第二十一話 甘いデート
今回はリリアの日記のようにしました。
アルフレッド様と想いを通じ合ってから数日。私の生活は一変しました。
いえ、生活というより、アルフレッド様の「甘やかし」が止まらないのです。
「リリア、今日は公務をすべて休みにした。二人で街へ出かけよう」
「えっ、でも殿下はお忙しいのでは……」
「君と過ごす時間以上に重要な公務などない。……それとも、私と二人きりは嫌かな?」
そんな困ったような顔で覗き込まれたら、断れるはずがありません。
私たちは身分を隠すために簡素な(といっても上質な)街着に着替え、手をつないで王都の活気ある市場へと繰り出しました。
◇
これまでは「聖女」として遠くから拝まれるばかりでしたが、フードを被って歩く街は新鮮です。
「あ、見てくださいアルフレッド様! あの刺繍、とっても綺麗……」
「そうか。では、あの店の品をすべて買い占めて王宮に届けさせよう」
「だ、ダメです! デートというのは、選ぶのが楽しいんですから!」
アルフレッド様は、私が何かを「可愛い」と言うたびに財布を取り出そうとするので、止めるのが大変です。
でも、ふとした瞬間に繋いだ手に力がこもったり、人混みでさりげなく肩を抱き寄せられたりするたびに、顔が熱くなってしまいます。
「……リリア。前の国では、こんな風に笑って街を歩くこともできなかったんだろう?」
ふいに立ち止まったアルフレッド様が、私の髪を優しく耳にかけながら言いました。
「はい。いつも石を投げられないか怯えて、下ばかり向いて歩いていました。……でも今は、前を向けます。あなたが隣にいてくださるから」
「……君のその笑顔を守るためなら、私は何度でも戦えるよ」
そう言って、彼は私の額に人目を忍んでそっと口づけを落としました。
◇
夕暮れ時。私たちは王都を一望できる丘の上のカフェで、甘いベリーのタルトを分け合いました。
「あ、アルフレッド様。口元にクリームが……」
「おや、本当だ。……取ってくれないか?」
自分で拭えばいいのに、彼はお茶目に笑って顔を近づけてきます。
心臓をバクバクさせながら指先で拭ってあげると、彼はその指を捕まえて、いたずらっぽく微笑みました。
「リリア。君との時間は、いくらあっても足りないな。……今夜は、もう少しだけ一緒にいてもいいだろうか?」
夕日に照らされた彼の蒼い瞳があまりに優しくて、私はただ、コクンと頷くことしかできませんでした。
「偽聖女」と蔑まれていた私に、こんなにも幸せな春が訪れるなんて。
甘い香りと、温かな手のひら。
私たちは、初めて訪れた「ただの恋人同士」としての時間を、心ゆくまで噛み締めました。
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