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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
708/747

第148話-2 略奪者

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 ラーグラは部屋の中へと案内される。

 その場所には、目を睨みつけるようにしてラーグラを見る人物が一人。

 ラーグラはその人物の眼光に、心の奥底でビビッてしまうのだった。

 (何なんだよ、その視線。怖ッ!!!)

 そんなことを心の中で言いながら、ラーグラは表立ってはそのような感情を見せないようにし、相手から舐められないようにする。

 弱い自分が生き残るためには、強い勢力の後ろ盾と同時に、ビビっていないということを見せることが大切なのだ。

 そういう教えというものをしっかりと守っているという感じだ。

 だけど、そんなものは、実力者からすれば、簡単に察せられてしまう場合は往々にしてある。

 そのことにはまだ、気づいていないようだが―…。

 そういう意味では、駆け引きというものはまだまだという感じなのであろう。

 「長、サンバリアからの使者です。」

と、ラーグラを案内した見張りの者が言う。

 これは、形式的なものであることは確かだ。

 そうであるからこそ、緊張というものがあったとしても、慣れという感覚に似たもので、定型文として言うことができる。

 それでも、長の前で、見張りの者が緊張しないわけではない。

 なぜなら、長の実力はそれなりというものであり、実際に、この見張りの者ではどうやったとしても勝つことはできない。

 砂漠の中で、略奪を生業としている長だけあり、この地域で恐れられているからこそなのだろう。

 実力無き者には冷たい。そんな砂漠の中で、人を率いているのだから、実力がないと思われるの方が難しい話だ。

 生き残るために統率者の実力がかなり求められるし、この統率者が馬鹿な判断を下せば、自分達の自滅がさけられない以上、実力のある者をトップにするしかないのだ。

 それは武力一辺倒ではなく、判断力、洞察力などのように、周囲を正確性を高くして見えるという力が必要であり、この長にはそれだけの能力が備わっているということである。

 人は完璧にも、完全にもなれない存在である以上、ミスをしない人間はいないが、そのミスが致命的にならないようにカバーできることも重要なことであるし、周囲の意見を正確性の観点から仕分けることも大切である。

 そうであったとしても、生き残れる可能性を完全に保障されるわけではない以上、確率を上げるようなことができるというだけでしかない、と纏めることができる。

 「そうか、ありがとう、見張りに戻ってくれ。」

 圧のある言い方をしている長と呼ばれている人物であるが、これは周囲に自分の意見を言い聞かせるために必要だからこそしているだけなのであり、普段の会話ではそのようなことをしたいとは思わない。

 馬鹿な行動で、集団が全滅するのを避けないといけないということを理解しているからこそ、しているだけなのだ。

 そういう意味では、自分が判断をミスするということがあることを知っていたとしても、そのことを考えるようなことはしない。

 なぜなら、迷ってしまえば、最悪の結果になることだって、十分にあるのだし、迷っている時間に最高の選択肢を選ぶことを逃してしまえば意味がないと思っているからだ。

 そういう意味で、この長と呼ばれる人物は、状況判断力の中に経験というものを織り交ぜているということと、時間の大切さを理解していると、判断することができる。

 そんな長の言葉を受けたのか―…。

 「分かりました、失礼いたします。」

と、言って、ラーグラを案内した者は、長のいる部屋から出て行くのであった。

 それと同時に、空気が重くなる。

 物理的にではなく、雰囲気的に、であるが―…。

 それを出しているのは、長、本人の圧であることは確かだ。

 これは、ラーグラという人間を見定めるような感じのものであり、観察しているということだ。

 その圧に対して、ラーグラは、恐怖を感じるのだった。

 (案内の奴が部屋から出た後に、さらに、圧が増してきているな。これは、向こうに対して、不都合なことを言えば、ヤられる!!! 物理的に!!!)

