第152話-2 分断される
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
一方で、ミランの方は―…。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」
「ブホッ!!!」
「ガァッ!!!」
略奪団の一員だと思われる人達が綺麗にはじかれていくのだった。
どうしてそうなっているのか!!!
それは―…。
「何だ、あの黒いので、簡単に攻撃されるなんて―…。」
「……………………やべぇ~ぞ、あの女。狙うなら杖を握っている少女にすれば良かったぁ~。」
「そんなこと言っても遅いだろ。」
「味方が――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
さまざまな声もするが、すでに狂乱の状態である以上、自らの声が周囲に聞こえるということはない。
そんなことがない状態で、叫んでしまうのは人の性なのであろうか。
そんなことを思ってしまうぐらいには、声がかなり乱れているような状態である。
そんななかでも冷静な表情をして、彼らの狂乱状態に対して、冷静に対処しているのはミランである。
戦闘経験があるということと、自身の天成獣の宿っている武器を扱っての戦いが上手くできることによるからであろう。
それに教えてもらった人が良かったのかもしれない。
そうである以上、冷静さを失わないようにするのは、当たり前のことであり、それを無視するようなことは一切する気もない。
(一人、一人はそこまでもない。私たちを襲おうとしているだけの小癪な輩なのだから、自らの実力を上げようなって考えはないのかもしれないわね。それでも、数は多い。クローナの方に多く集まったから、ざまあみろと言ってやりたい気持ちになったけど、どんだけいるのよ!!! ラナトールまでの船上と言い。何か、悪いことでもしたの!!! あいつら!!!)
と、ミランは心の中で言う。
ミランからしてみれば、一人一人を倒すのはそこまでの労力を要していない。
なぜなら、略奪団の一員だと思われる者達の戦い方はあまりにも戦闘というより、自分こそが手柄を挙げるというような感じであり、連携というものがとれていない。
そういう意味では、リースからラナトールの間の船上で、ミランたちを襲って来た奴らの方がそういうのはできていたという感想を抱いてもおかしくはない。
現実にそうだ。
なので、ミランからすれば、あの船上で襲って来たもの達の方が戦いにくい。
連携とは、お互いを知っていないとすることもできないし、常に隙を突いてくるものだから、戦う側からしても油断することができない以上、精神的なダメージも大きかったりする。
擦り減らされるという感じで―…。
そして、そういう余裕があるからこそ、ミランは別のことが頭の中に浮かぶのである。
このような大勢の敵と戦わないといけないのは、想定外ではないが、あまり経験したいものではない。サンバリアへと向かって、サンバリアの勢力と戦いになった場合には、かなり有効な経験になるのは間違いないが、それでも、したくないものはしたくない。
だけど、起こってしまっているものを変えられるほどの力も運も持っているわけではないし、戦って切り抜けるしかない。
そして、瑠璃たちが狙われている以上、瑠璃たちが何かしらの恨みを買うようなことをしてしまったのではないか、という予感がミランの頭の中に過ったとしても、特におかしなことではない。
余裕はそのように、自分を見つめなおす機会というものを言って与えてくれるのではなく、気づかせる可能性として提示してくれるものである。
そうである以上、ミランはその余裕を偶然ではあるが、上手く扱えているという感じなのである。
それでも、ミランは自身が思っている範囲で油断する気はない。
油断がどれだけ危険なことであるのかは、身をもって知っているのだから―…。
(すでに、見た感じ、一割ほどは倒したけど―……、ここからは少しだけ時間がかかりそうな気がするわ。)
ミランはそのように今後の状態を考える。
最初は、勢いで、数の利を利用した攻撃をしてきたのであるが、味方が倒されているのを見て、少しだけ慎重に相手側はなるのを見過ごしてはいないからこそ、このような予想ができるのだった。
相手側からしたら、数の利を利用することによって、自分が一番にミランを始末することができ、手柄が手に入るのだと思っていた。
