第七話「いざ探さん!帰る方法!」
―――――――リーデ:湖の近場
湖の近場を散歩していたら自分は思わず叫び驚愕した。あるものを発見したからだ。付き従っていた監視役兼執事のレイヴンは自分の驚愕した方向に顔を向けた。
その正体は草だった。湖からニョキッと生えている草。でも、それはこの世界には当然無いと思い、諦めていたもので、できればもう一度食べたいと思ったもの。それがあって見つけたからだ。嬉しかった。
自分は靴と靴下を脱いでその草を取りに勢い良く湖に入っていった。近場に生えていたのでそんなに深くはないがそれでも膝まではびしょびしょに濡れてしまったが気にせずにその草を手に取った。
歓喜してまでとった草、その正体は日本人の主食の米である稲がこの世界にあった。
よく見ると湖のそこかしこに生えており自分は狂喜しながら無我夢中で引っこ抜いてまわった。その光景に異常を感じたのかレイヴンは、
「あの、なんでそんなに雑草を集めているのですか?」
その言葉を聞いた時はこいつをぶっ飛ばしたい気持ちになった。
我々日本人の主食である米を雑草呼ばわりされたらムカっ腹が立つ。しかし、ここはグッとこらえて、逆に質問をした。
「あんたらの世界ではこれを知らないのか?」
「ええ、この湖や池の傍にある草としかわかりません」
「ええ!マジか?」
意外や意外。こんなにも生えているというのに彼らは米というものを知らなくて、今の今までただの草としか見ていなかったと言うのだ。
「あ、あのな、こいつは稲と言ってな、俺達日本人・・・てか、日本の国では主食なんだぜ」
「え!?貴方の御国では、その草が、主食となっているのですか?」
事は単純だった。彼らの主食はパン。つまり小麦を主体としたもので、どういう訳か今まで誰もこの稲に関心すら抱かなかったらしい。驚きを通り越して呆れてしまった。
もっとも歴史を辿れば、日本もちゃんと伝来されたから米を食べていられる訳だし、誰も食べ方が分からなければ関心も糞も無い。それに、此処がヨーロッパやアメリカだと思えば、ちょっとは納得出来なくはない。
そんな事を思いながら屋敷と湖を何回か往復して幾つか取った稲を乾燥させる。それでもまだ湖にはたくさん生えて残っている。そして最後に、湖に種を植えてきた。こうやっていけば米の不自由にはならないだろう考えたからだ。
それと、もう一つ発見したことがある。米があるということはこの世界と自分の世界が何処からか繋がっており、どういう偶然か、風に舞って稲が育ったかもしれないと思えたからだ。希望が少しづつ見えてきた感じがしてならない。俄然やる気が出てきた。
アニソンの鼻歌を歌って干している様子を見ていたレイヴンは本当に食べられるのかと半信半疑だった。
(クックックッ。今のうちに馬鹿にしているがいい)
さて、なんやかんやあったが二日目を終えて三日目になった。朝は昨日と同じような感じで掃除から始まった。その際馬の鳴き声が聞こえたので外を見てみるとキルシェが訪問してきた。どうやら様子を見に来たらしい。
朝から自分達が、いや、自分が掃除をしているのが珍しいのか入ってきて意外そうな顔をしてた。
「・・・レイヴンがいるのに何故?」
「いや~、やる事無いし、ぶっちゃけ暇・・・だから?」
それを言ったら、
「レイヴンは何をしているんだ!」
と彼を怒鳴りつけた。当の本人は、
「何度もお断りを言いましたよ。でも主人がやると言い出したのです。執事の私がそれ以上言える訳はないですよ」
と、自分を言い訳にしてあのキルシェから言い逃れた。さすが執事と感心してしまった。
「んで、何か用?今は別に何事も無いし、不自由も・・・今は感じてないな」
「そう・・・なのか?」
やはり自分に向ける顔は少し暗かった。後ろめたいんだな。改めて考えてみたけど、最後まで勲等してくれたのは嬉しいことだし、この処置だって理解できなくもない。だから別に気にする必要は無いのだが。彼女の性格がそれを許してやれないのだなと思った。
