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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
750/761

第157話-6 VS六人の護衛

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 一方、場所はかわって―…。

 イスドラーク、時は前後する。

 石で造られたログハウスの中に、男と少女が中に入っていく。

 「お邪魔します。」

 男の方がこのように言う。

 男としては、知り合いというわけではないが、それでも、数回ぐらいは顔を見たことがある以上、このように簡単にログハウスの中に入れるのだった。

 ログハウスの中では―…。

 「何の用だ、アーサルエル。」

 すでに、年老いているが、そこには強い意志を感じさせるほどの眼光の鋭い老人がいる。男性の老人であることが分かるだろう。

 近くには、頭に巻くことによって日よけをすることができる物が置いてあり、日頃から使っているのではないか、ということが分かる。

 そして、その老人が読んだ男の名前の方は、アーサルエルという。

 アーサルエル何かは分からないし、ないのかもしれない。

 アーサルエルは自分の名前を言われたことに驚くようなことはせず、用件を言い始める。

 「イスドラークのスラム街のボス。いや、過去にイスドラークの重鎮が一人であったが、領主と対立してしまい、敗北してしまった敗残兵のごとき爺さん。そんな爺さんだからこそ言う。クーデターや革命を起こすのはこちら「人に創られし人」の一族の側から言わせれば構わないが、俺らが上手く協力できる保証はない。出せるのはここにいる俺とアイラの二人、それに加えて、限度は二人だろうが、来てくれるかはランドロの状況次第だ。残念だったなぁ~。」

 アーサルエルからしたら、この爺さんがどんな金を積んだとしても、出せる数は四人が限度だ。

 このスラム街のボスと呼ばれるような男であったとしても、日々の生活での資金はそこまで多くはない。そうである以上、依頼できる人数にも限りがあるし、数も少なくなるのは仕方ないことである。

 爺さんと言えども、アーサルエルの「ざまあ」のような言い方をされたところで、悔しがるような気持ちにもなれない。そんな気持ちがあったとしても表に出すようなことはしない。

 それだけ、修羅場を潜り抜けているのだから、ちょっとやそっとで動揺しているようでは、人を率いるようなことはできない。人生の経験とは、こういう場で活きるものである。

 「アーサルエルの言っている通りだな。だが、現状で一番強いアーサルエルをこちらへとよこしたのだ。ランドロ(あの男)があの依頼金の中でここまでサービスをしてくれたのだ。感謝以外に何もないだろ。数以上に、時に、質がものを言う場合がある。知っての通り、あの領主は、サンバリアから危険な兵器を買ったという。あいつの相手は、普通の人にはできない。なら、お前らを使うしかない。そのための金なら出せるだけ出すさ。あれを抑えつけている間に、領主から実権を奪うことができれば、イスドラークは再度、繁栄の道を切り開くことができる。スラムもまた、活気を取り戻すことができる。あんな水の無駄遣いをした墓標すらなくても―…。」

 老人から言わせれば、今、イスドラークの中にある大きな宮殿。

 そこは、今のイスドラークの領主がなくなれば、墓になることが決まっており、さらに、そこでは大量の川から引かれた水が使われており、スラム街への水の供給すらできていないのだ。領主の狙いであろうが、領主はスラム街を潰す気満々であることが窺える。

 スラム街の人間は、すでに、そのようなことに気づいており、いつ、革命が発生したとしてもおかしくはない状態だ。

 生きるための水が真面に供給されていないのであれば、それを手に入れるために普段なら不法だとされている手を打たざるを得なくなる。

 為政者は、人々の生活のために必要な物を彼らの生活を破壊しないようにして、提供しないといけない。貨幣経済であろうが、そうでなかろうが必要なことなのだ。

 そのことができない為政者は、力、特に武力によって人々に圧力を加える続けるか、為政者が担う政権を滅ぼされるという道しか残されていない。詐術も永久には通じないことだけは、しっかりと理解しておいた方が良い。

 騙され続ける愚かな人間はいないわけではないが、その数は圧倒的に少なく、ほとんどは騙されていることに気づくものだし、何となくの違和感というものを感じやすい。

 その少数の圧倒的に騙され続ける人の声が大きく影響力のあるものであれば、騙す者にとっては良い世の中になるだろうが、結局、社会における発展というか、繁栄というものは望めない。

 騙す人間は、本質を見るということを自分のためだけに使い、自分の利益を最大化し、他者の利益を奪ったとしてもやろうとする傾向があるので、最後は、自分の利益すら足を引っ張られる結果となり、損をするだけの結末を迎えるだけであろう。

