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マタギvs恐怖のくまさん1

「それでは、シローさん、何でもお肉を分けて頂けるとか、どのくらいお譲り頂けるのでしょうか。」村を襲う熊の話が一段落すると、期待に目を輝かせながら、村長は尋ねてきた。

「こちらは野菜を頂きたいのですが。」僕は物々交換であることを強調する。

村の窮状は理解出来るけど、僕も追われている身で、お金があっても町で食料を買うことが難しい状況にある。肉は、積雪の季節は終わったし、暖かくなるにつれて、狩りもできるようになるだろう。シラカミに頼めば簡単に獲ってきそうだけど、そういうのはよくない。

村長が落ち込んだ表情で、「畑作業も熊のせいで、ままなりませんでな。」満足のいく者は用意出来ないと言外に匂わされる。」

大人の政治的な駆け引きというのはどうも好きになれない。

「とりあえず、あまりおいしい肉でないのは恐縮ですが、レッサーウルフの肉を提供します。」僕はあいてむぼっくすのこやしになっていた始めの頃にブルーフォレストの東の草原でアルミラージの狩りのじゃまをしていたレッサーウルフの肉を取り出す。

皮はそこそこの値段で売れるのだが、肉はおいしくないので二束三文だった。シラカミやツガルのご飯にと始めの頃は考えていたが、ボアやアルミラージのほうがおいしい上に、そっちの狩りにシラカミもツガルも貢献しているので、ウルフは食べないまま、ずっとほったらかしになっていた。

今でも食べるつもりはあまりないので、10匹分の肉をとりあえず出して渡す。

「これは、そのまま村にお渡しします。同じだけとは言いませんが、お譲り頂ける野菜をご提供下さい。」僕がそういうと、村長は村中の住人に声を掛けて、余っている野菜を篤恵mさせた。

肉は欲しいけど、代わりに渡せる野菜も、今の季節では、そういう悩みが顔色に出ていた。

集まった野菜はジャガイモとにんじん、タマネギとキャベツ、がちょっとずつというところか。

まあ、無理は言えない。ありがたく交換させてもらう。

村長は僕が怒り出すのではないかとおびえていたが、最初からウルフの肉は渡すつもりでいた。どうせ食べないし。

村長は涙を流しながら何度もお礼を言ってきた。村の人たちもだ。

「申し遅れましたが、ワシはこのトノー村の長をしております、ソンチョ・ムラーノと言います。本当にありがとうございます。」

野菜を受け取って、肉を渡すと、熊が出る場所を尋ねる。雀組の狩猟者に何とかなるような相手ではないと留められるが、熊を狙うのではなく、熊に気をつけながら他の獲物を狙いますので、と適当に誤魔化しておく。

僕は村を出ると、先ほど超えてきた山に向かう。

あの山、熊が居たのか。

近くに熊が居たら、シラカミはもちろん、僕だって気付いていたはずだから、近くにはいなかったはずだ。

とりあえず、自分を犯人扱いせずに取引に応じてくれる人がいたことが嬉しかった。

熊に悩まされている村人が居るなら、なんとかするのがマタギだ。

僕はそういって、山の中に入っていった。


元の姿に戻ったシラカミと話をする。

「近くに熊は居る?」

「いないな。」

「じゃあ、とりあえず、僕らの食料を何か探そうか。」

肉は冬の間狩りらしい狩りは出来ていないので、肉のストックが減る一方だった。

津族の山狩りのときに衛兵に鍋を食べさせたことをちょっと後悔する。

半月分の肉があのときだけで消えた気がする。

「とりあえず、熊が出るらしいので、バラバラに行動するのは避けよう。ツガル、とりあえず、僕とシラカミはここに居るので、上空から、猪とか鹿とかいないか見てきてくれないか。」僕はツガルに偵察をお願いする。フクロウでも大型の方のツガルは空の食物連鎖でも上位であり、ちょっとやそっとでは危険に遭わない。

