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マタギvs呪いの石その1

どれだけ眠っていたのだろう。

起きたばかりで、小屋の外に出たと思ったら、言葉を話す半分鳥で半分獣のグリフォンと名乗る生き物に頼まれて、泉に手を入れ、「綺麗になっでくんろ」、と願ったところまでしかはっきり覚えていない。

その後はどうなったのだろうか。

目を開くと、すぐ前にシラカミの顔があった。

起きたことに気付いてのぞき込んだ、というところだろうか。

布団の上に寝ているところを見ると、はっきり思い出せない後も一応小屋に戻るくらいの記憶はあったらしい。

飲み過ぎても、終電を逃さず自宅に帰って寝るサラリーマンの帰巣本能みたいなものだろうか。

まあ、ちょっとだけ自分を褒めておこう。

布団から上半身を起こして、背伸びをしてみる、腕を左右に振り回してみる。

うん、動くようだ。

なんか体が動かなくなった記憶が断片的に残って居るけど、あれはなんだったのだろう。

それより、時間の感覚がない。時計みたいなものはないし、窓から差し込む光はダイブ弱くなっているような気もする。

とりあえず、もう一度小屋の外に得ることにした。

この子や,窓はついているのだが、外から中の様子がうかがえないように、中からも外のお薄が分からない。ただ、光が入ってくるというだけで、どのような仕組みになっているのかは不明である。

朝のこともあるので、おそるおそる顔だけ出せないかなと思うのだが、無理だった。玄関から首だけだそうとすると、光に包まれ、全身ごと小屋の外に出るようになってしまっている。

まあ、外に何か危険があれあ、シラカミが警告してくれるのだが。

外に出たボクは、驚きの声を上げていた。何となく既視感があるが、今回は動物に囲まれていることよりも、小屋の上にも動物が登っていたことよりも、小屋の前に、草や木の実が山積みになっていたことだった。

「これは・・・一体」

訳が分からずボーっとたたずんでいたら、グリフォンが近寄ってきた。

「気分はどうだ、人間よ。あれほどの魔素を全て浄化出来る人間がこの世におるとか、長生きはしてみるものだ。目の前にあるのは、この森の動物たちが、自分たちの命の源である泉を綺麗にしてくれたお主にお礼がしたいと森の中からかき集めてくれたものじゃ。迷惑でなければもらってくれ。」

グリフォンがそう話すと、周りにいた動物たちもきらきらした目で見つめてくる。

「迷惑だなんてとんでもない、ありがたく頂くよ。」

感謝の印を示そうと、ボクはみんなの前で、山積みになった野草や木の実をあいてむぼっくすに収納していく。

すると、近く似いたリス、野ねずみ、鳥、ウサギ、から狐、狸、鹿に至るまで、一匹ずつ近づいて来て、鼻先をちょこんとつけて、また戻っていった。

お礼だろうか。

胸の奥が熱くなり、穏やかな気持ちに包まれていた。

最後に居た鹿が立ち去ると、グリフォンが再び近寄ってくる。

「本当に世話になった。これでしばらくは、この泉も安心して水の飲める場所に戻った。そこで、命を賭して、泉を綺麗にしてくれたお主にこのような頼みをするのは心苦しいのじゃが・・・」


ん?しばらくは?

「ちょっと待て、しばらくはというのは、泉の水は元通りになってないのか?あれでは駄目なのか。」

グリフォンの話にひっかかりを覚えたボクは、グリフォンの話を遮って尋ねる。

するとグリフォンは悲しそうに項垂れながら言葉を続ける。

泉の水はこの森の北にある山に降る雨が地下に潜り、長い歳月を掛けて地下水脈となって、泉の底からわき出してくるのだが、山の途中、水が地下に流れ込むその水源の3箇所に、何者かが悪意をもって呪いの魔石を配置したのだ。その魔石に触れた水が高濃度の邪悪な魔素を水に溶かしだして、汚染された水がそのまま泉に流れ込むように仕向けたのだ。」

苦痛に喘ぐ声でグリフォンは絞り出すように言葉を継いだ。

「それで、お主に頼みがあるのじゃが、時々でよいので、この泉を訪れて、浄化をしてもらえないだろうか。魔素の濃度が高くならないうちなら、今日のように危険なことにもならずに浄化出来るだろう。我にはお主のような浄化の魔法が使えないのでな。」

そんなことは考えるまでもない。

「それより、その呪いの石とやらを除去できないか試してみよう。これだけの生き物の命が掛かっているのだから、やる前から無理と決めつける理由もないだろう。」

「いや、それは危険すぎる、たとえ、お主の魔力が尋常でないにしても、今日の泉に蓄積された魔素など問題にならないほどの濃度なのだぞ。破壊も試みたが、我の渾身の嘴の一撃をもってしても、罅すら入れることもかなわなかった。そこにおるフェンリルが万全の状態であれば、もしゃと思わないでもないが、人間には無理だろう。それにお主には十便危険を追ってまで、我らのために泉の水を綺麗にしてもらった恩義がある。これ以上危険に晒す訳には。」

「ならば約束しよう。危険なことはしない。ボクもまだ命は惜しいしね。とりあえず、底に案内してくれないかな。危険のない範囲で、石を破壊出来ないか試してみるよ、駄目でも、また、ここに来て泉を同じ方法で綺麗にすることは約束する。それでどうかな。」

「我らはもう十分お主に恩を受けておるのだ。お主に何の得もない我らの都合で、これ以上危険を冒してもらうのは心苦しい。」

「だから危険は冒さないことは約束しよう、けどそれは試さずに止めることを意味はしないだろ?それにこれだけの動物がお互いの立場を超えて、必至に頼むなら、それだけでも挑戦する理由にはなるさ。」

「ふっ、イケメン主人公のような台詞だな。くれぐれも無理は市内で欲しい。では、明日の朝、一番目の場所から案内する。」

「分かった。ただ、あまり過度の期待はしないでくれ。」

「承知した。もうすでにお主には十分過ぎる感謝をしている。我にも出来なかったことを、お主が出来ないからといって、失望する理由にはならない。」

「それではまた、明日。」

ボクはなんとなくまだ、その場を離れる気にならず、小屋の前でたき火台を使って、火を起こし、晩ご飯に残っているイノシシを焼いて、シラカミと一緒に食べた。

ボクの周りにはリスやウサギ、小鳥などが集まってきて、肩や頭の上に乗ってくる。

警戒心を解くことで親愛の情を示してくれているらしい。隣のシラカミの頭と背中の上にも鳥が載っている。シラカミは驚かさないように寝そべり、上目使いで頭の上の鳥を見上げている。

物語のような不思議な時間を過ごし、たき火の火が消えるまで,星空の舌で過ごした。


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