第八話「こんにちは赤ちゃん♪」
―――――――リーデ:テルの森:神木近くの遺跡
壁画の調査をして数時間。壁画は調べ尽くしたと言っても過言ではない。幾つものRPGをプレイした自分にとって、怪しいと思った所は、叩いたり押したりと、果ては床を掘ったりして試してみた。だが残念何も起こらず、何もありません。
最初来た時と比べ、外では雨が結構強く降っているのかどこかで水滴の落ちる音が連続で響いていて温度も下がって肌寒い。
また、疲れて腹も減ったのでそろそろレイヴンが待っている入口へと戻ろうと思って片付けをしていたら、ダウジングが反応を示した。
戻ろうとしていた所にいきなりの反応。なんで今になって反応を示しているのか?気まぐれにも程がある。
(この1、2号君達はツンデレなのか?)
と馬鹿な考えを捨てて、曲がっている方向へと向く。念の為これが偶然ではないかと色んな方向へと向いてダウジングの反応を確認した。だがやはり、他の方向へと向けば必ず反応がする方へと曲がった。
しかし、指し示す反応は壁画ではない。むしろ入口に向かう回廊に指している。どういう事であろうか?ここに向かう時もダウジングを持って歩いてきたのにその時は何も無かった。
だが、考えても仕方ないので荷物等を持って指し示す方向へと歩いていく。
一人でランプの明かりだけを頼りに暗い遺跡を歩いていく。やはり一人だとものすごく不安で心細い。おまけに温度が下がっているから余計に雰囲気が出ている。
お化けの出ない雰囲気だけがリアルなお化け屋敷という訳の分からんアトラクションを体験している感じだ。
「っと、危ねっ」
時折ダウジングしか見ていないので、転げそうになったり足をぶつけたりして危なげだが、ゆっくりと進んで行く。
クイ
ここでまた曲がった。どうやらここで道を曲がるらしいのだが、向いている先は壁。つまりは行き止まり。
この遺跡。入口から壁画まで一直線で他に道は無い。だというのに曲がれと示している。自分はランプを上げて辺り一面を見渡した。
「え?此処ってあれじゃん」
そこは戦士像のある場所だった。
幾つか状態の良い石像が立っている物もあれば、無残に砕け散って石塊と成り果てた物が床に落ちている。何故戦士なのかはこの石像達が武器を持っていたりして雄々しくポージングしていたからわかったのだ。
この石像はおそらく壁画に書いてあった古代の先住民達の戦士なのだろう。人間や獣人等様々な石像が並んではいたが統一性が無い。
しかし、来る時に、念のためこれらの石像を軽く見たが特に何もなく、ダウジングも反応は示さなかった。
(何で今になって?てか何で此処?分けがわからないヨ)
本来の目的は壁画だったので関係が無いとそこまで関心は持たず、壁画を目指す為に軽く調べただけだった。
が、ダウジングが示すなら今はこの石像や壁に何かしらの秘密が隠されていると思い、自分は調べ始める。
まず、示す壁には何の変哲も無く、押しても引いてもビクともせず何も無い。
「ん?」
しかし、よく改めて調べてみると一体だけ気になる石像が目についた。反応を示す壁の近くに立ってある首のない石像だ。
近づいてよく見るとこの石像の不自然で違和感を感じたからだ。何が不自然か?
