第151話-1 命は既になかった
『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。
『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138
『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):
(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/
(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542
興味のある方は、ぜひ読んで見てください。
宣伝以上。
前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。
そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。
詳しくは本編を読み進めて欲しい。
そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。
一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。
そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。
上手くいったはずだった。
相手を凍らせることによって、一人を倒すことができると―…。
だけど、ポンガルは運が良かった。
氷を助けを借りて、砕くことができたのだから―…。
そういう意味では、ポンガルが「運が良かった」と言ったことに対しては、強ち間違ったことではないことを示す。
だが、これ以上の生き残ることが可能であり、勝利の貢献となることができるという保証をもらったわけではない。
ただ、自分の未来に対する希望を繋げただけに過ぎない。
人生とはまさに、ある一面ではそういうものであり、それを体現しているものであり、そのことに気づく者達はこの場にはいない。
日頃から気づけるチャンスはいくらでもあるだろうに、そのことに気づかない。
当たり前すぎるのか、起こっている事象に対して考える時間がないのか。
どちらもあろうが、人は時間の流れの中で、気づける可能性をいくらでも見過ごしており、そのことに気づけるのは偶然の要素の介入と、自らの意思というものもあろう。
不意に、という表現は自らの意思に分類して良いかもしれない。
そんなことを思う機会があるのは、恵まれている方なのかもしれない。
世界はそこら中にいろんなことを人に伝えているのかもしれない。
そういうことを気づける機会は少ないだろうが―…。
さて、話を戻し、ポンガルは、好戦的な笑みを浮かべながら、この運の良さに感謝し、その運の良さを無駄にしないようにするのだった。
そう、相手を倒すということにおいて―…。
(さぁ~て、いかせてもらうか。)
と、心の中で思いながら―…。
【第151話 命は既になかった】
場面は変わって、サンバリア。
瑠璃たちが砂漠の中を移動している中―…。
サンバリアにおいても動きがみられた。
簡単な説明するのであれば、サンバリアの議員であったアルタフは自身が暗殺されそうになったことになり、サンバリアの外に一族の者と出て、「人に創られし人」の一族がいる村カルフィーアに辿り着くのであった。
そこに、カルフィーアから派遣された護衛がいたのは事実だ。
そして、サンバリアからアルタフがいなくなり、イバラグラの独裁体制と言っても差し支えない状態にサンバリアは陥るのであった。
誰もがそのように思っていたし、サンバリアにいた者達ならそのように思わないのは、よっぽどのイバラグラ反対派かイバラグラの運命を知っているような者であろう。
世界は予想外なことが起きる。
いや、人はすべてを理解することができないからこそ、予想外はどこにでもいる身近な存在なのであろう。
そうである以上、この世で絶対と言って良いものなどありはしないだろうし、絶対的な何かが存在するのであれば、それは人にとって完全に認知することも、完全に認知することもできないものでしかない。
要は、あるとしても、人の存在で完全に理解することができないものでしかなく、名前など付けられるようなものではない、ということである。
なので、そんな絶対的なものを具体的にいえる者達は、絶対的なものを言えているわけではなく、永遠なものではなく、自分よりも長いものの一部、自らの経験から得られた存在の中で自らが永遠に近い、絶対だと思い込んでいるものを「絶対的な存在」と言っているだけに過ぎず、そのことが永遠に存在することを本当の意味では証明することもできていないだけなのだ。
