表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水晶  作者: 秋月良羽
現実世界石化、異世界冒険編
702/746

第146話-14 砂漠へ―…

『水晶』以外にも以下の作品を投稿しています。


『ウィザーズ コンダクター』(「カクヨム」で投稿中):https://kakuyomu.jp/works/16816452219293614138


『この異世界に救済を』(「小説家になろう」と「カクヨム」で投稿中):

(小説家になろう);https://ncode.syosetu.com/n5935hy/

(カクヨム);https://kakuyomu.jp/works/16817139558088118542


興味のある方は、ぜひ読んで見てください。


宣伝以上。


前回までの『水晶』のあらすじは、クリスマスの日、世界が石化するという現象が起き、石化されなかった瑠璃、李章、礼奈は異世界からやってきたギーランによって、異世界へと送られるのだった。そして、魔術師ローの話により、世界を石化させたのはベルグの可能性があり、彼を探すために異世界の冒険に出ることになるのだった。そんな中で、クローナを仲間に加え、アンバイドを一時的な協力関係を結ぶことになり、リースへとたどり着く。

 そこでは、ベルグの部下で幹部の一人であるランシュが仕掛けたゲームに参加することになるが、そこで、リース王族の一人であるセルティーと知り合うこととなり、チームを組んでランシュのゲームの中で最終的にはランシュを倒すのだった。それを利用したかつてのリース王国の権力者側であったラーンドル一派の野望は、それを知っていた王族でセルティーの母親であるリーンウルネによって防がれることになる。

 詳しくは本編を読み進めて欲しい。

 そして、リースは王族とランシュの共同体制ということで決着することになる。

 一方で、ベルグの部下の一人であり、ランシュと同等の地位にあるフェーナがベルグの命により、ベルグの目的達成のために、その部下ラナを使って瑠璃のいる場所を襲うが失敗。その時に、サンバリア側の刺客であることがバレて、瑠璃、李章、礼奈、それに加え、クローナ、ミランとともに、サンバリアへと向かうのだった。これは陽動作戦であり、ローもそのことを知っていて、瑠璃たちを成長させるために敢えて、乗るのであった。

 そして、瑠璃たちは、セルティー、ローらと別れ、船の乗り、サンバリアを目指すのだった。


 少し時は戻る。

 瑠璃たちのいる場所。

 そこから砂が噴き上がるのが見える頃。

 李章は―…。

 「あっちの方へと行ってきます。」

と、言い、噴き上がっている砂の方へと向かう。

 「何、勝手な行動を!!!」

と、ミランは言う。

 怒りの感情だ。

 怒りの感情を抱かない理由はない。

 今、砂が噴き上げる場所へと向かえば、危険な目に遭うのは分かり切っているのだ。

 ミランから見れば、自分達で対処することは可能であるが、砂漠越えを始める日に、そんな災難に自分から突っ込むような体力を消費するだけの真似はできない。

 自分達で砂漠越えをしないといけないのだから―…。

 キャラバンの後ろをついて行くだけで充分なのだから―…。

 そのキャラバンが何かしらの危機に見舞われたとしても、それはこちらがラナトールから出ていない以上、無視しても、助けることができなくても問題はないのだから―…。

 キャラバンには護衛がしっかりといると、ミランは思い込んでいるのだから―…。

 砂漠越えに護衛を雇わない商人や商会がいるはずもない。

 そんな奴らは自分から危険に飛び込む危険な人物であり、彼らの護衛の依頼を受けるべきではない、と思ってしまうのだ。

 危険なことにわざわざ巻き込まれたいと思う気持ちなど、一切ないのだから―…。

 「仕方ないことだと思います。たぶんだけど、「緑の水晶」が危機を察知したのだと思うから―…。」

と、礼奈は言う。

 李章は、「緑の水晶」を持っており、その能力は危機察知。その能力を行使すれば、危険であることを事前に知ることができる。それを感知したからこそ、キャラバンの方へと向かっている。

