6話 練習試合松潮戦第2Q
「何やってんだーお前ら、30点開けろと言ったよな?」
「・・・・」
「特に卜部、お前第1クォーター何点だ?」
「わかりません」
爽やかな笑顔で、自分が何点取ったか忘れた卜部だが、当然監督の雷が。
「ばっかもーん」
辻監督の罵声が鳴り響き、間近にいた卜部が一番耳が痛い。
「さて、向こうのセンター権田君はどんな印象?」
「一言でゴリラ」
沙弥の質問に、一同が声を揃え権田の印象について答えるが、プレイがどうかと言うよりゴリラの印象が強い。
「あんた達・・まぁ良いわ、この状況を打破するには、権田君と卜部君の歯車を狂わすのよ」
「はいっ」
「さぁ行ってこい」
第2クォーター開始、河村がベンチに下がり栄人がコートに入る。
「今村君、君らしいプレイをすれば良いよ」
河村に背中を押されながら、栄人の初陣が始まる。
「さて、どうするかな?」
栄人が果敢にドリブルを仕掛け、真っ先に相手ポイントガードに迫るが、栄人のスピードが加速しあっさり抜き去る。
「やるねえ・・・君名前は?」
「今村栄人よろしく」
卜部がヘルプに入り、栄人をマークする。
「勝負しようか?」
「んーとりあえず今は止めときます」
そう言って栄人が卜部を見ながら、バックハンドでパスを出す。
パスが渡った先は大樹だった。
「大樹、やられぱっなしじゃねーよな?」
「この野郎、誰に言ってやがる」
卜部にやられたスリーポイントシュートの仕返しと言わんばかりに、大樹の鮮やかなスリーポイントが決まり第2クォーターも引き続き、聖峰の先制となる。
「へぇ・・・」
卜部の不適な笑みがこぼれ、松潮学園が聖峰陣営に迫り来る。
「森下さんボール下さい」
松潮学園のポイントガードは、森下と言う選手で権田と同じ三年生、主に目立った選手ではないが松潮学園の影の要である。
ボールが卜部に渡り、一志が今度は負けないと言わんばかりに、鬼気迫る勢いだ。
「来い」
「やる気満々だね」
フェイクを入れながら一志の出方を伺う卜部、さっきより雰囲気が違う事に気づき中々一歩踏み出せずにいた。
「卜部、後20秒だぞ早くボール回せ」
30秒ルール、攻撃側は30秒以内にシュートを打たないと自動で相手側のボールとなる。
ベンチからの声に仕掛け始めた卜部だが、背後から栄人がボールを奪った。
「カズ走れー」
「オゥ」
奪ったボールを真っ先に一志にパスを送り、二人の連携により得点を奪い、28対19と追い上げムードに走り出す。
「なるほどねぇ」
栄人を観察するかの様に、卜部の目付きが鋭くなり始める。
「卜部よこせー」
権田がすかさず反撃に転じ、ゴール下の激しい攻防が泰と繰り出されていた。
「一年でセンター任されるとは大した物だな」
「負けない・・」
権田の圧倒的なパワーに押され、泰が踏ん張れず吹き飛ばされるが、淳大がすかさずヘルプに入る。
「デカイだけか?中河」
「何?」
パワーなら権田を上回るのではないか?そんな事を思わせる淳大のブロック、直ぐ様に聖峰のカウンターが始まる。
「このガキィ」
「今村ー走れー」
「もう走ってるよ」
そのままフリーの状態で栄人がゴールを決め、7点差に迫り出す。
たまらずに松潮ベンチがタイムアウトを取った。
「あんな伏兵が居たとはな・・・」
栄人が入り完全に活気づいた聖峰、リードはしている物の、これを止めないと食われる予感がしたからだ。
「卜部、向こうの7番に付け」
「いいんですか?」
「完膚なきまで叩きのめしてこい、今の内に脅威となる芽は潰す」
「了解しました」
嬉しそうに返事をする卜部、自分を楽しませる奴が現れたと言わんばかりの表情を感じさせられた。
「今村君、ここからは君を行かせないよ」
監督の指示に従い、栄人のマークに付く卜部。
当然、栄人もワクワクが止まらない。
「自らあんたが俺のマーク?」
・・・・バスケの神様感謝するぜ・・俺にこんな場面を用意してくれるなんて・・・
そう思いながら、卜部と真っ向勝負を仕掛ける栄人。
お互いに一歩も譲らない一進一退の攻防が繰り広げられる。
「あれ?」
気が付けば栄人がコート端まで追い詰められていた。
「君はここならどうする?」
「・・・・」
やむを得ずパスを一志に出すが・・・。
「そう来ると思ったよ」
栄人の動きを読んだ卜部がパスカットをし、一気にカウンターを仕掛け再びリードを広げた。
「カズ、しばらく向こうの7番俺に任せてくれ」
「ヒデ・・・」
「必ず、あいつにリベンジするチャンスを作るからそれまで」
「わかったよ、それまで俺をフリーにして得点演出してくれよ」
「ああ」
次第に聖峰ディフェンス陣に牙を剥き出した卜部、ディフェンスは一志がまだマークについたまま。
「まだ、君の目も死んでないね・・・いいね」
「くそっナメてるんじゃねーぞ」
一志を抜き去りシュートに入るが、一志も再び卜部に追い付くが・・・。
「ディフェンスチャージング、白6番、バスケットカウントワンスロー」
「チッ・・・」
「僕の勝ちだね・・・なんなら二人でかかってきなよ」
卜部の挑発に栄人と一志のボルテージが高鳴りだす。
「切り替えて行くぞ」
栄人の掛け声で再び聖峰の攻撃が始まるが、卜部が執拗に栄人のマークに入る。
「さぁ、どうするのかな?」
「あんた、見掛けに寄らず意地悪いすね」
「そう?」
再び栄人がパスを出し始めるが、卜部を誘い込む為のフェイクを入れながらパスを出した。
行き着いた先は淳大にボールが渡り、そのままアリウープを決める。
「しゃーっオラー」
「淳大、すげーな」
「今村、喋ってねーで早くディフェンスに付け」
卜部にボールが集まり出す松潮の攻撃、今度は沙弥の指示により一志と栄人のダブルチームで卜部を迎え撃つ。
「二人で足りる?」
「ナメんな・・」
「カズ落ち着け」
栄人と一志の連携により、卜部の動きが鈍り始める。
迂闊に中に切り込めない、スリーポイントもそうそうに決まるわけでもない。
策がハマったのか、二人の連携により卜部からボールを奪い一志の連続ゴールが決まりだすが、試合は互いにロースコアの展開になり始め、36対26と10点差のまま第2クォーターを終えた。
「10分休憩後、後半戦始めます」
「皆、良く食らいついているわね、上出来とまでは行かないけど・・・逆転しないとね」
県ベスト4相手に良くやっているが、力の差がはっきりと出ている。
「あちらさんも良く食らいついているな・・・卜部あの7番はどうだ?」
「中々楽しませてくれますよ、遠藤君と連携取ったら恐ろしいです」
「ふむ、権田あのデカイの二人は?」
「面倒なのは10番ですよ、あのバカ力」
「よし、フォーメーションはそのまま、卜部を中心に攻め続ける」




