表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
730/747

第153話-4 人を喰う兵器

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 時は遡り、サンバリア。

 そこでは、一つの遺体がある。

 その遺体は、サンバリアの議長でトップであるイバラグラのもの。

 イバラグラはさっき、殺されたのだ。

 いや、以前に殺されたと言った表現の方が正しいだろうが、それを理解するためにはかなり先まで見ないと分からないだろうし、ここで述べられるかは分からない。

 そして、イバラグラを殺したのは、フェーナだ。

 なぜ彼女がこのようにしたのかをはっきりとさせることはできないが、これも計算の内であり、サンバリアは絶賛、イバラグラを中心とする独裁化に近い状況になっていたが、ここで大きな衝撃を与えるのは間違ない。

 その結果、どういうことになるのかは、フェーナや一部の人間の計算の中でははっきりと分かっている。いや、予想できていると言った方が良いであろう。

 予想通りの結果になることかは、本当の意味では分からない。

 (…………これで、私のやるべきことの一つは終わったわね。)

 フェーナはそのように心の中で言いながら、自分のすべきことがまだ、完全に終わっていないことを理解している。

 イバラグラを殺した犯人として、フェーナが捕まるというようなことはあってはいけないし、これからサンバリアは怒涛の惨禍が待ち受けているのだ。

 それをしっかりと経験させなければならない。

 ベルグの時間稼ぎのために、サンバリアは国としての体裁を失ったとしても―…。

 それは、すでに本当の意味でのサンバリアの支配者からの許可を得ているので、遠慮なくすることができる。

 遠慮、そもそも、そんなものはいらない。

 サンバリアは建国した時から、ある一族のものでしかないのだから―…。

 王政が民主政に変わろうとも、国民に向ける表の支配者が交代するようなことがあろうとも、必ずある一族の方針から逃れるようなことはできないし、そうしようとする輩はしっかりと潰されるのだから、レオランダのように―…。

 そういう意味では、サンバリアという国はある一族の呪いの中にあるのだと判断してもおかしなことではない。

 その一族が目指すものが、二百年前の突如として消えたある国を目標としているのだから―…。

 フェーナは、気づかれないようにしながら、護衛長がいる部屋へと隠れるのだった。

 自らの足跡を残さないようにしながら―…。


 その日から翌日―…。

 朝、一番―…。

 議長の執務室がある塔の中に入ってきた人物が一人―…。

 カサブラだ。

 イバラグラに次ぐ実力を有しながらも、イバラグラよりははるかに権力を持ち合わせていない人物が入ってくる。

 今日の朝、カサブラはイバラグラと朝食を一緒にとることになっているのだ。

 要は、会食だ。

 権力者との会食は、自身の後ろ盾に誰がいるのかを周囲に示すことになるし、自身は権力者と繋がりがあるということを証明するには丁度良いのだ。

 権力者との繋がりは、自身が権力を手に入れていくためには必要なことであるし、後継者と目されるようになれば、後は、その権力者を如何に出し抜くかを考え、実行するだけだ。忠犬になるような気持ちをカサブラは持ち合わせていない。

 あるのは自身が出世し、一番トップになるための権力欲である。

 それでも、イバラグラは今のサンバリアの民主政へと導いた人物である以上、その建国者を無視して、権力奪取するのはあまり自身の評判をよろしくすることはないので、イバラグラが生きているうちは、あくまでもナンバーツーであるように心がけるし、そのように出世することを望む。

 だけど、イバラグラがいなくなれば、カサブラは迷いもなく、サンバリアを自身のものへとするだろう。

 その結果、サンバリアに暮らしている人々の暮らしを破壊するようなことになったとしても、カサブラ自身にとっては知ったことではない。そんな感じであろう。

 そのような考えは、無責任と言われて仕方ないことであることは間違いないが、そのような人物を推薦する人間は自らの情報収集能力があるのか一回、疑った方が良い。

 騙される方が悪いと言いたくはないが、何も反省するようなことがなければ、再度、騙される確率を上げるだけであろうし、反省することによって、何かが危険を考え、反省の中で理解することによって、また、騙される可能性を減らすことは十分にできる。

 ただし、ここで忘れてはいけないのは、騙す側は巧妙に仕掛けてくることがあるし、一番に悪いのは騙す側である。

 そのことを忘れ、騙された側を非難するようなことをしている輩は、結局のところ、自身が騙されるということに無頓着なのか、騙した側に対して肩を持つような愚かな存在であり、社会的に害のある存在へと自身が気づかないうちになり果ててしまっている。

