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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
756/759

第158話-4 礼奈VSラーグラ

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 ラーグラと礼奈の戦いが再度始まる。

 ラーグラは矢を放とうとすると―…。

 「!!!」

 礼奈がすでにラーグラの後ろへと周り、すぐに、自らの武器である槍でラーグラを突こうとする。

 さっきの「水流波」でそれなりゴルブから力を借りたので、少しだけ節約しないといけない。

 それと同時に、節約をしながらも、自分が凍らせたり、水を使っただけでない戦いもできるのだということをアピールしておかないといけない。

 それに加えて、ラーグラを倒したとしても、長との戦いもある以上、迂闊に、ゴルブから借りた力をゼロにするようなことはできない。

 次のことも配慮しての戦いとなると、「青の水晶」の力を借りるということは避けて通ることはできない。

 その覚悟がしっかりと決まっているからこそ、礼奈はしっかりと自らの戦闘センスと感覚を高める。集中する。

 槍の攻撃は、ラーグラにとっては遅い動きのようにしか見えないので、矢の攻撃を中断して躱す。

 (…………………俺の逃げ足を舐めているようだな。こんなスローな動きを躱せないわけがない。)

 ラーグラからしたら余裕なことであろう。

 そのことによって、ラーグラの心の中に僅かばかりの余裕が生まれていた。

 その余裕が傲慢という化け物に変貌しないかは、未来のある地点でおいてのみ分かることであるし、その余裕が良い結果をもたらすことになる。傲慢になるような状態へと入ることがなければ……、ということになるだろうが―…。

 傲慢は余裕が強くなり、心の中で自らの優位および優越感というものが加わることになって、余裕が変貌するものである。

 そうしないためには、余裕を持ちつつも、自らの優位や優越感を過度に抱かないようにし、自分を律することが重要である。自分を律することができない存在は、自分のやっていることを間違っていないと心の奥底から思い、他者の言葉を聞くことができなくなってしまった、もしくは拒否するようになってしまった者のことを言う。

 その気持ちというものは自身では気づきにくいものであり、いつの間にか自分を律することができない傲慢で強欲な人間になっていることは往々にしてあるのだ。その失敗に気づき、学ぶことができるのであれば、まだマシな方であるが、学ぶ方面を間違うと最悪の結果になり、社会や周囲に迷惑をかけるだけでなく、そのもの自体を滅ぼしかねない危険人物になるだけだ。その人物が地位があればあるほど、社会や国家への不幸というものは増大なものとなる。

 そんな人間はいないし、地位のある人は人格者であると思っている人がいるのなら、それはある一面を見て、それが全てだと思っているだけの愚か者でしかない。出世するのは人との繋がりもあるし、血筋というのもあるし、運というものもあるという色んな要因が複雑に作用しているものであるが、人格者じゃなくても運良く出世することはできるし、傲慢な者であったとしても血筋を理由に出世することも可能である。

 要は、人格者イコール出世できるという考えは捨てた方が良いし、人が作り出すシステムに完璧なものはなく、往々にして、抜け道や悪用のリスクをはらんでいることになる。

 だからこそ、そのシステムが健全に、社会や人々にとって本当の意味で良い動きをしているのか、ということを何度も何度も本当に正しいのかを疑問に思い、考え続けないといけないし、いろんな考えを吸収し、それが本当に正しいのかをいろんな視覚から見ていかないといけないし、自分が完璧で正しいと思ってはいけないものなのだ。

 これを言うと、自信のない者やら、何が本当に正しいのか、というイラつきの感情を抱く者がいるだろうが、これをすれば大丈夫という方法など本当の意味でこの世には存在しない。するわけがない。

 そんなものだと判別する方法を持ち合わせていない人という存在が、そう安易に、楽な方法で、何も思考をしなくても良い世界を手に入れられると思うな、と問いたい。

 言い過ぎかもしれないが、何も思考をしなくても良い世界は、結局、何にも負け続け、搾取されるだけの存在に堕すことを意味しており、それは人類にとって良い選択にはなりえないだろう。支配する側においても、支配される側の双方においても―…。

 そのことの意味を理解できるか、どうかは支配する側にとって都合が良いことが実は真逆のものであることに気づく要因になるであろう。

 だが、そのことに気づけるかどうかは、学び続け、考え続け、悩み続けることでしか、手に入れる可能性を手にすることはできないであろう。

 さて、話が逸れたので、戻すとしよう。

 ラーグラは、礼奈の槍の攻撃を躱すと、少しだけ距離を取りながら、弓に天成獣から借りた力で形成された矢を番え、礼奈に視覚の外から礼奈の命を狙う。

 (さっさと死ねぇ――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!)

