4-19:神の叫び
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恒例の面倒な考察フェーズ。
軸をまとめてある、真ん中くらいまで飛ばしても問題ないです。
ツカサはぎょっとした。リガーヴァルであの日、血まみれのセルクスが落ちてきたあの時、セルクスは命の女神と争っていたのだ。セルクスを追いかけていた黒い波のようなものは命の女神だったものなのかもしれない。恐る恐る問えば、セルクスは少し周囲を気にした後、小さな息をついてから言った。
「次代の命の女神に命が宿る前に、彼女は砕かれた。そこに心も記憶も命もなかったからこそ、四つの欠片になるだけで済んだ。だが、あの女は思い直し、器を求めた。当代の命の女神は狂ってはいるが、冷静な一面もあり、その器が自身を新生させると理解もしていて、利用しようとしているのでね。だから、隠す必要があった」
それがこの世界だった?
「そうだ。この世界は既に終わりを迎えようとしている。ここであるならば、守れずとも世界とともに消滅し、あの女の目論見は潰えることになる。次代がまた生まれるまで、時間は掛かるだろうが……」
でも、数多の世界も危険に晒されているんでしょ? そんな悠長な神の待ち時間、エルフじゃないんだから。
「だからこそ、刻の神はすべての世界を手放し、時を止めたのだ。それ以上の破壊と歪みを生ませないためにな。すべてに神がいること、司る者がいればこそ理に縛られ融通が利かないこともあるが、今回はそのおかげで被害を食い止められているのだ」
一長一短、表裏一体。よいところもあれば悪いところもある、物事の一面だけでは話せない事態。ツカサは頭が痛くなってきた。眉間を揉むように糸くずの腕を持っていけば、ぷにっと自身の手に柔らかさが感じられた。
そして、少なくともセルクスは決死の覚悟でここに居るらしい。ツカサやラングに渡した権能は、もしかしたら、こうした真理を聞かせられるように敢えて手放したものかもしれない。時の死神はいつも血にまみれていて傷だらけ。それに対して全ての理の神は何をしているのかと不満を示せば、セルクスは眉尻を下げて微笑んだ。
「彼の神は一人で戦い続けているのだ」
誰と? 一番上の神様なんじゃないの?
「私を含めている輪の中ではそうだ。だが、あいつは自身が理という属性を持っているがために、変えたくとも変えられないことを、少しずつ、人の手を借りて変えている」
要領を得ない。ツカサは詳しく聞きたいと糸くずの腕でセルクスの衣を引っ張った。今聞いておいた方がいい気がした。セルクスは眉を掻き、困ったように視線を迷わせてから覚悟を決めたようだった。
「世界という種を創る機構があり、種を蒔く理があり、時を司る神がいて、命を誘う神が運んだ命を、次へ送り出す神がいる。ではいったいどうして機構は生まれ、神が存在し、命があるのか」
あ、これまた難しい話だ、とツカサは慄いた。セルクスはぷるる、と震えたツカサの体をそっと両手で包み、逃がさないようにして覗き込んだ。
「我々を取り巻く大きな理の輪は、それだけで一つの大きな輪だ。だが、その中で命の数は決まっているのだとクリアヴァクスは気づいた」
セルクスの手のひらはひんやりと冷たくて、逃げ出そうにもぴたりとくっついているような感覚があり、逃れられなかった。
「繰り返し、繰り返し、繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し、命は回る。神と同じだ、使い続けられるそれは、摩耗し、擦り減り、歪み、美しい形を失っていく。……ヒトそのものが狂っていくのだ」
ヒュッ、と息を吸ってしまった。この体で息を吸うという感覚は少し鈍いのだが、それでも気持ちとしてはそういう感じだった。
「想像したまえ、たとえ綺麗な宝石であっても、丁寧に磨き続けられればどうなる?」
……小さくなって、粒になる?
