表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮へ行こう ~探索のお供はケモミミ幼女~  作者: 青雲あゆむ
第2章 下級冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/115

18.虫狩りの始まり

 鉄の筒を用いた散弾砲ショットガンとでもいうべき魔法を、俺たちは編み出した。

 最初は持ち手が痛くなるようなシロモノだったが、ストックを追加することで、だいぶ使いやすくなった。

 さらにもうひとつ改良することで、魔法の操作性も改善した。


「これが注文した品ですか?」

「ああ、ミスリルを仕込んでから、穴を埋めるのに苦労したぜ」

「きれいに、できてるでしゅ」

「ああ、そうだろう?」


 俺たちは再度、大筒の製作を依頼した鍛冶屋に来ていた。

 ここの主人にストックの追加と同時に、ある仕掛けをお願いしておいたのだ。


「こんな筒にミスリルを埋め込むだなんて、けったいなことを頼まれたもんだぜ。もちろん、仕事はちゃんとやってるがな」


 彼の言うように、俺は銃身の後端下部に、ミスリルを埋め込んでもらった。

 これにより装填された弾がミスリルに触れるようになり、外から弾を発射しやすくするのが狙いだ。

 ミスリルの露出部分の形状はどうでもよかったが、指を掛けやすいように引き金状にしてもらった。


 そうして出来上がってきたのは、M79グレネードランチャーによく似たシロモノだ。

 それもそのはずで、俺が絵を描いて鍛冶屋に渡したのだ。

 30センチほどの銃身に、同じくらいの木製ストックが付いていて、これを肩に当てながら発射する形になる。


 ここまで形にするのに1週間の時間を要し、費用も金貨1枚分を消費した。

 今までに貯えてきたお金の半分以上がすっ飛んだが、それだけの価値はあるはずだ。

 これにはニケはもちろん、アルトゥリアスも快く協力してくれた。


 ただしM79に似ているとはいっても、さすがに中折れ式にはなってない。

 ストックと銃身の間は固定で、従来どおりに筒先から弾を装填する。

 どの道、1発ずつしか撃てないし、この方が耐久性も高くていいが、問題は下に向けて撃てないことだ。

 下に向けたら、弾が落ちちゃうからな。

 この辺はいずれ、なんらかの対策はしたいと思う。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 新式の魔導砲を受け取った俺たちは、試し打ちのために迷宮1層へ潜った。

 そこでニケにゴブリンを探してもらい、出てきた敵に散弾をぶっ放したのだ。


――ズバンッ!


