第159話-1 宴、そして、混乱するサンバリアに安定を―…
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
キャラバンから少し離れた場所では辺り一面が氷に覆われている。
それをなしたのは、礼奈の「氷の領域」が原因であり、さらに、礼奈の「水流波」がその威力の増大に力を貸し、「青の水晶」を無意識のうちに使うことで、さらに、その威力をとんでもない方向に増大にさせるのだった。
そこの氷の上を歩くのが一人―…。
(………水に浸かってしまったままでは、凍らされていたな。そして、長は降参……か……………………。悔しいな。)
バースデンは心の中で、このように思うのだった。
その理由は、まだ、自分は負けていないという強い気持ちがあるからだ。
長の言っていることに対して、反抗することもできないわけではないが、長の判断をミスだとは思っていない。団の全員が倒されるよりも、撤退できるぐらいの数は残しておく必要はある。
それに加えて、降参した方が生き残れる可能性も十分にあるのだから―…。
そして、今回の降参の選択は、悪い結果になるとは思えないという直感の類というものがあるからだろう。
悔しい気持ちがなくなるかと言えば、嘘となるが―…。
自分の満足だけを優先したとしても、それが返って、全体の得になるとは限らないし、それは支配する者も支配される者もその面では変わらない。人である以上、完全な存在などあり得るはずもなく、何かしらの予想外が起こることから逃れるようなことはできない。そこに支配者と被支配者の違いはないと言っても良い。
ここで勘違いをしてはいけないことは、自分勝手な思い込みになってしまっている者が自分のやっていることの全部が全部、全体および社会のためになるということを疑うこともしないことである。疑ったとしても、本当の意味で、自分の考えを疑うことができていない場合もある。
さっきも言ったが、人は完全な存在になることはできないし、さらに付け加えるなら、完璧にもなれない生き物なのだ。
そうである以上、何かしらのミスをしてしまうことは避けようのないことであり、自分の満足だけの行動で全体や社会の得になるとは限らないのに、それを無意識や意識的に自分満足することが正しいことだと思い込んで、権力ゆえに周囲に強要するのだ。得をすることもあろうが、その逆となった場合は、悲惨な結果にしかならない。
その悲惨の結果を最も受けるのは、権力のある者ではなくて、権力も地位もない、従わざるをえない者達なのだ。社会的弱者と言っても良い。彼らの被害を避けるために行動することも大切であろうが、それが対外的な要因からくる場合もあれば、対内的な要因からくる場合もあるので、勝手に決めつけるのではなくて、しっかりと調べたりしながら、情報に偏りがないか、悪い意図に騙されていないかをしっかりと疑いながら、悩みながら、判断を下していく必要がある。
人は何かしらの偏りを、思考することにおける時間の消費からどうしても発生させてしまうので、そのことに対しても、意識しながらというのを忘れてはならない。
自分に自信がある者ほど、他の可能性を考慮に入れない傲慢さに陥ることもあるので、自信がある者ほど気を付けた方が良い。
さて、これ以上、話が逸れるわけにはいかないので、話を戻す。
バースデンは、礼奈の氷の威力を目の当たりにしながらも、凍らされることがなかったのは、しっかりと直感で嫌な予感がしたので、ジャンプをしただけなのだ。
そういう意味では、直感は優れていることが分かるかもしれない。
そんなことで凍らされることから逃れたバースデンは、瑠璃が近くにいることが分かっているので、迂闊に、長の方へと向かうことはできない。
なので―…。
「私たちの勝ちです。」
瑠璃は、襲ってきた略奪団の長と思われる人物が降参したことを知っている。
そのような直感の類だ。
そして、バースデンの方も返事をする。
無視は良くないのだから―…。
「そうだな。俺らの長が降参している以上、俺ら部下はそれに従うまで…だ。煮るなり焼くなり、自由にしな。」
バースデンからしたら、自らの命を奪われたい気持ちはないが、敗者に自らの命を決めるような決定権はなく、そのような権利があるの勝者だ。
そして、勘違いしてはならないことは、勝者イコール何でもかんでもして良いわけでもない。
敗者の関係者のすべての命を絶つようなことは限りなく不可能なことは近いし、その関係者に恨みをかうような処分を下せば、結局、復讐の種を蒔くような結果になるだけだし、いつまでも復讐から自らの命を守り続けられるわけではない以上、そのような配慮も重要になってくるのだ。
人の判断が本当の意味で正解かどうかは、未来のある地点においてでしか分からないことであり、自分の判断が間違っていないと思い込むのはとても危険な考えでしかなく、正しいかどうか常に心の底で悩みながら問い続けなければならない。