 ラーグラは心の中でこのようなことを言いながら、矢を放つ。

 矢は、礼奈の方へと向かって、邪魔な空間を切り裂くかのようにして進む。

 ラーグラも矢が向かっている方向を見ながら、礼奈に攻撃が当たることを願うのだった。

 「!!!」

 礼奈はすぐに危険を察知し、そっちの方に直感的に向くと、そこにはラーグラから放たれた矢が自身の方へと向かっており、数秒もしないうちに、当たる。

 そんなことがあったとしても、礼奈が動揺するようなことはない。

 すぐに槍を振るい、矢の軌道を逸らす。

 それも、長のいると思われる方向に―…。

 キン、という音を矢と接する時にさせながら―…。


 「うぉ!!!」

 長は驚くのであった。

 (おいおい、俺の方へと狙って来るのかよぉ~。抜け目がねぇ~な。あの嬢ちゃんは―…。ふう~、これでムキになったところで意味はないが、観戦すら命がけとは、どういう状況なのやら~。)

 長はそのように心の中で思いながら、礼奈への攻撃を一切しない。

 というか、する気もない。

 確かに、ラーグラの矢の攻撃をこちらへと向けられるようなことになってしまえば、反抗する動機になるであろうが、今の自分側の人間の被害を見れば、迂闊、行動するのは危険であるし、この依頼の成功かそうでないかはすでに決まっているのだ。

 そのように、長には見えているし、間違っている可能性は少ないと思っている。


 場所を戻す。

 (チッ!!! こんな簡単に対処されるなんて―…。クソッ!!!)

 ラーグラはイラつきの感情を見せてはいるが、そうであったとしても、自分が倒されるような可能性を一切、抱いていない。

 自分が礼奈を殺すという場面が頭の中を占めてしまっており、それ以外の可能性を考慮に入れるようなことができなくなってしまっているのだ。

 そんな状態は、いろんな意味で強さにもなるが、弱さにもなる。

 ラーグラは次の攻撃を考える。

 礼奈から距離を取りながら―…。

 一方で、礼奈は、冷静になりながら、ラーグラのことを観察したり、さっきまでの戦いを思い出しながら、ラーグラを倒すための方法を考える。

 (矢が武器だと考えると遠距離から攻撃を得意とするのは分かり切っている。そうなると、私の今までの戦い方を見て、敵の方は、必ず距離を取ってくるはずだから、こっちは離れるよりもできるだけ近づいた方が良い。大まかな方針はそれで構わない。)

 礼奈は遠距離攻撃を得意とするラーグラに勝つためには、ラーグラに近づく必要がある。

 自身が遠距離攻撃ができないわけではないが、それは凍らせるとか、水を使うという戦法ということになり、ラーグラ側に絞られるようなことになることは避けないといけない。

 一方で礼奈は、凍らせることによる勝利もしっかりと狙っている。

 それは、相手が気づかない状態を上手く利用するという感じで―…。

 ラーグラの方は―…。

 礼奈が少しだけ考えている間に距離を取ることに成功し―…。

 そこから矢を番え、礼奈に向かって放つ。

 今度はさらなる上の威力で―…。

 そして、さらにスピードを上昇させて―…。

 そのようなラーグラの攻撃に対して、礼奈は少しだけ反応が遅れる。

 礼奈本人もしまったという感情を一瞬ではあるが、抱くのであるが、そのような感情を逆に利用できることに気づく。

 それを利用して―…。

 「(アイス)結晶(クリスタル)(ウォール)。」

 六角形の透明な盾が展開される。

 先が尖っており、矢が衝突すると思われるところの厚さが一番厚くなるようにしている。

 これは、礼奈の直感によって展開されたものであり、かつ、「青の水晶」を無意識のうちに使って、拡大させたものである。

 そういう意味で礼奈は、何度も言うが、戦闘センスが天才的なものなのである。

 キン!!!

