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5話 練習試合松潮戦第1Q

 「それでは、始めます、両チーム整列して下さい」


「お願いしまーす」


 ジャンプボールを泰が制し、聖峰の攻撃から始まった。

 聖峰のユニフォームは白と黄色いラインで型どり、黒色でローマ字で学校名が書かれたユニフォームだ。

 対する松潮は紺色で白いラインが入ったユニフォーム。

 ボールは先ずは河村に渡り、ゲームメイクする。


「さぁ1本じっくり行こう」


 相手の出方を伺う松潮のディフェンス、ゾーンマンツーマンのフォーメーションで聖峰を向かえ討つ。


「河村さん、こっち」


 真っ先に一志にボールが渡り、ディフェンスを華麗に交わしシュートを決める。


「よっしゃー」


「ナイッシュー」


「高さでは俺に分があるのに俺によこせ、遠藤」


「慌てるなよ、佐久間」


 河村と一志がハイタッチを交わし、聖峰のディフェンスとなる。

 松潮の攻撃だが、控えメンバーでは泰と淳大の高さに圧倒され攻め倦む。


「よっしゃーカウンターだ」


 仕切りに一志が真っ先に走り出すが、向こうもベスト4の実力だけあって戻りが速い。


「チッ・・佐久間、ぶちかませ」


「指図すんなテメー」


 淳大の豪快なダンクが決まり、幸先の良いスタートとなるが・・・。


「こりゃ、一本取られたなここまでやるとは・・スタメン組全員アップしとけ・・」


「監督ー待ってましたー」


「但し卜部、この前練習サボった罰だ一人で20点取れ」


「えぇーそんな殺生な・・・」


「うるせー、つべこべ言わずにやれ」


「ゴリ田さん・・・じゃなくて権田さん」


「誰がゴリラだぁぁぁテメー」


 角刈りのツンツンヘアーで、鼻を大きく膨らませながら卜部にヘッドロックを仕掛ける、まさにゴリラ・・・。


「痛い、痛い、すみません、すみません」


 まだまだ攻め倦む松潮サイド、大樹のスリーポイントが決まり、7対0となる。


 ピピーー


「メンバーチェンジです」


 大樹のシュートが決まったと同時に笛が鳴り、開始2分で松潮学園がオールメンバーチェンジをする。


「チッ打つ手が早いわね・・あのオッサン」


 メンバーチェンジした途端に栄人の目付きが変わった、まるで獲物を狩る獅子の様に。


「今村君?」


 菜々子の呼び掛けも耳に入らず、完全に集中モードとなる栄人、自分ならどう攻めるかなどをシミュレーションしている。

 栄人の表情を見た瞬間、沙弥の脳裏には栄人をいつ投入してみるか・・河村みたいな落ち着いたプレイは出来ないと踏んでいる。


「さて、行きますか」


「走れよ、卜部」


「はいはい・・」


 権田から豪快なパスが卜部に渡り、雰囲気が一辺変わり始めた。

 一志が卜部のマークに付くが、あの卜部の優しい顔立ちが物凄い威圧感を感じさせる。


「初めまして君が遠藤君だね、中学時代の活躍は聞いているよ」


「そりゃどうも・・」


 ドリブルの音だけが鳴り響き、一瞬の静寂に包まれるコート内。


 どこから来る?それともパスか?