「そのとおり。そしてやがて、消えてしまうだろう」
摩耗し形が変形するもの、自動車のタイヤのように擦り減ったからと付け替えることのできないもの。様々な記憶や想いを抱えた命は重く、時の死神や命の女神という大きな川の中で転がり形を変え、そして通り過ぎていく神たちすら傷つけているのだ。だから神も入れ替えが必要なのだ。それはわかった。
しかし、その中の命の数が決まっているとはどういうことだろう。
「言葉のとおりだ。輪の中の命は総数が決まっている。いくつもの世界が生まれたとて、分けられた命はそれ以上増えることはない。たとえば、ひとつの世界で人が増えすぎたのならば理や人同士が争い、死ぬ。その命は女神の手を介して別の世界へ流れ、命の少ない場所で生まれ変わる。そうして、数は絶妙に保たれている。保たれていた」
人が増えれば森を開き、山を削り、川や海を汚さなければ生きられない。だが、そうすれば環境破壊や自然災害などが必然的に増え、人は自らを危険に晒すことになる。自然が取り戻される頃、再び均衡を取るように人が増えるのだとセルクスは言う。どこかで似たような話を聞いた気がした。理と魔力の話と類似していないだろうか。
理の強い場所では魔導士が生まれる。理の弱いところでは魔導士は生まれにくい。世界はありとあらゆる面でバランスがとれている。
その話と、全ての理の神が戦い続けることと、何が繋がるんだろう?
なんとなく、脳裏に浮かんでいる理由はあるものの、正解が欲しかった。そうした気持ちを見透かすのだろうセルクスはツカサを包む手のひらに力を込めた。
「私は個人的に、君には大いに期待をしている」
持ち上げられ、眼前に運ばれたツカサはぷるぷると震えていた。見開かれた藍色の瞳は光を灯しておらず、鬱蒼とした暗い闇を抱えており、まるで木のうろを覗き込んだ時のような不安を覚えさせた。ツカサは恐怖から糸くずの腕でセルクスの手を押し退けようと、逃げ出そうとジタバタと暴れ始めた。セルクスはそれを強く握り締めて逃がさず、語り続けた。
「歪みのない命を得られれば、世界は寿命を延ばしていくだろう。世界が生き延びるということは、理の神々が生き延びるということだ。そこに生きるすべての命が生き延びるということだ。わかるだろう、ツカサ。彼の神は一人、輪という理を壊すことと戦っているのだ。たとえその先に広がるものが闇であっても、人と接することのないクリアヴァクスは狂わない。だからこそ一人で戦い続けている。子らのために」
ツカサはスライムの体が締め上げられ、あばら骨が締め付けられるような感覚に、ピィ、と呻いた。
「我が子を守りたいのは、神とて同じなのだ……!」
セルクスの声に焦燥が混じる。全ての理の神が子供という世界を守ることは、セルクスの故郷を有する揺り籠もまた守られるということなのだろう。
あぁ、人と近しい神が狂う理由を知った気がする。だからこそ代替わりを求められる理由も真に理解した。イーグリステリアも、命の女神もまた、想いを受け取り愛しすぎてしまったがために、狂った。
全ての理の神が子らを見ることもなく、何をしているのかもわかった。その背中だけでは語り切れないものを一人抱えているというのもわかった。
それでも、ツカサには関係のない話だ。
神が何をしていようと今生きているのはツカサだ。命が摩耗しているとか、変形しているとか言われたところでそれがなんだ。これから生まれてくる我が子の顔を見たい、それだけだ。神は神なりに子を守りたいのだろうが、ツカサだって幸せな未来と家族を守りたい。
新しい命をとか、理の輪とか、難しい話を聞きはしたもののよくわからない。今できることを必死にやって、取り戻すだけだ。神の争いごとに巻き込まないでくれ、と叫んだ。
「さすがに潰れかねませんねぇ」
ぬぅっと近づいてきた人影がセルクスの指を叩くようにして外させ、ツカサの体がぽとんと手のひらに落とされた。ぜぃぜぃと息を整えるように体を震わせ、手のひらの主を見上げればヴァーレクスだった。鳥肌は立っているものの放り投げるようなことはしなかった。
「御大層なことを語ってはいるものの、結局、貴様ら神が仕損じたせいでこの事態に陥っているのでは? 情けのない奴らですよ」
ちょ、ちょっと、ヴァーレクス、一応神相手に言い過ぎじゃない?
