出会い
「私に会いに来てよ。」
「必ず行くから絶対待ってて。」
数年前、あの人と約束をした。やっと胸張って会える時がやってきた。数年ぶりに堂々と会う彼は喜んでくれるだろうか。
出会いは学院の入学式だった。首席で合格出来たと思っていたのに、私は他の入学者達と同じ位置から、壇上を見上げている。何故私じゃないのか…絶対の自信があったのに。首席で合格した奴の顔を見てやると思い代表者挨拶を見ていた。
「入学者代表ルカ·クロムウェル王子殿下。」
「はい!」
壇上に上がる殿下に入学者達がざわつく。サラッと流れる銀髪にアメジストの様な綺麗な紫色の瞳、端正な顔つきに高身長で令嬢達がざわつかない訳がない。つい先日まで隣国に留学していて帰ってきたと噂の殿下…首席を奪ったのは奴かと思った。私の華々しい学院計画が殿下によって邪魔された。最悪だわ。
「リリカ·アドラム嬢?」
「はい?そうです。」
入学式が終わり教室に向かう途中で声をかけられる。振り返ると殿下?!げっ!と思ったけど何とか令嬢として保つ。一瞬目を見開いていたが気のせいだろう。
「君が次席と聞いたよ。こんなに可愛らしいのに賢いんだね。有席者は生徒会の手伝いもあると聞く。これから宜しくね。」
「あぁ…はい。よろしくお願いします。次の試験では私が1番なりますけどね。」
「負けない様に、私も頑張るよ。」
フフッと殿下が笑う。男前の笑顔が眩しいが私にとったら敵だ。教室行こうって笑顔で誘ってくれはる殿下に、何かすでに負けている気がする。
「隣国は楽しかったですか?どういう所が素晴らしかったですか?私も留学したいのですが父に反対されて…色々教えて頂きたいです。」
「幼い頃から行っていたから、色々あったけど楽しかったな。沢山の経験が出来たよ。いつでも機会を作るよ。何でも聞いて。」
ありがとうございます!私は浮かれて鼻歌交じりに教室に入っていく。成績順のクラス分けで席も隣だった。ニコニコ笑う殿下につられ私もニコッと笑う。殿下良い人だな…ってちがーう!敵だ!忘れる所だった。この出会った日から長い付き合いになるなんて、私は全く想像もしていなかった。
「はい!今日からよろしく!今日は入学式で終わりだから、学院を見学するなりして好きに帰ってください!明日から頑張りましょう。」
担任が入ってきて終わりを告げる。どうしよう。学院を見て回ろうか…ただ私は方向音痴なんだよね。まだ友達も居ないし、よし!帰ろう。
「アドラム嬢帰るの?」
帰ろうと立ち上がった瞬間、隣から声が掛けられる。見て回ろうと思ったけど方向音痴なのでと答えると、私と行かない?って。え?本当良い人過ぎない?
「殿下いいのですか?」
「うん。私も把握したいし、ある程度見たら隣国の話をしようよ。」
やったー!そんな嬉しい話ある??!行きましょ!と殿下を誘いカバンを手に持つ。何聞こうかな、こんなすぐ聞く機会を作ってくれるなんて。殿下が手を差し出す。ん?
「ん?どうしたの?」
「いや…どうしたのかと思いまして。」
手相?私見れないわよ?手を見つめながら会話をする。いや、エスコート…って呟かれる。あ、大丈夫ですと断る。何か気まずい。
「殿下!私達は同級生です!同じ勉学を共にする仲間なので、エスコート無くて大丈夫です!ってあれ?不敬なります?!!」
ならないよって笑っている。仲間か…いいねって。殿下が優しくて良かった。
「仲間なら名前で呼んでよ。殿下は嫌だな。」
「それは違うと思いますが…」
「同級生って…仲間って言ったのに。」
「刺客送られたりしないですか?」
「しないから!ね?名前でお願い。」
んーーと悩む。本当に大丈夫なのか?私から説明するから大丈夫だからと。
「ルカ様?」
「うん。ありがとう。私も名前で呼んでいい?」
「いいですけど…令嬢達に何かされたら責任取ってくださいね?」
「もちろん!絶対何もさせないし、もし何かあれば責任取るよ。」
じゃあそれならと頷く。嬉しい!今まで隣国に居たから、知り合い居なくてって言っている。え、可哀想。仕方無いから仲間1号として優しくしてあげよう。
「リリカ嬢、早速行こう。」
「行きましょう。そして隣国のお話しましょう!」
学院は色々な科があって、なかなか広い造りをしている。覚えられるかな…毎日迷子になりそう。私が覚えるから移動の時は、案内してあげるって言ってくれる。初日から良い仲間を得た。ありがとうございますと言うと、いつでも頼ってねと優しい笑顔を見せてくれる。あ、大事な事を聞き忘れてる!ルカ様!!と急ぎ呼ぶ。何?!と驚いている。
「婚約者様は?!仲間だと最初に説明した方がいいのでは?!婚約者居る方に異性が仲良くなると失礼です!!」
「あぁ…何かと思った。居ないから大丈夫だよ。全く問題無い。リリカ嬢は優しいね。ってリリカ嬢は婚約者居るの?」
居ないです!と告げると、じゃお互い問題無いねって。もし途中で出来たら、その時考えようって。ルカ様はすぐ出来そうだな。未来の婚約者様には誤解されない様にしよう。
その後順調に探索していく。途中図書館があって気になってしまう。ステンドグラスが施された窓に高い天井。壮観な造りで素敵。本もいっぱいある。
「本好きなの?」
「はい!大好きです!父が厳しくてあまり自由が無いのですが、本を読めば色々な世界を見れるので良く読みます。」
「私が今度色々連れて行ってあげるよ。アドラム公爵だよね?私と一緒なら何も言わせないよ。」
本当?!嬉しい。自由に出かける事に憧れていた。学院に入るのも頑張って説得をして、渋る父に良い縁を見つける為と嘘をついてまで入学した。厳しいながら政略結婚は強く押してこないので助かっているが、きっと卒業したら結婚が待っている。学院だけが自由に出来る最後なので、ルカ様からの申し出はありがたい。
仲間だからねって笑っている。ルカ様に婚約者様が出来るのが、まだまだ先であります様にと心から願った。