「ッ! グギャ~、グギャ~!」

「これはちょっと……」

「えげつない、でしゅ」


 尖った小石を集めた散弾パックは、見事な攻撃力を示した。

 小石に肌をえぐられたゴブリンたちが、痛みにもだえ、のたうち回る。

 その様子に、ニケやアルトゥリアスが顔をしかめるほどだ。


 しかしこれは元々、戦力を強化するための道具である。

 俺たちはその威力に満足すると、4層へ足を伸ばした。

 そして最初の部屋へたどり着くと、またもやウジャウジャとソルジャーアントが湧き出してきた。


「それじゃあ、最初いきます」

「ええ、気をつけて」


 俺は前に出るとまず弾丸を装填し、アリの群れに銃口を向けた。

 そしてミスリルの引き金を通じて、弾丸に爆発の信号を送ると、”ズバンッ”という音を立て、散弾が発射される。

 銃口から飛び出た小石が、複数のアントに命中し、少なくない損傷を与えた。


 俺はすかさず空薬莢を排出し、腰のポーチから新しい弾丸を取り出す。

 予備弾の保有数は、ポーチの容量から6個となっている。

 ただし俺とアルトゥリアスがいれば、再生産は可能なので不安は無い。


 俺は再び弾丸を装填してから、散弾を再び放った。

 これによって至近にいたアントたちが傷つき、その動きが格段に鈍くなる。

 そこをニケとアルトゥリアスが、とどめを刺して回る。

 ニケは当然ながら、アルトゥリアスの剣術も流麗で、動きの鈍ったアントごときに苦労はしない。


 俺はその間にまた弾丸を装填し、別方面から迫ってきたアントに、散弾をぶっぱなした。

 そんなことを繰り返しているうちに、部屋の中のソルジャーアントがすっかり駆逐された。


「ふうっ、なんとか倒しきれましたね」

「ええ、たった3人にしては、出来すぎなぐらいですよ」

「クエ~」

「ゼロスも、がんばったでしゅ」


 アルトゥリアスに抗議の声を上げたゼロスをニケがねぎらうと、パーティーの間に笑いが漏れる。

 実際、ゼロスは役割を心得ていて、俺たちを奇襲しようとするアントを、よく牽制してくれていた。

 ちゃんと抗議もする辺り、人間の子供並みの知能はあるのだろう。

 そんな彼の功績もあって、俺たちのアント狩りは大成功となったのだ。


「それにしても、その散弾というのは便利ですね。今回のような敵に対処するには、最適な武器でしょう」

「ええ、わざわざ作った甲斐がありましたね。土魔法よりも速く撃てるし、威力も高いですから。問題は、いちいち弾丸をつくらなきゃいけないことですけど」

「フフ、それぐらい我々にとって、手間のうちに入りませんからね。他のパーティーが、歯ぎしりして悔しがるレベルですよ」

「ですよね」


 実際問題、今回のような虫系魔物には、最適な武器だと思う。

 この世界の魔法について、まだ詳しくは知らないが、改善の余地はいろいろとあるような気がした。

 そんな話をしていると、ニケが目をキラキラさせながら、せがんできた。


「なまえ、つけるでしゅ」

「え、これに名前、つけるのか?」

「そうでしゅ。いっしょにたたかう、なかまでしゅ」

「う~ん……まあ、そう言えばそうかなぁ」


 まあ、愛称を付ければ呼びやすいのは事実だが、何がいいだろうか。

 神話関係でいえば、ゼウス、トール、インドラ……

 う~ん、インドラでいいか。

 古代インドの神様の名前だ。

 凄い魔法をぶっぱなしたらしいからな。


「それじゃあ、インドラにするよ」

「インドラ、かっこいいでしゅ」


 ニケは魔導砲インドラの銃身を撫でながら、尻尾をフリフリと振るわせる。

 けっこう気に入ったらしい。


「さて、魔石を回収して、次に行きましょう」

「そうですね。あ、弾作りもお願いしていいですか?」

「ええ、いいですよ」


 ソルジャーアントの魔石を回収すると、20個以上もあった。

 アント自体はそれほど強くないにしても、これだけいると相当に厄介だ。

 改めて、少人数で探索することの困難さを感じる。

 とはいえ、この魔導砲インドラがあれば、なんとかなりそうだ。

 この仲間と一緒なら、なんとかやっていけるだろう。


 魔石を回収してから、弾丸を補充すると、俺たちは4層の奥へ進んだ。

 広い部屋に入るたびに、10~20匹のソルジャーアントが出現する。

 そのたびに俺たちは武器を取り、連携して乗り越えた。

 もちろん魔導砲インドラが大活躍したことは、言うまでもない。


 そうして夕刻まで狩り続けてから、地上へ帰還する。

 その足で魔石を換金したのだが、その数なんと百個にもなった。

 ソルジャーアントの魔石は2個で銀貨1枚なので、なんと銀貨50枚の大収入だ。


 換金所の職員も驚いていたな。

 普通のパーティーは、ソルジャーアントとの戦闘を極力回避するので、こんなに持ち込まれることは、めったにないからだ。

 戦闘になっても、倒しながら逃げてしまうので、あまり魔石も回収されないらしい。

 ずいぶんともったいないことをするものだが、命あっての物種、ということか。


 その晩は順調な探索を祝って、また酒場で乾杯をする。


「それじゃあ、今日の探索終了を祝って、乾杯」

「かんぱい」

「乾杯」

「クエ~」


 乾杯が終わると、ニケがすかさず肉にかぶりつく。

 彼女は相変わらず、こんな体のどこに入るのかというくらい食べる。

 もう、質量保存の法則なんか、完全に無視だ。

 そのくせ、最近は肉体の目立った成長も無く、小さいままである。

 しかしその顔は充実感に輝き、楽しそうだった。


「アハハ、おいしいか? ニケ」

「あい、おいしいでしゅ。ニケは、しあわせでしゅ」


 つい最近まで、餓死しかけていたというのに、変われば変わるものだ。

 願わくば、その笑顔をいつまでも守ってやりたいと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