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仙人皇帝のお気に入り  作者: 狭山ひびき


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序章

新連載はじめます~!

中華後宮、恋愛ミステリーです(*^-^*)

どうぞよろしくお願いいたします!


 紅龍(ほんろん)国。紅州は、白安(ばいあん)。


 紅龍国でもっとも巨大な都である白安の中心部には、南北に九町(※約九百メートル)、東西に八町(※約八百メートル)にも及ぶ宮城がある。

 龍城とも呼ばれるそこは、高い外壁に取り囲まれており、その中には九百を超える建物が立ち並ぶ。紅龍国の政治の中枢だ。


 その龍城の北。

 皇帝が日常の政務を司る棟の後方一体が、さらに大きな外壁によって取り囲まれていた。

 代々の皇帝の妃たちが住まう、後宮である。


 龍城と同じく何百という棟が立ち並ぶ後宮は、もはやそれだけで一つの町のようだ。

 しかし、そこに住まうのは皇帝の妃と妃候補、彼女たちに仕える侍女や女官や下働き、そして宦官のみ。

「男」は皇帝以外立ち入り禁止であり、もしも忍び込めば、侵入者および、そのものと会っていた妃や妃候補、女官たちはもろともに処罰される。多くは、物理的に首が飛んだ。


 それほど厳格に管理されている後宮の中。

 二年前に皇帝が代変わりし、総入れ替えが行われた後宮の中は、現在、とても閑散としている。

 というのも、今年で二十二歳になった若き皇帝、冷麗孝(らんりきょう)には、皇后はおろか、一人の妃もいないからだ。

 そもそも、後宮にすら足を運ばない。

 ゆえに、後宮内の多くの宮は主を持たず、がらんどうだった。


 もっとも、さすがに無人というわけではない。

 いくら皇帝が女に興味を示さないからと言って、後宮を空っぽにはできないからだ。

 皇后に次ぐ位である三妃――恵妃、麗妃、華妃――は不在でも、その下の美人と才人、尚宮たちは存在するのである。もちろん、下働きの女性たちもだ。その数は、優に二百人を超えるだろう。

 それでも、全盛期には二千人という女性や宦官が暮らしていた後宮を比べると十分の一の人数ではあるのだが。

 そんな、後宮の一角。


 現在、欧美人を名乗っている欧梓瑜(おうずうゆう)の宮である。

 幾何模様の窓が薄く開き、そこから見える空には龍の爪痕のような細い月が浮かぶ。深更の時分だ。

 朱に塗られた柱に、ゆらゆらと炎の影が揺れる。


「ふふ、ふふふふ……」


 部屋の中に響くのは、この部屋の主である欧梓瑜の声――ではない。

 欧梓瑜の宮には、彼女の五人の女官も暮らしているが、その誰でもない声が、静かに春先のひんやりとした空気を震わせた。


 笑い声だけが響く静寂の中。

 燭台の蝋燭に照らされた暗い室内には、二つの影がある。


 そのうちの一つは、椅子に腰かけたまま、上半身を折りたたむようにして円卓の上に臥せっていた。目は大きく見開かれ、赤い唇が半開きのまま静止している。

 彼女の中の命の灯がすでに消えているのは明白だった。


 その横に立つ女――桑儷杏(さんりーしー)は、うっとりと目を細めて笑った。


「さようなら、狡猾な泥棒猫」


 そして――


「さようなら、《《桑儷杏》》」


 儷杏は、手に持っていた燭台を、無造作に赤い毛氈(じゅうたん)の上に落とした。




面白い!続きが気になる!続きが読みたい!と思ってくださった皆様、

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