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水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
707/746

第148話-1 略奪者

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。



 【第148話 略奪者】


 砂漠の中。

 すでに、一人の人物が出発しており、ある集団のいる場所へと向かっていた。

 そして、目の前には一つのオアシスがあった。

 そこを目指したのには、理由がある。

 (向こうは出発する可能性はあるが、簡単にイスドラークへと向かえるわけではないだろう。なら、こちらの略奪者の集団どもを使えば、あいつらを砂漠の藻屑にすることができる。証拠は残らない。砂漠なら―…。)

と、心の中に思う人物が一人。

 この人物は、ラーグラ=インティエルティである。

 彼は、瑠璃たち三人組の命を狙っている。

 フェーナからは、瑠璃たち三人組の監視を任務としているのだが、それ以上に、この三人組を始末して、自分の手柄にしようとしている。

 これは、自分がフェーナから評価されたいという気持ちであると同時に、フェーナに評価されれば、しっかりと自分を認めてくれるだろう。過去のフェーナに戻ってくれるだろうと思っているのだ。

 フェーナとラーグラの関係については、後に触れるかもしれないので、ここでは割愛する。

 大事なのは、ラーグラは一人では瑠璃たち三人組を殺すことができないから、砂漠のオアシスに住む集団の力を借りようとしているのだ。

 そっちの方が確実性を増すことができるからだし、自分が弱いということをしっかりと知っているからこそ、いろんな策を使って、頭脳を使うのだ。

 そうしないと強者には勝てない。

 これが弱者なりのやり方なのである。

 そういう意味では、ラーグラは自分を理解しているのであり、理解していないとも言える。

 どっちなんだ、と問う人間がいるだろうが、この相反する矛盾しているようなことが同時に成り立つことは十分にあり得る。完全に理解することができない、完全に理解しないことができない、というのが人に成り立つことが分かっていれば、簡単に理解することができる。

 そう、ラーグラも人であり、完全に自分のことを知っているわけではない。

 さらに詳しく見るのなら、ラーグラ自身もそれ以外の他者も知っているラーグラの性格や実力、ラーグラ自身は知っているがそれ以外の他者は知らないラーグラの性格と実力、ラーグラ自身は知らないがそれ以外の他者が知っているラーグラの性格と実力、ラーグラ自身もそれ以外の他者も知らないラーグラの性格や実力という四つに分類することができれば、まず、完全に理解することができない存在であることの一端を知ることができるであろう。

 要は、ラーグラ自身がまだ出会っていない自身の性格や実力というものがあるということであり、そのことを知ることによって、実は弱者ではないということが分かるかもしれない。

 そうでない可能性も十分に存在するが、それは実際に出会ってみないと、気づいてみないと分からないことである。

 そして、話を戻して、ラーグラはそのオアシスの方へと向かって行く。


 少しの時間が経過する。

 そのオアシスの前―…。

 村の入口と判断しても良い。

 小さな湖の中に、十数件ほどの家が並んでいる。

 そこには、見張りのような者らがいた。

 そして、彼らはこちらへと近づいてくるラーグラに気づく。

 ラーグラが今、見張りのいる場所に到着すると―…。

 「何者だ!!!」

 見張りの者らのうちの一人がラーグラに向かって声を張り上げる。

 彼らにしてみれば、ローブを羽織ろうとも、怪しい人物をこの場所に入れないようにしているのだ。

 このオアシスでは、僅かではあるが、耕作をおこなっているが、それだけではギリギリしかこの場所での食料を賄えないがゆえに、略奪をおこなうことで何とか飢えをしのいでいるというわけではない。

 そして、ラーグラはこの見張りの者たちの強さを感じるのだった。

 (!!!)

 ラーグラは心の中で驚きながらも、それを知られるわけにはいかないので、表情には見せないようにする。

 相手に舐めてかかられるのは良い結果にはつながらないだろうということを本能的に理解している感じだ。

 だけど、弱さも時には武器となるのは事実なのであるが―…。

 「あ~、武器を構えるのは分かるが、私は、ここのトップと話したいためにやってきた。私は、サンバリアから来た使者ラーグラ=インティエルティだ。ここを軍事侵略したくて来たわけではない。依頼をしに来たんだ。」

と、ラーグラは言う。

 別のサンバリアの使者ではないのだが、こういう話し合いの場へとするためにはどうしても、こういう権威というものが重要になってくるのだ。

 何も肩書のない人間とわざわざ話そうということに割ける時間がないのだ。いろいろと仕事をしたり、情報を整理したり、収集したりと―…。

 そういう意味で忙しいし、それに加えて、知らない人間がトップの命を狙って来ることだってある以上、おいそれと会話をすることなんてできやしないのだ。

 だけど、権威に関係なく、時には、肩書のない人間とも話さないといけなくなる場合がある。それは、より良い正解がその話の中で得られる場合も存在することは十分にあり得るからだし、新たな視点を手に入れることも可能であるからだ。

 一方で、サンバリアを知らない人間は、このアウリア大陸には誰一人もいないのだから―…。

 サンバリアの軍事力も―…。

 そうである以上、話して、穏便に済ませようと考えるはずだと、ラーグラはそのように考えている。

 弱者であるがゆえに、そういう相手の状況の機微を知らないといけないことを良く理解している。

 ゆえに、今の自身が言っている言葉はきっと聞き入れられるだろう。

 会談に近い状況にもっていけるだろう。

 そして、それは成功することになる。


 数分後。

 ラーグラは案内されていた。

 (みすぼらしい村という感じだな。だが、一人一人、戦士としての強さを感じる。俺なんかよりも圧倒的に強い―…。どうすればそんなに強くなるんだよ。まあ、これであの三人組を始末することができる。)