 愚かな存在および社会的に悪い影響を及ぼすような存在にならないためには、いろんな物事の背景を考えることが重要であるし、それに加えて、第三者のことについても、しっかりと考えることを忘れないようにすべきだ。

 その点で大事なのは、相手の立場に立つということであるし、それをいろんな視点から見るということである。

 そうすれば、馬鹿な考えにいたるようなことは少なくなるとは思わえるが、そうではない人もいて難しいことでしかない。

 カサブラは塔の中にエレベーターまで歩く―…。

 今日は秘書の人がいない。

 秘書は、急に用事か何かで来られないそうだ。

 (……あいつクビにしてやるか。)

 そんなことを心の中でカサブラは言いながら、エレベーターへと到着し、乗り込み、議長の部屋のある最上階へと向かうのだった。


 それを監視カメラから除く者が一人。

 (早起きして正解だわ。来てくれたみたいね。候補者さんが―…。)

 フェーナは、一人で監視カメラを覗きながら、エレベーターの中にいる一人の人物を見る。

 フェーナからしたら、こんなタイミングの良い人がやってくるとは思ってもいなかったし、イバラグラが今日、朝の会食をするのがカサブラであることを知らなかった。

 どこかの誰か、イバラグラの秘書にでもイバラグラの遺体を見せれば良いと判断していたからだ。

 イバラグラが命を落としたとなれば、誰が犯人かを探るであろう。

 サンバリアの警察組織は政府の関与さえなければ、優秀な部類に入るだろうから、犯人を見つけ出すことはそんなに難しくない。

 捜査の科学技術はそれなりにあるのだから―…。

 軍事技術の方に資金を大幅にかけている以上、軍事技術をベースとしたものが中心となり、それ以外の分野ではどうしても遅れというものをとってしまうのだ。

 それでも、サンバリアの技術がアウリア大陸の中で、一番上であることに間違いはないのだが―…。

 (さて、イバラグラの死体を見てもらった後に、警察で捜査をさせるようになるけど、警察の下には死体の中身を見られるのはマズいのよねぇ~。あれは、元々、イバラグラを喰わせて、イバラグラの思考を手に入れて、イバラグラにしたものなのだから―…。大変だわ~。根回しが―…。)

 フェーナは、イバラグラの正体を知っているからこそ、今のようなことを心の中で言えるのだ。

 この事実を知らない人が聞けば、何を言っているのか分からないということを―…。

 意味を理解すると、恐ろしいことになるのは避けられないが―…。

 さて、フェーナはゆっくりとのんびりとカサブラがやってくるのを待つ。

 護衛のトップの部屋の中から―…。


 ブーン。

 エレベーターが開く。

 エレベーターの外に出たカサブラは、議長執務室へと向かって歩き出す。

 場所はしっかりと知っている。

 なので、迷うようなことはない。

 (………イバラグラ様と朝食は面倒くさいが、私の権力を強化する上で、使えるので―…。)

 そう思いながら、カサブラが歩くと、議長執務室へと到着する。

 そして、カサブラはノックをする。

 コンコンコン。

 一応、イバラグラは上の者であるので、ノックの音は三回連続でならす。

 そうすることが礼儀にかなうからだ。

 だけど―…。

 (反応がない。どういうことだ。)

 再度、ノックする。

 コンコンコン。

 ………………………………………………………反応がない。

 (どういうことだ。イバラグラの奴、私の約束をすっぽかす気か!!!)

 カサブラはイライラの感情を出す。

 イバラグラに約束をすっぽかされたのだから、どうしても怒りの感情が湧きだすのは仕方ないことであるが、それを表情に出してしまうのはあまり良いとは言えない。

 カサブラは、短気になってしまったのだろうか?

