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#2 二人きりの講習会

「で、僕はいつ頃成仏できるんですか」

「くだけた表現で構いませんよ、京市さん」

 僕らは今街中、繁華街の交差点にいた。

付け加えて言うなら地面から10メートル上空だ。

『幽霊は活気のある場所を避ける』という言い伝え(?)どうり僕ら以外に霊の姿はなかった。

そうですねと言いながらサンディは腕を組む。

「あなたが現世で思っていた思い『この世は生きるに値しない』

という嫌気ですね。その思いを十分晴らしたと、私が思ったら、です」

「具体的には?」

『この世は生きるに値しない』そんな自分の考えを、他人に大まじめに言われると恥ずかしくり、

それを突っ込んだ質問ではぐらかす。

「なんとも言えませんね。幽霊としての人生を謳歌してくださいとしか」

返ってきた答えは僕を満足させるものではなかった。

それを察したのかサンディは続ける。

「しかたがないんですよ。一人ひとり状況が違いますから。自分でそのすべを見つけないとだめなんです。

もちろん、お手伝いはしますけどね。」

 言い終わるとサンディは懐から一本のバナナを取り出した。

「では講義を始めます。」

僕らがわざわざ人通りの多い繁華街にいた理由はこの講義を聞くためにあった。

 「ここに取り出したバナナは霊界から持ってきたものなので、霊力を帯びています」

形自体は何の変哲もないバナナだが、かすかに青白い光をまとっている。

――あの手紙のように。

「霊力をまとったこれは、生きている人間には認識できません。」

言いつつバナナを僕の方に手渡してくる。死んだ幽霊には認識可能なようで、手渡されたバナナをつかむことができた。

「霊は食事を必要とはしませんが、食べることもできますよ。」

言われた通りに動いてみる。

もしゃもしゃ、もしゃもしゃ。

暫くの間、僕がバナナを食べる音だけが聞こえてる。

もしゃもしゃ、もしゃもしゃ。

うん、ただのバナナの味だ。

食べきった。

「回収します」

サンデイにバナナの皮をを手渡す。

するとサンディはバナナの皮をしまわずに、ぽいっと人混みめがけて投げ捨てた。

一瞬動揺するが、バナナの皮は霊力を帯びているので生きている人間には無害なのだ。

それを示すかのように、誰もバナナの皮で転びはしない。

「では京市さん、どうぞ」

「い、や、だ」

次に何をさせるか悟って反対する。

「どうせあのバナナの皮ですっ転んでくださいって言うんだろ。ふざけんな!」

強い口調で拒絶する。

まけじとサンディは小さな胸を張り、ふくれっ面で答える。

「むー。これは先輩から教えられた伝統ある講義なんですよ。ちゃんと私の指示に従ってください」

「絶対に騙されてるだろ、それ」

言い合っていると

 すてーん!

無害なはずのバナナの皮で転ぶものがいた。

急な異変に、僕達や通行人もすっ転んだ女に釘付けになる。

その彼女は僕と同じ学校の制服を着た女子生徒だった。

「痛たたた…」

おしりをさすりながら立ち上がり、バナナの皮を掴み上げる。

「ちょっと誰よ!こんな道のど真ん中にバナナの皮を捨てたのは!」

生きている人間にはつかむことのできないそれを右手でつかみ、罵声を上げている。

その姿を他の通行人たちは、怪訝な表情を浮かべながら通り過ぎて行く。

それで何かに気づいたのだろう、きっ――と、彼女の目は上空を探し―

そして目があった。あってしまった。

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