「ところで、君はこれから、どうするんだ?」
「んぁ?どうって言われてもな?もちろん帰りたいけど、方法がわからんし、どうすっか考えてない」
そう言ったら彼女は荷物から本を取り出して、手を引っ張り共に屋敷に入った。
「見てくれ」
「?」
彼女は本と周辺の地図であろう紙をテーブルに広げて見せた。
「此処が今いる首都。そして、これら印は遺跡を記している」
「遺跡?」
「そうだ。これら多くの遺跡にはまだまだ解明されていないものが沢山ある。もしかしたら君が帰れる方法が解るかもしれない」
彼女はこれを教えてくれるためにわざわざ地図と文献を記した本を持ち出して来たのだ。何と有難い。渡りに船とはこの事だ。
「ただ、君1人で行かせる事は出来ない。共はレイヴンと、が条件なんだ。それに、私は軍の訓練等があるから行けない」
「あぁ、良いよ良いよ。どうせ俺1人じゃ迷子になりそうだし、不安だからな。それに、わざわざ忙しい時にこれを教えに来てくれたんだ。これ以上の贅沢は無い」
「ありがとう。そうだ、最初の遺跡は此処からが良い」
そう言って、彼女は1つの印に指をさす。
印には文字が書かれていたが、あいにくと読めない。もっとも地図を見ても何がなんだかさっぱりなんだが。
「この辺りがテル村だから、君と出会った場所から、一番この遺跡が近い」
「なるほど、うまくいけば一発で帰れるか、方法が解るかもしれないと?」
「そのとおり」
「よし!決まりだ」
そう言ってキルシェか本と地図を預かり、彼女は城へと戻って行った。
この本は学者達が遺跡の事を大まかだが、分かっている事を書いてあり役に立つかもと持ち出してきたものだ。まぁ、読めないので後でレイヴンに渡しておこう。
ちなみに外の稲の事を聞かれたが、やっぱり同じように食べれるのかと半信半疑の顔をされた。
それと最後に彼女はモルトの事で謝りに来たのだ。
「私がいながら、あの時、君の名誉に傷をつけてしまった。無礼をモルト共々許してほしい」
自分としてはもう全然気にしていないてと彼女に伝えた。そしたら簡単に許してもらえるとは思っていなかったらしいのか一瞬呆気にとられていた。でも、今度はそうならないようにして欲しいと念を押したら、
「わかった。君の器に感謝を」
などと言われて嬉しいのか笑顔で立ち去った。すこーし堅苦しいのは良い所でもあるし、悪い所だなと思った。そして、本をレイヴンに渡して掃除の続きをした。
掃除が終わってお茶を飲みながら一息ついた所で遺跡のことを話す。
目的地である遺跡の距離、どうやらそれはあの大木から更に山道を進んだ先にあり一日では帰ってこれない距離だという。その為今回は遺跡に向かうための準備をする事にし、出発は明日の朝にする事にした。
昼飯を食べ終わった後は明日に備えて色々と準備を行った。食料や自分の荷物等抜かりなくするためにだ。
準備をしている最中にレイヴンが馬を二頭調達してきた。ここからテル村までは距離があるから馬は必要不可欠だからだ。
「あの、俺、1人じゃ馬、乗れないんだが」
「では、今から練習しましょう。私が教えますから」
一時準備を中断してレイヴンの指示のもと乗馬の訓練を開始する。
馬に乗る時最初に気をつける事を教わったのは、
1馬に乗るときは絶対に驚かせてはいけないこと。
2乗った後はあまり恐れないこと馬がそれを感じ取ってしまうから。
3下半身に力を入れ体制を維持すること。
4手綱をしっかりと持って引っ張りすぎず優しく方向転換すること。
5後ろから近づかないこと。
6馬との信頼の為にできる限り語りかけ褒めてあげること。
以上簡単だが、6つを心掛けろとのことだ。それがどこまでやれるかわからないがとりあえずやってみた。
「ちょっ‼、ち、違う!そこじゃない。まっすぐ進んで~」
「ハイハイ、落ち着いて下さい。ゆっくり慌てず」