 その期間がどのくらいになるのかは、状況によりけりであろうが―…。

 ゆえに、為政者は、正直かどうかはさておき、人々の本当の利益は何か、ということを常に考え続け、自らの理念が間違っているのではないだろうか、ということで悩み続け、人々の前では自信をもって言わないといけないのだ。裏ではマイナス面について考え続け、表では自らが正しいと主張しないといけないのだ。

 そういう意味では、その矛盾につき当たることができるかが、為政者としての資質があるか、どうかの境になるだろうし、自分は正しいとしか思っていないような人間や、思い込みが激しく、他者のことを無視するような輩には為政者としての資質はないということになる。

 それを判断するのであれば、部下の気持ちが分かる人なのかどうか、そういう面を一つの基準として判断するのが良いであろう。下の者への思いやる気持ちがあれば、国民やその国に住んでいる人々への配慮ができる可能性を持ち合わせているかもしれない。

 まあ、一つの基準であるので、その基準ばかりに固執するのはあまり良くないことだし、別の基準も探していけば、見つかるかもしれないのだから―…。

 さて、話を戻し、このスラム街のボスと呼ばれている存在も、今の言葉において、領主というのは、自分の権力のためなら、何でも思い通りにしようとする傾向があることが分かるだろう。

 そのことによる犠牲者が発生することも考慮に入れることなく―…。そういう意味で、以上で述べたように、為政者としての資質を持ち合わせているとは思えないし、スラム街のボスからしても、今のイスドラークの領主は自分達の支配者ではない、と思っているのだ。

 スラムが発生するのは、為政者による政治の失敗と、力量不足によるものであり、その解消のためにはスラム街を潰すのではなく、スラム街で生活している人間の多くの生活を悪い方向に安定させるのではなく、十分な収入を得られるようにし、彼らの生活を良い意味で安定するものにすることである。そのための職の保障とか―…。どういう面で才能があるのかを見極めたり、その才能を生かすためにはどうすれば良いのか、必死になって探すようにしていくことだ。活躍する場所を提供するのも大切だ。

 これらのことは悪用も可能であるので、そのように悪用されていないのかを監視するための仕組みもしっかりと築いておく必要がある。

 人は良いこともするが、悪いこともするし、善悪は主観的なものでしかない以上、その主観が社会的に良いのか、悪いのかを判断する必要があるからだ。

 さて、話を進め、スラム街のボスと呼ばれる存在は、イスドラークにある領主の宮殿と思われる場所は、今の領主の死後には墓標になるとさえしているが、この人物からしてみたら、水の無駄遣いにしか感じられないし、そんな墓標よりも人々の生活を良くしろと面と向かって言いたいぐらいだが、それを言える状態ではないし、聞いてもくれやしない。

 今の領主は、人々の生活よりもイスドラークという都市の美化ばかりに目が眩んでいるのだ。自分が一番醜いことをしているくせに、それをスラム街に責任を押し付けるようなことをして、自分が一番美しくなるべきだと思っている。

 要は、本当の美しさを知らない存在が、今のイスドラークの領主であるということになる。

 スラム街のボスは、今のイスドラークの領主とは会話できないと思っているし、その判断は間違っておらず、このふざけた現状を打破したいとさえ思っている。

 人々のためになるかどうかは分からないが、それでも、今の現状を受け入れ続けられるほど、良いとは思えることはないのだ。

 このままでは、イスドラークのスラム街の人間たちは、今の領主の美化のために殺されたとしてもおかしくはないのだから―…。

 「だろうな。砂漠の中継都市であったとしても、川があるとしても、得られる水には限度がある以上、こういう都市の為政者が水の分配で人々に上手くできない以上、その為政者が支配者である理由はない。さっさと潰れてもらった方が良い。それができなければ、イスドラークに住む多くの者達が馬鹿のせいで、生命の危機になるだけだ。それを望むような輩は、領主から僅かでも利益が得られたいと思っている自分が救われたいだけの輩だ。自分が救われることもないだろうに、なぜ、馬鹿な真似をするのか。そう思ってしまうがな。」

 アーサルエルの言っていることは、この地域の為政者にとっては当たり前にしないといけないことである。

 砂漠の中間にある都市であり、近くに大きな川があるが、その川から引くことができる水には限度というものが存在するし、水は貴重なものである以上、その配分をしっかりとすることができる者は支配者として祭り上げられることになる。

