7話 練習試合松潮戦第3Q
やっと続き書けた・・・
試合も後半戦に入り、各人気合いが入り出す。
第3クォーター序盤、いきなり卜部が仕掛けるかと思いきや権田にパスを送る。
泰とパワー勝負を続行し、権田に軍配が上がる。
「お前の勢いだけは買ってやる、だかな、それじゃ俺に勝てんぞ」
「・・・ゴリラ・・・」
憎まれ口を叩き攻撃に切り替える泰、いつでも蹴散らす準備は出来た。
今度は負けないと胸中穏やかではなくなりだす。
栄人と卜部は相変わらずの1対1状況が続くが、意表をつきシュートを放ち出す。
「そんな乱れたフォームで入るの?」
「ん?入ったけど」
入るには入ったが、決めたのは泰のアリウープ。
シュートと見せかけた泰へのパスであった。
続け様に淳大のシュートが決まり、大樹のスリーポイントで36対30と6点差に追い上げる。
追い上げムードも束の間、卜部が速攻で簡単に一志を抜き去りゴールを奪い返す。
「まだまだ甘いよ」
「はぁ、はぁ、絶対に負けねー」
息が上がり始めた一志に、たまらずに沙弥がタイムアウトを取る。
「遠藤君、オーバーペースよ、クールダウンしよう・・河村君と交代よ」
「えっ?俺はまだまだ行けます」
「いいから、言う事聞け」
一志の頭をぐりぐりしながら、一志をなだめる沙弥、当然一志も面白くないが。
「今の状態で卜部君に勝てるわけないわ、一旦クールダウンして卜部君を観察しなさい」
「・・・・」
試合再開、栄人の代わりに河村がボールを運び、相変わらず栄人へのマークは卜部が付いていた。
ゴール下では、淳大と泰がリバウンドに備え、大樹はいつでも打てる様にノーマークの状況を作っている。
「さて・・・河村さん」
ボールを要求し、河村からパスを受ける栄人はそのままの勢いで卜部を抜き去りシュートに行くが、卜部の指がわずかに当たりリバウンド勝負となる。
「相変わらず凄い力だな・・」
「取らせねーぞ」
権田とリバウンド勝負する泰、熾烈なポジション取りが行われた。
「ポジションが取れない・・・くそ」
高さもパワーも権田が勝っているが、泰は相手の力を利用し権田の前に出始め、体つきの割りには柔軟性を活かし着地前にシュートを決めたのだった。
「このガキィ」
まんまと泰にシュートを決められた権田、してやったりな顔をする泰、ゴール下ではセンター対決が繰り広げられている。
聖峰が泰や淳大を中心に、大樹のスリーポイントを含めた攻撃をすれば、松潮も卜部を中心に点を取り返すの繰り返しで48対44と4点差に詰め寄ったが、この聖峰の勢いも長くは続かなかった。
再び栄人にボールが渡り、卜部と一対一の勝負に入り、スピードに乗って卜部を抜き去ると今度は権田が立ちはだかる。
「なめんなコラッ」
身長差も気にせずに、果敢に権田に向かっていくが・・・・。
シュート体制に入ろうとしたが、権田に吹き飛ばされた栄人だが、様子がおかしい。
「レフェリーストップ」
試合が中断され、栄人に駆け寄る聖峰メンバー、栄人が倒れ込んだまま起き上がれない。
第3クォーターも残り3分を切った時の出来事だった。
「ヒデ、大丈夫か?」
「今村君?」
「栄人?」
「今村」
仲間に担ぎこまれながらベンチに退く栄人、沙弥が様子を見ると、栄人は足を押さえている。
「今村君、足を攣った見たいね・・他に痛い所は?」
「大丈夫です」
「菜々子ちゃん、アイシングを、遠藤君準備して」
足を攣ってしまい、まさかの交代劇となった聖峰、栄人の変わりに一志がコートに戻る。
「カズ、俺が戻るまで任せたぜ」
「もう、出番ないかもしれねーぞ」
何か吹っ切れたのか、さっきとは違う表情でコートに戻る一志、それを見送った後に仰向けになり治療を受ける栄人。
天井を見つめながら、菜々子に足の治療を受けふと思い更けていた。
・・・バスケの神様、こんな強い奴に巡り合わせてくれてありがとう・・でも、まだここで退くわけには行かねーよ・・・後、テツさん、シュウさん、高校バスケ面白い・・・
試合は栄人が抜け、第1クォーターと同じ布陣となるが。
「遠藤君、戻ってきたんだ」
「ヒデに託されたからな、死んでも食らいつく」
卜部にボールが渡った瞬間一志の表情がさっきまで違っていた。
卜部の目には一志に並々ならぬオーラを感じ取っていたからだ。
一志を抜き去ろうとするも、一志から感じる重圧に中々切り出せないでいる。
「くっ、しつこいね」
栄人が必ずリベンジする機会を与えると言った言葉が、この様に訪れるなんて誰が予想したのか?