案の定最初は乗れることには全然大丈夫だったのだが、いかんせん歩かせると変な所に行ったり、急に立ち止まったりと上手く扱える事ができませんでした。
初めての介護を少し思い出してしまった。最初の勤務もこういう風に教わった。
しかし、それを何度も繰り返していくとキルシェのようにはいかないが夕方前には何とか扱えるようには出来てきた。その際は馬に感謝して訓練を終了した。
それと、もう一つ。干してあった稲がいい具合になっていたのでこれを屋敷の倉庫にしまっておく。
夕食後、明日は早く出発するから今日は早く休んだほうが良いと言われたのですぐに休むことにした。最後に荷物のチェックをして自分は眠りについた。
―――――――朝
いつものように起こされて、朝食を食べていつも通りのようだが今回は冒険をしなければならない。
それはあのモンスターが生息する大森林の中にある遺跡を目指さなければならないからだ。正直行きたくない。しかし、虎穴に入らずんば虎子を得ずなので覚悟決めて遺跡を目指す。
「出発の前にこれを渡しておきますね」
レイヴンから小袋を渡された。その袋から酸っぱい匂いが漂ってくる。
「なんだ?これ?」
「この袋に『カルソの粉』が入っています」
「何それ?」
彼曰く、これは旅人や冒険者必須のアイテムだそうだ。この袋を体のどこかに引っ掛けておくと獣型のモンスターが匂いを嫌がって寄り付かなくなるそうだ。
ただし、袋に入れたままでは人型のモンスターには効果が薄いため、時折襲ってくるらしい。
その時は袋から粉を出して身体中に振りまければ匂いが強くなり効果が倍増し大丈夫との事だ。だが、その場合は風呂に入るまで人も寄り付かなくなるらしい。
「もう1つ大事な事ですが」
遺跡近くにはモンスターもいるが、現在盗賊も出ていると報告を受けているらしく、万が一の時はできる限りは守るが、最悪の時は覚悟してもらいたいことの事だ。
「お前、そんな大事な事を出発前に言うか?普通?」
「ええ。出発前に言わないと、出発されないでしょう?」
「・・・・・はぁ~、良い根性してるな執事」
「お誉めの御言葉。光栄の極み」
「誉めて無い」
ともあれ不安を抱きつつレイヴンを先頭に覚悟を決めていざ遺跡に向って出発し、まずはテル村へと向かう。
町の外壁から出た後はビビリまくった。いつモンスターや盗賊が襲って来るかもしれないと思うと平常心ではいられない。でも、ビビってしまうと馬がそれを感じて少し不安そうに鳴くから下手にビビれない。レイヴンに至っては、
「貴方はテル村で盗賊になりすました兵士を倒したそうですから大丈夫ですよ」
などと笑いながらトンチキな事を自分に言って場を明るくしている。絶対にわざとやっていると思うと少し怒りたくなった。仕返しに少し言ってやった。
「前々から思ったけど、アンタ性格が少し悪いな。友達出来ないだろ?」
「フフ、そうですか?しかし、私にそんな事を言われたのは貴方が初めてですよ。いや、中々の気分です」
「???おい、今のは嫌味だぞ」
と、下らない会話をしつつ緊張を解し、休憩を挟みながらなんとか無事昼少し過ぎに最初の目的地であるテル村へと到着した。
そこで自分に気づいた村人達は集まって歓迎してくれた。
「おぉ~!また村に来てくれて嬉しいですよ」
「あ、どうも。また、お世話になります」
歓迎はされたは良いが、しかし、若干笑顔が暗い気がする。宴会の時に見たものとは違って明るさの中に影がある感じだ。
ともあれこの村で休憩兼昼食を食べることにした。昼食は村長の家にある台所を借りて、屋敷から持ってきた食材の調理をレイヴンが行った。
自分は村の人達に挨拶回りをしながら色々と話を聞いて回った。特にどうしてそんな暗い笑顔なのか理由を聞きたかった。だが、誰もその事には教えてもらえず、ようやく理由を聞けたのは、出来上がった昼食を食べながら村長が教えてくれた。