 水の配分が上手くできなければ、結局、その支配者としての意味はないし、自分達が飢えているのではないかと気づけば、人心が乱れ、反乱となってもおかしくはないのだ。

 その反乱の可能性を無理矢理押しつぶすことは可能であろうが、結局、問題の先送りなだけでしかなく、問題にしっかりと向き合うようなことが本当の意味でできなければ、意味をなさない。悪化させるだけだ。

 そういうことを考えると、アーサルエルの言っていることは、間違っているようには感じられない。

 結局、人々の利益を及ぼす存在にしか、ついていかないし、そのように思わせ続けるだけでは意味をなすこともないだろう。

 さらに付け加えると、どんなに悪政を強いる領主の側につく人間はいるものであり、国家においても当然、そのような関係が成り立つ。

 それは自分が救われたいという状態に追い詰められ、自分以外の他者のことが見えなくなってしまっており、それだけ自分が絶望的な状況にあるのだ。

 だけど、そんな状態にあったとしても、悪政を強いる人間が決して、そのような絶望的な状況にある人を救ってくれるようなことは、本当の意味ではない。なぜなら、利用するだけ利用すれば良いし、自分の支配基盤を確立させれば、特に、権力や影響力の類がなければ、簡単に潰すことができる便利で都合の良い存在でしかないのだから―…。

 ゆえに、自分だけの得ばかりしか考えられない状況に陥った場合には、自分の得ばかりを考えるようなことはなるべく避けるようなことができないだろうが、相手の得というのもしっかりと考えた方が良いし、社会の得、および、いろんな得を考えた方が良いし、自分の置かれている状況をしっかりと説明した方が良い。

 変に悪政をおこなう為政者に味方するよりも、世間に自分の惨状をしっかりと正直に言った方が共感されることもある。その時、自分の意志は強くもっておくことが絶対に必要である。

 アーサルエルは、自らだけが救われようとしている人間のことを哀れに思いながら、そいつらに良い未来がないということになったら、そいつらは気づくのだろうか、という呆れという感情も入り交えながら―…。

 「人は誰しも、分かっているようで分かっていないもんだ。間違いを犯さない人間はいないように……な。だが、革命を起こすなら、確実に成功させないといけない。そうしなければ、奴に……スラム街を潰すための好機を与えることになる。それだけは避けないといけない。だから、口外することだけはするな。」

 スラム街のボスと呼ばれる男は、覇気を強めて言う。

 それは、絶対に守られないといけないことだし、今のイスドラークの領主側にスラム街を潰すための口実を作らせてはいけない。

 そのような好機を与えてしまえば、確実に、凄惨なことになるのは分かっているし、領主側をさらに調子づかせるようなことになる。それは間違いの始まりにしかならない。

 そういうことが分かっているからこそ、慎重に、慎重になるのだった。

 「口外しないとは約束はできんが、知らない奴に対して言う気はない。それと―…、革命を起こそうが起こすまいが、今のイスドラークの領主のもとでは、多くの者が死ぬ。どんな選択肢を選ぼうがな。だからこそ、そいつらを踏み台にする結果となったとしても、繁栄させないといけない。犠牲者を忘れずにして―…。」

 アーサルエルの言葉にはどこかしらの深みがあった。

 現実の経験から来るものであろうし、それと同時に、経験から導き出したものであることが分かる。

 今のイスドラークの状況を考えれば、何かしらの犠牲なしに救われるようなことはない。

 その犠牲が無垢の民であったとしても、だ。

 この世界が残酷なものだと思っているのなら、それはある一面ではそうであるし、ある一面ではそうでないと言える。

 だけど、今は、残酷なものだと思っても仕方ないし、当たり前の反応だ。

 ゆえに、スラム街のボスに突きつける。

 お前は、誰かを犠牲にしてでも、今のイスドラークを救えるのか、と―…。

 その言葉に対して、スラム街のボスは考えながら、答えを出す。


第157話-7 VS六人の護衛 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていくと思います。


結構、重い感じにはなっていますけど、世の中、思い通りにならないことが多いし、すべてが救われるのはかなり珍しいかは分かりませんが、絶対にすべてのケースで当て嵌まることではないということだけは確かなので―…。

辛気臭いのかもしれませんが、そういう現実を受け入れながらも、より良い結果を目指すしかない。それは時に妥協しないといけない場合もあれば、してはいけない場合もある。

その判断は難しいものなのです。

なので、生きるということは大変なことです。

少し、真面目になり過ぎたので、ここまでにします。


では―…。

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