第154話-3 膠着する戦い
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
距離を取る判断を下したのは、一気に詰めても意味はないと判断したからだ。
瑠璃は雷の球体での攻撃を無理矢理にでも発動させていたであろう。
さらに、ソルは、足などを使って、蹴りの攻撃をしていたであろう。
そして、両者とも、少しだけ考える時間を欲したからだ。
その時間によって、頭の中をしっかりと整理させる必要があると感じたからだ。
ゆえに、距離を取れば、瑠璃への警戒を忘れることなく、考える。
(……………雷―………。分かってる。あの少女は遠距離攻撃を主体とするが、動きから見て、短距離、中距離攻撃での戦闘も可能。全範囲可能だと思うと、さっきも思ったけど厄介極まりない。)
ソルからしたら、瑠璃は遠距離攻撃だけの戦闘をしているわけではないし、中距離、短距離での攻撃範囲の変化が可能な存在であることだと認識し、さらに、自分の評価が間違っていないどころか、それ以上の可能性に気づく。
そのように気づけるというのを考えると、ソルは戦闘慣れしていることが分かるだろうし、実力も申し分ないことが分かる。
そうであったとしても、ソルは瑠璃に負けるとは思っていないし、そのようなことを考えている暇はない。
一方で、ソルが考えている間に、瑠璃は次の行動というか、雷の球体を大きくさせながら、威力を増大させながら、攻撃の準備をする。
攻撃の手を緩めないということはできない。
やるは、攻めるのみ。
瑠璃の方も、ソルの方へと視線を向けると―…。
ソルは―…。
(消えた!!!)
そう、瑠璃の視線にソルは映っていない。
ゆえに、ソルの方が攻撃を仕掛けてきたのではないかということに気づく。
警戒度をマックスにする。
一方、ソルの方は瑠璃のことを視界におさめることができているし、瑠璃の隙をすぐに見つけ出し、そこへと向かう。
(そこだ!!!)
その判断に迷いはない。
迷っている暇などない。
ほんの僅かな可能性でもあるのなら、その可能性に賭ける。
ギャンブラーさながらの思考ではあるが、その選択が往々にして合っている場合もあるし、直感という類を完全に無視するようなことはできない。
直感はいろんな経験や知識を無意識のうちに総合して判断を下している場合があり、理にかなった判断であることがある。すべての場合で、そのことが適用できるわけではないので、その選択を過信するようなことをしてはいけない。
人は完璧にも、完全にもなれず、物事を知る面でも同様のことが成り立つので、完全に正しい選択肢があるわけではない。いや、そうだと判断する方法を本当の意味で持ち合わせていないと言った方が正しいのであろう。
ゆえに、人という生き物はいろんな可能性を考え、自らを変えることができるのだ。変えられる部分を変えることによって、新たな自分に成り続けることができると言った方が良いのかもしれない。
世界は思っているよりも、複雑、いや、正確に言えば、考えることがあまりにも広範囲で、数も大量であることにより、脳の処理スピードが追いつかないという結果となり、完全に物事を把握することができないし、終点が存在するある物事を考える時間というものにおいて、本当の意味で合理的な判断を下しているということを判断することは不可能なのである。他にももっと良い方法はあるかもしれないのだから―…。
悲しいことであるが、結局、制限時間の中で、本当の意味で正しいのかが分からない判断を正しいと思って、実行しているだけに過ぎず、判断しているだけでしかない。そのことを忘れ、自分は合理的な人間であり、正しい人間であると思い上がるのは愚かなことであり、そういう人間がろくでもない結果を引っ提げてきて、周囲に厄災を及ぼすのである。自分は間違っていないという反省すらなく―…。
そんな不幸を起こさないために、自分を戒めるし、慎重になるのだ。
さて、それを理解できるのであれば、ミスをする可能性はゼロにはできないが、限りなく少なくさせるようなことは可能であろう。
そして、理解できないで、自らが正しいと思い続けるようなことがあれば、結局、自らが疫病神となる運命でしかない。
残念なことだが―…。
話を戻し、ソルは瑠璃の弱点へと向かって行く。
そこは、瑠璃の真後ろではなく、瑠璃の右脇腹へとソルの武器である短剣を突き刺すことができるような角度から一気に一直線で向かう。
(これで決める!!!)
ソルは勝負をさっさと終わらせようと考える。
焦りの類がないわけではない。
ソルからしたら、厄介な相手はさっさと片付けるに限るし、長引けば、それだけ、自分のダメージも自分の手の内の曝け出すことになるだけで、ソルにとっては損でしかない。自らの攻略方法を発見されるなんて、最悪なことでしかない。
自らの今の戦い方がすべてであり、完全だとは思っていない。
思ってしまえば、そこで、自身の戦闘技術面での成長は終わってしまう。
他者もしくは敵という存在への敗北によって自身が成長しないといけないと認識するまで、成長しなくなり、人には生まれるという始まりと、命を落とすという終わりがある以上、成長しないという時間は時間の無駄でしかない。
それでも、成長しないということを経験すること自体は重要なことでもあろうし、それを理解しているからこそ、成長するという意味を理解することもできるのであるが―…。
それに気づける可能性はかなり低いと言ってもおかしくはない。
人は思っている以上、この世界にある物事を理解しているようで理解していないし、完全に理解できないわけでもないし、正しい選択肢をできるわけでもないし、正しくない選択肢をできないわけでもない。ある部分は正しくて、ある部分は正しくない選択をしているだけに過ぎないのだ。
そう思うと、人という存在が世界を理解し終えるということはないのかもしれない。し終えているという気持ちになることはあるだろうが―…。
そして、ソルは、瑠璃が攻撃へとできる範囲へと近づく寸前で、瑠璃は視線をソルの方へと向ける。
瑠璃も気づいたのだ。
僅かばかりの音と殺気に気づいたのだ。
瑠璃も戦闘経験がないわけではないし、かなり濃い戦闘経験もあるので、かなり戦い慣れというものも存在する。伝説の傭兵と呼ばれるアンバイドらとの修行もあり、超一流と言われる人の戦いを間近で見ている以上、戦闘のイメージもしっかりと分かっているし、そのような一流の戦い方とは違う戦いで一流になることもできる。一流を見て、一流を知る。そのことができるかは、自身がどこに気づくかにかかっており、失敗する可能性は大いにあるが、いろんな可能性を知ることにはどうあったとしてもなり得ることなのである。
瑠璃はソルを視界におさめ―…。
そっちの方へと仕込み杖を向ける。
雷の球体も同時に移動させて―…。
「!!!」
ソルの短剣と瑠璃が展開した雷の球体が衝突する。
第154話-4 膠着する戦い に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で加筆もしくは修正をしていきたいと思います。
今回は、短くなりましたが―…。
というか、五千文字を越える回数が減っているような気がします―…。
無理して五千文字を越える必要はないと思いながら、今年は体調も崩したことがあるので、そうならないように無理しない程度に頑張ります。
では―…。