「実は、貴方様が城に出発された後、入れ替わりに別の兵士様が訪れたのです。そして、貴方様の事を誰かに言えば処罰し、最悪処刑すると」
つまり、テル村に戒厳令を出したのだ。その為迂闊な事ができず、ある意味で住人にプレッシャーを強いている形となっていた。
「ごめんなさい。自分の事だけならいざ知らず、周りにまでこんな迷惑を掛けていたとは思わなかったんです」
そんな事になっているとは思いもよらなかったから素直に村の人達に頭を下げた。
「とんでもない‼貴方様は村を救ってくださった。幸い誰も処罰されておりません。この位の事苦ではありませんよ」
思わず涙が出そうになった。
だって、今時、こんなに暖かい人達に出会えたことはなかった。こっちの世界の人達の人情に感謝だ。
全く、この執事はなんでその事を教えてくれないんだと睨んだが、話を聞いていたレイヴンもなんか不機嫌そうにご飯を食べていた。
さて、昼飯が終わったのでこれから遺跡に向かうことを村長らに伝えた。この村に寄ったのは休憩だけではなく実は、ここから先は馬に乗って行くよりも歩いたほうが早いため馬を預ける為に立ち寄ったのだ。
だから、彼らにお世話と番をお願いをする。勿論預け金はレイヴンが払ってくれた。
向かう前に村長からこの森のモンスターについて忠告を受けた。
「この森には獣の魔物が多いですから、『カルソの粉』を持っていれば大丈夫でしょう。ただ、『ゴブリン』や『トロール』等もおりますので気を付けなされ」
「はい」
「もし食糧に困りましたら『ボア』と言う猪の魔物を仕留めなさればよろしいですぞ。・・・それと、無いとは思いますが、『キマイラ』や『オーガ』を見かけたら即逃げなされ。強敵ゆえ下手に手を出せば殺られるますぞ」
「大丈夫です!直ぐに逃げますから!俺、戦えませんから‼」
改めて聞くとおっかない森である。
さて、意を決して森へと進んで遺跡を目指す。
進んでいる間はこれまたレイヴンが先頭を歩いているのだが、流石エルフ。森ではサクサクと進んでスピードが速いのなんのって。だけどここでこいつに聞いておきたかった事がある。
「おい、レイヴン。何であの人達まで戒厳令出したんだよ?」
「・・・」
「村の人達は関係無いだろ?むしろ被害者じゃん。大体何でその事を黙っていたんだよ?上の命令だからか?」
「・・・・・」
彼は何も言わず沈黙していた。自分は頭にきて今度はちょっと怒ったふうにもう一度同じ質問をした。すると彼は、
「黙っていた訳ではありません。私も知らなかったのです。でも、これが、今の国、姿なんですよ」
と怒ったような、悲しそうな感じで答えてくれた。いつもニコニコしているレイヴンが初めて感情を出したように感じた。直ぐに元に戻ったけど。
その言葉を聞いてから自分はそれ以上深く言えず黙るしかなかった。
さて、あれから大分歩いてようやく例の大木の下までやって来た。ここまで何も出会わないとは凄いなカルソの粉。効果は抜群だ。
ここで一先ずは休憩だ。ここまで馬やら歩きやらで下半身は痛い。それに、オタクである自分は仕事以外は基本引きこもっているので、体力が無い。このまま大木から動きたくないと半ば思った。レイヴンはまだまだ大丈夫そうに立ったまま見張りをしてもらっている。
ふと、大木を一度よく見ると改めて思ったが自分の世界にあったものとそっくりだった。勿論形がだ。
大きさは全く違う。もしかしたら、この木が日本と通じる門のような役割ではないかと思えて、自分が雨宿りした穴にもう一度入ってみた。
やはり穴の中は妙な安心感に包まれていて落ち着く。よく考えてみれば、この世界に来て最初に助けてくれたのはこの大木ではないかと思えてならない。
自分は深く感謝して大木にお礼を言った。
「ありがとな。あの時暖めてくれなかったら、俺、死んでたかも」
「何をしているのですか?」
「!?」
