終章
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欧梓瑜とその侍女たちが捕縛され十日余りが過ぎた。
美人と才人にそれぞれ一名分の枠のあきができたが、こちらはしばらく空席のままになるらしい。
そもそも、本物の皇帝麗孝は病弱で後宮通いはできそうもないし、代わりをしている静にしても、弟の妃たちのもとに渡るつもりはないそうだ。翠花を除いて、ではあるが。
(なんだって静様は未だにわたしの元に来るわけ?)
事件がすべて解決しても、静は変わらず翠花の宮にやって来る。
おかげで、すっかり翠花は皇帝の寵姫と呼ばれていた。心外だ。
今日も今日とてやってきた静は、寝台の中で翠花を抱き込み、満足そうである。
翠花は、今日こそは物申してやるぞと気合を入れ、静の腕の中で顔を上げた。
「静様、いったいいつまでわたしの宮に通うつもりですか?」
すると静はおかしなことを言われたとばかりに目をしばたたいた。
「いつまでもだが?」
「いつまでも⁉」
「麗孝があの調子なんだ、あれに子作りは荷が重い。だが、跡取りがいるだろう? 幸いにして、麗孝も母上も俺の子を跡取りでいいと言っているし、お前は事情を知っている。ちょうどいいじゃないか」
(なにがちょうどいいの⁉)
翠花はぎょっと目を剥いたが、静は至極真面目な顔で言って来る。
「俺は優しいと思わないか? ちゃんと、お前がその気になるまで待っている。だから、添い寝くらいで目くじらを立てるな」
(いやいやいや、ちょっと待って!)
ということは、である。
翠花は静に、次代の皇帝を生む女として目をつけられているということだ。
国母になんてなろうものなら、翠花が後宮から去る未来は消え失せる。それどころか皇后にすらされかねなかった。一大事でである。翠花は後宮に骨をうずめるつもりはないのだ。
ひぃっと喉の奥で悲鳴を凍らせていると、静が楽しそうに翠花の髪をいじって遊びだす。
「なあ翠花、これは運命だと思わないか? 幼い頃に邂逅した子供が大人になって再会したんだ。しかも、皇帝と妃としてな。正直、麗孝の代わりに後宮通いするのは気が乗らなかったが、お前がいるなら別だ。龍神は俺に味方した」
(わたしの意志は⁉)
いや、後宮に入れられた時点で、翠花は皇帝の妃。皇帝が子を望めば拒否権はない。だが、これはあんまりだろう。後宮に通わない皇帝に、これ幸いと数年で出ていく算段をつけていたら、生涯拘束される可能性が浮上したのだ。しかも、厄介な秘密まで共有してしまった。これでは、翠花が逃げられる可能性は極めて低い。
「だから、早くその気になってくれ。気は長い方だが、さすがに何年も待ちたくない。そうだな、せめて年が暮れるまでには心の整理をつけてほしい」
くるくると、静が翠花の髪を指に巻き付ける。
もう片方の手は悪戯に腰のあたりをくすぐっていた。
翠花は真っ赤になり身じろぎしたが、がっちりと抱え込まれているので逃げられない。
「子さえ産まれたら、すぐに皇后の椅子を用意してやる。楽しみだな、翠花」
全然楽しみじゃない。
だけど、こうして腕の中に抱き込まれていたらどきどきするのも本当で、翠花は自分が自分でわからなくなりそうだ。
静の唇が、そっと耳朶に触れる。
「おやすみ、翠花」
翠花は考えるのをやめて、ふて寝することに決めた。
お読みいただきありがとうございました!
これにて、本作完結です!
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