番外編 サンバリア~序章~
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
番外編あるの忘れてました―………。すいません。
ミラング共和国の話とは関係なく、サンバリアの方に関係があるものです。
瑠璃たちが砂漠の中を移動してから三十年以上前。
まだ、サンバリアが王政の時代であった頃。
そこに一人の青年の年齢となる人がいた。
その両親は幼くして両親が病で命を落とし、スラムの暮らしにはならなかったが、酷い養親のせいで、暴力を受けて育つことになった。
その人生の中であったとしても、捻くれることも、心が荒むこともなかったのは、奇跡のようなもの。
その奇跡を促したのは、彼の隣の家に住んでいる人であり、その家族の暖かさに救われたからであろう。
だけど、その隣の家の人も、最近、サンバリアで流行った感染症の病により、家族全員が命を落とすことになり、そんな中で、この青年は上手く生き残ることができた。
生き残ったがゆえに―…。
(はあ~、仕事が見つからねぇ~。あの暴力的な親父も死んだが、金は………………残りは、120プラクしかないのか。はあ~、これじゃ三日しか持たねぇ~。今日の公務員試験、受かっていれば良いけど~。)
と、心の中で言う。
この青年からしたら、生活状況からしたら、いつ餓死してもおかしくはない。
なぜ、こんなにお金がないのか。
別に無駄遣いしたわけではない。
サンバリアにおいては、常に他と戦争をしているから、税金も厳しいものであるのと、相続は実の親子でないと相続金をもらうことができず、国家へ返還することになっている。この法律は臨時法であったが、事実上は臨時法の体を為していない。
だが、養親は借金ばかりだったので、相続放棄が可能だったので、相続放棄をした。その結果、家だけが残されるという結果となった。一方で、隣の家の人は子どもがいなかったので、この青年に相続させようとしたけど、その前に命を落とす結果となってしまったため、この青年は相続を受けられず、貧困にあえいでいるのだ。
なら、生活保護を受けるべきなのではないかと言われるが、サンバリアにはその制度はあったとしても、何かしらの有力な人脈がないと、それを受けることはできないのだ。排外主義者のせいで、生活保護を受けられる幅がかなり制限され、本当に必要な人に生活保護が行き渡らないという結果となっているのだ。
そんななかでも、この青年は排外主義者達の考えには、疑問を呈するぐらいの思考は十分に持ち合わせている。
それでも、彼らは声が大きく、サンバリアに住んでいる自分達のことをどこか偉い存在であり、選ばれた民なのではないかと言われる選民思想を抱いており、どこか傲慢さを感じ、あまり好意的な感触を得ることができなかった。
そんな彼らはサンバリアの人々のために、予算を使えと言うが、それで、本当に貧しい人のためになっているのかと言えば、そうではない。
まるで、予算を使うのが面倒くさい今のサンバリア政府の財政部門の工作部隊ではないかと思えてしまう。そして、国家予算の割合の多くを占めているのは防衛部門であり、防衛という名を借りた戦争のための資金なのだ。排外主義者の多くは、戦争を防衛のためだと、正当化しているのだけであり、自分以外のことは知ったことではないという無責任な本音を示しているだけに過ぎない。
戦争を起こしているのは、どちらかは知らないが、それでも、今のサンバリアが良い国だと思えない。
だからこそ、志を持って、というわけではないが、生き残るためには働かないといけない。
そのために、この青年は、今日の試験の合否を確認しに行く。
仕事が見つかるように―…、と必死に祈りながら―…。
この青年が後に宰相となる人物だとは、サンバリアの中で知っている者が誰もいない。
【番外編 サンバリア~序章~】
それから、半年後。
今、サンバリアは重大な危機に瀕している。
当時の王、ファンガは玉座に座し、衰亡しきった顔を隠しきれなくなっていた。
(………妻たちも、息子たちも、娘たちも全員死んでしまった。いや、一人だけは生きておろうが、あいつを王にすることだけは―……。だが、サンバリア王家を絶やすわけにはいかない。あれをどうにかして王にするしかない。傀儡の王に―…。)
と、ファンガは悩む。
この悩みは、サンバリアの王と一部の者達が知っていることである。
どうして知っているのか。
サンバリア王家は、昨今のサンバリアで大流行している感染症により、ファンガ以外の王家の中に含まれている者達が命を落としているのだ。
その感染症による治療法は対症療法しかなく、サンバリアが誇る医療技術でも対抗することができていない。現今においても―…。
なぜなら、予算の多くを軍事面、侵略戦争の方に割いており、そのせいで、社会保障関連に回すことができていないからだ。
