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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
812/815

第168話-9 自分の武器を使わない理由

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 アーサルエル達が立ち去ってから、数分後。

 そこには、ある人物たちが空間移動して、やってくる。

 その技術に関して、詳しく述べる必要はなかろう。

 「これは―………。」

 一人の老人は言う。

 この光景に対して、凄惨な事件があったのは確かであろうが、この場を見て、感じる老人の気持ちは社会における人が抱くであろう感情とは違うものであり、非難されてもおかしくはないものであった。

 (随分と、儂の手駒を処理してくれたの~う。)

 その程度のことだ。

 というか、この盗賊団は、老人にとっては自らの弱い手駒程度の存在であり、いくらでも代えがあると思っている。

 なぜなら、この老人にとって、才能というか優秀でない者は殺されたからと言って、そこまで気にするようなものではない。

 それと同時に、老人からしたら、新たな実験材料が手に入ったという気分にもなろう。

 一般的だと想定される老人が、新たな実験材料を得ただろうという気持ちを、この場で抱くかと言われれば、そうではない、としか言いようがないが―…。

 そうであったとしても、この老人はそう思えるのだ。

 「うわぁ~、こりゃぁ~、悲惨だなぁ~。ここまで一気にやるにはそれなりに数は必要だな。それと、砂漠の世界かは分からんが、人が生きるのに過酷な環境である以上、ここまでの残虐さもまた、正解ということにでもなるのか、トラガルの爺さんよぉ~。」

 爺さんの名前はトラガルという。

 この名前が分かってしまえば、どういう状況かは分かる人には分かってしまうのだ。

 悪い方向で―…。

 そして、トラガルの隣にいる如何にも軍人だと分かる服装をしつつも、そこには明らかに強者感があるのはその人自体がしっかりと鍛えているからであろう。

 その人物に対して、トラガルは悪態を吐こうとしたとしても、その人物は明らかに自分よりも戦闘面で強いのははっきりと分かっている。

 というか、軍人としての勤務経験があり、そのような人物に武力で勝とう考えるのは原則的に愚かなことでしかない。

 そうであったとしても、どの可能性を思考して、実行したからと言って、全部で軍人の服装をしている人物に負けるという確定的な結果になるかと言えば、嘘としかならないが、ほぼ全てに近い可能性の数だけ、トラガルはこの人物に敗北しているだろう。

 経験というものがこの軍人の服を着た人物にはしっかりとあるのだ。

 一方で、実験をおこなう者、政治経験という面ではトラガルが圧勝することができるだろう。そういう意味では、分野が違えば、この軍人の服を着ている人物には勝てるということになるのだ。

 このような比較は意味があるのかどうかは分からないが、その人の特徴をある面で見た場合において、ある面で分かるというものであろう。

 要は、一面での理解には助かるということになろう。

 そして、トラガルは軍人服を着ている人物に対して、少しぐらいの不満はあったとしても、ベルグが選んだ人物である以上、優秀であるのには間違いない。軍事や戦闘の才気を持つ人物であり、過去には軍隊を率いた経験があるのだ。

 軍隊でベルグの秘密基地が襲われそうになった場合、確実に役立つ存在だ。

 だからこそ、無碍にもできない。

 「儂はお前さんのように、戦闘に詳しくないでの~う、グルゼン。今回はベルグの方が暇じゃないから、お前を護衛としてやったのだ。感謝して欲しいものじゃ。儂は過去に―…。」

 「知ってる。お前さんがある国の実権を掌握していた一族の長であることぐらい……な。軍人だからと言って、世間のことを学ばない脳筋ではないからな。」

 グルゼン。

 この人物は、過去にミラング共和国軍に所属しており、将軍までになった人物であるし、ベルグの基地を守る兵士達の親玉であり、かつ、その兵力というのはかなりのものである。

 ベルグから与えられた天成獣の宿っている武器で、さらに、強化されていたりするのだ。

 そして、グルゼンは、軍事だけのことしか知らないような人間ではなく、常に、勉学を励み、肉体を鍛え、精神的な強さを持つ、文武両道の存在であり、決して、トラガルの過去を聞いたとしても、憶えられないような軍人脳ではないのだ。