石像は身体に鎧を装備し、右腕は前につき出して、左腕には盾を装備している。
「はは~ん♪な~るほ~ねぇ~♪」
これだ!なんで盾と鎧は装備しているくせに武器である剣は腰に差したまま腕を前に出したままで持っていないのかだ。
「何で気付かなかったかな~、俺のバカ~。初歩的やん。こんなの~」
何故に来る時に気づかなかったのかと後悔する。まぁ、暗い場所で、しかも、壁画目的だったから関係ないと思ってしまったことが原因かと思われるが。
ちなみに介護の仕事だったら上司から「利用者や周囲の確認をする事!」なんて言われて注意されていただろう。
「嘆いてもしょうがない。宮國は『しらべる』コマンドを押した!」
などと独り言で誤魔化しながら自分は石像の右手を調べてみる。
と案の定右手の握りこぶしには何かを持つような穴が空いてある。
「ふぬぅお!、おおお重てぇ~!」
試しにその石像の腰に差してある鞘からクソ重い石の剣を取り、頑張って持ち上げながらなんとか右手に持たせ、剣を回しながらはめた。
持たせた剣を回した時にカコンと小さな音が鳴った。
「・・・・・・・・・・あれ?」
しかし、何も起こらなかった。
「何でやねん!壁が開くんじゃないんかい!?オラァ!」
グゴゴ・・・
「うわっ!?」
何も起きない壁にイラついて蹴ってみたら壁が回転扉のように回ったのだ。驚いて前に倒れかけたが、踏ん張って後ろに後ずさる。一先ず深呼吸して落ち着く。
改めて開いた壁の中を覗いて見た。そこには地下へと続いている階段があるだけで、まだ道が続いている。ランプで照らして見たが光が届かないのか底が分からない。まるで奈落へ通じる階段だ。
「お、降りたくねぇ~」
入る前にどういう仕掛けでこうなっているのかと石像を調べたが分からない。ちなみに壁を開けたままにして剣を取ると開いたままで壁が動かず閉まらない。つまりこの石の剣はカギの役割となっているらしい。
「見たか!これがRPGで鍛えられた洞察力だ!ド○クエやりなさ~い!F○やりなさ~~い!」
誰に自慢するでもなくちょっと胸を張って威張っている自分が虚しい。
「さ~て、どうしよう?」
ここでレイヴンを呼びに行こうかと思ったが、踏みとどまって考えた。
「いや、これはチャンスじゃね?」
確かにこのまま付き添い無く進めば何かしらの危険が待ち構えているかもしれない。下手したら死ぬ。
しかし、監視役がいないこの状況は好都合で、帰れる方法や何かしらの情報を独占できて、それを交渉材料として使えばより厚遇されるのではないかと思ったからだ。少なくともレイヴンから殺されるという命令が撤回されるかもしれない。
揺れ動く天秤。だが、どちらも危険に変わりはないが、より生き延びることを考えた結果一人で行くことを選択した。本当ならここでセーブしたいところだがあいにくこの世界にもそんな都合の良いものはありません。
「ふぅ~、よし!行くか」
タカをくくっていざ地下へと降りるが、さすがに暗くて怖いので腰を低くしながら階段を下りていく。何故ならゲームでもこういう隠し通路的なものは大概罠が仕掛けてあることが多い。
そのため一段一段調べながら、ゆっくりビビリながら下りていく。
本当なら普通に下っていけばおそらく10分もかからない所をその倍以上かかってようやく最下層に辿り着いた。その間やはり罠等なく逆に緊張で疲れてしまい服や手が余計に汚れてしまった。
そこから先はまた一直線の通路が続いていたが、そんなに長くなく直ぐに行き止まりに着いた。ここまで罠も無いとは安心ではあるが、ちょっとだけ拍子抜けな思いがある。
さて、行き止まりの場所には扉が一つそこに佇んでまさに何かあるという感じを醸し出している。せめてこの中に帰る方法があって欲しいと重たい扉を押して中を見る。
重低音と共に開いた瞬間、密閉されていた空気と埃やらなんやらが吹き出て自分に向って来た。
「げほっ、ごぼっ、汚っ」
軽く顔をこすって、灯りを前に出し、中を見てみると思わず、
「ひっ!うわー!!」
声をあげて通路に逃げてしまった。今でも心臓がはち切れんばかりに鼓動が速くなっている。
部屋の中には、奥までは灯りが届かず入口までしか見えなかったが、辺り一面に骨が散らばっており、一瞬のことではあったが一人分ではなく複数の頭蓋骨が見えたのでおそらく多くの死体があの部屋にあった。恥ずかしい話だが思わずチビってしまいそうになった。