 そのように思えても仕方がない。

 自分の思い通りになってくることが多かったからこそ、自分が一番になることを夢見てきたからこそ、自分の思い通りにならないことに対する耐性が低いのであろうか。

 いや、そのようなことに対する機会が最近、減ってきたことによって、昔は持ち合わせていたかもしれない耐性力が衰えてきたのかもしれない。

 (……兎に角、中に入ってみるか。)

 カサブラはイラつきの感情を抱きながらも、議長執務室の中へ入るためにドアを開ける。

 そこには―…。

 「……………………………………………………………………………………………………………………………………えっ。」

 驚きでしかないのだ。

 驚かないわけがない。

 そこにあったのは―……。

 「い……ば…………ら……………………ぐ…………………………………………………………………ら…………………………………。」

 目の前にあったのは、イバラグラの遺体だった。

 何がどうなっているのかは分からない。

 一番は、なぜ、イバラグラが亡くなっているのか。

 誰かによって、殺されたのか、病気によるものなのか。

 自らによってなのか。

 カサブラからしたら、どうしようと思うのだった。

 目の前に、急に、誰かしらの遺体があるような状況に出会えば、動揺しないというのが難しい。冷静に対処できるということは、それだけで素晴らしいぐらいの冷静さを持っており、事態に関して考えることがしっかりとしているということである。

 慣れているのか、元からの性格のなかは分からないが―…。

 カサブラは動揺する方のタイプであり、亡くなった人を見慣れていないことが分かる。

 「そうねぇ~。イバラグラ様はどうして亡くなったのでしょうか。あなたが殺したのですか、カサブラ議員―…。」

 カサブラは驚いて、声をする方へと視線を向ける。

 こんな状況で声をかけてくる人がいれば、驚くなという方が無理であろう。

 カサブラはビビりではあろうが、ビビりだとして馬鹿にすることはできない。

 そして、カサブラはその視線の先には―…、フェーナがいた。

 「フェーナ…………。お前、何でここに―…。」

 カサブラの頭の中で、議長を護衛するのがフェーナの仕事であることが抜け落ちてしまっているのだ。冷静であれば思い出すこともできたであろう。

 だが、それができない。

 何かしらの恐怖をフェーナから感じたのだ。

 「カサブラ議員がイバラグラ議長を殺したのですか?」

 「何を言っているんだ。」

 カサブラからしたら、意味不明だ。

 「いや、さっき来たばかりだ。」

 カサブラは、自分がイバラグラを殺したわけではないので、正直に言うし、イバラグラを殺したという疑いをかけられたら、自分のキャリアが台無しになってしまうし、フェーナはカサブラを犯人に仕立てることぐらい簡単にできるであろう。

 サンバリアがいくら民主政という政治形態をとっていたとしても、罪のでっち上げができないわけではないし、国を上手く回すためには、罪をでっち上げることを平然とおこなうことさえある。揉み潰すとかも含めれば、民主制という政体であったとしても「絶対にない」とは言えない。

 権力者にとって、都合の良い状態を目指すのは、避けられないことであるし、そのようなことをするために、将来において、自らの失態に繋がって表立つことさえもする可能性をおこなうことは十分にあり得るのだから―…。

 そのような裏が存在しているからこそ、カサブラは怯えるし、絶対に、自分が犯人になるわけにはいかなかった。

 「護衛も秘書もいませんねぇ~。じゃあ~。」

 フェーナはそう言いながら、イバラグラの方へと向かうのだった。

 カサブラはその間に、動かすことも、イバラグラがどうなっているのかを知らせるためのような行動をとることができなかった。

 狂気だ。

 遺体へと向かって、フェーナは平然と近づいていくのだ。

 その光景に恐怖と同時に、こいつから目を離せば危険だと本能的に感じるのだった。

 「あなたにはお見せしましょう。昔、昔、サンバリアの本当の支配者は、食べた人の姿になれ、その人の記憶と経験を得られる兵器を造りました。そして、その支配者は、自分の息子があまりにも優秀ではなかったので、孫が生まれてから間もない頃に、自分の息子を殺し、その兵器に食わせました。そうすると、自分の息子の記憶と経験を持った兵器が生まれ、その兵器はいつの間にか国のトップとなり政治を司るようになりました。」

 フェーナはそう言いながら、イバラグラの腹部に触れ―…。

 「分離せよ。」

 そう、フェーナが命じると、イバラグラだった存在の中から、人の骨格の形をした銀色の兵器が現れるのだった。

 「そう、これが―……、イバラグラだった人喰い兵器。」

 フェーナの言葉は、カサブラにとってはとんでも衝撃を与えるには十分のものだった。


 【第153話 Fin】


次回、恐怖せよ!! に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


次回の投稿日は、2025年9月9日頃に投稿の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