 グルゼンは、今回、ベルグが実験で忙しいというので、代わりにトラガルの護衛をしているのである。

 面倒くさいという気持ちもないわけではないが、仕事として頼まれた以上、しっかりと護衛の任務ぐらいはするつもりだ。

 一方で、トラガルは、グルゼンのことを何も理解できないほどの馬鹿だと思っていない。ベルグが幹部に選ぶぐらいには戦闘力を有し、指揮官としての経験、さらには、トラガルをも驚かせるぐらいにはしっかりと勉学をし、トラガルの実験内容を完璧ではないが、ある程度は理解できるということだ。

 それだけの賢さを有しながらも、この人物は戦闘への鍛錬を怠らず、かつ、トラガルも天成獣の宿っている武器を扱いでの訓練でも、その成長力が段違いであることを理解させられるのだった。

 こいつだけは、敵に回すのは危険だ、という具合に―…。

 だけど、トラガルという人間の過去を考えれば、ベルグのようなよっぽどの実力を示され、何がどうやったとしても勝てないという気持ちにある者には上から目線のような態度をとれないが、グルゼンはまだ、はっきりとトラガルに対して、優秀性を認めさせることはできているが、そうであったとしても、どうやっても勝てないというものまでは見せられていない。

 そういう意味では、対等という言葉が似合うかどうかまでは分からないが、対等に近いものであろう。

 そして、トラガルは今回、自分を護衛することができるのだから、光栄に思っても良いだろうという、冗談にもならないことを言うのだった。

 グルゼンだからこそ、簡単に受け流してもらえているだけにしか過ぎない。

 「そうじゃの~う。こっちとしても、お前さんがいてくれるのは助かるわ。アババは、常にどこに潜んでいるのか分からんから、儂の後ろを任せるのは危険でしかないからの~う。」

 「まあ、否定はしない……、背後を取るのはあいつに次いで上手いからな。アババとは戦いたくはないな。あれだけは対応不可能だ。」

 トラガルは、グルゼンの言葉を聞いて、すぐに、自分が間違っていたと本音かどうかは分からないが、訂正する。

 グルゼンの実力は認めているし、敵に回したいという気持ちにはならない。

 一方で、アババというベルグから信頼されている人間は、背後をとってくるので、護衛をさせたとしても、いつ自分の命が奪われるか分かったものではない以上、あまり、護衛とはしたくないのだ。

 グルゼンもトラガルが言っていることに賛成できる。

 なぜなら、アババと戦ったことがあるが、あいつは軍人では決して、教えられるものではないし、そのことを聞いたとしても対処がどうしても不可能なのだ。

 それは天成獣の属性から成るものであり、どのようなことを試しても意味がないとしか、考えられないのだ。ゆえに、グルゼンもアババとは戦いたい気持ちには一切、ならない。

 そして、トラガルは仕事にとりかかる。

 ベルグから渡されたポケットから何かの物体を三つほど取り出すのだった。

 そう、その時、グルゼンは、トラガルから少しだけ距離を取る。

 自分が巻き添えになる可能性は低いが、そうであったとしても、誤作動という可能性を考えるとどうしても、念を入れておかないといけないのだ。

 (グルゼン………、お前はそういう直感の類も高いのだったな。まあ、ベルグのために、殺すようなことはしない。)

 グルゼンからしたら、これからおこなうことを考えれば、グルゼンというのは最高の素材になり得るものだが、同じベルグ側の人間である以上、殺すのは御法度であるし、殺そうとすれば、こっちが返り討ちに遭う結果になることぐらい分かっているので、対象から外す。

 それに、グルゼンを殺して、自分のものにしたとしても、制御できない可能性の方が高いと、トラガルは心の中で、無意識の間に判断するのだった。

 トラガル自身も強い方ではあるが、グルゼンは規格外の一面を持ち合わせているとしか言いようがないぐらいの才能の持ち主だ。

 そして、グルゼンの方も―…。

 (この爺さんがベルグに認められるのは分かる。マッドサイエンティスト。そんな言葉が似合う類だな。優秀な者は優遇するが、そうでなければ確実に身内であったとしても―…。倫理観やら道徳観やら、そんなものは無駄だと言わんばかりだな。そういう意味では、ベルグに近い一面を持ち合わせているが、ベルグは必要とあれば、倫理観やら道徳観やらはしっかりと身に付けることぐらいはできるのか。他者への配慮というのは一応、できる類だが―…。そういう意味では、トラガルよりもベルグの方が恐ろしいか。)

 トラガルをこのように評するのは、トラガルとのこれまでの会話からある程度、推測できるものだ。

 そして、トラガルの危険性をも理解しながらも、ベルグに比べれば、怖いとは思えないのだ。

 ベルグの怖さは、自身のマッドサイエンティストとしての性格を持ち合わせながらも、どのように自身が振舞うのが良いのかを分かっており、そのための適応ができる面で、怖いと評しているのだ。