 矢が衝突する。

 その音がしており、ラーグラの方はそっちの方に夢中になってしまうのだった。

 長の方は―…。

 (ほお~、あれをほんの僅かの時間で展開するのか―………。こんなことされたら、攻撃のしようがないなぁ~。そして、ラーグラは気づいていないようだが、……そんなことをやっていたら、致命的なことになることだって十分にあり得るはずだ。戦いにおける大原則を無視するような輩はなぁ~。)

 長はしっかりと見えているようだ。

 だからこそ、ラーグラが夢中になっていることに対する警鐘を言葉にすることはないが、気づけというぐらいの念というものは送る。

 今のラーグラには通じないであろうが―…。

 それでも、自分で気づけることになるのが、ラーグラの本当の意味で成長に繋がるということに間違いはないのだから―…。

 そして、一方で礼奈は、ラーグラが夢中になっている間に移動をし終え、ラーグラを槍で攻撃できる場所にまでたどり着いていた。

 (…………夢中になりすぎ―……。)

 礼奈は槍で突きの攻撃をしようとする。

 その時、ラーグラは何かしらの気配を感じ、すぐに後ろへとジャンプしながら下がるのだった。

 ラーグラは気づく。

 「!!!」

 (………あの防御壁で防御している間に、俺の隙を突こうとしていたのか!!! ふざけやがって!!!)

 ラーグラからしたら悔しいことであろう。

 礼奈の「氷結晶壁」に夢中になってしまったことで、礼奈に隙を突かれそうになったのだから―…。

 自分が相手の防御技に夢中になるようなことをしてしまうことも加えて―…。

 ラーグラはそれだけ、強者に対して、憧れの感情を心の奥底で抱いているのだろうか。本人にもしそのような気持ちがあるのなら、気づいていないということにもなろうが、実際はどのようなものであるかは分からない。本人の確認も必要なことであろう。

 ラーグラの方も、礼奈に隙を突かれたことに対して、いつまでも悔しがっている暇はないし、兎に角、次の攻撃をしないといけない。

 だからこそ、動こうと考えるが―…。

 (短距離であったとしても無駄。ここで決める!!!)

 ラーグラは短距離では凍らされるからこそ、回避したのだが、攻撃ができるのなら、そこまで気にする必要はない。

 だからこそ、弓を構える。矢を番えた状態で―…。

 それは、ここからの近距離でも攻撃を礼奈が躱すこともできずに、始末することができるというラーグラの頭の中の計算がはたらき、そのようにさせる。

 矢を放とうとするが―…。

 「これだけ、距離を詰められれば十分―…。ジャンプして!!!」

 礼奈は急にそのようなことを大きな声で言いだすのだった。

 礼奈は気づいていた。

 (「水流波」で出した水は消えていない。なら―…。)

 礼奈は気づいている。

 それをラーグラに聞こえるように言う必要はない。

 相手に有利になる情報を与えるようなことはしないし、これが自分にとって不利になる情報であることが分かっている。

 そして、相手に考えさせてやる時間を与える必要はない。

 思い立ったら、すぐ、実行する。

 これは、戦闘センスが天才であるからこそ、できる芸当と言っても過言ではない。

 「氷の領域(アイス・テリトリー)。」

 凍らせるほどができる水がここにはいっぱいにあるのだから―…。

 それに気づいたからこそ、できる戦法。

 ラーグラがここで気づいたとしても意味はない。

 (……ジャンプをしてしまった。)

 そう、ジャンプをしてしまった以上、ラーグラは礼奈の今の攻撃を回避することなどできない。

 水に足を僅かにつけた瞬間―…、凍らされるのであった。

 (これで、脱出は不可能。)

 礼奈は心の中でそう言うのだった。


 それを見た長は―…。

 (これで決着はついたな。)

 そう判断すると―…。

 「降参だ!!!」

と、強く叫ぶのだった。

 こうして、略奪団と瑠璃たちが護衛するキャラバンとの戦いは、瑠璃たちの勝利で終わるのだった。


 【第158話 Fin】


次回、この二人はなぜに―…、に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していきたいと思います。


中途半端な感を感じる人もいるでしょうが、略奪団の長としての全滅は何があっても避けないといけませんからねぇ~。砂漠のど真ん中では―…。

ということで、中途半端となってしまいましたが、イスドラークではそれはほぼないと思います。

では―…。

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