第8話 練習試合松潮戦第4Q
やっと続き書けました。
練習試合クライマックスです。
「今村君、準備はいい?」
「待ちくたびれたすよ」
足の痛みは引いたとは言え、万全なプレイは出来ない。
それでも栄人の目を見た時、まだ諦めてない顔をしていた。
だからこそ、賭けてみたい・・・栄人が何かやってくれると。
「さて、皆悪いがぶっちゃけ、まだ足は痛い・・延長戦を戦う余力などない」
「お前、大丈夫か?」
「心配すんなカズ」
痛みが残っているのに、どこから来るのだろうかその自信は?と言いたい一志を含めたメンバー全員。
とにもかくにも、栄人にあまり無茶はさせられないと悟りだす。
「とりあえずあのゴリラに挨拶しとくかな・・」
「おいっ」
皆の心配をよそに、真っ先に栄人が仕掛けるが向かった相手が権田だった。
「また来たか、何度来ても同じだ」
「借りは返す主義だからな、あんたの頭上からシュートを叩き込んでやるよ」
「な、生意気な・・」
泰と1ON1をした時の様に、シュート体制に入る栄人だが泰とパワーも体格も違う相手。
それでも絶対に負けない自信があるのか、権田と体がぶつかり合う寸前に栄人の手から高々と直線を描いたボールが垂直落下しゴールネットを揺らした。
「な、なにぃ」
自分より小さい相手に翻弄された権田、頭の中が真っ白になる。
「権田さん切り替えましょう」
「卜部わかってるわ」
反撃と言わんばかりに卜部の速攻が決まり、試合は沙弥の予想通りにラン&ガンの勝負になりつつある。
「4点差が遠い・・」
「ヤス、あのゴリラ動揺しているからやるなら好機だぜ」
「栄人?」
栄人が素早いパス回しで、一志から淳大、再び栄人にボールが戻ると、スピードに乗り権田に仕掛けるが卜部がヘルプに入る。
「調子に乗りすぎだね」
「あんたが来るのを待っていたぜ」
「えっ?」
ノールックでパスを出すと、渡った先は泰にボールが渡る。
ノーマーク状態で栄人から受け取ったボール、権田が慌てて止めに入るが泰の柔軟性を活かしたフックシュートが決まりだす。
「ナイッシュ、ヤス」
動揺が隠せないまま、権田にボールが渡りシュートに行くも泰と淳大のダブルチームでシュートコースを完全にシャットダウン。
「おっしゃー走れー」
ボールは淳大の手に渡り、カウンターを仕掛け栄人にボールが渡り出すが、当然卜部が真っ先に迎え撃つ。
「相変わらず戻り早えーな」
「監督には、マーク付くなと言われたが、何か目が放せないね」
そのまま1ON1に持ち込むかと思いきや、栄人が立っている位置はスリーポイントライン。
まさか、シュートはないだろうと予測した卜部だったが予想を覆された。
栄人がまさかの、スリーポイントシュートを放ち、見事に決まったのだ。
「あぶねー入って良かった・・」
両軍共に、驚きの表情を隠せないでいる。
栄人がスリーポイントを放つなんて、誰も想定に入っていない。
とは言うもののこの試合、初めて聖峰がリードを奪った。
試合はラスト3分を切り始め、かなり早いペースで栄人を中心に、一志、淳大、泰で点を取り、松潮は卜部の連続ゴールで点の取り合いとなり、気がつけば88対87と再び松潮のリードとなる。
「皆、気を抜くなよ・・」
「ヒデ、足は?」
「心配すんなカズ、最後まで持つ」
「リバウンドは俺と中河が取るから、お前は得点に絡むプレイをしろ」
「淳大、頼りにしてるぜ」
「相手のマークがしつこいから、そうそうスリーは打てないから任せたぞヒデ」
「大樹、いつでも行ける準備はしてくれよ」
試合時間も残り3分を切った所で、再び卜部が聖峰ゴールに牙を剥き出した。
「ここまで、追い詰められたのは久しぶりだよ・・・全力で君達を倒すよ」
まだ100%の力を出しきってないと言うのか?