だけど、蓋を開けたら、倒されているのは味方の方であり、倒れされていくのを見た略奪団の一員と思われる者達は自らの生存本能か、自分が倒されないようにするために、ミランから少しだけ距離を取るのだった。
そして、他のところへと向かうようなことはできない。
そのような素振りを一つでも見せるようなことがあれば、狙われるのは自分であるということが本能的に理解できているからなのだろう。
動くことができず、かつ、攻めるようなこともできない。
ミランから言わせれば、少しの間、自分で考えるのには都合の良い状態だとも言える。
(………………警戒して動きを止め、距離を取ったわね。まあ、妥当なことでしょう。さて、どうやって攻撃しようかしらねぇ~。消費する大技はあまり選択したいとは思えないけど、相手を戦意を奪うには丁度良い手段なんだよねぇ~。なら―…。)
と、ミランは心の中で言いながら、攻撃の準備をする。
その様子が敵側に見えないというわけではない。
そうである以上、敵側でも何かしらを考えるものはいてもおかしくはない。
(………何かをしようとしていやがる。何をしているんだ。分からないねぇ。だけど、危険なことに変わりねぇ~。)
(味方がこんなにも簡単に―…。ひぇ~。あんなのから逃げ出すにどうすれば良いんだよぉ~。分かんねぇ、分かんねぇ。)
戦意を喪失させることには、ある程度成功しているのであるが、そうであったとしても、完全に戦意を喪失させ、逃げ出すような状態にもっていくことができていない以上、まだ、完全に相手を壊滅させたような状態にはなっていない。
ミランが戦いを優位に進めているという判断が正しいのであろう。
ミランもそのようなことが分かっているからこそ、迂闊に、すぐに、攻撃をするのではないし、自分が勝っているという気持ちになることもなかった。
ミランは、鞭のようなものを二つ展開し、それを首の部分から生えるようにする。
その鞭のようなものを二つ、自身の目の前にその先っぽを出し、くっつくほどに近づける。
そこから、黒い球体状のものを発生させて、鞭のようなものから黒い小さな粒を出して、黒い球体状のものに吸収させて、大きくする。
何をしようとしているのかは、敵の側からは分からないことであるが、ミランからしたら自分がしようとしていることでもあるので、何をするのかは分かっている。
前の方に、味方がいることはないし、礼奈なら簡単にかわすようなこともしよう。
なので、ミランのすべきことは決まっているし、方針を変えるようなことはしない。
「倒されろ!!!」
と、ミランは言う。
その声は小さいものであり、敵には聞こえない程度の声で言う。
敵がミランの攻撃に気づかないようにするためである。
気づかれるようなことになれば、攻撃をかわしてくる存在がいてもおかしくはないのだから―…。
そのようなことをされて、余計な時間をくいたくないというミランの心理がそこにはあった。
「闇の拡線。」
要は、放射攻撃である。
この攻撃は、闇の球体状から発せられる攻撃で、一直線にいる敵を放射攻撃の中に飲み込むという大きな技である。
ミランからすれば、消費はそれなりにあるが、敵の戦意を完全に喪失させるためにはこの技の方が良いと判断したのだ。
この一撃が発射された瞬間―…。
「逃げろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
「うわアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「押すな!!! 押すな!!! 押すな――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
それはまさに、本当の意味で狂乱状態。
誰もが、ミランの「闇の拡線」という攻撃を受けたくはないと必死になって、逃げようとする。
他人に構っている暇はない。
味方に構っている暇はない。
そんな余裕すらないほどに、逃げるのに必死になる。
だけど、その攻撃から免れることは―…、ほとんどできずに闇の中に飲み込まれるのだった。
第152話-3 分断される に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
次回の投稿日は、2025年8月26日頃を予定しています。
そろそろ、8月なので、『水晶』の方をお休みさせていただきます。
例年通りのことです。
では―…。