第154話-5 膠着する戦い
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
そんななか―…。
(やっと抜け出せた―…。)
そのような思いを抱く人物が一人いた。
そして、すぐに攻撃の態勢へと移行するのだった。
(殺す!!!)
そのような思いを抱きながら―…。
目には、復讐心を抱きながら―…。
恨みの気持ちと表現した方が良いのかもしれないが―…。
そんなことに気づかないわけではないが―…。
そして、長を再度凍らせることに成功した礼奈は、長の方を警戒しながらもそれ以外の警戒もおこなう。
どこから敵が現れるのかは分からないのだから―…。
(………………………………………………………………………………。)
考える時間はない。
言葉にする時間もない。
油断するような気持ちにもなれない。
少しだけ緩めるようなことができたとしても―…。
そんななか、礼奈が自身に気づいていないと思ったのか―…。
(チャンス!!!)
恨みの感情を礼奈に対して抱いていたとしても、冷静さを失ってはいなかったようだ。
自らの武器である弓を構え、礼奈を狙う。
矢を自身の天成獣から借りた力で作り出し、それを弓に番え、礼奈の方へと向かって―………。
放つ!!!
(死ねぇ!!!)
復讐心の塊のような存在となっているラーグラ。
自分の実力がないにも関わらず、プライドが高いということが災いしているのだろうか。
いや、天成獣の宿っている武器を扱うことができるということを知ったという経験によって、そのようなことになっているのか。
その答えをここではっきりとさせるようなことはできないけど、ただ、分かるのは、ラーグラのプライドなど、この場では意味をなさないということである。
「!!!」
礼奈は気づく。
ラーグラの方向へ自身の視線を向けて、すぐに槍を用いて、矢の軌道を逸らすのだった。
それを見たラーグラは悔しそうな顔をする。
(クソッ!!!)
と、心の中で思いながら―…。
ラーグラからしてみれば、さっきの奇襲は気づかれる可能性が低いだろうと見積もっていたし、気づかれていないのだから、攻撃は通るはずだという思い込みがあった。
その思い込みも事実だという未来において確定的になっていない状態を確定的なものと認識してしまうことはある。決して遠い未来のことではなく、近い未来において―…。
なぜなら、人は無意識のうちに経験か何かは分からないが、頭の中で計算していたりするのだ。これぐらいの勢いで投げれば、これだけ飛ぶであろうとか、などのようにして―…。
そのように計算するという名の予測をすることによって、自分がどのようなことが可能であり、不可能であるのかをある程度推測することが可能なのであろう。
要は、計算することにより、自分のできることできないことを理解し、諦めるにしても、諦めないで抵抗するにしても、対処するにしても、自分の次の行動を決める大事な基準となっているのであろう。
そういう意味では、人は計算できないのではなく、計算している理由を見つけ出すことができていないだけに過ぎないのかもしれない。そう、この世界の物理法則を理解することは、我々の無意識の中にある計算を理解していることに過ぎない。それに加えて、周囲がどうなっているのかを計算しているのかもしれない。
そのことによって、世界のほんの一部が計算によって理解できることを、認識しているだけに過ぎない。決して、計算が世界の全てを証明することにはならないであろうが―…。
だからこそ、計算が苦手というのは、そもそもその無意識に自身が計算しているのを理解していないのではないのだろうか。そう思えてしまう。
さて、話を戻し、ラーグラは攻撃を礼奈に当てることができなかったことに対する悔しさもありながらも、今は、兎に角、どうするかを考えないといけない。
一方で、礼奈は驚いていた。
(時間がかかっている感じだけど。この人の実力で、あの氷を自身の力で打ち破ることなんてできない。弓での攻撃である以上、そんなこと―…。いや、矢を放つことができれば、可能かもしれない。)
礼奈は心の中で言いながら、すぐに、ある可能性に行きつく。
ラーグラは、ポンガルの氷を砕くのに、矢を放って、氷に当てることによって貢献している。
そうだと考えると、自身の氷を砕くのに、矢を使えば、可能かもしれない。
これは可能性の話であることから抜け出すことは事実を知らない限り抜け出すことはできないが、その推測をしっかりと持っておくことは重要なことであろう。
何も分からないという状態の方が気持ち悪く、それが気になり過ぎて、戦いに集中できないことだって十分にあり得るのだから―…。
そうだと考えると、礼奈のやっていることは間違ったことだとはいえない。
ゆえに、礼奈はラーグラのことをより警戒するのだった。
場所は変わって、ミランのいる方。
略奪団の一員を―…。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
「ブハァッ!!!」
「ドワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
倒していく。
一撃で略奪団のメンバーを倒すことができているのだから、ミランの実力がかなりのものであることを証明している。
ミランは強い。
瑠璃と引き分けになるぐらいには―…。
経験的な差でいれば、瑠璃の成長力が凄いということになるのだが―…。
だけど、ミランの方は、数多くの略奪団の幹部ではない人間を相手にしているせいか、精神的に辛い気持ちになっていた。
倒しても、倒しても、湧くかように迫ってくるのだから―…。
そうなってくると、ミランからしたら、飽きに近い感情が湧きだしてくるのだ。
いつになったら終わるのか、というようなものが―…。
「いけぇ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」
「倒せ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
このように、切れることがない。
(一々、うぜぇわ。ビビッて退散するぐらいしとけぇ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!)
ミランの方がキレるのだった。
そりゃそうだろ。
ミランからしたら、こんなのをチマチマと相手にはしたくなかったから、「闇の拡線」を放ったのであり、放ってから少しの間はビックリしたのだが、少し時間が経過すると、また、一斉に攻撃をしてくるようになった。
現在は、このような状況なのであり、ミランからしたらたまったものではないし、数は減っていたとしても、そのように感じることはミランにはできない。
そして、当てが外れた。
それがはっきりとしたのである。
そして、鞭のような闇を振るいながら、どんどん敵を倒すのであった。
(ふう~、しつこい!!!)