と、レイヴンにその様を見られてしまった。急いで穴から出て、軽く服を叩いて埃を落とし事の経緯を言い訳がましく伝えた。
「い、いや、あのな、最初に来た時にな、この穴の中で一晩過ごしたんだ。そ、それにな!お、俺の家の近くにこれと似た木があるからもしかしたら、帰れるかな~と!」
「ほぅ、貴方の世界にもこの神聖なる大樹があると?」
「へ?神聖なる大樹?」
なんでもこの大木はこの森の主でエルフにとっては神木にも等しい存在らしい。
かつて騎士リーデもこの木に祈りを捧げて国の安寧と建国の祈願やらなんやらを願って植えたと伝われているらしい。
なるほど。神木と言われると、なんか風格というか神聖さが滲み出ている感じがする。
しかし、さっきの事は忘れるようにとレイヴンに約束させたが、その本人はわかったと言って口を抑えて笑っていた。
いつかこいつをブン殴ってやりたいと思った。
さて、休憩が終わって遺跡まであと少しだという。
しかし、何やら急に雲行きが怪しくなり辺りが暗くなり始めた。その為さらに早く進む事となった。
体力が無い身としてはいい迷惑である。ちょっとは手加減をして欲しい。
あれからだいたい1時間ぐらい山道を上ってようやく目的地の遺跡にたどり着いた。その頃には空がさらに深い曇天に変わっておりいつ降ってもおかしくない空模様だ。
なんでも今の時期は雨季らしく雨が多いとのことらしい。
もっともここまでモンスターや盗賊に遭遇していたいないので、この程度の空模様は大したことではないのだが。
さて遺跡だが、おそらく人工物であった石の瓦礫が散乱しており、入口は門みたいな物が半壊して一見洞窟のような感じに仕上がっている。
天気のせいも相まって入口から先は暗くて何も見えない。いかにも何か出そうでありそうな雰囲気が滲み出ている。
(嫌だ~。入りたくねぇ~)
ここに来て屋敷に帰りたくなったが、もう夕方近くなので下手に戻るとそれこそ危険だ。もうここまで来たら行くしかないので涙を飲んで先に進むことにする。
と、入る前にレイヴンは二人分のランプを用意している。ランプの中に何か石の様な物を入れて火を灯した。自分は礼を言ってそれを受け取り、自分も荷物からある物を取り出し両手に持つ。
昨日の夜、レイヴンに二つの鉄の棒を用意してもらった。棒といっても10~15cmの小さくて軽いものだ。
それを手に持ちやすいように曲げる。俗に言うダウジングというヤツだ。
はっきり言ってこんな物、全然信用もしていなければ、役に立たないだろうと今でも思っている。でも、何かを発見する道具をすぐに思いつく限りではこれしかなかったから。
それと、無いよりはマシかな程度で持ってきた。まさに藁にもすがる思いだ。レイヴンに説明しても同じく信じていない。ですよね。
では、ランプを腕に引っ掛けて、自分達は遺跡の中へ入って行き、ダウジングである右手の1号君と左手の2号君の反応を確認していく。
「タタタタ~タララ~タララ~タタッ、タッタタタタ~♪」
自分は怖さを紛らわす為に某有名なRPGの曲をビクビクしながら口ずさみゆっくりと進んで行く。
対象的にレイヴンは預けた本を片手に何ら変わらず進んでいく。置いていかれると怖いので、ちょっとくっつきながら歩いていく。
こんな状況ではなかったら絶対にこいつにはくっつきたくはないが、こういう物怖じしない所は今はとても頼もしいと感じている。
遺跡の内部は基本石造り。中は所々青臭く苔が多く生えているがそんなに崩れてなく、奥に進むごとに広くなっていく。
どうやらここは大昔の神殿だったのではないかと本に書かれているそうで、最奥には昔の壁画が書いてあるらしいがそれ以外何もなく、そこまでの回廊が続いているだけだそうだ。
となれば、その壁画に何かしらのヒントが隠されている可能性があるかもしれないということになる。
自分はこの暗い道を進みながら果然やる気を出して歩くスピードを早めた。けっして怖いからではない!
