【第5章】第3話 「開幕」
―第3話 「開幕」
文化祭当日。
朝。
まだ開門前だというのに、
校内はすでに騒がしかった。
廊下には装飾。
ポスター。
風船。
どこからか軽音部の音合わせも聞こえる。
透真たちの教室前には――
『宇宙博覧会』
大きなタイトル文字。
星型ライト。
惑星の模型。
そして入口には、
天の川をイメージした青い布が揺れていた。
「うわ、ちゃんと文化祭っぽい……!」
透真が目を輝かせる。
「今さら?」
夕花が呆れたように笑った。
「いや、
準備中と全然違うから」
「まあそれは分かる」
薫が展示パネルを整えながら答える。
紬は静かに入口装飾を直していた。
その時。
「星宮くん、
こっちの説明お願い!」
「はーい!」
透真がすぐ駆けていく。
朝からずっとそんな調子だった。
来場者が来れば説明。
困ってる人がいれば案内。
展示前では星の話。
しかも。
本人がめちゃくちゃ楽しそう。
☆
「この輪っか、
ほんとに氷なんですか?」
「うん、
岩とかも混ざってるけどね」
「すごー!」
女子中学生たちが感心する。
透真は嬉しそうに笑った。
「宇宙って、
まだ分かってないことも多いんだよ」
話し始めると止まらない。
でも、
その目が本当に楽しそうだから、
みんな自然と聞き入ってしまう。
「星宮くん、
絶対天職これじゃん」
クラス男子が笑う。
「え?」
「宇宙の先生とか向いてそう」
「そんな大したことじゃないよ」
照れながら笑う透真。
その横で。
夕花はなんとなく面白くなかった。
「……囲まれすぎ」
小さく呟く。
紬はその隣で静かに頷く。
「今日、
ずっと人気」
「だよね……」
薫は少し離れた場所から、
その様子を見ていた。
……ほんと、
誰にでも笑う。
文化祭始まってから、
透真はずっと誰かに話しかけられている。
女子。
男子。
他クラス。
来場者。
しかも全部、
自然に嬉しそうに返す。
なんか。
モヤモヤする。
☆
昼前。
「透真ー!」
廊下から聞こえた声に、
透真が振り返る。
裕翔だった。
「裕翔!」
透真の顔がぱっと明るくなる。
その瞬間。
裕翔の機嫌も少し直る。
「お前、
全然休憩してないだろ」
「楽しいから平気」
「はいはい」
裕翔は呆れながら、
ペットボトルを渡した。
「差し入れ」
「え、ありがと!」
透真が嬉しそうに受け取る。
その自然な距離感に、
近くの女子たちがざわついた。
「幼馴染?」
「距離近くない?」
裕翔は聞こえないふりをした。
でも少しだけ、
優越感があった。
☆
午後。
天文部展示。
プラネタリウム教室は、
予想以上に人が多かった。
「次の案内こちらでーす」
和希が入口を整理し。
昴が機材確認。
伊織が静かに座席調整。
神代先生は後方で全体を見ていた。
そして。
中央。
投影された星空の下で、
透真が解説している。
「これは夏の大三角です」
「織姫星と彦星、
あと白鳥座のデネブ」
暗い空間。
静かな声。
星を語る時だけ、
透真の表情は少し変わる。
夢中で。
真っ直ぐで。
好きが全部出る。
来場者たちが、
自然と聞き入っていた。
昴はその様子を見ながら、
小さく息を吐く。
「……やっぱすごいな」
和希が笑った。
「透真くん、
完全に看板だね」
「否定できねぇ」
☆
「先生」
神代先生の隣へ、
伊織が静かに立つ。
「なんだ」
「今日、
透真くんずっと楽しそうです」
神代先生は少しだけ笑った。
「そうだな」
その視線の先。
星空の下で笑う透真。
楽しそうで。
眩しくて。
そして危なっかしい。
……無防備すぎる。
神代先生は小さく目を細めた。
☆
夕方。
一般公開も終盤。
校内は少しずつ人が減り始めていた。
その頃。
校舎裏近くの渡り廊下で。
一人の中学生が立ち止まっていた。
制服姿。
少し長めの黒髪。
綺麗な顔立ち。
でも、
どこか困ったような表情。
「……ここ、
どこ」
スマホを見ても分からない。
友達とはぐれた。
人混みも苦手。
帰り道も分からない。
その時。
「大丈夫?」
柔らかい声がした。
中学生が顔を上げる。
夕暮れの光の中。
そこにいたのは――
星宮透真だった。
読んでいただきありがとうございます!
ー
いよいよ文化祭が始まりましたー!
「星」を語ることで周りを惹きつける透真くんパワーすごいです(笑)
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毎日21時に投稿予定です५✍⋆*
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⭐️登場人物紹介:https://ncode.syosetu.com/n5363me/1/