 硬直状態のまま卜部が仕掛けだした。


「くっ、速い」


 中に切り込もうとする卜部、一志も必死で食らいつくが一志が怯んだ一瞬、ジャンプシュートを決めた。


「挨拶完了」


「チッ・・・」


 これがベスト4の実力なのか、ついに聖峰に牙を剥き出した松潮学園。


「さぁ来い」


 権田の大きい声が松潮メンバー全員の士気を高め、攻撃がちぐはぐになり始めた聖峰。


「権田さん、パス」


「テメー卜部いきなり過ぎだろ」


「行かせない」


 泰が権田に密着し、シュート体制に行かないように上手くディフェンスをするが。


「甘いわ、一年坊主」


「ヤローふざけんなコラッ」


 淳大もたまらずに泰のヘルプに入るが・・・。


「オゥオゥ、デカイのが二人か・・だが甘いと言っとるじゃろう」


 権田の豪快なパワフルなダンクを決められ、泰と淳大は吹き飛ばされてしまう。


「河村さん」


 一志がボールを持ち、相手が全員戻りきるまでにカウンターを仕掛けようとしたが、卜部が真っ先に戻り一志を向かえ討つ。


「チッ戻りが速いな」


「さぁ勝負だ」


 再び一志と卜部の1on1が始まる、集中を研ぎ澄ませ卜部の隙を伺うも流石四天王、全く隙がない。


「くっそー抜けねー」


 やむを得ず河村にボールを戻し、再び仕切り直しとなる。


「来ないの?つまんないなぁ」


「正直勝てる要素がねーっすわ」


「君は潔いね、嫌いじゃないよ」


 負けを認めたわけじゃないが、今のままでは卜部に勝てない・・悔しさばかりが残っていく。


「しまった」


「よし、カウンターだ、走れ卜部」


「はいはい」


 河村がボールを奪われ、松潮のカウンターが始まる。

 真っ先に卜部が走り一志も何とか追い付いた。


「負けを認めたわけじゃねーけど、必ずあんたを抜いてやる」


「そう来なくちゃね」


 卜部のスピードがさらに加速し始め、一志が振り回される。


「くっ・・」


「追加点もーらい」


「調子に乗んな」


 一志を抜き去り、シュート体制に入った所に淳大がブロックに入るが、体がぶつかり合いながらも卜部が淳大のブロックを交わし、シュートを決める。


 ピピー


「白10番プッシング、バスケットカウントワンスロー」


「何だと?」


 一志を抜き去り、淳大からファウル貰い、尚且つワンスローで3点プレイを物にした卜部、第1クォーターも残りまだ7分を残し、7対7の同点となる。


 再び聖峰の攻撃だが、河村のパスを読んだ卜部がボールを奪い中に入るかと思いきや。


「おいっ何やってんだよ・・来るんじゃねーのかよ」


 一志が唖然とする理由、ボールを奪った卜部がそのまま中に攻めるかと思いきや、スリーポイントラインに下がり、そのままスリーポイントシュートを鮮やかに決めた。


「マジかよ・・・」


 大樹顔負けの鮮やかなスリーポイント、中からでも外からでも攻撃を仕掛ける事が出来る。


「あちらさん、泡食ってるな・・卜部はオールラウンダーだ、只身長180cmあるが、権田と言う大型センターがいるしな」


 松潮の監督、辻監督が自慢気に心の中で呟き、どや顔をさらけ出す。

 権田は松潮学園では一番の長身195㎝ある。


「皆、らしくねーな・・・特にカズ」


「今村君?」


 ボソッと呟いた栄人、沙弥もここはタイムアウト取るか迷っている。


「今村君、アップしときなさい」


「はい?」


「聞こえなかった?そろそろ出て貰うからアップしなさい」


「ウス」


「頑張ってね」


 ベンチのメンバーと菜々子に後押しされ、出番を待つ栄人。

 試合は卜部と権田の連携により、差が開き始めるが、聖峰も泰と淳大が奮闘し点を入れるも28対12となり、第1クォーター残り1分で聖峰がタイムアウトを取る。


「皆、初めてにしては良くやってるわね、でもね、らしくないわよ」


「・・・・」


 全員耳には入っているが、言葉が出ない。


「おいっ遠藤、テメー勝てねーからって縮こまってるんじゃねー」


「誰が縮こまってるって?元ヤンキー」


「喧嘩するなら、二人とも試合には出さないわよ」


 淳大と一志が喧嘩になりかけるも沙弥の一言で静まり帰る。


「一人じゃ無理なら二人だ、二人で無理なら三人だカズ」


「ヒデ?」


 栄人が言いたいのは、別に1on1にこだわるなと言いたいのだが、正直胸の内は卜部と勝負したい。


「第2クォーター、頭から今村君行くわよ、第1クォーター残り1分何とか足掻いて見せなさい」


「はいっ」


 残り1分、一志と淳大の連携が上手くハマり出した。

 淳大が卜部をブロックし、一志に活路を見出だす。


「やるねぇ・・」


「お前を行かすわけにはいかねーよ、ファウルの礼もあるしな」


「そんな事あったね・・ファウル5つならない事を祈るよ」


 ファウル5つ重なると、その選手は試合には出られなくなる。


「打ってみろや、一年坊主」


 一志の前に権田が立ちはだかるが、一志は迷いなく泰にパスを送り、泰は見事にダンクを決め28対14で第1クォーターを終える。





















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