そのことにしっかりと注意すれば、この世のどんな権力も独裁体制も、永遠不変のものではなく、永遠にその体制を維持することもできず、いずれは無残に崩壊していくしかないものであることに気づくことであろう。
そのことを頭の中に入れれば、物語に少しだけ驚きがあるのかもしれない。いや、ないのかもしれない。
それは、これを見た者によるのだろう。
さて、サンバリアの中にある議会堂の入って建物のかなりの上階。
そこにある議長室。
そこでは、サンバリアのトップであり、民主化に貢献したと表向きは言われているイバラグラが鎮座している。
表情は厳格的な面もあるのであろうが、心の中は自らの勝利に酔いしれているだけの長期的視点の欠如しかないという感じなのだ。
要は、勝利に酔いしれ、そのこと以外には頭の中にない。
今は自分の時代であり、自分に逆らうことなどできやしないと本気で思っているのだ。
(ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、我の時代!!! さて、サンバリアの中における憂いを感じに断ち切った。なら、やるべきことは対外戦争を推し進めることだ。「人に創られし人」の一族のいる地はオアシスだが、あいつらは天成獣の宿っている武器で、サンバリアに対抗している。だけど、あいつらを手に入れることができれば、どれだけの良き兵器が手に入るか。戦闘力を持ち合わせた人―…。我が父の造りし最強の兵器の生産ラインはすでに確立されている。あいつらが機能すれば、「人に創られし人」の一族なぞ、取るに足らん。)
と、イバラグラは心の中で言う。
このように言うことができるほどには、自身の中で納得できる理由が存在しているのだろう。
イバラグラにとっては、サンバリアの軍事技術はアウリア大陸の中で最強と言っても良いものだと自負している。
なぜなら、他の周辺諸国が、サンバリアのような兵器を持ち合わせていないし、それを造り出すだけの技術を持ち合わせておらず、そのような武器はサンバリアから破格の値段で購入しないといけない。
ゆえに、サンバリアの軍事的な優位が崩れるようなことはこの先もないだろうし、軍事技術を発展させるための人材育成も怠っていない。軍事力こそがサンバリアの力の源泉であると普段から教育しているからだ。
教育は重要だ。何が正しいのかというのは、完全に正しいという面において、人は見つけ出すことができない以上、これまでに、いろんな正しいか、合っているのかという考案された方法に耐えることができていることが現時点においてできているものを教え、それを知識という名の土台にした上で、発展の可能性を与える疑問を抱かせることへと導くことが教育の重要な役割である。
だけど、人は自分の好都合、社会が自分達にとって好都合、国家が自分達の支配にとって好都合であるように教えることがすべての面で正しいと教えることを教育だと認識している面がどこかしらにあるということだ。
それが完全に間違っているわけではないが、それは主観的なものを絶対性としていると無理矢理にしているだけに過ぎず、思い込みの類であり、決して、それが彼らにとっての好都合な結果を導くとは限らないし、そのように妄想しているのなら、捨てた方が良い場合だって存在する。
その判断が難しいのだが、やっていかないといけないのが人生だ。
ゆえに、本当に大事な教育は、今まで、耐えることのできているある正しいとされていることを学び、そこに疑問を持ち、新たな領域を広げることを導くことをすることであり、その概念に合っているかどうかをしっかりと人々は見ていかないといけない。本当に、馬鹿なことを教えていないのか、ということを考えながら―…。
さて、話を戻し、イバラグラは自身の支配している国の軍事力には自身を持ちながらも、それに対抗できる存在は「人に創られし人」の一族だけであり、それを倒すことも可能であろう。
彼らは天成獣の宿っている武器を扱うことによって、その軍事力を確保しているという感じであるが、サンバリアは日々進歩しているのだ。
なので、今、「人に創られし人」の一族と戦って勝利することもできるだろうし、勝利すれば、確実にサンバリアは新たな軍事力を手に入れることができるのだ。
彼らの天成獣の宿っている武器と同時に、彼ら自身の力を―…。
具体的なことを言えば、膂力というかそういう類のものではなく、経験と言った方が良いだろう。
なぜ、そのようなことができるのかは今、知るようなことではないだろうし、いずれ知ることができるであろう。
そして、イバラグラは思考を巡らせる。
「人創られし人」の一族を攻めるための方針を―…。