ツガルは「ほー」とと鳴くと、そのまま空へ飛んでいく。

僕たちは、ツガルに伝えたので、その場を移動することなく、一休みする・・・と思ったら、ツガルが、すごい勢いで戻ってきた。

同時にシラカミも体制を低くして唸り出す。

何かが来たということか。

シラカミは「主、右前から来るぞ。」

僕は言われた方向に向けて銃を構える。まもなく、その方向から音が近づいてくる。

今いる場所はそれほど広くなく、木々が生い茂っていて、シラカミが回避しながら牽制し、後方から僕が射撃をする普段の連携には適していない。

僕はシラカミに「警戒を続けたまま、初撃は僕がやる。」そういうとシラカミは、射線を空けるように、距離をとって回り込もうとする。

音はだんだん近づいてきた。まもなくその姿も見えるのだろう。

けど、だてにマタギ歴を重ねていない。その移動速度と、動き方で分かる。

サイズだけは、前世の知識が通用しないみたいだが、おそらくは、ばかでかい猪だろう。

お肉が底をつき駆けていたので、ちょうどよい。

僕は銃を構え、藪の中から獲物が飛び出してくるのを待った。

「シュッ」本当なら銃声のはずなんだが、サイレンサーがついているかのように無音で、魔法弾が飛び出すのと、藪の中から、それが顔を出したのは同時だった。

およそ顔と思われる辺りを狙った一撃は、まさかそのタイミングで攻撃されると思わなかったジャイアントボアの右目の上を打ち抜いた。

「ぶひいいい」という悲鳴を上げる猪に、さらにシラカミが助走を付けた肉球パンチを顔面にヒットさせる。

その重い図体が災いし、人なら、10mくらい吹き飛ぶのに、猪は首を支点に急激に頭だけねじられ、首の骨が折れてしまい、即死してしまった。

「うわー、このころ仕方だと血抜きが出来なくなるんだよね。」

僕はあわてて、アイテムボックスから強靱なロープを取り出すと、ジャイアントボアの後ろ足を縛り上げ、大きな木の太い枝を見つけると、その枝に引っかけて吊す。僕にはとてもつり上げることは出来ないので、シラカミにロープの反対側をくくりつけて引っ張ってもらうとなんなくつり上げられる。推定2トンくらいありそうな巨大な猪、もはや象?なのに、シラカミの身体能力の高さは正直驚きでしかない。

ジャイアントボアの頸動脈を切り、血抜きを始める。サイズは冗談みたいな大きさだけど、日本にいる猪と血管が通っている位置は同じらしい。

猪の血抜きをしながら、同時並行で解体を始める。

腹の中の内臓を取り出して、腹の中を洗浄する。普段は内臓は捨てる箇所だけど、今は違う。そう今は味噌があるのだ。

僕は、苦みの固まりである胆嚢だけを廃棄し、残りの、胃と腸、心臓、肝臓を取り出すと洗浄魔法「きれいにすんべ」と唱える。寄生虫がこの世界にもいるのか分からないけど、一応病原菌と寄生虫はこれで排除できる。

横隔膜と肝臓や心臓は豚串の具にするため、そのままアイテムボックスに入れてしまい、まずは、解体したばかりの新鮮な胃と腸の調理を始める。塩を浴す離婚で丁寧に洗い、水が濁らなくなるまで、同じ作業を繰り返す。

その後、本当は日本酒を入れた水で下ゆでするのだが、日本酒などないので、水に少量の塩を入れてゆでる。これで内臓の中に残ってる血、つまりアクを取り除いてしまう。

そして、狩猟者の心得として、本当なら、解体後の残置物は穴を掘って埋めるか、焼くかして処分しなければならないところ、そのままの状態でおいておく。

つまり、この場合なぜ、処分しなければならないかの理由を逆手にとって、獲物をおびき寄せるのである。

僕たちは、猪の血抜きを終えるまでに、ウルフ5匹とロックバード一羽を手に入れていた。

特に血のにおいにロックバードがおびき寄せられるというのは嬉しい誤算だった。

鳥の肉は久しぶりだった。

僕は、血抜きの終わった猪を部位ごとに切り分けてアイテムボックスに収納していく。その間に、下ゆでしたホルモンを一口大に切って、同じくらいの大きさに切ったにんじんやちゃまネギ、ジャガイモと一緒に煮ていく。小屋を出して中で調理するのではなく、アウトドアでクッキングすることで、においを遠くまで運び、さらに魔物をおびき寄せようという魂胆だった。

ホルモンの煮込みは、食べるとおいしいけど、調理中の臭い匂いは強烈である。豚骨ラーメン屋のあの臭いが森中に広がっていく。

町中だととんだ近所迷惑だが、森の中ならクレームを言う近隣の人間などいない。

血抜きの臭いに誘われた第一陣を僕とシラカミとツガルで瞬殺したあと、第二陣がホルモン煮込みと、廃棄する臓物の血のにおいに誘われるまで、間が空いた。

僕らはホルモンをじっくり煮込みながらつかの間の静寂を楽しんだ。

以前はこんなだったのに、どこで何がどうなったのか。

駄目だ、ちょっと考え事をしようとするとネガティブな思考になる。

自分を変えて、竈をもう一つ足跡で石を並べて作り、米を炊く。

猪のホルモン味噌煮込みなんて白米なしに食べるもんじゃないでしょ。

味噌煮込みも完成し、ご飯が炊きあがったところで、僕は、撒き餌に使っていた臓物を一旦あいてむぼっくすに入れた。この戦法使えそうなので、明日ももう一度やってみようかと。今獲ったロックバードやウルフでも出来そうだけど、ボアの肉でしばらく食いつなげることができるし、ウルフは村の人にまたあげようと思うので。

いや、ロックバードとかジャイアントボアとか、全員に行き渡るくらいあるなら、村人に提供するけど、自分たちが食べる分も考えるとちょっと心許ないというか。

決してマズいものだけ渡すとか言うんじゃないよ。

ホルモン煮込みが完成したところで、食事にする。ツガルは肉しか食べないが、味噌で味付けした猪のホルモンはお気に入りの味のようだ。ものすごい勢いで食べてお代わりを要求してきた。シラカミは、肉が好きだが、野菜もご飯も食べるので、野菜と一緒に煮込んだホルモンとご飯の取り合わせを喜んでくれた。

味噌最強だな。

シラカミもツガルもこれからは張り切って猪を狙うと決意を新たにした瞬間だった。

何者かに追われて息も付けない日々に少しだけっころのゆとりを持つことが出来たのが何より嬉しかった。

僕は食事の後、その場の後かたづけをして、浄化魔法を掛け、そこにマタギ小屋を取り出して、その日はそこで野営することにした。




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