「今やれるだけの事をやる・・」
試合は再び松潮が卜部のゴールで8点差にリードを広げ出し、58対50となる。
・・・今俺に出来る事・・・それは、卜部を全力で止める、ヒデが戻るまで・・・
「河村さん、そろそろ頃合いかも」
「えっ?」
河村がボールを運び真っ先に一志にボールが渡り出すと、卜部を引き付け淳大にパスを送る。
淳大と一志の目があった瞬間、テレパシーが出来るわけないのに、一志が何の為に淳大にパスを送り、何をしたいのか伝わったのだ。
「行かせん」
「行かねーよ、ゴリラ」
権田が必死で止めに入るが、シュートには行かずパスを送り出す、送り出した先は大樹だった。
スリーポイントに行くかと思いきや、相手のマークを振り切り、再び一志にパスを送り今度は卜部を抜き去った。
「このガキ、行かすか」
「権田さんストップ」
卜部の制止にも耳を貸さず、一志を止めに入るが、一志はシュートにも行かず再び大樹にパスを送る。
「決めろよ・・・」
「ナイスパス・・遠藤」
一瞬フリーになった大樹を見逃さずに、躊躇いもなく大樹にパスを送り出した一志、期待に応えるかの様に大樹のスリーポイントが決まった。
「菜々子ちゃんありがとう、もう大丈夫」
「今村君出るの?まだ無茶だよ」
治療を受けながらベンチで試合の様子を伺う栄人、早くコートに戻りたくてウズウズしている。
「今村君、第4クォーター頭から行って貰うからそれまで体を休めなさい」
「監督?」
「君の事だから、出るなと言っても出るだろうから・・・」
栄人の心中を見抜いたかの様な沙弥の言葉には、逆転するなら栄人の力が必要不可欠、万全の状態で栄人を送り出したい。
第3クォーター残り2分をきった所で、松潮側が最後のタイムアウトを取った。
リードしているのに、何故ここでタイムアウトを?沙弥に疑問が残り始めた。
「あちらさん、良く食らいつくな・・第4クォーターは間違いなく7番が出てくる、卜部7番が出てもマークは遠藤のまま」
「はい」
栄人が出ても、そうそうに万全なプレイは出来ないだろうと読んだ松潮の辻監督。
「権田、パワーはお前が上だ、あの8番と10番に負けるなよ」
「はい」
このタイムアウトは確認の為に取ったタイムアウト、だが聖峰側には休むに丁度良かったが。
「こっちの考えは、向こうはお見通しね・・第4クォーターから今村君に出て貰う事に」
「・・・・」
「皆、流れはまだ相手にあるけど良く食らいついてるわ、逆転するには今村君が必要よ、だからそれまで死ぬ気で食らいつきなさい」
「はい」
栄人が戻るまで出来るだけ点差を縮める事、泡良くは逆転出来れば上出来だが、恐らく第4クォーターはラン&ガン勝負になるかもしれない。
だが、体力が持つかどうか・・・その為に栄人が必要。
「ヒデが戻るまで食らいつくぞ」
「おぅ」
一志の掛け声で今一度気合いが入る聖峰メンバー、大樹の連続スリーポイントや泰と淳大の連携がハマり、試合は72対68と4点差で第3クォーターを終了。