それはきっと大変なことであるが、判断し、行動するということは、本当に正しいのかと悩みながらもそれを隠していくという重い荷物を背負うものなのである。軽く、周囲に見せるようなものでもある。
だからこそ、自分の判断には責任というものが伴う。
そのことを忘れてはならない。
「……………………………………………………………………………。」
瑠璃は返事をすることができなかった。
瑠璃のいた現実世界での生活から考えれば、そう簡単に人の命を奪うような選択肢はできないし、人の命を奪うことに抵抗があるのは仕方のないことだ。
それが平和に過ごしてきたことによるし、教育によるものでもある。
だけど、それを平和ボケだと考えるのであれば、かなりの間違いであろう。
平和ボケというのは、平和にいる者達が戦争というものの残酷さを知らずに、戦争を称賛して、自分なら戦争で勝利できると、現実逃避している者をいうのであり、平和を望むことイコール平和ボケをしていることとはならない。
戦争を起こそうとする者は、それなりの綺麗な理由を並べるものであり、その者が何を考えているのか、過去の行動や歴史から考え、言動だけで判断しないようにしないといけない。
実は、人は、言動だけで判断する場合も多々にしてあり、かつ、過去の行動や歴史に対して、そこまで深く考えるようなことをしない場合がある。歴史に関しては、これまでの研究の蓄積や議論によって成り立っている知識が欠乏していることと、誰かの考えに思考が偏ってしまっていて、他の考えを考えるのではなく拒否してしまっていることによるものであり、それを自覚しつつ、いろんな可能性を調べることと、普段から、いろんな人の考えを聴くようにして、自分なり考えるようなことをした方が良い。一方で、言動だけで判断をする人は、それができると思い込むことなく、言動以外からのアプローチもしていく必要があるし、歴史に関しての部分で書いたことと同様に、いろんな人の話を聞いたり、いろんな知識に触れて、本質は何かを思考することが大切であろう。
要は、一つの角度からではなく、いろんな角度で物事を見たり、考えたりすることを大切にして、自分が正しいのかを思考できる時に、しっかりと考え続けることである。それが、自分の道を誤る可能性を減らす上で重要なことになるからである。
さて、瑠璃はそんな世界で平和である国での教育を受け、人の命の大切さを教えられている以上、人の命を奪うことに抵抗があることは仕方ないことであるし、それを何でもかんでも簡単に否定するようなことはできない。
一方で、命を奪わないといけない場面というものがあり、安易に戦争を煽っている者達の思っているようなもの以上に、悲惨な状況であったりするのだ。安易に戦争は煽らない方が良い。自分が目立ちたい、周囲から称賛されたいという気持ち安易な気持ちだけでは―…。
そして、瑠璃は何も返事をすることはなく、辺りを見回すのだった。
【第159話 宴、そして、混乱するサンバリアに安定を―…】
少し離れた場所。
キャラバンのいる場所。
そこでは、少しだけど、戦いの音が治まったと判断して、外を覗いた後、外に出るのだった。
「これは―……………………。」
キャラバンの長であるミグリアは、声を漏らす。
心の中でも良かったのであるが、今の情景を見れば、声に出さないということはできないほどにあり得ない光景が広がっているのであった。
その光景は、雪景色ならぬ、氷景色。
砂漠と氷は、この異世界においてもないことはないかもしれないけど、この熱い砂漠の中で、日中の時間帯であろう時に辺りが氷景色になっているのだから、驚かない方が無理であろう。
そして、略奪団との戦いの結果がどうなったかは分からない。
ゆえに、外を歩くと、少ししたところで―…。
「痛ぁ。」
ミグリアは体をぶつけるのであった。
前は氷景色であるのに、先に進めないのだ。
それは、クローナが「白の水晶」を使って展開した防御テントであり、略奪団からキャラバンを守るためのものである。
そして、遠くを見るために、一回、キャラバンの荷車の方へと戻り、望遠鏡を探して、外の状況を見るのだった。
「!!! あいつは―……。」
あることにミグリアは気づくのだった。
数時間が経過する。
その中で、略奪団の方の処遇も決まるのだった。
そして、なぜか―…。
「ひゃっはぁ―――――――――――――――――――――――――。」
「グロリーガ、お前、ラナトールから出て行って以後、略奪などを生業にしているとか、許せん!!!」
酔っている二人。
その二人を見ながら、何人かが呆れるのだった。
瑠璃たちが護衛しているキャラバンの長であるミグリアと略奪団の長であるグロリーガが酒を大量に飲み、酔っているのだ。
全員が思っている。
何故に、宴会?