と、ラーグラは心の中で思う。

 というか、心の中で言ってしまうほどに、長と呼ばれている人間の圧に蹴落とされているのである。

 緊張のせいか、僅かではあるが、右手の先が震えてしまっている。

 だけど、ラーグラはそのことに気づくことはない。

 なぜなら、ラーグラは長の方に視線を合わせ、集中しないといけないからだ。

 そのせいで、気づけることにも気づけないような感じになっている。

 要は、長の圧というものがラーグラという人間の正常な反応を若干ではあるが麻痺させているというか、状況判断力を鈍らせていることになる。

 ラーグラは気づく。

 長に対して、不機嫌になるようなこと、この集落にとって不都合なことを言えば、ラーグラ自身が消される。

 サンバリアの後ろ盾があったとしても、砂漠の中で殺されてしまえば、気づかれる可能性はかなり低いであろうし、通信技術が発達しているサンバリアであったとしても、衛星を打ち上げるようなことはできたとしても、ラーグラ個人だけの動向を追うことはできない。

 それに、フェーナはサンバリアの衛星を使って三人組の動向を把握しようとしたとしても、天成獣の宿っている武器の中には、その位置すら把握するのが難しくなるようなものだってある。

 いや、幻を使われてしまえば、衛星であったとしても追うことは不可能になる。

 その可能性を考慮に入れないといけなくなると、天成獣の宿っている武器を扱う者の後を追わせるのはどうしても、人が必要になるのは確かである。

 天成獣の宿っている武器を扱うということは、人間の扱うことができる技術であったとしても、圧倒的に敵わないことが往々にしてあるのだ。

 人間の扱うことのできる技術が天成獣の宿っている武器よりも性能で越えるようなことがあれば、サンバリアは、建国から数十年でアウリア大陸全土を支配していてもおかしくはないのだ。

 それができていないからこそ、人の技術というものを天成獣の宿っている武器はそれよりも優位なものであることを証明しているのだ。

 まあ、これで完全に証明されているということを保証するのは危険なことでしかないが―…。

 (…………右手の先の部分が若干ではあるが震えているか―…。サンバリアの使者だからといって特別に強いというわけではないだろう。軍人という感じでもないが、戦いを経験していない人間というわけでもない。ただ単に、弱いということか。サンバリアを敵に回すような選択は、今のところはすべきではないな。)

 長からしても、サンバリアの実力がどれだけのものかはしっかりと知っている。

 サンバリアの噂はいっぱい聞いたことがあるし、あそこの国の軍事力はかなりのものであり、征服に成功し続けていることがその証左となっている。

 天成獣の宿っている武器を扱う者がいたとしても、数十でサンバリアに対抗することなどは不可能だと思われる。

 この集落における天成獣の宿っている武器を扱うことができる者は、五十人と満たない。その中で戦力となるのは、その約七割ぐらいのものであり、残りの三割はしっかりと訓練をしないといけない。

 そして、ラーグラは、この集落での実力で言えば、訓練を必要とする三割の方に相当する。それだけ、ラーグラが弱いということでもある。

 長からしてみれば、このような実力を持たない者を派遣してくるのは、この者を殺すのは簡単ではあるが、それを口実として、殺した者の勢力と戦争して、勝利し、征服しようとしているのではないかと考えるし、そのようになることが夢幻のようなものではなく、現実に起こり得る可能性が高いからこそ、このようなことができるのだ。

 ゆえに、自信が空っぽではなく、しっかりと伴っているのだから、厄介としか言いようがない。

 それでも、ずっと会話をしないということは難しい。

 そうである以上、切り出さないといけない。

 「そんなに怯える必要はない。ここは実家のような感じだと思ってくれ。サンバリアの使者よ。」

と、長は言う。

 これはまさに、建前と本音だ。

 長からしてみれば、実家のように寛げるはずもないと思わせるほどの圧をかける。

 そのような中で、油断することなく寛げるのなら、そいつはかなりの大物であるし、敵対するのは確実に危険だと判断することができる。

 そして、ラーグラの今の気持ちというものに、長は気づいていないわけではないからこそ、敢えて、試すようなことをする。意地悪でしかないが、それぐらいのことは許されるだろうと判断しているからこそやっているのだ。

 そのことで、難癖をつけるような心の小さな人間が、サンバリアの支配者であり続けることは不可能であるし、目の前にいるラーグラがそのことを上にチクるようなことはしないであろう。

 自身が弱いことを認識しながらも、プライドを捨てらずにいるのだ。

 そういうことを読んだ上での、長の判断であるが、この人物の駆け引きの上手さは称賛にあたいするものであろう。

 それだけの価値がある。

 ラーグラの方は―…。

 (何を寛げと言ってきやがる!!! 明らかに、お前は弱い!!! 実際に寛げるわけがなかろう!!! クソッ!!!)