 そう、社会の中でモラルを守れる人物に擬装することができ、それを自分の性格だと思い込むことができるのだ。

 それを聞いて、恐ろしいと思わないのは想像力不足の可能性を指摘した方が良いかもしれない。要は、危険人物でありながら、一般社会の中に簡単に溶け込んで、誰にもその正体が気づかれないようにできる、ということなのだ。

 ゆえに、その人の本性を知るという機会に中々できずに、誤った評価をして、危険人物を敵に回した時には、自分が危険な状態になる可能性があり、不意を突かれるという結果になる可能性が高いのだ。

 そういう意味で、グルゼンがベルグを恐ろしいと評価するのは、間違ったことではなく、正しい評価ということになろう。

 さて、話を戻し、トラガルは三体の何かしらの物体を取り出し―…。

 「お前ら―…、強い人間の死体を喰え。そして、そいつに成りすませ。」

 トラガルがそのように命じると、人の骨格の形をし、爪の大きさが一人も明らかに大きく、銀色の物体であること以外は、人の骨格と何も変わるところがない。

 それらは、何かしらの強者を見破るだけの性質を有しているのだが、それを理解できるのはトラガルとベルグぐらいのものであり、グルゼンも理解しているような感じではあろうが、そうであったとしても、原理までは説明することはできない。

 そして、しっかりとグルゼンはその対象から外しているので、グルゼンのところへと向かってくることはない。

 グルゼンは、しっかりと警戒しながら、動向を見守る。

 (トラガルが開発した兵器か―…。人喰兵器。こいつらは本当に人の膂力というものを完全に越えている。俺の動きをも最近は参考にしたか、という具合の実力だしな。初号機ができたのは、もう十数年も前だと聞いたが―…。改良を重ねているようだな。)

 グルゼンからしても、トラガルが自身が造った兵器の改良をしないとは思えなかった。追及する姿勢というものをしっかりと持ち合わせている以上、完成したら終わりということはない。

 人は常に何かしらの成長という余地を残し続けることができる存在なのだから―…。

 そういうのをグルゼンは、無意識ではあるが、理解しているという感じだ。

 ゆえに、違いにも気づけた要因の一つなのかもしれない。

 そして、そこで繰り広げられるのは、決して、子どもに見せても良いものではなく、むしろ、大人であったとしても、吐き気を催してもおかしくはないことである。

 そんな光景であったとしても、グルゼンは平然とした表情で見ることができた。

 なぜなら、戦場ではもっと損傷の激しい遺体や、悲惨なことがおこなわれていることを十分に知っているので、そこで一々、狼狽えるようなことや、感情をむき出しにするようなことをしたとしても、どうにもならないことを知っているからだ。

 そうであるからこそ、この場においても、冷静にもなれるし、慣れたことによって、その強烈な刺激を感じることができなくなっているとも言える。

 だからこそ、冷静な判断で、自分がしないといけないことが理解できるわけなのだろう。そうであったとしても、感情が完全に無くなったというわけではなく、感情の情動をある程度コントロールすることができるようになったとも言える。

 感情だけに身を任せるようなことをしたとしても、意味は何もないのだから―…。

 そして、凄惨な光景が終わると、トラガルはこの場にあった遺体を黒の中に沈めるのだった。トラガルからしても、驚くようなことではなく、トラガルの武器に宿っている天成獣の属性でできることである以上、何も気にするようなことはない。

 そして―…。

 「まだ、近くにいるの~う。お前ら―…、喰った者の形になったのなら、お前らを殺した輩を思い出し、襲え!!!」

 そのようにトラガルが命じると、人の骨格した物たちは喰った人物へと変化し、洞窟の外へと向かうのだった。

 (試し……か。)

 と、グルゼンは心の中で言うのだった。

 グルゼンの方でも、トラガルが何をしようとしているのか分かっているので、特に何も言う必要はないと感じるのだった。


第168話-10 自分の武器を使わない理由 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていくと思います。


先週の木曜日に体調を崩しました。

現在、体調はある程度、良い方向に向かっており、念のため、暫くの間、お休みさせていただきます。詳しくは活動報告をお読みください。

次回の投稿日は、2026年5月12日からを予定しています。

本当に申し訳ございません。

では―…。

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