数時間前まで襲われる側と襲う側が何で、仲良く、宴会しているのか?
このことに対して、疑問に感じないような人がどこにいるのだろうか?
何があった!!!?
そうとしか言えない状況だ。
「済まないな。まあ、命を奪われることがなかったのを思えば、感謝しかないな。長とキャラバンのトップが顔なじみだったとはなぁ~。こりゃ、驚いた。子どもに酒を飲ますわけにはいかんが、もう、終わったことは気にするな。」
バースデンは言う。
バースデンの近くには瑠璃とミラン、礼奈がおり、クローナにいたっては盛り上がっており、なぜか、中央にあるキャンプファイアーで略奪団の一員達と一緒に踊っているのだ。
もう、どうなっているのか理解できなくなってしまうであろうが、現実そうなのだから―…。
「気にするな、って、できるわけないでしょ!!!」
ミランは語気を荒げるが、ミランの感性の方が間違っていないだろうし、第三者から見れば、そのようにしか感じない。
「知り合いであったとしても、護衛の人数が増えるにしても、さっきまで襲っていた連中をそんな簡単に信用して良いわけ!!!」
ミランはさらにツッコミを加速させる。
そんなミランをどうどうと瑠璃は宥めようとするのだった。
そんなことを気にする必要もなくバースデンは応える。
「まあ、向こうが決めたことだ。俺たちはそれに従うしかないし、俺らも好きで盗賊稼業というものをやりたいわけではない。それに、護衛できるのであれば、そっちの方が良い。それに、長はラナトールで偉い地位まで若くして出世したほどの秀才だ。どんな状況において何が良いかぐらいの判断はできるだろう。まあ、世の中、若くても、優秀である周囲から言われても、真面な判断を下せない馬鹿もいるだろうが―…。それに、あんたら五人だけで護衛するのには、これだけの規模では不可能だ。そういう意味ではキャラバンにとっても、メリットがあるということだ。イスドラークとその帰りは俺たちが護衛するし、そこで、キャラバンを裏切って荷物を奪うようなことはしない。約束は守る。それが信頼に繋がることも知っているし、それができるような状態を自ら奪うようなことはしない。自分が不利になるだけだ。」
バースデンからしたら、護衛の方が襲うよりも安定的に収入を得やすいし、恨みをかいにくいというのも分かっているから、護衛をしている対象から荷物を奪うような信頼を失うことはしない。
自分達を砂漠の中で、いつ収入を得られるか分からないようにする行動より安全の高い方法を選ぶのは当然のことである。リスクをおかしたいという気持ちの人がいれば、話は変わってくることであろうが―…。
そして、ミランからしても、瑠璃からしても、五人だけで護衛をするのは、いろんな意味でかなり大変なのは確かだ。護衛である以上、夜も交代で見張らないといけないと考えると、略奪団が護衛をかってくれるのは、信頼を度外視すれば有難いことでしかないが、襲ってきている以上、完全に信頼することはできない。
イスドラークまでに自分達、五人だけの護衛であったら、疲弊していたことは確かであろう。そういう意味では、ミランの方も、バースデンに文句は言えど、断るようなことはできない。
そういう意味では、略奪団の長であるグロリーガは上手く立ち回ったというものだ。
そして、瑠璃たちにしてもメリットは他にもあったからだ。
第159話-2 宴、そして、混乱するサンバリアに安定を―… に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していきたいと思います。
宴会を描きたくなったというのもありますが、何故に、こうなったのかは―…、物理的に五人で護衛って難しくない、っと思ったという点もありますが、作者自身から見ても意味不明だと思いますが―…。
まあ、悪いところばかり描いていなかったからね。
そういうことです。
番外編への伏線は一つ完了しました。
では―…。