ツカサの言葉は師匠に届かず、ぎゅっと握り締められた。おい、待て、あんたはあんたで潰す気か、と抗議をしようとした行動は続いた言葉にできなくなった。
「物分かりの良さそうなガキを言いくるめ、手駒にしようという魂胆が気に入りませんねぇ。生憎、私は、恐らくパニッシャーも、そうしたことをよしとはしませんのでね」
ぬらりと抜かれたタルワールの切っ先がセルクスに向けられた。セルクスは剣呑な藍色の瞳でそれを見遣り、ゆっくりと瞬いた。
「私にとっても貴様はただの利用できる駒、ある程度情報を得た今ならば、その首を刎ねてもいいと思っていますよ。権能がどうのこうの言っていますがね、ある程度仕組みができているものというのは、良くも悪くも勝手に次代へと引き継がれるものです」
ヴァーレクスの言葉を聞きながらツカサがそうっとセルクスを窺えば、伏せがちなセルクスの眼が苛立ちを灯してヴァーレクスを見ていた。
「貴様、あわよくば小僧やパニッシャーがその女神とやらを殺せばよいなどと目論んでいるのでは? 失敗したとして、【変換】を渡したくないばかりに、そのために寿命の短いこの場所を犠牲に選んだのだろうと思うと、汚い神ですねぇ。そもそも救う気などなかったのでしょう」
ユキヒョウが牡鹿を足の下に置いたまま、オロオロと困惑し、そろりと立ち上がるとキスクを起こしに行ったのが視界の端で見えた。
「私には詳しいこともわかりかねますがね、小僧の持つ【変換】は、力に耐えうるだけの器があれば、世界を変えられてしまう力なのだと言っていましたからねぇ。その真意、敢えて問わせていただきましょう」
ツカサはヴァーレクスの指を掴み、ごくりと喉を、体をぷるんと震わせた。
「【変換】で理そのものを変えるために、摩耗した命を変えるために、貴様らは策を講じたのでは? 器とやらは、この女神の肉体では?」
様々な話があって、ツカサはすっかり混乱していたことに気づいた。情報量が多くて理解の追いついていないことを無理矢理わかろうとして迷路に入り込んでいたのだと、ヴァーレクスの言葉で気づかされたのだ。世界の真理など建前に過ぎず、セルクスはツカサが「何とかしなければならない」と思うように誘導していたのではないだろうか。
ラングのおかげでその呪いから解かれてはいたものの、セルクスはそれに気づいてさらに追い打ちをかけてきていた。ヴァーレクスが手を出したのはその時だったのだ。
器、と言葉を心の中で繰り返し、ツカサは自身の体を糸くずの腕で触れた。【変換】を使うたびにそれを扱える体に【変えられて】いたツカサの肉体。それは今、シュンが持ってはいるものの、待てよ、セルクスは何て言った?
――理の女神がその肉体を貸してくれている。だが、それは君の体ではない。少しだけ馴染むのに時間も掛かるだろう。
あれは、理の女神の黒いスライムの体と馴染むのに時間が掛かると同時、ツカサの肉体とシュンが馴染むのはもっと時間が掛かるから安心しなさい、という意味合いだけだと思っていた。真意が逆ならば、どうか。
神の力の片鱗である【変換】。理の女神の肉体とツカサの魂がぴったり馴染んでしまえば、今は使えない【変換】が使えるようになれば、理と魔力が均衡を崩し、理に傾けば。ツカサはどうなるのだろうか。理の女神がツカサに力を与え弱ったことにセルクスは激怒していたはずだ。その理由が均衡を崩させないためなら、この後、理の女神に均衡を崩させるだけの力を温存させるためなら。
ヴァーレクスの手から身を乗り出し、ツカサはセルクスへ叫んだ。
騙したの!? 守ってくれているんだと思ってた! ただの時間稼ぎだったの!?
