幕間:消えた手紙
いつもご覧いただきありがとうございます。
――エルドさん カダルさん
お元気ですか、ロナです。
そろそろヴァロキアは雪が多くなる季節ですね、エルドさんが一人でどう過ごしているのか、少し心配です。
お酒呑み過ぎないでくださいね、王都マジェタのギルドマスターですから、その点はしっかりされていると思いますけれど。
周りの人に「お酒呑むぞ」ってちゃんと話してから酒場に行ってくださいね。
誰かに言っておけば、気にかけてくれる方がエルドさんにはいるんですから。
副ギルドマスターにもよろしくお伝えください。
カダルさんもいかがお過ごしでしょうか。
女王陛下と仲良くされていますか? 言われなくても、かもしれませんけれど、念のため。
王都の復興もどうでしょうか。ついでに衛生面もよくなっているといいなと思います。
スカイは冬も雪がそんなに多くないらしいので、これから楽しみです。
今いるイーグリスはダンジョンも五つあったり、滞在としても、攻略としても、ここで長く居るだろうなと思います。
マーシといろんなマジックアイテムを見るのを楽しみにしているので、面白そうなものがあればお二人にも持って帰りますね。
こちらではダンジョンの踏破がされているので、攻略本を読みこんで挑戦します。
遠く離れた土地で命を落とすような真似はしません。
【真夜中の梟】の名前をこちらでもしっかりと広めちゃいます。
先日、ツカサの結婚式に参加しました。
ツカサが結婚ですよ! 一緒にジュマの、ジェキアのダンジョンに入ったあのツカサがです!
ラングさんにコテンパンにされてぼろぼろだったツカサがですよ!
エルドさんとカダルさん、今のツカサに再会したらすごく驚くと思います。
身長も伸びてラングさんを抜かしていて、魔法も、剣術も、体術だってうまくなってて、何歩も先を行かれちゃって。
すごいなぁと思う気持ちもありますけど、なんだか、正直、置いて行かれたような気持ちがあって寂しいのが素直なところです。
嬉しいですよ、友達の結婚。
本当に素晴らしい結婚式で、スカイでツカサが出会った人たちとか、多くの人がお祝いに駆け付けて、見ているこっちも幸せになるような結婚式でした。
……でも、これでツカサは冒険に行かなくなっちゃうんじゃないか、とか、あの実力でそれは勿体ない、とか、勝手に考えちゃうんです。
ツカサほどの冒険者、なかなかいないから。
それに、僕の両親のことを思い出すんです。
子供ができてもダンジョンに行って、その先で死んでしまって、死んでしまったら、それまでなんです。
ツカサの奥さんは冒険者じゃないので、もし、ツカサがそうなっても、子供ができたら一人にはならないですけど、複雑な気持ちです。
友達の死を想像して心配するなんて、不謹慎なんでしょうか。
手紙のやり取りはいいのですが、こういう時、直接エルドさんに肩を組まれないことも、カダルさんに肩を叩かれないことも、少し寂しいです。
こういう話、マーシは苦手ですからね……。
でも、話してみようかな。今は僕たち二人がパーティですから。心の巣立ちも必要ですよね。
なんだか少ししんみりしてしまってすみません。
僕も、マーシも、新しい場所でも成長しています。
だから心配しないでください。
またお手紙書きますね。お返事は同じ、スカイ王国 イーグリス 冒険者支部 でお願いします。
―― ロナ
取り戻せなければ、これもまた消える手紙。
送る相手も、送られる相手も、今のままではいないのだから。




