第157話-3 VS六人の護衛
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
瑠璃からしたら苦痛でしかない。
瑠璃はここまで、砂漠の戦いの中ではそこまで、ダメージを受けていなかったのだ。
そういう意味ではここで、初めてダメージを受けたことになるのだ。
瑠璃からしたら、まだ、略奪団のメンバーは数が多くいるし、援軍が湧くのではないと考えると、ダメージを受けるのはなるべく避けないといけない。
バースデンからしたら、三人組の一人であると分かっているからこそ、大ダメージを与えるだけで終わらせるようなことをしてはならないことを理解している。
ラーグラから依頼されたのが、三人組の始末であり、瑠璃の命は奪われないといけない。
このような少女を殺すのは忍びない気持ちにはなるが、信頼のためには、時として、残虐なことをしないといけない。
砂漠という過酷な世界で生きていく上では、逃れることができない、ということを理解しながら―…。いや、思い込みながら―…。
このように思い込んでしまうのも、自らが生きている環境が影響していることは間違いないであろうが、逃れる可能性はあるのだが、それを手に入れるのが難しい場合、不可能と感じる場合も往々にしてあるので、努力不足だと断じるような自己責任論者の言い方には問題しか含まれず、物事を手に入れることは全てが簡単なことではないことを理解する必要がある。
人という生き物は簡単も難しいも主観的なものでしかないが、その主観的なものの二つのどれに分類できるかどうかはその人の感じ方もあるし、行動によっても変化する。それだけに、自分には簡単なことであったとしても、他者にとって難しいことは十分あり得ることであり、そこにも配慮しないといけない。
自分基準で、他者に対して、自己責任を押し付けるような人間は、たとえ、自分の責任である物事に対して、無責任なことを言って、責任逃れをするような人間であり、決して、人々を導けるような存在ではなく、返って、社会を崩壊させるようなことをしかねない存在でしかない。
そんな人物を主導的な立場にはしない方が良い。
以上で述べたように、最悪な結果が導かれるだけなのだから―…。
それで、傷つき、犠牲になるのは、平穏に暮らしている人々なのだから―…。
さて、話を戻し、バースデンは、右腕を引っ込め、再度、大きな一撃を与えようとする。
(残念だが、ここで死んでもらう。)
そのようにバースデンは思いながらも、すぐに、パンチで攻撃しようとする。
その威力は、人を殺したとしてもおかしくはないものである。
瑠璃の方も衝撃が強かったのだが、それでも、天成獣の宿っている武器を扱っているので、何とか気を保つことができている状態だ。
瑠璃の方も、バースデンが何かをしようとしていることについては、しっかりと気づいている。
(…………………………。)
心の中で言葉にすることはできていないようだが、それでも、自分がしないといけないことはしっかりと理解している。
攻撃がくる。
避けないと!!!
まさに、そのことである。
だけど、高速移動できるという感じはしなかった。
ゆえに、使うしかない。
使いたくないわけではないが、あまり人前で見せるようなものではない。
瑠璃は小さな声で―…。
「赤の水晶。」
その言葉はあまりにも小さく言っているので、バースデンには聞こえなかった。
瑠璃の意図は、空間移動するという感じであり、バースデンを巻き込まないようにして、瑠璃が別の場所へと僅かばかり移動する。
相手の方は何かしらの変な感覚を得るだろうが、それでも、バースデンの攻撃を回避できなかった場合のダメージを考えれば、仕方のないことである。
ここで意地をはっているような暇はない。
相手を倒すために、必要なことであり、自分の命を守るために、必要なことであるのだから、しないわけにはいかない。
バースデンの右腕は、パンチするための軌道を描き、瑠璃へと当たろうとした瞬間、瑠璃が空間に飲み込まれるようにして消えるのだった。
(!!!)
