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水穂戦記  作者: 江川 凛
第7章 東郷の国
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東郷 4

 説明は更に続く、というか、俺の頭の中で、聞きたいことが後から後から沸いてきて質問せざるを得なかったので、説明役がその回答をしているという感じだった。

 俺が最初に思った疑問は、俺がさんざん苦労した陣(集団行動)だ。

 確かに、個々の力が強ければ、戦が有利になるのは間違いないが、それだけで戦に勝てる程甘いものではない。

 戦(集団戦)ではどういう陣をとってどう攻めるかが大事だし、火攻め水攻め等の作戦も大事だ。

 力だけではどうにもならないはずだ。

 水穂という弱国で少ない兵を率いてきた俺としては、そこが一番気になった。


 すると説明役は、さも当然と言わんばかりに、「指揮官は別に登用します。」と言ってきた。

 具体的にはこうだ。実際に学校で、十人単位で班を作り、1人づつ指揮を取らせる。

 勝った者は二十人単位で指揮を取らせる。

 次に四十人で同じ事を何度かやらせる。

 この頃になると誰が上手く兵を操れるか、大体皆分かってくるし、兵も誰の言うことを聞けば勝てるか分かってくるので、逆らうこともないと言う。


 極めて合理的だ。兵にとって最も嫌なことは、無能な指揮官の下で死ぬことだろう。

 だからこそ、あまりに暗愚な領主は交代させられる訳だが、俺の父親の様にそれなりの者は、そのまま領主を続ける。

 すれば、可もなく不可もなく月日が流れていき、気が付けば、国が滅んでいたという事にもなりかねない。

 しかし、この体制なら指揮をとる才能があるかどうかだけが指揮官を決める。

 確かに合理的だ。だが、ここでも同時に、あまりに合理的過ぎるという違和感が沸いて来る。


 次に疑問に思ったのが、国の運営は軍事だけではない。

 国の仕事には、年貢の徴収や財政もあれば、治安もある。それに各部門の人材を管理する人間も必要となってくるであろう。

 それに携わる人材はどうするのか聞いてみる。

 すると、「なんだそんなことですか?」と言わんばかりに「学校の成績で優秀な成績をとった者を登用するだけです。」と言ってきた。


 確かに「武」を重んじると言っても、学校に言っているのだから、他に何もやらないはずがない。

 どうも馬鹿な質問をしたと恥じ入ってしまった。

 しかし、俺の立場としてはもうひとつだけなんとしても聞いておきたいことがあった。

 領主をどう決めるかだ。

 指揮官、支配階級(武士)をこれだけ合理的に選任する以上、領主だけが血筋ということはあり得ないだろうと思ったが故の質問だった。


 結果は予想通りで、指揮官と武士の投票で決めるという。

 これには俺も思わずびっくりしてしまい、先程の小夜と同じ変な声を出していた。

 何でも原則10年もしくは、領主が病気などで執務が行えなくなるごとに投票を行い、それで決めているという。

 結果は、やはりというか、どうしても指揮官が武士の信任も熱いので、指揮官出身の者が領主になることが多いそうだ。


 俺はこれを聞いて、本当に感心してしまった。

 すべてが合理的だ。

 同時に、何故ここまであけすけに自国の情報をさらすのかと思ったが、しばらく考えるとなんとなくわかってきた。

 これだけ合理的だと、まず普通の小国はひたすら敬服し、立ち向かおうとは思わないはずだ。


 もしかすると、こうした情報を自国に持ち帰った役立てようなどと考える「馬鹿者」も出て来るかもしれない。

 あまりに合理的であるが故に感染力が高い。

 しかし、これをもちこまれたら今の武士は、領主はどう思う。

 間違いなく反対するはずだ。そして、こうした思想が広まることすら禁止するだろう。

 そして東郷に対する正確な情報は伝わらずに、ある種の畏怖の様な者だけが広がるといったところであろうか。 

 「確かにそれなら、積極的に情報を公開しても損はないかとしれない。」俺はそんなことを考えながら、話を聞いていた。

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