プロローグ
『はじまりの星』
眠れない夜だった。
窓の外は静かで、時計の針の音だけがやけに大きく聞こえる。
透真は布団の中で何度も寝返りを打って、それでも眠気が来ないことを諦めるように、小さく息を吐いた。
カーテンの隙間から、青白い光が差し込んでいる。
何となく気になって、透真はゆっくり起き上がった。
窓を開ける。
夜の空気は少し冷たくて、ひんやりと頬を撫でた。
「……わ」
その瞬間だった。
一筋の光が、夜空を横切った。
キラリ、と。
まるで空に傷をつけるみたいに、一瞬だけ光って消える。
透真は目を見開いた。
「今の……」
流れ星?
そう思った瞬間、また一つ。
今度はさっきより長く、尾を引いて落ちていく。
透真は慌てて窓から身を乗り出した。
胸がどくどくしている。
どうしてかわからない。
でも、目が離せなかった。
気づけば部屋を飛び出していた。
パジャマのまま、階段を駆け下りる。
玄関を開けると、夜風がふわりと髪を揺らした。
見上げた空には、無数の星。
そしてその間を縫うように、いくつもの流星が降っていた。
「……すごい」
思わず声が漏れる。
空はあんなに遠いのに。
星なんて触れられないくらい遠くにあるのに。
どうしてこんなに、綺麗なんだろう。
透真は瞬きも忘れて空を見上げ続けた。
流れ星が落ちるたび、胸の奥が少し熱くなる。
知らなかった。
夜空って、こんなふうに見えるんだ。
星って、こんなに綺麗なんだ。
静かな住宅街で、一人きり。
それなのに不思議と、ひとりぼっちじゃない気がした。
遠い星の光が、ちゃんとここまで届いている。
透真はそっと息を吐く。
白く滲んだ呼吸が、夜に溶けていった。
「……もっと、見たいな」
その小さな呟きが。
透真の“好き”の始まりだった。
読んでいただきありがとうございます!
「星空より近い」プロローグです。
主人公・透真の「星」が好きになったきっかけの話から始まります。
次回は第1章 高校入学から物語は始まります。