もしかしたら、スケルトン等のモンスターの罠部屋を開けてしまったのではないかと、いつでも逃げれる用意をしていたが、一向にそういう気配が無いので唾を飲んでもう一度部屋の中を確認することにした。
今度はゆっくりと中を覗いて部屋の中に入っていく。やはり多くの骨が散らばっていて、歩く度に砕ける嫌な音が響く。
「ごめんなさいね」
今度は嫌々手で触ってみたが簡単に砕けて粉になる。
「相当古いな。しかもこの数、一体何が?・・・」
不気味な沈黙が続く。
しかもこの髑髏、人間や人間以外の物が多く散らばっている事から、おそらくこの骨の正体が壁画に書かれていた者達だと推測される。ただ、この部屋で一体何が起こったのかはさすがにわからない。さすがに墓とは思えないし、あんまり想像したくない。
そして、この部屋に入って確信したが、この部屋もハズレだった。帰る方法が見当たらないし、壁画等何かを伝える様なものも無いからだ。しかし、2つだけ気になったものがあった。
まず、部屋はそんなに広くはない。おそらく、屋敷の個室の半分位の広さだ。だが、その部屋の端っこにポツンと木の箱が並べらたように2つあった。古い物であり鍵等付いていなかった為簡単に開いた。
箱の1つには、
「う~ん、定番だね~。今はあんまり要らないね~。まぁ、嬉しいっちゃあ嬉しいんだがな~」
中身はお決まりの財宝だった。金の延べ棒が数個や銀の塊等そういった物が幾つか入っており心に欲望の火を灯すということは無かった。
ぶっちゃけ今の状況でこれは不要な物だ。欲しい物がこの世界にある訳でなし、今の生活で特別不自由を感じているわけもないからだ。だから、これは何かあったとき用兼帰る方法がわかった時に持って帰る時のために箱に戻しておく。そして、隣の箱を開けてみる。
「綺麗だな~。でも、何これ?」
中にあったのは、多くの石?だ。勿論ただの石ではない。
鉱石と言えばいいのか、表現のしようがないが、大雑把に一言で言えばクリスタル。
しかし、透明のクリスタルの中には一つの鉱石がまるで取り残されたように包まれている。色は赤、青、緑、黄色と一つ一つ大きさと色が違う。中にはクリスタルに包まれておらずそのままの鉱石が拳ぐらいの大きさで少ないけども幾つか色違いで入っていた。だが、これが何に役立つのかわからないので同じく箱の中に返しておく。
そして2つ目に気になった物。それが部屋の一番奥にあって、守られている?ものだ。
何故『守られている』と表現をしたのか、まず『守られているもの』はよく熱帯魚等そういった魚系を入れる水槽だ。ちゃんと水も入っている。
だがその水槽はバラバラになっていない綺麗な状態の骨がそれをまるで抱きしめているようにしているからだ。だから自分は『守られている』と思った。
その水槽表面の汚れを軽く落として見ると、まず水がそんなに汚れていない。普通こんなに年月が経っていると枯れ果てているか腐って色が変わっているのに、全然透き通ている。むしろガラスの表面の汚れが邪魔をしてよく見えなかった。
そして中には、これまた石が入っていた。
水槽の中で黒い石が妖しく蒼い光を放ち続けており、ラグビーボールより少しだけ大きく形が似ている。だが、表面はキラキラと輝いていて、本当の宝石のように見える。
自分はこれが何なのかと誘惑と好奇心に負けて、取り出そうと水槽の水を調べた。どうやら硫酸系みたいな危ない液体ではないようだ。
「ごめんなさいよ~。取りますよ~。呪わないで~。・・・冷たっ!」
目の前の髑髏に謝りながら水の中に手を突っ込んで取り出すが水が冷たい。まるで氷水のようだが頑張って取り出した。が意外なことに軽い。
正直これも不要な物ではあったが、余りに綺麗な石のため自分はこれを持って帰ることに決めた。
「今回の報酬というか、記念品って事でゲットだぜー!」
本心はこの部屋のお宝を全部持って帰りたいが、財宝をもって帰れば争い等の原因になるし、他の石は何に使うかわからないので置いておく。だから、この綺麗な石で妥協することにした。
一応勝手に持っていくので守っていた骨や散らばっている骨に向って手を合わせて念仏を唱えて部屋を出た。
(いや~、今回は結果的にはハズレだったけど、後の未来等を考えれば完全にハズレとは言い難いね~。いや、むしろこれはこれで当たりじゃね?)
