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Link's  作者: 黒砂糖デニーロ
第四章
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従属の領分、あるいは意地

 クロウが一体の魔属を屠り、ギンが次の群れを迎え撃とうとしていたその時、二人の耳に声が響く。レシーバーから聞こえてきたのは、ランス大佐の声だった。

『全軍に通達。現時刻をもってクラウン基地を放棄する。所定の合流ポイントまで撤退せよ。繰り返す――』

「オイ!オレ様たちゃまだ戦えるぞ!」

 クロウは声を荒げて噛み付く。

『部隊全体の損耗が激しい。これ以上の戦闘継続は不可能だ。悔しいが、ここまでだ』

「この後はどうするつもりだ?クラウン基地は最後の砦だろう?」

 国連は魔属が都市に入ると同時に爆撃で都市を消滅させる。それは事前のブリーフィングですでに二人にも告げられていた。

『……我々はガルスにて魔属群を迎え撃つ。せめて、ガルスの完全退避が完了するまで、少しでも時間を稼ぐのだ』

 その声には、忸怩たる思いが滲んでいたのが聞き取れた。

 本人もわかっているのだ。それが希望のない防衛戦であることを。

 ガルスは守りきれない。

 爆撃か魔属か。いずれにしても、ガルスは地上から消滅する。

 その現実を呑み込み、決断をせねばならない彼の思いは察するに余りある。

 二人は顔を見合わせた。

 言葉を交わさなくとも、その意思が一致しているのがわかった。

『お前たちもよくやってくれた。すぐに手近の部隊と合流地点に――』

「オッサン。オレ様たちはここで戦うぜ」

「ここで魔属を一匹でも減らす。その間に撤退を進めてくれ」

『馬鹿を言うな!貴様らだけで何が出来る!勇敢と無謀を履き違えるな!』

「撤退するにしても、その間に魔属群を引きつける役が必要だろう?幸い、それは俺たち従属の専門分野だ」

「うちの勇者はポンコツだからな。ンな事はしょっちゅうやってるぜ」

 怒鳴るランス大佐に、軽い口調で返すクロウとギン。

『ふざけるな!そんな事――』

「それに、オレ様たちゃここで待ち合わせの約束があるんでね。悪いが、勝手にさせてもらうぜ」

 それでも呼びかけてくるランス大佐の声を最後まで聞かず、二人は無線を切った。

 二人の意識は、すでに前方に向けられていた。

 彼らが見据える視線の先にあるは、荒野を埋め尽くす魔属群。

 人間の一人や二人、容易く呑み込んで磨り潰す。圧倒的数の暴力が土煙を上げ、すでに目の前まで迫っていた。

「流石に今回ばかりは死ぬかもしれない……とか、微塵も考えたりはしてないんだろうな。お前は」

「はっ!ッたりめーだろ。腕っぷしだけの従属らしく、最後まで暴れ倒すだけだろ。テメェは違ェってのかよ?」

「甚だ忌々しいことだが……全くの同意見だ」

 絶望的な状況を前に、軽口で笑い合う二人。

 すでにボロボロの身に鞭打ち、足を踏ん張り、大群を真正面にして気丈に得物を構える。

「死ぬ瞬間まで、俺たちは勇者アオイの従属だ」

「おうよ。アイツの従属らしく、派手に暴れてやろうぜ」

 覚悟を決め、力強く足を踏み出した――その時だった。

「バカのくせにカッコつけるな!キモいぞ、バーカ!」

 そんな憎まれ口が、レシーバーからではなく背後から彼らの耳に直接届く。

 その主が誰なのか、二人は振り返らずともすぐにわかった。

「へっ!遅れてきたくせに、他に言うことはねぇのかよ!このチビ助!」

 頭上を飛び越えていく小さな影に向かって、クロウは嬉しそうに憎まれ口を叩く。一方、ギンは目を閉じ、ただ一笑した。

 二人に見送られ、その影――アオイは魔属群に向かって一直線に飛び込んでいった。

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