そんなことを思っていると―…。
時は少し戻る。
クローナのいる方―…。
クローナは若干ではあるが驚きながら、レグの大斧の方を見る。
その大斧が光っているのだ。
ピカピカとは言えないが、その光は綺麗なものである。
(……属性は光?)
光ることは儘にしてあるので、属性を判断することはできない。
だけど、その光のいろが黄色から金色に近いものであると考えると、レグの扱っている武器である大斧の中にいる天成獣の属性は光なのであろう。
そのようにクローナは思っているかもしれない。
根拠を示せというのはかなり難しいことであろうし、根拠不十分と言われたとしてもクローナが反論することはできない。
だけど、直感の類が大事な部分での正解を導き出すことはある。
そう、まさにこの場がそうなのだ。
レグの扱っている天成獣の宿っている武器の属性は光である。
レグはそのことに気づかれたとしても気にしない。
一撃を放つのみ!!!
レグは大斧を振るう。
レグから見て右から左へと―…。
斬撃のようなものが放たれる。
光を帯びた―…。
(我慢比べを長くする気はないが、できるだけ威力を上げていくだけだ。)
そのようにレグは心の中で思いながら―…。
クローナの方は風で相殺するにはかなり難しいと判断し、「白の水晶」に頼る。
「白の水晶。」
クローナがそういうと、クローナの周囲に防御テントが展開される。
そして―…。
レグの放った一撃がクローナの展開した防御テントに触れる。
レグの斬撃のようなものは消えるようなことはなく、クローナの展開した防御テントをチェーンソーで攻撃をしているのではないかと思えるような音を発しながら、削っていくのだった。
クローナもそのことに気づいていないわけではない。
(…………削られてる。だけど―…、しのぐことができれば、次の一撃で―…。)
クローナの方も攻撃の準備を疎かにする気はない。
何もただ自身を守るだけの意味で防御テントを展開したわけではない。次の攻撃のための時間稼ぎも兼ねてのことなのだ。
次の攻撃を素早く用意し、相手に考える暇も守らせる暇も与えずにダメージを与えることによって、相手の次の手を封じる。そのことを今、実際に、クローナがおこなおうとしているのだ。
だけど、世の中、上手くいくようなことがないのが大半だ。
(これは―……。)
クローナは気づくのだった。
近い未来を人は計算する。
さっきも述べたのであるが、それを参照していただければ良いのだが、人は無意識のうちに計算することによって、未来をある程度予測し、どうすべきかの対処方法を考え、自分の未来を最悪の状態から守ろうとする。
要は、自分が生き残るために必要なことは主観的なものであるが、無意識のうちに備わっているということだ。
主観的なものと述べたのは、これが完全に自分にとって都合が良い結果になるとは限らないし、人間が行動することによる物理的の移動に速度という制約が加わることによって、その制約によってできることとできないことというのが発生してしまうことによる。
空間があり、そこを移動することができるという性質を行使することができることを前提になるのであるが―…。
これをまだ、納得できる段階まで証明することができていないのは申し訳ないことであるし、その面については、いずれ証明できるかもしれないし、できないのかもしれない。それは、未来のある地点において分かることであろう。
そして、クローナは「白の水晶」を行使して展開した防御テントが破られることが頭の中に過ったのだ。そう、自らの無意識の計算の結果が強く、その人物の思考に占めることの優先順位の一番である危機感を利用して―…。
クローナの無意識の計算の結果は当たる。
パリン。
まるで、ガラスが割れるような音がなり、防御テントは壊されるのだった。
これで相殺されるのなら良かった。
だけど、そのようなことにはならなかった。
(壊された!!!)
クローナは驚く。
自身の無意識の計算であったとしても、自分の都合の良い結果を祈るようなこと、妄想するようなことは往々にしてあるし、そこから逃れるようなことは簡単にできないし、冷静になって驚かないようにするのは難しい。
人は、自らが失うようなことになる未来は何が何でも避けたいし、自らの存在を失うようなことを望むのはかなりの絶望が実際にはあり、それしか選択肢がないと主観的に思えるような状況になっており、危険な状態なのである。自らの命を奪わないといけないほどの絶望を受けるのは、自分の命を失うことによって、逃れたいほどのものがあるであろうし、そうすることによって、自分の尊厳やら、自分の都合の悪い状況から必死に逃げ出し、もう二度と不利なことがなくなるという楽になりたいという人に備わっている気持ちを行使しているだけに過ぎない。そんなことは起こらないと思っている人間がいるのなら、そいつは人のマイナス面に目を向けない愚か者であり、絶対に、関わってはいけない。そんな奴を信仰するのは、危険なことでしかないし、周囲を不幸にするだけである。
他者を完全に知ることはできないが、完全に知らないということにはならない以上、ある程度は理解して、相手の考えを理解し、上手い具合に妥協点もしくは新たな双方が納得する解決策を模索する必要があり、実行する必要がある。そうしなければ、人という存在が生き残れるようなことはないのだから―…。敵対ばかりでは、自らの存在も簡単に滅ぼしてしまうのだから―…。
さて、話を戻すと、クローナにできる選択肢はクローナの頭の中で浮かぶ回避の方法は一つしかない。他にもあるかもしれないが、それを閃く可能性はあるとしても、そうではないことも考えないといけない。
閃いたとしてもタイムオーバーというものがあるのだから―…。
そして、クローナは迷うことなく、次の攻撃用に武器に纏わせていた風を使うのだった。
命あっての次だ。
そして―…。
ドン!!!
第154話-6 膠着する戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で加筆もしくは修正をしていきたいと思います。
では―…。