5人に冷や汗が流れ出すと同時に、卜部が中に切り込み出した。
「やべ、抜かれた・・ヒデ行ったぞ」
一志を抜き、真っ先に栄人に向かって来る卜部、シュートモーションに入るが、栄人が卜部に対して何か違和感が感じ出す。
「まさか、ヤロー」
シュートモーションに入り、ボールが卜部の手から放たれる前に栄人が卜部の腕をわざと叩いた。
当然ファウルを取られ、卜部にフリースローが与えられる。
「あぶねーあぶねー、シュートを決められてバスケットカウント与えるより、フリースロー与えた方がまだマシだわ」
「読んでいたとはね・・・」
「一か八かだったけどな」
卜部の狙いはシュートを決め、尚且つバスケットカウントワンスローを決めて3点プレイを物にする狙いだったが、栄人の読みが当たり、わざとファウルをし、フリースロー2本与えた方がまだマシだと言う考えを持っていたのだ。
フリースローを2本共決め、90対87と差が開き出したと同時に沙弥が最後のタイムアウトを取った。
「一応確認するけど・・・延長戦戦う体力は?」
「全くないっす」
全員声を揃えて言葉を返す、いつも以上に大きい声が出ている。
「あんた達・・・まぁ良いわ・・残り3分を切った所で3点差・・まだ逆転の可能性はある、でもね、6点差開いたらアウトよ」
「・・・・」
わかっているが体がついていけない、この状況を早く打破したいのは山々だが、それでも彼らを信じてコートへ送り出す沙弥。
「さぁ行ってこい、そして、初勝利をもぎ取ってこい」
「オゥッ」
緊迫した状態で試合再開し、お互いに点が取れないまま攻守交代が続き、残り時間はついに1分を切り始めた。
そして、緊張の糸が切れたかの様に、チャンスが聖峰に巡って来る。
沙弥がコート端から指示出す、それは、卜部を栄人と一志で執拗にマークをする事、しかもオールコートで。
「ここへ来てオールコートディフェンス?無謀じゃない?」
「これ以上点をやるわけには行かねーよ、なぁ?ヒデ」
「そういう事だ、カズ気を抜くなよ俺達が抜かれたら終わりだ」
二人の鬼気迫る表情に、中々切り込めない卜部やむを得ずパスを出すが、栄人がそれを読んでいたかの様にパスカットに成功、真っ先に一志にボールが渡りフリーの状態になるが、卜部も一志を追いかける。
「カズ、行け」
卜部の追撃を振り切り、完全フリーでシュートを決めて残り40秒で1点差に詰め寄るが。
「お前らここまで良く食らいついたな・・だが、もう、詰みだな止めを刺してやる」
権田の言う事は、残り時間からして松潮が30秒フルにボールを支配し点を取り、攻守交代となってもメンバー全員が戻り、聖峰のカウンターを封じる作戦、聖峰は窮地に追い込まれていた。
焦らす様にゆっくりと慎重にパスを回し、無情にも時間だけが過ぎようとしている。
30秒ギリギリで権田にボールが渡りシュートに行くが、淳大と泰が必死で止めに入り権田をブロック。
ルーズボールを大樹が拾い、栄人にパスが渡り出す。
「ヒデ、頼む」
「淳大、ヤス、大樹、サンキュー」
「やらせないよ」
カウンターに入るも、卜部が栄人にぴったりとマークし完全にカウンターを封じ、中に切り込んでも間に合わない、残り時間が5秒となる。
「ヒデ、こっちによこせ」
仕切りに一志が声を掛け、栄人は卜部の股下にボールを放ち一志にパスを送り、一志もそのまま、大樹にパスを送り、大樹に付いていたディフェンスをブロックした。
「伊藤、ぶちかませ」
「心臓に悪いな・・・」
スリーポイントラインから、大樹のシュートが綺麗な弧を描き入るかと思われたが・・・。
ガコンと、リングに当たりボールは無情にも弾かれ試合終了の笛が鳴ったのだ。
「試合終了、整列して下さい、90対89で松潮の勝ち」
「ありがとうございました」
負けた・・・聖峰高校初の初陣に勝利を飾れなかった・・無言のまま、挨拶を終えた。
「今回の試合は急であり、聖峰の遠藤くらいしか名前がわからなかったが、良く勝った、だがな、反省点が多い」
「・・・・」
松潮学園の辻監督、勝利したものの不満げな表情で話す。
「お前ら、県大会までみっちりしごくからな、ひょっとしたら、ダークホースになるぞ聖峰は」
「・・・・は、はい・・・」
また、県大会まで地獄の練習が始まると思うとゾッとし始める松潮メンバー。
「皆、敗れはしたけど良い試合だったわ」
「負けてすんません・・・」
「責めてるわけじゃないわ、むしろ、収穫もあった、帰ったら県大会まで課題を練習するわよ」
聖峰の課題とはなんだったのか?それは、まだ沙弥の胸の内しか知らない。
「じゃあ君達、県大会で会おう」
「必ずリベンジするからな、ついでにゴリラも」
「誰がゴリラじゃーこの、クソガキィ」
全員が卜部に指を差しながら帰り、県大会へ向け更なる意欲が沸いてきたのと、今日の試合結果は各強豪校にも徐々に伝わっていた。