自分はそんな事を考えながら地上に出て、隠し扉を戻して入口に向かう。もういい加減に腹が減ったから早歩きで戻る。
「ただいま~!今、戻ったぜ~!」
入口に着いた頃には雨が降っていてほとんど夜だった。そこにレイヴンが焚き火をしながら夕食の準備を進めていた。
「お帰りなさいませ。そろそろ戻る頃と思っておりました。さ、いつでも食べられますよ。・・・ん?あの、それは?」
「ん?あぁ~これな、・・・壁画を調べて、床下掘ったら出てきた」
やはり、自分の持っている石に気づいて訪ねてきやがった。ま、当然だ。隠しきれるものでもないし、それを普通に両手で持っていれば誰だって質問をしてくる。
だが本当の事を言うわけにもいかないのでここは嘘をついて誤魔化す。
「綺麗だろ?一応言っとくが、取るなよ」
「大丈夫ですよ。取りません。命令がでない限りは」
と、笑顔で答えた。つまり命令が出たら奪うと公言した。帰ったら見つからない所に隠しておこうと思った。しかし、自分の戻ってくるタイミングを予測して夕食の準備進めるとはやはりこいつは有能だ。
「うんめ~!暖まる~!」
こんな場所でも用意してくれた食事は美味しく、冷えた身体にしみる。全部平らげて夕食は終わったが、外はまだ土砂降りで時折雷がなっている。この季節こういう激しい雨の回数が多いと教えてくれた。
「ところで、この遺跡で見つかったのですか?帰れる方法は?」
「んや、ダメだった。ま、今回はこの石が手に入っただけさ」
「そうですか。残念でしたね」
「そうでもないさ。・・・色々見れたし。それに、今回で諦めた訳じゃないからな。他にもあるんだろ?遺跡」
「えぇ。まだこの国には謎が解けていない遺跡があるそうですから、きっと貴方様の世界に戻れる方法があるかもしれません」
「だと、良いな~」
たわいない雑談や遺跡などの話をしているうちに夜が更けた。
今回はこの遺跡で野宿するので寝る準備をしていく。遺跡に入っている間にどうやら入り口付近を掃除をしていたようで砂利が少なくほとんどが平坦になっていて寝やすい状態にしてくれている。おかげで背中が痛くなく寝れそうだ。
また、モンスターが入りにくいよう入口に瓦礫を利用した石のバリケードを二人で設置し、カルソの粉を少し撒いておく。ちょっと臭うが、雨風のおかげでそこまで気にならない。
さらに焚き火が消えないよう薪を補充して火を持続させておく。これで温度も確保されて問題なし。
寝る前に、念の為取られないよう石を抱きしめて布に包まって寝た。色々あったが初めての遺跡調査中々面白かったと言えるし、及第点ではあったと思いながら今日の疲れを取るためにゆっくりと目を閉じた。
―――――――朝
「おはようございます。朝になりましたので起きて下さい」
いつもの如くレイヴンに起こされて目を覚ます。起きた時に太陽の光が当たって目がチカチカする。どうやら雨は止んで晴れたくれたようだ。鳥の声がさえずり、あたりの草木から水蒸気が立ち上っている。昨日の疲れがまだ取れていないのか、地面で寝たためかまだ身体が少し痛いし重い。
「お目覚めの所申し訳ございませんが、お聞きしたいことがあります。」
「んあ?なんだよ?」
「その背中に付けているのはなんですか?」
背中?昨日のうちに何か付いてしまったのか後ろを振り返って確認してみた。そしたら、
「!ぎゃあああああー!」
それを見たら眠気が一気に吹き飛んで大声を上げた。
背中には大きな蜥蜴がガッチリと服を掴んでへばりついていた。咄嗟に蜥蜴を取ろうとしたが、その前に自分の大声にびっくりしたのか自ら離れて、転がりながらもヨロヨロと立ち上がって自分の方によって来た。