 それは半分正解である。

 残りの半分は、瑠璃が危険な目に遭う可能性が頭の中に過ったことと、あのキャラバンを襲っている危機に対処することができれば、安全にイスドラークへと向かうことができると判断したからだ。

 ゆえに、ミランが思っているよりも、馬鹿というわけではないし、無謀な行動でもないし、アイビックサソリを倒すことができると判断しているからであろう。

 ミランは、李章を止められるとは判断することができず―…。

 「はあ~。」

 溜息を一つ吐くと―…。

 「向かいましょう。」

と、ミランは言う。

 そして、全員がキャラバンの方へと向かうのだった。


 時は戻る。

 キャラバンの側―…。

 そこでは、李章とアイビックサソリが対峙していた。

 戦いはもう始まっているのであるが、最初の李章の攻撃を受けて、アイビックサソリは慎重に行動することを選択する。

 なぜなら、李章の強さを本能的に理解したのだろう。

 いくら人への復讐心があるとは言っても、モンスターとしての本能を失っているわけではない。

 冷静さもないわけではない。

 このアイビックサソリはそういう慎重さも兼ね備えているからこそ、ここまで生き延びることができたのだから―…。

 そして、アイビックサソリは、李章へと視線を合わせながらも、動き出さず、相手の弱点を探る。

 一方で、李章はアイビックサソリへと視線を向けながらも、今、すぐに動くべきではないと判断する。

 なぜなら、自分がここで動けば、アイビックサソリは自分を無視して、キャラバンを襲うのではないかと思っているからだ。その理由は、勘の類のものでしかないが、直感を無視するようなことはしない。

 (……蹴りだけで倒せる相手だとは思いますが―……、相手はモンスター。普通の生物よりも強いのは事実です。)

と、李章は心の中で思う。

 李章は、この異世界において、モンスターに出会うのは初めてのことであり、現実世界での異世界を題材に扱ったもしくは二次元作品におけるモンスターの出てくる作品からの僅かに知っているだけの知識から、モンスターが普通の生物より強いということは知っている。

 ゆえに、油断することはできないと判断する。

 だからこそ、李章は、僅かにでも視線を離さないようにする。

 両方とも対峙する。

 そのままに―…。

 だけど、それに耐えられるだけの戦闘の経験があるわけではないし、そもそも戦闘はしたことのない商人や商会の人達にとっては、恐怖でしかなく、李章の登場だけで安心することはできない。

 (………ありゃ、子ども―…。子どもがあんなモンスターに対抗できるはずもない。さっきの登場も俺が見ている幻なのではないのか。なら―…、他の人間から見えていないし、何かを受けたモンスターの方が動かなくなっているのだから―…。)

と、一人の男性が考える。

 この人物は商人であるし、商売の経験はあるが、この場合の対応は、これまで護衛ばかりに任せていたので、護衛のいない隊商では、どうしても自分で判断しないといけなくなる。

 そのために、必要なことが理解できていなかったし、子どもである李章がアイビックサソリに対抗できるとは思えなかった。

 そのように思うのは当然であろうが、李章は天成獣の宿っている武器を扱うことのできる人物であり、それなりに短い期間ではあるが、濃い修行をおこなっているので、それなりの強さを持っている。

 刀を抜けば圧倒することもできるであろうが―…。

 ゆえに、この商人は自分が人の戦闘力を見抜けないことに恥じることはないだろうし、自分がしているの商売なのだから、商売に関してのことだけできればよいと思っているのかもしれない。それだけ十分だ。

 そして、チャンスであると気づいたこの人物は―…。

 「ラナトールへ逃げろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

と、叫ぶ。

 その言葉で誰もがラナトールへと向かって、一時的でも避難しようとする。

 思考停止をしていた者達にとって、この言葉、いや、声の大きさは、彼らの思考停止を終わらせ、危機をしっかりと認識させ、どのような行動をすべきかということを理解させるには十分な効果を発揮させた。

