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水穂戦記  作者: 江川 凛
第7章 東郷の国
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模擬戦 1

 俺たちがある程度東郷の学校生活にも慣れてきたころ、教師から明日模擬戦をやると言われた。

 どういうことかわからなかったので、いきなり「へ?」と変な声をだしてしまった。

 「いけない、どうも東郷に来てからこんなことばかりだ。」と思っていると、「10人隊の隊長として兵を率いてもらいたい。」と言われた。


 そして「もし勝てば、負けた10人を引き連れて20人隊の隊長として引き続き戦ってもらいたい。」と言われた。

 それを聞いて世話役でなかった、領主が説明してくれた「あれ」かと、やっと合点がいった。

 兵を率いるものとして、兵に何ができるか把握していなければならないが、俺の場合、同じ組の者の名前すらロクに覚えていない状態だ。


 そのため、特別に信義をつけてもらうことになった。

 本当は小夜もつけてもらいたかったのだが、さすがに女だと相手の指揮官がそのことを気にして手加減をしかねないとの理由で、こちらは却下されてしまった。


 さて、試合当日だが、何と世話役でなかった、領主が見学に来ていた。

 俺を見て笑いながら手を振っている。

 東郷程の国の領主となれば、やることが山積みだと思おうのだがら、違うのだろうか。

 それと、もう1つ気になったのが、領主の周りに護衛らしきものが見えないことだ。

 彼が領主であることは秘密になっているのだろうか。見た感じ、彼が特別扱いされている様子は見当たらない。

 しかし、学校のお偉方が彼は領主であることを知らないはずがない。

 いろいろ謎は深まる。


 さてそんなことを考えていたら、試合が始まってしまった。

 本来はいろいろ考えなくてはならないのだろうが、10人対10人で信義がいるのなら、とる戦法は1つしかない。

 信義を中心において中央突破だ。そして、信義の左右に4人ずつ配置し縦一列に並べる。そして一番後ろが俺だ。 

 極めて分かりやすい布陣で、いくら信義でも3人を相手にすることはできないから、常に1対1になるように、左右のものは信義の防御に徹する形だ。


 試合は予想どおりだった、信義が中央突破を図り、周りはその防御に努めれば良い。

 相手も10人だから信義が3人も倒せば中央突破は成功で、敵司令官は負けを認めた。

 ふと顔を挙げると、領主と目があった。俺のことを興味深そうに見ている。取り合えず頭を下げておく。


 敵だった10人が俺の指揮下に入る。

 俺の目の前で次の試合が始まる。

 どちらも基本的に横一列に並べて、ところどころに2名にして、指揮官が一歩後ろという布陣になっている。

 基本的に1対1で戦わせて、弱いところを補充しながらという作戦の様だ。

 あまり作戦とよべるものではないが、10対10で戦力に差がなければこうなるかという感じだ。

 結果、総力戦というか消耗戦のような感じになりながら、片方が勝利した。


 これが俺たちの次の相手だ。

 かなり消耗しきっているところ申し訳ないが、こちらも領主に注目されている以上、勝たないと恰好がつかない。

 そこで先程と全く同じ戦法で、真ん中に信義を置いて、左右に4名の列を今度は縦2列配置した。

 敵も中央を多少厚くしてきたが、前回の試合で大分疲れて切っているようなので、何の問題もなく俺たちの勝利となった。


 一回戦と二回戦はそのまま連続で行われるが、三回戦は二回戦が全て終了してからとなるようなので、俺はそのまま試合を眺めていた。

 確かに10名程度だとロクに陣にならないが、20名になると大分異なってくる。

 俺たちのように中央突破を図るもの、周りを取り囲んで消耗戦を図るもの、いろいろだ。

 見ていて結構楽しいし、参考になる。

 なるほど、これを繰り返していけば、間違いなく戦は強くなるなと思わせてくれる訓練だ。


 三回戦が始まった。

 俺が試合を見ていたように、相手も俺の試合を見ていただろう。

 それに俺の場合、水穂出身というだけでかなり目立っている。どんな試合をしたかは相手に筒抜けのはずだ。

 というわけで、三回戦は最初これまでと同じ陣を敷いておいた。

 ただ、実際戦がはじまると、信義と彼を護衛する数名をおとりのような形で真ん中に残し、縦の陣を後ろから横に展開し、相手を取り囲んで一気に終わらせた。


 「うまくいった。」と思いながら顔を挙げると、又しても領主と目があったが、今度も領主は面白そうに俺に手を振ってよこした。

 俺はとりあえず頭を下げておいた。

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