中には入り、歩いてだいたい30分位の所で目的地の壁画まで着いた。
ここまでダウジングの反応は無く、めぼしいものも特に無かった。強いて言えば途中古臭く、崩れたりした戦士?か何かの銅像が幾つか並んでいただけだった。
「・・・マジ、スゲー」
さて、ランプを上げて壁画を眺めたが、開いた口がふさがらない。そこには歴史学者が危険を冒してまで発見や見る価値がありそうな壮大な絵が書いてあった。
絵と言っても、一枚の絵ではなく、かつてここに住んでいたであろう種族が生活等を記録している、いわいる象形画であった。
よくテレビの歴史番組でエジプト等の時代背景を絵として残したものが出るのと同じものを感じさせる。
絵に書かれているのは人の生活や営みは勿論だが、一人一人種族が違い、人間、獣人、おそらくはエルフだと思う亜人であること。
そして、一番気になったのは何か大きな、黒い色で書かれた獣か何かを祀っている。
絵が古く、具体的に書いていないのもあるが、所々で崩れていたり、苔が邪魔をしたりとそれ以上は読み取れなかった。
「なぁレイヴン、ここはいったい、何の遺跡だ?」
「え~、この本には、かつてこの地に暮らしていた者達の栄華を記録する為の神殿だったのではないか。と、書かれています」
「へ~。なら、あの絵は?ほら、あの黒い大きな獣の絵」
「残念ながら、あの獣の絵については、まだよく分かってないようですね。何かを信仰し、崇めているだけとしか」
「・・・そうか」
「この遺跡はリーデ王国建国以上に遥かに古いですから、あのように巨大な獣がいたのでしょう。今はあんな大きな獣やモンスターなんて見たことも、聞いたこともないですから」
のほほんと説明をする執事だが、自分は絵に集中していたからそこまで気にしなかった。
しかし、これはあまりに壮大だ。景色とは違った感動が心に響く。
こういう歴史物を生で見たのは初めてだったから感慨深いものが出てきそうになる。ここの世界のことはよく知らないけど。
「さてと、そいじゃ始めますかね」
絵の鑑賞を一通り終えて、ここら先は帰る方法を模索していく。
まずは絵に秘密が書かれていなかいかともう一度じっくり確認してみた。しかし書いてあるのは本当に狩り等その当時の生活だけで、ヒントみたいなものは書いてなかった。
ならばRPGとかでよくある壁を叩いたら隠し扉的なものが出てくるかもと絵を軽く叩いたりしてみた。もちろんその間にダウジングで反応がないか確かめた。
が、そんな事は一切なかった。こんな事を壁画の前で約1時間位試していたらレイヴンが、
「雨が降ってきましたか。申し訳ございませんが、私は入口で野営の準備をしようと思っているのですがいかがなさいますか?まだ此処でお調べになりますか?」
と、言って、立ち上がって許可を求めた。よく雨が降ってきたことに気づいたと疑問をもったが、本人曰く空気の質が変わったからだそうだ。
「あ~、なら俺はもう少し調べるから、先に戻ってて良いぞ」
「かしこまりました。では、食事の用意も致しますので身体が冷えないうちにお戻り下さい」
「ん、わかった」
本当は一緒に戻るか少し迷ったが、せめて納得ができるまで調べたいのと、ここまで何事も無かったから多分大丈夫だろうという思いで先に戻ることを許可した。
レイヴンは頭を下げて入口へと戻っていった。
いなくなってから、1人になると急に心細くなったが、今は集中して再び壁画を調べる。
……で、結果
「ダメだ~!な~んもねぇ~」
あの後壁画以外近くの壁、床、頑張って届く範囲だが、天井まで調べること1時間、何一つ手がかりが無かった。
途中レイヴンが様子を見に来て野宿の準備が出来たことを報告しに来たが、自分がまだ調べてると言ったら、
「かしこまりました。風邪をひかぬよう戻って来て下さい。食事の用意が出来ていますので」
頭を下げてまた入口へと戻って行った。
さすがに疲れて今は壁画の前に座って休憩中。
結局、この遺跡はハズレという結果に終わった。本に書いてあった事は正しくて壁画以外何もない。何も無いという予想はしていたがそれが的中すると中々に気分が凹む。溜息と共に最後、壁画眺めた。
ま、今回は最初ということもあり偶然だったのかもしれなかったという事で、次に活かすという前向きな気持ちでこの場を収めることにした。
いや、あながち全部がハズレだったわけではなかった。こんな歴史ある壁画を見れて触れられたことがあったのだ。それだけはとても価値があったと思う。
自分はそれを最後に立ち上がり入口に戻ろうと床に置いてある荷物を集め手に持った。
「え?」
その時、クイッと両手に持った瞬間二つのダウジングが曲がって反応を示した。
「あれれ~?」




