第155話-2 もっと不利になる?
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
なぜ麻薬のようなものなのか?
その代償が人の命なのだから―…。
人の命を軽視しているのであれば、今、言っていることに対して、罪の意識を抱かないだろうし、抱くことすらない。
だけど、この男性は罪の意識を抱いている。
「そんなこと、私が許すとでも―…。」
少女に言われ、自分が言っていることの意味を理解しているからこそ―…。
「ああ、許さなくても良い。だが、何かしらの争いごと、戦争の類が起これば、何かしらの犠牲が発生するのは避けて通ることはできない。俺は数多くの戦場を経験したからこそ言えるのだが、何度もそのような、人の命が奪われていく光景を見てきたし、奪ってもきた。だからこそ、革命もまた内戦という戦争に近いものであれば、誰かしらの犠牲は避けられないし、俺の言っている言葉通りに俺も革命を起こした側で参戦することは厭わない。戦争をしたいと肯定的に言いながら、自分はその場所から離れ、自分の命が奪われないを良いことに、平然と戦争を煽っている輩よりも自分は少しだけマシだと思える。」
男の言葉からは、自らの今までの経験から導かれるものがあるのだろう。
戦争は悲惨なものであるし、誰かしらの命が奪われることを避けることはできない。
そして、革命においてもそうだ。
人の命が失われることがある可能性のあることに対して、推奨しているのだから、自分がその場で参戦しないようなことはしない。
それをしてしまえば、戦争を煽り、自分だけは戦場に赴くこともなく、責任すら取ろうとしない輩と同じになってしまうからだ。
自分も命を奪われる可能性のある場所にいるのは、最低限の当たり前のことである、と男は考えている。
そんな男からしても―…。
「だけど、俺も革命や戦争を望んでいるわけじゃない。平和で過ごせるのなら、それに越したことはない。だけど、このイスドラークは領主の悪政のせいで、このスラムは存続の危機に立たされていてなぁ~。だからこそ、革命をスラム街の人間が起こしたとしても、何も間違いはないし、領主自身が公式で声明を出しているからな。そうじゃなきゃ、革命を起こした方が良いなんて言う気もない。命を軽視すれば、ろくなことにはならないからなぁ~。」
と、続けて言う。
男からしたら、何も理由がないから、革命が起こって欲しいなんてことは言わない。
革命が起こるということは、それだけの何かしらの不満がかなりの量溜まっているということだ。
どうしてそのようなことになるのかはいろいろな理由があろうが、不満というのはどんな体制であったとしても、善政であったとしても溜まらないことはないものであり、避けるようなことはできない。
だけど、悪政と善政を比べれば、善政の方が溜まりにくいものであることだけは確かであるようだ。それでも、善政と悪政の判断は主観的なものに過ぎず、善政だと為政者側が思っていたとしても世間からすれば悪政であることは往々にしてある。そうである以上、自らの判断は正しいのかを疑ってみる必要がある。
疑うことは信じることと同じように必要なことであり、疑うことを悪者扱いしすぎるのは良いものだとは言えない。信じるために疑い、疑う気持ちがあれど、信じる。そのことを忘れてはいけないし、詳しいことを説明することはできない。
要は、疑うことと信じることの使い分けはしっかりとしないといけないし、片方ばかりになっては良い結果はもたらされないということだ。
時にバランスをとることは重要なのである。
そして、男からしたら、人の命が軽視される場所を何度も見たことがあるし、そのようなことをする奴らの自らに対する優越感、別の言い方をすれば、他者を見下すような態度を見てきていることから、男の中にも無意識なのであるが、その影響はある。
だが、男はそれを自身の中で思っていることを否定したいし、そのような感情を持っていないと言いたいが、それは不可能なことであろう。
この世に絶対的な評価はなく、何かしらの基準で二つもしくはそれ以上を比較することによって、優れたものを判断している以上、どうしても優劣の概念から逃れることができず、その概念のデメリットとして他者を見下す感情を抱かせるには十分な結果を導いているのだから―…。
だけど、しっかりと比較することは、有事の時に何を優先すべきを素早く判断させることができるようなこともあり、これはメリットとデメリットの双方を含むものであり、メリットばかりを強調するようなことになってはいけない。加えて、メリットばかり見るような偏った見方をしても意味はない。
このような偏りとバランスが良いというのは時代ごとに変化するので、その変化を判断するのは難しいことであり、明確な基準があるわけではないので、注意が必要である。思い込みならないように気をつけろ、ということだ。
そして、男は少女の思いを無視したいわけではないが、世の中、何でも理想論通りになることはない。だが、理想論だと言って馬鹿にすることもできない。
理想論のようになるのが一番良いことなのであるが、自分と自分以外の影響によって世の中、いや、時代の流れというもの、社会や自然に現れるある未来の一地点における結果が発生するので、どうしても理想論とのズレというのも発生する。
さらに加えるなら、人は完璧に物事を把握するようなことができないからこそ、理想論というもの自体にも問題点や欠点というもの、見落としが存在することになる。どんなものでもそうであろう。
ゆえに、理想論は理想通りにはなりにくいし、なることの方が稀である。
