんと力なく倒れこんだのだ。


 動きを止めたガーディアンのアンカー脚がガツン! と中央広場の石畳に突き刺さる。それはガルドの股間のすぐ側だったため、「ひいいいいいいいい!」と悲鳴を上げて股間をおさえるガルドの元に着地したのはユナを抱えた護だった。


「どうやら無事みたいね」

「ゆ、ユナちゃん!? え? あれ?」


 護に助け起こされたガルドは腰をおさえながら呻いている。

「年甲斐もなく働いたもんだから、腰が、体中いてえ」


「あれ? 何か聴こえる?」

「ほんとだ?」

「ま、まさかまた敵が? それよりロッコたちは無事なのか!?」


「あにぃいいいいいいいい!」


 すると通りの向こうからあの3バカたちが手を振っている。大勢のリシュタールの民と一緒に。


「ガルド! ガルド! ガルド! ガルド!」


「へ?」


 ガルドがきょとんとしているが、集まった民衆たちがガルドコールを続けており、それは徐々に増えているようだ。

「兄貴いいいいいいい! みんな兄貴が街を守るために戦ったってすげえ褒めてくれてるですよおおおおお!」


「ま、まじか!? うおおおおおおおおお!」


 ガルドが民衆に答えるとより大きな歓声が木霊する。


「ノルン、被害状況把握とこの戦闘兵器を回収して分析」

 『イエスマイマスター』


 護はどこか腑に落ちない顔でガルドをしばし眺めていた。

 ◇


 その後、ガルドや3バカから聞き取りをしていたが、何やら口ごもるため城に連れて行ってから改めて尋問することになった。


 騎士団の副官であるオーウェンが尋問を進めるも、あまりの事態にあきれ果ててユナに助け船を求めてきた。


「ガルドさん、つまり……地下水路の奥にあるという地下遺跡を発見したと。そこで変なボタンを押したせいでガーディアンが動き出してしまい、逃げたら王都まで連れてきちゃったと」


「まあそんなところだ」


「「「お前のせいか!」」」


「あっ……そういえばそうかもしれないっすね……あはははは!」


「笑いごとではありませんよガルド。これが被害状況報告になるが、被害総額3億レーネほど。これはあなたの借金リストに追加しておきましょう」


「て、てめえドノヴァン! まだいやがったのか!」


「ということで女王陛下、被害額に対して我ら商会から見舞金、寄付として3億レーネ出しましょう。その出元はこいつにしておきますので」


「あらドノヴァンさん、助かります。その申し出がなければ石にぐるぐる巻きにして縛り付けてから、レヴァント港に沈んでもらうところでした」


「それは良いタイミングでございました」


「こ、こえええ、こええよお。あっちょっとちびっちゃった」


「騎士団長、とりあえずこのあほんだらは騎士団で死ぬまで使いつぶしてちょうだい」

「はっ! 了解しました!」

「ひいいいいい! た、助けてよユナちゃあああああ!」


 逃げ回るガルドを見て微笑むドノヴァンの顔はユナが想定した以上に穏やかなものであった。

 ドノヴァンは静かに懐から魔導写真を取り出す。

 そこには多くの子供たちと一緒に照れながら笑う若いガルドの姿。

 そしてその隅にはまだ若さの残るドノヴァンが居心地悪そうに写っていた。


「まったく、孤児院の援助をしてるからと言えばいいものを。頑固者め」

 

お読みいただきありがとうございました。

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