「キュルルル」
自分は逆に飛び起きてレイヴンに抱きついた。大きさはだいたい見た感じで30~50cm。
身体は硬そうな黒色ベースに蒼色が混じった鱗に覆われて、頭には2本の小さい角が生えている。
しかも、蜥蜴の背中には折り畳まれた翼のようなものまで生えていた。
そして、蜥蜴の翼が一気に開いて自分の顔めがけて飛んで来た。
「キュルルル~!」
「え!ちょっ!?ぶっ!」
「キュル、キュル、キュキュ」
「や、やめっ、ちょっ、顔、涎がベトベトで、ぶっ。舐めないで」
いきなり飛び付かれてしまい、尻餅をついた。
今まさに襲われている状況なのにレイヴンは助けるどころかまたも口を抑えて笑っていた。さすがに頭にきて怒鳴りつけて助けを求めたが、
「てめぇ!笑ってないで助けろよ!守るんじゃなかったのかよ!」
「フッ、助ける必要には見えませんよ。とてもじゃれて甘えているじゃありませんか」
「はぁ!?」
どう見ても襲われているようにしか見えないこの状況を?とうとう頭のネジがぶっ飛んだんじゃないかと思ったが、冷静に、そして落ち着いてこの行動を見れば確かに舐めるだけか抱きついているだけで攻撃などはしていない。
とりあえず、さっきから顔を舐めまくっている蜥蜴を強引に引き剥がして現状を確認しようとした。剥がす時爪がちょっと食い込んで痛い。
「つか、この蜥蜴・・・嘘だろ?」
顔から剥がして蜥蜴の全体部をよく観察したのだが蜥蜴ではなく、ある生物であったことにすごく驚いた。
この生物は蜥蜴というよりむしろワニに近い。そして力強い爪や牙に翼を生やしているからして考えられる答えは一つ。
絵本やゲーム、漫画で何度も何度も見て、憧れ、恐れた強さの象徴たる『ドラゴン』と呼ばれる生物だからだ。
それが小さいとはいえ自分の手に掴まれている。恐ろしくなって手を離したが、また自分の顔に飛びつき舐め回し始めた。
「にゃぶっ!」
(何でだ?キルシェは遥か昔に絶滅したと言っていたのに何で今自分の目の前にいる?)
というかどうしてこうなったのかを確かめるためもう一度顔から剥がして、腕に抱きつかれたまま移動し、周りを見た。
「なんて事だ、つかマジか!」
目に入ったのは自分が寝ていたところに黒の破片が幾つも散らばっていて、大事に持っていた鉱石が無くなってしまっていた。
つまり、自分が高価な鉱石だと思って地下から持ってきたものが、実は卵というオチでした。
しかも、自分が後生大事に抱いていたから暖められて産まれてしまい、親かなんかだと思っているのかそれでこんなに懐いている。俗に言う刷り込みというやつだ。
(つ~かドラゴンの刷り込みなんて聞いたことがない。こんな事なら怪しまれても良いから金とかの財宝を持ってくるんだった)
と頭を抑えて座り込んだ。
「さ、食事の準備が整っておりますよ。冷めないうちにどうぞ」
人が悩んでいる時によく飯の事を切り出せたなと空気が読めているのか読めていないのかこいつの神経を見てみたいと思った。その時腕にへばりついているドラゴンが餌をくれと言わんばかりのつぶらな瞳で訴えてくる。
「くっ、止めろ。そんな目で見るな!」
「キュ~」
「・・・はぁ~。わかったよ。負けた。レイヴン、こいつの分も追加な」
「かしこまりました。しかし、量が少なくなりますが、よろしいですか?」
「あぁ良いよ。しょうがねぇからな」
「かしこまりました」
一応生まれたばかりだから牛乳を飲ませたほうが良いかなと思ったが、パン等の固形物の方を美味しそうに食べた。食べ終わったらまたも自分の所にやって来て今度は頭の上に乗った。
「はぁ~~~」
(これからどうしよう?)