だけど、理想論を馬鹿にすることができないのは、理想論が社会や自然全体にとっての全体の利益を最大化することができるからだ。厳密に言うのであれば、語弊があるので、詳しく言うことにする。ここでの全体の利益の最大化は、誰一人もしくは何かしらの利益を本当の意味でマイナスにすることなく、プラスにしていくことができ、そのような中で利益を誰一人もしくは何かしらの利益をマイナスにすることなく最大化させることができることである。要は、ご都合主義のように聞こえるかもしれないが、このようなことは完全にないわけではないし、存在するということだ。
一方で、そのことを言いながら、平然と嘘を吐く人間もいるので、気を付けないといけない。これを見破るのは大変なことであるが、騙す人間は何かしらのデメリットを言わなかったり、自分は凄いとヤケに見せようとする癖があるし、都合が良い言葉を言いながら、自身の目的にとって不都合な存在を排外的な感情を持ち合わせて言うようなことがある。それが判断基準の一部にはなるだろうし、判断基準はいろんな視点があるかもしれないので、判断基準の全部というのはあまりよろしくないことである。
男はスラム街の方を歩きながらも、それがイスドラークの失敗、闇の面の強さを表明するかのようになっていることに気づいている。
「分からないことはないけど―…。」
女からしてみれば、理想論のようになることを望むし、誰もが争うようなことは避けたいと思う。
銃を持った時、打つ時の恐怖を知っているか。
誰かを殺すのではないと思った時の恐怖を知っているか。
そんなことを知らずに、戦うことを肯定するのような奴らこそが本当の意味での平和ボケなのではないか。
もし、戦うことを正当化することを言っている人がいれば、このように反論するぐらいの気持ちを持ち合わせているように、戦うことを好んではいない。
それでも、戦わないといけないことがそれを判断するのは自分自身だと思っている。
誰かが言うからそうなのだと思っているのであれば、どれだけ愚か者であるのかをいろんな人に教えられているし、訓練の中でそのようなことに気づくことがあったからだ。想像という面で―…。
現に、この少女に戦争の無意味さを教えていた人間は、戦争で戦ったことがある人間であるからこそ、戦争がどれだけの人命を奪うものであるかを知っているからこそ、戦争は良くないものであると自らの経験で強い言葉で教えていた。その言葉に意志が宿っていたからだ。猛者だからこそ言えることかもしれない。
そうであればこそ、その強さを理解できる人間にとっては、強い印象を心の中で与えることができるのだ。
「頭では理解できても、感情では理解できていない、ということか。まあ、それで良い。経験によって理解するのと、想像で理解するのとがあるからな。そして、着いたぞ。」
男は、少女が男の言っていることがどういう意味であるのかを、頭で理解できているのは分かっているが、感情では理解できていないということの理由をある程度推測することができる。
どうしてそんなことができるのかと言えば、少女の表情を見れば、簡単に察することができる。
男は戦場で戦うことが多かったからこそ、他者の機微というものを知っておかないと、判断を誤る可能性を上げることになるし、その可能性が上がるようなことは自らの命の終わりを導く結果となるのだから、嫌でも身に付けないといけない力であるということを理解している。理解させられていると言ってもおかしくはないだろう。
戦場で生き残るなら、自分の状態も他者の状態も、戦況もしっかりと理解しておかないといけないし、裏切ってくる人間を察知しないといけないし、そういう能力などを要する。
男からすれば、少女の思っていることを馬鹿にする気持ちになれないが、現実は理想論通りにならない以上、自らの手を汚すことになったとしてもやらないといけないことがある。その覚悟だけは、しっかりと持ってもらわないといけない。
これからのことを考えると―…。
そして、二人は、目的地へとたどり着いた。
この場所はスラムにしては珍しくログハウスになっている場所だ。
どうして、スラム街にこのようなログハウスがあり、綺麗な様相になっているのか?
それはいずれ分かることになるかもしれないことなので、今は省略することにしよう。
「ここが―…。」
少女の言葉は、初めてやってきた場所だからこその言葉であろう。
スラム街にログハウスという違和感を感じながらも、心の中でも言わないのは、今は任務を果たすことが重要なことなのであろう、と判断したからこそだ。
「ああ、ここにスラムの多くの者が尊敬している爺さんがいる。その爺さんに警告することと、同時に、その息子さんから爺さんが護衛をして欲しいと言えば、依頼をするように頼まれているからな。まあ、ここの爺さんがそのことを望むとは思えんが―…。」
男からしたら、何回か来たことがあるので、このスラム街で有名な人が自らの息子の言うことを聞くかは分からない。そうである以上、この依頼が成立する可能性は低いとみている。
男からしたら、依頼を受けてもらった方が良いのだが―…。
そんなことを思いながらも―…。
「行くしかない。」
男の言葉とともにログハウスの入口へと向かうのだった。
第155話-3 もっと不利になる? に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していきたいと思います。
この男の話が深すぎる―…。
この深さをまだ、私自身は上手く表現できていない。反省じゃぁ~。
では―…。