30:告白(1)
「……理。愛理。朝だぞ。起きろ」
肩を揺さぶられて目を覚ました。
重い瞼を持ち上げる。
すると、目の前に千聖くんの顔があった。
それも、ドアップで!!
「!!!??」
私は赤面しながら跳ね起きた。
危うく昨日の二の舞になるところだったけれど、千聖くんはひょいっと身を引いて顔の衝突を防いだ。
「なななななな」
予期せぬ千聖くんのドアップに、心臓がバクバク音を立てている。
「どーだ。寝起きの顔面ドアップは心臓に悪いだろうが」
経験者は語る。
そんなドヤ顔で言って、千聖くんは腰に左手を当てた。
「もう七時半だぞ。起きないと遅刻する」
「……う、うん。起きた。それはもう、ばっちり」
私はこくこく頷いた。
冷水を顔に掛けられたような気分だ。
眠気が丸ごと吹き飛んだ。
「愛理が寝坊なんて珍しいよな。何? もしかしておれのこと考えて眠れなかったとか?」
「……うん」
「えっ」
冗談で言ったつもりだったらしく、千聖くんの顔が赤くなった。
「だって、予知夢で見ることができてたら、怪我しなくて済んだのに……」
申し訳なくて、私は俯いた。
「はあ? 昨日ずっとそんなこと考えてたのか? 馬鹿だなあ」
「馬鹿じゃないもん! 私は本気で、真面目に考えてたもん!」
私は顔を上げて叫んだ。
「怪我した千聖くんなんて見たくないもん! 千聖くんはずっと元気で、笑ってて欲しい……」
ボロボロと涙がこぼれる。
「千聖くんが怪我したり、泣いたりするのは嫌だ。一番嫌だ。私にとって、千聖くんは一番大事な人なの。千聖くんの悲しい未来を防げないなら、予知夢なんて何の意味もない……」
ひくっ、としゃくりあげる。
「………………」
千聖くんは何も言わない。
気になって顔を上げると、彼の頬はほんのり赤く染まっていた。
「どうしたの?」
「いや……なんか……。うん。気のせいなのかもしれねーから確認させて。愛理って、もしかして、おれのこと、好きだったりする?」
「うん、好き」
「それは、幼馴染として?」
「ううん、一人の男の子として好きなの。大好き」
目を見つめてきっぱり言うと、千聖くんの顔はたちまち真っ赤になった。
「そ、そう……」
千聖くんはどこか気まずそうに目を左右に泳がせてから、やがて、意を決したように言った。
「おれも、愛理のことが好きだ」
「えっ?」
私は驚きに目を見開いた。
酸欠の金魚のように口をパクパクさせてから、ハッと気づいて口を閉じる。
「あ、そっか。幼馴染としてってことだよね」
「いや、そうじゃなくて。だからっ」
千聖くんは顔を真っ赤にしたまま、私の目をまっすぐに見つめて言った。
「おれも、愛理のことが好きなんだよ。ただの幼馴染じゃなく、一人の女子として。ずっと前から、愛理のことが好きだった」
「………………ええっ!!?」
私は今度こそ仰天した。
千聖くんが私のことを好き!?
え、嘘、え、ええっ!?
「で、でも、学校じゃ、私のこと、ただの幼馴染だって言ってたよね?」
「しょうがねーだろ。好きだなんて正直に言えるかよ。クラスの連中にからかわれるのは嫌だったし……何より、愛理に拒絶されたくなかったんだ」
「拒絶なんて、そんなことするわけないよ。嬉しいよ。すごく……本当に」
「そっか。なら、もっと早く言えばよかったな」
千聖くんは照れたように、恥ずかしそうに笑った。
「…………」
感極まって、私はなんだか泣きそうになり、俯いた。
千聖くんが、私のことを好きだったなんて。
それも、ずっと前から?
どうしよう。
嬉しくて、嬉しすぎて、胸がいっぱいだ。