 それは冷静さを伴うものではなく、恐慌状態に近いものをデメリットとしてもたらすようなものでしかなかったけど―…。

 「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 「逃げろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

 これは一部の声でしかないが、恐慌状態に近いものではないかと思わせるのには、十分だし、彼らだって自分の命の方が大切であることをしっかりと理解している。

 なぜなら、自身の命が奪われてしまったら、家族を守ることはできないであろうし、これからこのマイナスを補うことももう二度とできないのではないか、というのを本能的に理解する。

 ゆえに、逃げる、逃げる。

 ラナトールの方へ―…。

 そして、人への復讐を考えているアイビックサソリは、逃げる群衆を見ながら、そっちの方へと向かい始める。李章の方を無視して―…。

 アイビックサソリからしてみたら、人への復讐は多くの数に対してした方が効果的であることを知っているし、さらに、ラナトールには人がいっぱいいるのではないかということを建物から判断したのだ。

 ゆえに、そっちの方へと向かう。

 李章は強いであろうが、むしろ彼らを守るための行動をとるから、どうしてもそっちの方へと一瞬向かうのが今、遅れ気味になっているので、アイビックサソリの目的の行動からしたら成功したと思った。

 だけど―…。

 〈フィルネ、大丈夫ですか。〉

 〈ええ。〉

 李勝は、自身の天成獣であるフィルネと会話を終えると、すぐに、アイビックサソリに気づかれることなくアイビックサソリの方へと向かい、移動する。

 一方で―…。

 ラナトールの方では―…。

 「こっちに向かってくるぞ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

 そのことに気づいた一人の男性が声を張り上げる。

 ラナトールには、自警団に近い治安組織があり、彼らが動いてくれるかは分からないが、頼れるのは彼らしかいないのだから―…。

 そして、ラナトールの住民は逃げようとするが―…。

 「えっ!!!」

 驚きの光景を目の当たりにするのだった。


 アイビックサソリは、キャラバンを襲おうとする。

 人への復讐。

 それが、今の生き様であり、このモンスターを抑えるだけのことができるのは、逃げている人達の中にはいない。

 「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。」

 「こっち来るな―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」

 「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 すでに、悲鳴を出す者達もいるが、すでにアイビックサソリへの恐怖からか、声を出すこともなく、必死に逃げる、逃げる。

 逃げなければ、アイビックサソリに殺されるだけなのだから―…。

 必死にもなるし、ここで必死にならないのはおかしいであろう、という具合だ―…。

 そして、アイビックサソリが迫るなか―…。

 李章は、アイビックサソリに気づかれないようにかけながら、右足の方にフィルネから借りた力を纏う。

 そして、アイビックサソリに攻撃できる場所にまで到達すると、すでに準備は万端で、大きくジャンプする。

 その高さ、アイビックサソリの身長を優に超えるものであり、天成獣の宿っている武器を扱うことができなければ、能力者じゃなければ不可能なことであり、そして、ハードルを越えるような軌道を描き、アイビックサソリの固い甲羅の上から―…。

 斜めに落下して―…。

 右足の蹴りの攻撃を入れる。

 「生撃瞬蹴(せいげきしゅんげり)。」

 李章の蹴る動作は、常人では追えないほどの速さであり、そのスピードの比例するかのように、蹴りの一撃の威力は強くなる。

 天成獣から借りた力と組み合わされて―…。

 そして、アイビックサソリは地面に叩きつけられるのであった。

 それも人だったら、命を奪われてもおかしくはないほどの威力で―…。

 アイビックサソリを中心として、砂煙が舞い上がるのだった。


 【第146話 Fin】


次回、護衛の仕事を手に入れられるのだろうか?

誤字・脱字に関しては、気づける範囲で修正もしくは加筆をしていくと思います。


第146話よりは短いとは思います。第147話は―…。

では―…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