第26話 誕生会開催前 貴族side
リリカの誕生日パーティー。
その空間には王国内の様々な貴族の当主とその子息や子女が多数参加していた。
「これは、これは、チャイルド公爵ではありませんか。ご無沙汰しております。」
「おお、メディカ伯爵。久しぶりですね。お身体は大丈夫ですかな?」
「ええ、厳しい冬が終わり穏やかな気候になりましたので暫くは大丈夫だと考えられますよ。」
「それは、良かった。そなたの領地は最北端になるので冬の間は気候が厳しいから身体はご自愛せねばならんからの。」
「ええ、心配してくださりありがとうございます。そういえば、本日はペイン様は一緒では無いのですかな?」
「ああ、ペインなら今日は仕事の都合でパーティーには参加できないのですよ。」
「仕事ですか?流石、公爵家嫡男にもなると大変ですね。しかし、リリカ様の誕生日パーティーの参加を見送ってまでの仕事とは?」
「仕事に関しては私の口からは詳しくは言えないのですよ。言える事と言えば、リリカ様のお許しは得ているとだけ。」
「成程、成程。リリカ様からのお許しなら問題ありませんな。しかし、それではペイン様に紹介したい方がおりましたが出来なくなりましたな。」
「ははは、また次の機会にお願いするとしましょうか。それより、本日はリリカ様専属の護衛騎士団も紹介されるとか?」
「チャイルド公爵の方が私より詳しいのでは?」
「いや、いや。私も一名しか知らないのだよ。それ以上はその者からの口からは聞けなかった。」
「チャイルド公爵にも話さないとは・・・、その者は忠義に厚いのですね。」
様々な場所で、様々な貴族が話をしている。
誕生日パーティーとはなっているが、実際は貴族の社交場になっているのが現状だ。
自分の子息や子女の顔合わせも兼ねあわよくば政略結婚を狙う者が多数の魔窟である。
爵位が低い者は玉の輿を狙えるし、爵位が近しい者はお互いの情報交換と見栄を張る場で重宝している。
そんな魔窟の中でも一際女性ばかりを物色している男が二人。
「あそこの女も良い女ではないか。」
「壁際の女性も良いスタイルをしておりますよ父上。」
女性に対して品定めをするかのように下種な視線を向けるパウル侯爵とその次男であるエラブル。
周りの貴族は何時もの光景に蔑んだ眼を向け、女性陣は嫌らしい眼で見られることに辟易していた。
しかし、パウル家の二人はそんな周りの視線や態度など気にせず満足いくまで視姦を続ける。
その二人を一歩後ろに下がった場所で見ているのがパウル侯爵家嫡男のグーテ・フォン・パウル。
「父上、エラブル。本日のパーティーでは少しは抑えてください。」
「何を言っておる?見眼麗しい女性が沢山いるのだぞ。目の保養をして何が悪い。」
「そうですよ兄上。そんなのつまらないでは無いですか。全く!!我が兄ながら恥ずかしいですね。」
「そうだぞ、お前もパウル家の次期当主として相応しい装いと共に自覚も持て!!エラブルを少しは見習え!!我々は、何もいやらしい視線等は送っておらぬわ!!」
二人は嫡男であるグーテの言葉等聞く耳を持たず再び視姦を始める。
グーテは二人の言葉に大人しく引き下がり小さく溜息を吐き、小言を呟く。
「はぁ~~、父上もエラブルも嘆かわしい。本日がどの様な日かまるで解っていない。唯でさえ我がパウル侯爵家の印象は最悪なのに、その最悪の印象に拍車をかけるとは。我が父と弟には失望させられる。噂では、国王の諜報部隊が動いていると言っていた。父上は自分の裏工作が完璧と思っているが国王を軽視し過ぎている。恐らく、次に何か問題を起こせば我が家の破滅への道は完全に開かれるだろう。その前に、如何にかリリカ様との謁見が出来ないものか。事は慎重に行動せねば。父上とエラブルに感づかれては不味い。」
そして、着々と時間が経過していきパーティーの開始時間となる。
音楽が鳴り響く会場が静かになる。
その静寂が合図となり一人の執事が声を響かせる。
「リカルド国王のご入場です。」
開かれた会場の入り口。
そこから現れたのは金色の体毛を持つ王族特有の覇気を纏った獅子の獣人。
この国の国王でありリリカの実父であるリカルドが入場する。
リカルドが入場すると会場の者全てが頭を垂れる。
その中を悠然と歩き、主宰の席に座る。
「皆、面を上げよ。」
全ての者が頭を上げるとリカルドは笑みを浮かべる。
「今日は我が娘であるリリカの13歳の誕生日パーティーに良くぞ集まってくれた。多忙の者もおっただろうが感謝するぞ。早速だが、主役に登場してもらうとしよう。俺は長々と喋るのは好まんからな。」
リカルドが簡潔に挨拶を済ませると右手を会場入り口に向ける。
再び開けられた入り口からは淡い水色を基調として白のリボンが所々に散りばめられた豪華なドレス姿のリリカが現れる。
リリカが一歩会場に踏み入れると静かにだが音楽が流れる。
その音楽に合わせて一歩一歩ゆっくりと主宰の席に歩くリリカ。
その後ろには、見慣れぬ軍服を着た同い年ぐらいの男女が付き従う。
その従者の二人に貴族当主や子息や子女はひそひそと周りと話し合う。
その中で驚愕の表情を浮かべているのが一人。
勿論、エラブルだ。
「何故、平民如きがリリカ様の後ろに付き従っているのだ!?」
エラブルの心情は解らないが焦っているのは目に見えて分かる。
リリカが主宰の席に到着すると従者の二人は席の後ろに控える。
従者が後ろに控えるとリリカが今日の参加者に笑顔を向けて感謝の気持ちを伝えるのであった。
「本日はお忙しい中私の13歳の誕生日パーティーに来ていただき感謝を申し上げます。堅苦しい事は抜きにして今日この良き日を楽しみながらお過ごしくさい。無事私が13歳の誕生日を迎えられたのは偏に今日集まり頂いた皆様のおかげなのです。」
リリカの簡潔ながらも感謝の籠った言葉に拍手が送られ誕生日パーティーと言う名の宴が始まるのだった。
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