だけど、サンバリアは軍事技術の面で優れていることを誇示しないと周囲から攻められるほどの恨みを自身の行動のせいでかっている以上、軍事面での予算を減らすようなことはできない。
それに軍事面での予算を減らせば、軍需産業および軍人たちが、王の命を狙ってクーデターを起こすかもしれない。そうである以上、王であったとしても、迂闊に手を出すことはできない。
それに、軍需産業関連………いや、サンバリアの本当の意味での支配者であるあの一族が反抗してくるであろうし、あいつらを敵に回しては、王家が上手くいくとは思えないし、自身は彼らの傀儡でしかないのだから―…。
そういう意味では、サンバリア王家が一番、サンバリアという国の中で権力を持っているわけではない。
それがサンバリアの現状だ。
そして―…。
「ガハッ!!!」
王の大会議の中―…、ファンガは玉座から倒れるのだった。
これがファンガ最後の意識のある状態となる。
その三日後にファンガは息を引き取るのだった。
半年前に戻る。
とあるサンバリアの中にある豪邸の近く。
青年はウキウキした気分で歩く。
良い事があったのだろう。
そして、人だかりがあり、そこへと向かう。
そこではある人物の乗っていると思われる車が、豪邸の中へと入っていくのだった。
その車の中が僅かに見え、中年と思える人物がおり―…、その人物はまるでこの世のすべての物を見下しているような表情をしているのだった。
「トラガル公―…。」
車の中に乗っている人物を見た、良い事があった青年が言う。
その青年からしたら、どこかトラガル公というのは近づきがたい雰囲気があり、人として好きになれないという感じの存在だ。
そして、その人物に対して、尊敬の眼差しを向ける人々を見ながら、彼らは自分の劣等感に対して、本当の意味で向き合えず、権威に縋っているだけの悲しい人にしか見えなかった。
ゆえに、青年は家へと帰ろうとするのだった。
そして、少し時間が経過し、トラガルは家の中へと入る。
「お帰りなさいませ、旦那様。」
と、メイドの一人が言う。
トラガルはメイドにすら興味はない。
彼女からは、知性というものを何も感じないからだ。
生まれた時からこの世界において、自分並みに優れた存在を感じなかったのだ。
何をしてもすぐに要領というものを掴むことができ、できないことはないのではないかと思えるぐらいに、何をしても一番になることができた。
ゆえに、自分よりできない者達を見ると、なぜ、できないのか疑問に感じ、さらに、そのせいで、自分のしたいことが遅れてしまったり、できないということもあったので、次第に、彼らが劣っていることに気づき、彼らを信用することも、彼らを自らと同等に扱うこともできなかった。
そして、自分並みに優れている存在は、すでに、この世にはいないとされるサンバリアの建国精神のもととなった、二百年前に突如として崩壊した大帝国を支配した人間だけなのだ。
要は、トラガルの憧れであり、自らの一族の宿命であり、悲願である。
そのために、サンバリアが軍事技術で圧倒的な実力になることを望み、研究を続ける。自身が研究者の一人となり、他者からマッドサイエンティストとして恐れられるようになったとしても―…。
「ああ。」
と、トラガルは言いながら、自分の研究室へと向かって行くのだった。
この劣った存在との会話自体が無駄だ。
ゆえに、自分の目的のために動いた方が時間的に考えて合理的だ。
そんな思いを抱きながら―…。
研究室。
そこには、トラガルの研究資料と先行研究の論文がたくさんあり、この部屋の主であるトラガルが科学者なのだと思わせるには十分だ。
その部屋に主であるトラガルが入って来て、扉を閉めて、鍵をかけ、中央にある巨大なポットの方へと向かう。
その中に入れられていたのは、人ほどの大きさであり、人の骨格をしている存在で、手と足の方には爪のようなものがある。
それを見ながら―…。
「やっと完成する―…。これで、サンバリアは人を兵器にすることができる。」
と、言いながら―…。
これは狂気だ。
そして、サンバリアの物語の始まりにしか過ぎない。
【番外編 サンバリア~序章~ Fin】
次回、本編の方を再開させていただきます。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
番外編があるのを完全に失念していました。
しっかりと書いたのに―…。
この話がサンバリアのある事の始まりのような感じで、イスドラークが終わりの番外編以後のお話として関連します。
サンバリアに関する一部に触れる話です。
ということで、そこまでいくのには暫く時間がかかると思いますので、頭の片隅に入れてもらえると助かります。
では―…。




