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水穂戦記  作者: 江川 凛
第7章 東郷の国
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東郷 3

 俺たちはまず、「学校」に案内された。

 いきなり、どのような授業を行っているのか見るのかと思っていたが、教室のようなところに案内され、いろいろ説明を受けるようだ。

 これは、別に俺たちだけでなく、三川から来た学生には皆行っているものだという。

 理由は東郷の制度があまりにも三川と異なっているので、最初に説明をしないと戸惑う学生が多いが故に、こうしたことを始めたと言っていた。


 やはり最初に言われたのは、「東郷は武を重んじ、子供が6歳になると男女共に強制的に親元から引き離し、集団生活をさせ、徹底した英才教育を施す。」ということであった。

 これについては、既に聞いていたし、道々見てきたので、特に驚きもしなかった。


 しかし、今ふと、「男女共に」と言わなかったかと、気になった。

 「男だけでなく、女も学校に行かせるかのか?」とふと気になって、いきなりで失礼と思ったがそのことについて質問してみた。

 ただ、説明役はこうしたことには慣れているようで、「これまで何度も説明してきた」という感じで、回答を返してよこした。


 何でもできた当初は当然の如く男だけだったが、女は行かなくて良いとなると、性別を偽るものも結構でてきたそうだ。

 それに、育児を中心に行うのが女性である以上、ある程度のことは、皆統一しておいた方が良いということになり、女性も学校に通い、家事や育児、農作業などについてある程度学ぶようになったとのことだった。

 それを聞いて考える。

 確かに、子供を集めて教育を施す体制が一度できてしまえば、生徒の数がそれほど増えても費用はあまり変わらないはずだ。


 確かに来る途中、農作業を行う者が皆、同じ動作をしていたが、効率を考えれば女性もある程度は同じことができた方が良いだろう。

 それに6歳になったら、親から引き離して集団教育をうけされると言っても、6歳までの間そうした準備がなければ、かなりしんどいことは間違いない。

 であれば、家庭でもそういうものだということを生まれた時から教育した方が良いに決まっている。

 となれば、母親にもある程度の教育はしておくという選択肢もありか。


 勝手にそんなことを言って、納得した。

 俺が納得した様子なのを見て、話が続く。

 次に、「その中から強い者、強くなりそうな者を選びだし、その者がそのまま支配者階級になる」と説明されたところで、小夜がびっくりして変な声をだしてきた。


 わからなくはない。俺もこれが初めてだったなら、間違いなく動揺していたであろうから。

 説明役は咳ばらいをして、「『強い者が国を守る』これが我が国の基本理念です。」と言ってきた。

 俺は信義の説明を聞いてから、確かに俺なりにいろいろ考えてきた。

 しかし、今の説明はかなり得心がいくものであった。

 確かにそうだろう、確かに強いものが戦えば勝つ確率はあがる。


 武士だからといって必ずしも強いとは限らない。

 だったら、強い者がその任を担えば良い。極めて合理的だ。

 ただ、あまりにも合理的すぎる。支配階級になるということは、それなりに良い目を見るということを意味する。

 であれば、自分の子供もそうであろうと願うのが親ではないのか。

 ふと、そんなことを思っていると説明役と目があった。


 すると、説明役はまたしても慣れているという感じで、「自分の子が親の跡を継げない可能性があることについての質問が多いので、先に説明しておきます。」と言って言葉をつなげた。

 「確かにお家を守ることが大事というのは、私も三川にいたことがあるのでわかります。ただ国がつぶれてしまえば、その各人のお家もなくなってしまうわけで、我々はまず国を重視しているだけです。」と言ってきた。


 確かにそれもわからないではない。しかし、「人はそこまで割り切れるのだろうか?」という疑問が湧いて来る。

 「まあ、良い、今すぐ結論を出さずとも、しばらくはここに滞在することになるのだから、その間にじっくり見させてもらえば良い。」そんなことを考えながら、説明を聞いていた。

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