「違う」
何が違うんだよ! こんなところで悠長に暴動を押さえるとか、神子を育てるとかしてる場合じゃない! 取り戻さないといけないじゃん! シュンが俺の体を全部奪うとかじゃなくて、俺が理の女神に魂を奪われる前に!
「違う! あの黒い命の泉で君の体を奪われ、理の女神の魂が喰われ、【変換】が奪われていたのならばこの世界など存在が既に消えていた! あの泉全てをシュンが呑み込んでいたのならば、耐えうるだけの器になってしまっていた! 【変換】を使って、時間は掛かれど多くの命を、世界を自分の力へと【変換】し、真の意味で神になり得ることもできていた! だからこそ我らは君を守ったのだ! 逃がしたのだ!」
答えになってないよ! 騙したのかって聞いてるんだ! 理の女神の体に俺の魂を入れて、使えるようになったらどうするつもりだったんだ!
「騙してなどいない、話さなかっただけだ」
そういうのを騙すっていうんだよ! 信じて馬鹿を見るのは嫌だ、俺は、ラングを守って、家族を、未来を守りたいだけなんだ! こんな体……!
待って、と慌てた声がした。地下牢の中でもそばにいてくれた白銀の杖の声だ。するんと空間収納から取り出せば、ヴァーレクスがツカサを持った手の指で器用に掴まえてくれた。手が大きいからできることだ。
フゥゥ、と宥めるような音でマール・ネルはツカサに声を掛けた。私が封じるから、と。
その言葉にセルクスが立ち上がった。藍色の瞳は怒りに燃えていたが、何度か瞬き、徐々にその感情を落ち着け、よろりと再びソファに腰掛けた。タルワールは未だその切っ先をセルクスへ向けていた。
「……騙していたわけではない。かかわってしまった神として、私にはもう君の未来はよく視えない。命の女神に【変換】を持たせるわけにも、自暴自棄になっている穢れた命であるシュンにも、【変換】を持たせるわけにはいかなかったのだ。ならば、きちんと器を持たせてしまった方がよいと、思ったのだ……」
それ、俺が俺じゃなくなるって話でしょ。ヴァーレクスじゃないけど、そんなの俺だって嫌だ。
「……その肉体となっている彼女が君に力を分け与えたのは、彼女にその気がないからだ。ふふ、騙されたのは私の方だ。君の内に居た時には、彼女はわかった、【変換】を得よう、守ろう、と口をそろえていたというのに、蓋を開けてみればただ君を守るためだけに存在している」
くしゃりと水色の髪を両手で抱え、セルクスは項垂れた。そうか、あの時の激怒は裏切られたからだったのか。ゆるりと顔を上げ、疲れ果てた男の顔でセルクスがヴァーレクスの手に居るツカサを見遣った。
「なぜ、君は【変換】を持ってしまったのだ」
何にでも変えられる。無から有を創り出し、有を無に帰すことのできる【変換】。ツカサが恐怖を抱いたように、神もまたそれを欲しがり、恐れるのだと知った。ツカサは言った。
神の失敗、或いは失策、もしくは運命、なんじゃない?