(まず、動機は十分にある。アルタフを匿っていることを理由にすれば良い。議会はすでに我が掌握しているのだから、我に反対するようなことは一切ないだろうし、反対する輩は、闇に紛れて始末すれば良い。いや、政治ショーとして表立って、我の手で始末しても構わないだろう。我の人とは思えないほどの瞬発力と運動能力があれば―…。戦闘経験はないが、できる。後は、フェーナを説得することだ。あいつは、俺の親父と時々、連絡しており、アラジャの奴も今は、親父のところにいるみたいだ。なぜ、親父のところにいるのかは分からんが―…。)
と、心の中で続ける。
まず、第一に、動機に関して、詳しく見ていこう。
アルタフが「人に創られし人」の一族に匿われている可能性はある。証拠は掴んでいないが、それは無理矢理にでも押し通せば良い。証拠なんて関係ない。
もしも、出すのであれば、サンバリアの王政の最後の王であるレオランダを王への即位へと懇願するために向かったメンバーの中にアルタフがいたこと、そこからアルタフの妻が「人に創られし人」の一族のいる村出身であることを言えば良い。
事実である以上、誰もがアルタフは「人に創られし人」の一族のいる場所に匿っていると思うことは可能であろうし、思い込ませることも簡単にできる。
イバラグラからしたら、人々は我々にとって都合の良い切り取られた事実しか情報を与えなければ、我々の思い通りの判断しか下すことができない。日頃からメディアの言っていることを正しいと思っているし、間違っていることを調べることを面倒くさがるということを理解しているのだ。
実際、誰もがではないが、すべての事実を調べる時間が存在しないのは確かであろう。それは、社会であろうとも、国家であろうとも変わりはないのだが、支配者になる多くの情報を手に入れるためにか、自分がすべての正しい情報を知っていると勘違いする可能性は十分にあり得るし、自分は全ての情報を知っているという間違いを犯しやすい。
それは、人が完全に正しい情報を手に入れられないということと、完全に正しくない情報を手に入れられないことに照らせば、まるで、おかしなことでしかないのだが―…。
要は、正しい情報がもたらされる場合もあるし、もたらされない場合もあるので、慎重に吟味する必要があるし、間違いがあったとしても、そのことに対して、しっかりと反省し、どうすれば良い情報を手に入れられるかの試行錯誤の大切さを理解することを、認識することだ。
次に、フェーナを説得することができるか、ということだ。
フェーナはイバラグラの部下ということに表向きはなっているのだが、イバラグラよりも上の存在であるかのように、裏で振舞うことがある。
そして、何を考えているのか分からないということであり、さらに、イバラグラの父親と連絡を取っているのだ。イバラグラがそのことに気づかないわけではないが、それでも、フェーナに戦ってその理由を聞きだせるかと言われれば、それは無理だと認識しているということだ。
それは本能の類と言ってもおかしなことではないし、それがどうしてなのかを完全にイバラグラ自身で理解することができていない、ということだ。
どうしてか?
それすらも分からないということだ。
イバラグラからしたらもどかしいことではあるが、その解決ができるかと言えば、できないのが実態というわけだ。
そうである以上、イバラグラからフェーナは目の上のたん瘤のような存在であるが、自身の側であることに間違いないので、迂闊に手を出すようなことはできないし、イバラグラの親父が気に入っていることと、その親父の上の人間がフェーナをかなりの待遇で扱っているので、どうしても不満という感情を抱きながらも、どうすることもできない。
これは、トップになったとしても、何かしらの制約を受ける例であろう。
トップになったからこそ、自由に何事も決められるわけではないし、何かしらの制約を受けることは避けられない。その制約がなければ、人は暴走するし、下剋上の類もできなくなる。その理由に対しては、現時点で理解の範囲が至っていないので、説明できないことを申し訳なく思う。これは一つの課題という形になろう。
そして、イバラグラは「人に創られし人」の一族への遠征を考えながら、サンバリアの新たな功績、自身の功績を手に入れようとした。
だけど―…。
何者かによって、刺されるのだった。
気づかれることなく―…。
第151話-2 命は既になかった に続く。
誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。
ここからイバラグラの正体が分かります。
衝撃的だと思いますが、ネームを書いている段階では、想定すらしていなかったですが、ネームの中にあるシーンなんです。
では―…。