と、ラーグラは心の中で思う。

 ラーグラからしたら、この村にいる戦士と思われる格好をしている者達は自分よりも強いということがすぐに理解できるのだった。

 ラーグラが弱者ゆえに、そういうのを敏感に感じ取ることができるようにならないといけなかったということが大きいのであろう。

 そういうことができるゆえに、ここまで生き残ることができているのだ、ということが分かる。

 「サンバリアからわざわざこんな辺鄙な場所へと―…。どうして?」

 この案内人からしたら、疑問にしか感じられない。

 見張りをしていたが、長へとラーグラが来たことと、話したいこと、依頼したいことがあると伝えたら、案内しろと言われたので、案内しているだけに過ぎない。

 この案内人からサンバリアから来た人間から依頼されるのは不思議なことでしかない。

 サンバリアが超大国であることを知っているし、彼らの軍事力がどれだけのものかというのも知っている。

 だからこそ、このような辺鄙なと言っても良い村に依頼するようなことなどありはしないだろうに、と思ってしまうのだ。

 その判断は間違っていないし、当然のことであろう。

 そんななか、ラーグラは案内人の言葉を聞きながらも、今すぐ、ここで依頼の内容を言うような愚策は犯さない。

 「それは、この村の長に話すから、今、ここでは言えないことだ。気にしなくてもお前らが損することはない。サンバリアとしてもこの依頼は大事なことなのだ。」

と、ラーグラは言う。

 ラーグラは、少し傲慢な言い方をしているように感じるが、それでも、弱々しい態度で言うのは舐められると感じたから、そのようにさせないために、相手側に少しだけの不快感を与えるだろうが、仕方ないことだと割り切る。

 これが原因で、自分が恨みをかって、命が狙われるようなことになるのは御免だという感じであろうが―…。

 一方で、案内人からしたら―…。

 (サンバリアから来たのだろう。傲慢な態度は、自分が一番優れた国だと思っていることからなのだろう。まあ、こいつ一人を殺すことぐらいはいつでもできるが、サンバリアを敵に回すことは危険なことでしかないから、俺一人が感情に流されるわけにはいかねぇ~。)

と、心の中で思うのだった。

 ラーグラに対して、不満というものがないわけではないが、ラーグラが戦闘面において弱いということはしっかりと理解することができている。

 それだけ、戦闘慣れをしているとも言える。

 ラーグラは自分が弱いということを知っているが、相手には知られているはずがないと思っているので、この案内人がラーグラの実力をある程度正確を察せられているということに気づけば、驚くことであろう。

 そのようなことを言われない限りは、気づくこともないであろうが―…。

 そして、ラーグラをいつでも殺すことができるが、そのことによって、サンバリアを敵に回すようなことになってしまえば、こちらへの被害は甚大なものではなく、かなりの規模、全滅の類になるのは分かりきっている。

 サンバリアには特殊な人型の兵器があるのだとか、という噂も存在するのだから―…。

 だからこそ、会話も慎重に選んだ言葉になってしまうことも避けられない。

 「そうなのですか。サンバリアは超大国。私らのような辺鄙な場所に住んでいる者達にとって、サンバリアを敵に回すことは危険なことでしかありません。そのような場所の使者なのですから、よほどの実力の持ち主なのでしょう。」

と、案内人は言う。

 この人物からしたら、このような皮肉を言うのが精一杯である。

 サンバリアを敵に回ることは、この案内人が今、言っている言葉で十分に分かるだろう。サンバリアの軍事力は、このアウリア大陸の中でかなりの規模のものであり、このような小さな辺鄙な場所にある村で相手にすることなど、全滅するだけの未来しかないということだ。

 そうである以上、馬鹿な感情での判断は自らの村を含めて危険な状況へと追い込むことになるので、皮肉は相手が理解できないような感じしないといけないし、褒めるように見せないといけないというわけだ。

 つまり、ラーグラはよっぽどの実力者であるということを敢えて、口にして言わないといけないということになる。

 その言葉を聞いたラーグラは、

 (俺を強いと言っているようだが、残念ながら、お前よりも(よう)ぇよ。まあ、勘違いしてもらっている方がこちらとしても得なのだがな。)

と、心の中で思い、敢えて口にはしないのだった。

 それは、自分が強いと見せておくことが、今、この場では大事なことであることをしっかりと理解しているからだ。

 「ええ、だけど、私であっても、サンバリアでは一番下の方なのだよ。サンバリアは私よりも遥かに上回る実力者がうやうやといますから―…。彼らは天成獣の宿っている武器を扱っていて、その実力は、「人に創られし人」の一族でも敵わないほどだ。」

 ラーグラからしたら、「人に創られし人」の一族というのが傭兵として、アウリア大陸で有名なのは分かっているし、彼らの実力以上と言っておけば、サンバリアに反抗するような真似をすることはないだろう。

 サンバリアの軍事科学は、この大陸で一番であり、それに敵う存在なんかいるはずもない。そのような思いも込められており、そうである以上、誇張もラーグラ本人の中では誇張でもないかもしれない。

 「そうですか。」

と、案内人は言いながら、

 (敵に回すのは危険であることは分かったから―…。後は、長が決めることだ。)

と、心の中で思い、長のいる場所に到着するのだった。

 

第148話-2 略奪者 に続く。

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正および加筆をしていきたいと思います。


ここからは、ラナトールからイスドラークへの砂漠の中の移動のお話となります。ラーグラが動いていますねぇ~。

そんな感じで、いろいろと伏線回収したり、張ったりしながら、話が進んでいくことになります。

今のところは、第153話の執筆を開始という状況です。

第159話から第161話あたりで、イスドラークの話へと入っていくと思います。

ということで、無理しない範囲で、執筆をしていきます。

では―…。

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