バースデンは驚くしかなかった。
その空間には、本能的に触れないようにした方が良いと思い、素早く距離を取るのだった。
直感的なものであるし、バースデンからしたら、自分の今のこの選択が間違いのようには感じられなかった。
違和感のあるものには触れず―…。
その方が生き残れる確率が高いと判断してのことである。
(この中に消えたのは間違いないが、この中に入って、追うような選択は止めた方が言いな。むしろ、辺りを見回して、いるかいないかを探った方が良いな。)
バースデンはそのように判断する。
バースデンは、無理して追うようなことをして、相手が得意とするテリトリーに入るのは危険なことでしかない。
そのようなことになってしまえば、自らの優位が逆転されてしまうことは十分にあるのだから―…。
だからこそ、周囲を見回しながら、瑠璃がいるのか、それとも、いないのかを探り、見つければ始末へと向かい、そうでなければ、他の三人組の者を探し、始末する。
そのように行動する。
バースデンがしなければならないことは、三人組の始末であり、他の者を始末すれば、あっさりと姿を現わすかもしれないし―…。
そんなことを思いながら、無理をしない範囲で、自分にできることをやるのだった。
一方―…。
「ぐわぁッ!!!」
李章は攻撃を受ける。
砂を固めて作られたと思われる棘のようなものによって―…。
「よそ見をするなよ―…。あっちの小娘は、バースデンによって倒される。そして、お前は、ギルカースドによって殺される。それだけ。」
ギルカースドは、李章がバースデンのいる方向、正しく言えば瑠璃のいる方向を見ていたので、頭にきたのだろう。
自分を無視されたということによって―…。
ギルカースドにしてみれば、自分が戦っているのに他の相手の方に視線を向けるのは、侮辱されているとしか思えないし、自分が李章よりも弱いということを暗に言われているような気がしたからだ。
ギルカースドも冷静を完全に失っているわけではないが、傍から見れば、冷静さを失っているようにしか見えない。
そんな感じだ。
李章の方からしたら、自分の油断であることは分かり切っている。
それと同時に、李章には瑠璃を守らないといけないという気持ちが強く、ゆえに、自分が不利になるような状況であったとしても、瑠璃を守るという第一に優先しないといけない行動をとるのだった。
そのせいで、攻撃を受けているのなら、意味のないことでしかないが、李章の行動原理の中心は瑠璃なのだから―…。
それほどに、恋というものは人の優先順位を狂わせるし、それが時にとんでもない力を発揮させることができもするのだが―…。
今の場合においては、とんでもない力を発揮させているような感じではないのは確かだ。
李章は、ギルカースドの言葉には反応せず、警戒しながら―…。
(兎に角、瑠璃さんの方にいかないと―…。「緑の水晶」が危険ではないと言っているけど、攻撃を受けること自体がいけないことです。だから―…。)
李章は、瑠璃のことになると、このように「緑の水晶」が危険を知らせるようなことがなくても、瑠璃がピンチならそっちの方へと向かってしまうのだ。
そのせいで、自分をピンチにしているのだから、物事をもう少し俯瞰的に見た方が良いし、周囲の意見もしっかりと聞いた方が良いと思えるのだが、瑠璃のことになると、目の前のことが瑠璃一色となってしまい、思考判断力を駄目にしているのだから、そういう面があることに気づいた方が良いと思う。
気づいても正しいのだと頑固になる可能性もあるだろうが、そのようなことにならないことを祈りたい。
普段の李章なら、「緑の水晶」の意見を汲むのであろうが―…。
一方で、ギルカースドは―…。
(つ~か、私の話を聞け、と思うのだが、一切を無視しやがって―…。許せねぇ~。)
李章の態度は許せるようなものではない。
ギルカースドの気持ちは分からなくもないが、それで、冷静を失っているように周囲に思わせるようなことを、策なしにはしない方が良いのだが、こちらも駄目であろう。
ギルカースドもまた、相手にされていないことを嫌うような性分である以上は―…。
そんな噛み合ってもいない戦いで、ギルカースドは動き出す。
「砂芸術―…、砂の鋼鉄腕。」
砂によってできた人の腕の形をしたものが造られる。
それは、決して鋼鉄というわけではないが、鋼鉄のような固さへとなる。
李章がその攻撃を受ければ、かなりの危険な状態になるのは確かであろうが、瑠璃のことで頭がいっぱいになっている以上、今の自分の状態がどれだけ危険なことなのかは気づいてはいない。
そんな馬鹿なことがあるのか、と思う人もいるだろうが、人は決して、全ての面で合理的な存在であることはなく、合理的な基準もすべての面で適用できるものではなく、その基準にはどうしても欠陥というものが存在し、合理的だと思っていたことが最悪の結果になるということから逃れることはできない。
なぜなら、人はそもそも、完璧にも完全にもなることができない存在でしかないのだから―…。
そうであるからこそ、人は何かしらのミスを免れるようなことはできない。ミスをしない人間がいないように―…。
ミスしている面をカバーして、どうにかして成功というものへと導くことしかできない。その成功もまた、失敗へと道に続くのであるが―…。
結局、成功も失敗も、未来のある地点での結果としての判断でしかなく、永遠というものにおける結果になりえないのだから―…。
そして、ギルカースドは―…。
「ぶっ潰されろ!!!」
ギルカースドが展開した砂の腕は、上から李章を殴りつぶすかのように振り下ろされていく。
李章は―…。
ドォン!!!
第157話-4 VS六人の護衛 に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
遅れて申し訳ございません。
反省です。
では―…。