朝から溜息と憂鬱が深くなる。ただでさえこっちは微妙な立場と厄介な執事を抱え込んでいるというのに更に厄介事を背負い込むなんて絶対絶対嫌だ。しかし、こいつ離れてくれない。
「それで、どうするのですか?その謎の生き物は?」
「え?お前、これが何の生き物か知らないで見てたのか?」
「ええ、まぁ、害無く貴方になついていましたので」
どうやらレイヴンは最初なんの生物か分かっていなかったようだ。
「こいつはな、多分絶滅した伝説の『ドラゴン』だと思う」
「・・・本当なのですか?確証があるのですか?」
「多分って言ったろ。それに、俺の世界のゲーム・・・いや、伝承や物語で出てくる姿がそっくりなんだよ」
「そう・・・ですか。これが、『ドラゴン』」
最初は驚いたもののすぐに普段の顔に戻ったが、いつもより顔が真面目だ。
「・・・本当に知らないのな?」
「はい。『ドラゴン』については伝承が少なく、謎が多くて。伝えられているのは名前と大昔にいたというだけなのです」
「なんだよ。たったそれだけしか知らないのかよ。この世界は」
「ええ。ただ『ドラゴン』には多くの力を持っている。という言い伝えは残っています。」
「力、ねぇ~。んで、その力とは?」
「伝えられているのは強く、火を吐き、多くの知恵を持っているとしか。申し訳ございません。これ以上は何も」
「あ、そう。どこも似たような伝承なのね」
そもそも多くの学者が調べているらしいが、なにぶん手がかりが少ないから仮説や想像でしか語れないそうだ。結果何もわかっていない。
「もう一度聞きますが、どうされるのですか?」
「・・・はっきり言って俺自身どうしたらいいのかわからん。が、このまま放っておくってのも後味が悪いんだな~。ここまで懐かれると」
(それに、おそらくこいつが正体かもな)
見た感じでは壁画に書かれていた黒い獣はこいつの仲間だったのかもしれない。というのが自分の考えだ。
話を聞いた限りではドラゴンには力が秘められているらしく、その力には帰れる可能性があるかもしれない。
(はっきり言って賭けだな)
壁画の獣は人よりも大きめに書かれていた。
今自分の頭の上でくつろいでいる奴が成長して暴れればとんでもない厄災になるかもしれない。
だが、正直懐いているチビを捨てて帰るのもバツが悪い。下手したら野垂れ死ぬかモンスターに食われるか。
舌打ちをしながら、
(なんで最初から敵意をもってくれないのか?)
と思った。そうしてくれればこっちもさっさと見捨てるのに。
「・・・お前、こいつの事を王女達に報告するのか?」
「ええ、しますよ」
「そうか・・・でも今は俺が主人だよな?」
「・・・そうですね。一時的とはいえ今は貴方が私の主人です」
「よし!だったら、命令する。こいつの存在のことは言っても良い。でも、ドラゴンだと、正体の事は内緒にしろ」
「……」
「俺は、こいつを育てる!」
自分でもなにふざけたことを言っているのかと思ったが、やはり子供を捨てるようなことはどうしても出来ない。その事を力強くレイヴンに訴えた。