「ふ、ふふふ、ははは、はははは! なんということだ……!」
盛大に笑い始めたセルクスは笑いながらボロボロと涙を零し、表現の難しい状態に陥っていた。単純に笑い上戸にも見えるし、諦観を浮かべているようにも見え、ツカサはそれを少し微笑みを浮かべる気持ちで眺めていた。何かを察したのかヴァーレクスもタルワールを鞘に戻し、マール・ネルを空いた手に持ち替えた。
暫く笑い、泣き続けたセルクスは顔を拭ってから大きく息を吸って体を起こした。
「肉体を貸している彼女が死んでも、内に居るツカサが死んでも、我らは詰みだ。正直なところ、本当に私は今、ただの人なのでね、できることは人の手と変わらない。力を使えばその度に命の女神に見つかる危険性もある」
この部屋と、怒った時のあれはどうなの。
「部屋は置いただけだ。怒った時のことは反省している。先ほどは堪えただろう」
すっきりとした顔でセルクスは悪びれずに言い、呆れが浮かんだ。
「確かに、ヴァーレクスの言うとおり、策が成されなければ、【変換】そのものをこの世界とともに消滅させればいいと考えていた。あるよりはない方が安全なのでね」
お、こいつ開き直ったな、とツカサはジト目になる気持ちだった。セルクスは気まずそうに咳払いをして続けた。
「策が上手くいって理の女神が【変換】を得たのならば、この世界を【生きられる世界】に変えればそれでよい。この世界で生と死の輪が上手く回るようであれば、それを他の世界でも活用すればよい。そして、クリアヴァクスがその力を譲り受ければ、すべての世界が命の女神を必要としなくなる」
理の輪から命の女神を排除したいんだね?
「そうだ。今、我々のいる理の輪は、命の女神が狂い、命を抱え込み、時にシュンのように同調する命があれば特権を与え、だが、それを平等だと思い込んでいる。命が苦しむのを哀れむばかりに、本来流れていくべきはずの流れに、栓がされている状態なのだ。だから新しい命が生まれない。この世界は、その影響が現れた一番最初の世界なのだ」
水を同じ場所に留めるのを想像したまえ、と言われ、それが腐っていくだろうことはわかった。この場所だけではなく、どの世界も同じ状況だということだ。そうか、それで命の女神を排するために全ての理の神は試行錯誤しており、セルクスは物理的な解決を求めて刈りに行った。
「狂った神は腐ってゆく。神は神を殺せないが、次代の命の女神がある今ならば世代交代となり、それも理の当然の流れ、怪我もしないはずだった。しかし、命の女神は怒り狂い、抵抗を受けた」
それであの怪我。追ってきてた黒いのもその女?
「そのとおり。栓を閉じて抱えていたものすべてを武器にして抵抗されたのだ。私が誘ったところでそれの還る場所があの女神のところならば意味がない。権能を奪われでもしたのなら、あの女、すべてを手元に誘い、それはそれで命がどこにもなくなり、この理の輪は腐り、消滅する。……ふ、そうだな、などと言い訳を並べたところで、ペリエヴァッテ・ヴァーレクスの言うとおり、私は仕損じ、そして逃げたのだ」
ゆるりとセルクスは瞬いてツカサを真っ直ぐに見据えた。
「話さなかったことは詫びよう、すまなかった」
ゆっくりと神の頭が垂れた。晒された項はいつでも斬り落とせるだろう。この謝罪はそうそう受け入れられるものではないが、敵対を続けるわけにもいかないとわかる。ツカサは息を吸い、吐いた。顔を上げて、話しにくい、といつだったか学食で同僚に言ったのと同じ言葉を言い、セルクスはそれを受けてから顔を上げた。
滲むような微笑を浮かべ、セルクスは言った。
「話そう、どうなるのか、何ができるのか。……どうするのかを」
うん、そうだね。ところで何してるの、キスク。
ツカサの言葉にセルクスが振り返り、キスクがフライパンを持って立っていることに目を見開いていた。本当に戦闘は苦手らしく、気配を察知するのもできないらしい。
「いや、うん、あの、先生がなんか困ってるってシャムロテスから聞いて、何かしなくちゃって思って! 神様が相手だろうと、俺は、先生の、ツカサの味方だ!」
言ってやった、と言わんばかりにキスクは息を荒げ、ツカサもセルクスも呆気に取られていた。息をつきながらツカサを振り返ったセルクスは、この世界の言葉で言った。
「君には味方が多いな、私は四面楚歌のようだ」
ツカサはヴァーレクスの手の上で、ふん、と胸を張った。