 悪態を吐く。

 完全にラーグラの実力を見透かしていることを口にはしないが、圧で語っているのだ。

 そのことに気づくラーグラ。

 ゆえに、長に対して、頭にくることはあろうが、それでも、自分の目的を果たさないといけないと感じるからこそ、悪態を吐こうが、決して、それを表情には出さず、相手にとって都合が良いことを言うしかないと、頭の中で思考を巡らせるのであった。

 そして―…。

 「寛ぐようなことはいたしません。これは一時的な協同関係でしかありませんから―…。」

と、ラーグラは少しだけ必死に言う。

 そうしないと、長の前で言葉を発することができなくなるからだ。

 それだけの圧を今、長が発しているということだ。

 そうである以上、ラーグラも必死さを増さざるを得なくなる。

 長は静かになりながらも、圧を解くようなことはしない。

 それだけ、サンバリアというのは警戒しないといけない存在であることを認識しているからだ。

 「私は今、ある三人組を追っていていましてねぇ~。その三人組がサンバリアを襲おうとしておりましてぇ~。彼らをサンバリアの手前で討伐してくれると助かるのですが―…。一人では困っていて―…。」

と、ラーグラは必死で言う。

 そのためか、要点を掻い摘むに近いことが必要であるが、長には十分に理解することができた。

 (要は、俺らに依頼して、三人組とやらを殺せ、そういうことだな。まあ、どれだけの実力があるのかを把握しないと無理かもしれないが、サンバリアに一つでも貸しを作れば上出来、依頼を受けても失敗したとしても向こう側が何かしらのピンチになる可能性があるのなら、伝手を作っておくことができれば、リスクやらデメリットもあるが、十分にメリットを得られるだろう。だが、ここで依頼を受けるべきかを言うべきではないな。もう少し話を聞くことにするか。)

と、長は心の中で思う。

 長からしてみれば、この場で、急に判断を下すのは危険だという直感がはたらく。

 長としては、今の心の中で思っている方針で間違いはないし、失敗したとしても、三人組側との伝手を作ることができれば、後々、自分達にとって得になるかもしれないし、今の集落にとって略奪業をしているのは、ラナトールから護衛の依頼が減少したことと、イスドラークの政情が不安になっていることによるからだ。

 イスドラークの今の領主は、スラムのことを毛嫌いしており、事あるごとにスラムを潰そうとしているらしい。これは確実性の高い情報であることは分かっているが、それと同時に、スラムを形成するきっかけとなったのは、先代の領主による政治が悪かったのが原因だし、現領主もそのような傾向を引き継いでいる。

 自分のおこなっていることが良いことか悪いことかをしっかりと判断下せるようになって欲しいと、長の方では思ってしまうが、そのようなことをイスドラークの領主の目の前で言えるほどに愚かではない。

 なぜなら、イスドラークの領主には、どこかしらの天成獣の宿っている武器を扱う者達が十数人ほどおり、それが実力者であるという噂まであるのだ。

 どこから雇ったのかは分からないが、それを雇うだけの金があるのなら、スラム街の人間の生活改善のために使え、と思ってしまうが、防衛上のために必要なのは確かだが、イスドラーク規模では過剰戦力としか言いようがない。

 サンバリアのように発達していれば、過剰戦力どころか、足りないという判断になったとしてもおかしくはないのだが―…。

 そのように考えながらも、ラーグラの言葉の続きを促すために質問する。

 「その三人組は今、どんな状態なんだ?」

と、長は尋ねる。

第148話-3 略奪者 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆していくと思います。


では―…。

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