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イケメン兄弟はわたしに夢中!?〜幼なじみが家族になった〜  作者: 天咲リンネ


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27:良い子なんてクソくらえ!

 次の授業が始まる前に着替えなきゃいけない。

 だから、体育の授業が終わると、みんな急いで教室に向かう。

 私も菜摘ちゃんと一緒に、少々早足で歩いていたのだけれど。


「愛理」

 体育館から教室に戻る途中、渡り廊下で千聖くんが小走りに近づいてきた。

「私は先に行くね。頑張って」

 菜摘ちゃんは私の肩を軽く叩いて去った。

 頑張ってって……何を頑張ればいいんだろう?


「千聖くん……。もう怒ってないの?」

 渡り廊下の端っこで立ち止まり、向かい合って、恐る恐る問う。


「ああ。さっき拍手してくれたし、もういいや」

「良かった。これからずっと無視されたらどうしようかと思った」

 私は肩から力を抜き、ほっと息を吐いた。


「そんなことしねーよ。おれだってずっと愛理に不機嫌な態度を取るのは辛いし……そんなことよりさ、さっきのどうだった? 完璧だっただろ?」

「格好良かった」

「見直した?」

「うん」

 頷くと、千聖くんは得意げな顔になった。


「つってもまあ、『ボールが来る』ってわかってたからできたことだけどな。だからこれは、おれと愛理の協力プレイってことで」

 千聖くんは片手をあげた。

 彼が何を望んでいるのかすぐに察して、私も右手をあげた。


 互いに勢いをつけて、ぱんっと手を打ち鳴らす。

 満面の笑みを浮かべている千聖くんを見て、私の中で何かが弾けた。


 ――ああ、私、千聖くんのことが好きだ。


 朝からずっと無視されて、悲しかった。

 不機嫌そうな千聖くんを見てるのは嫌だった。

 私は千聖くんが笑ってないと、嫌だ。


『仲の良い幼馴染』のまんまじゃ、嫌だ。

 幼馴染じゃなく、一人の男の子として、彼のことが好きだ。


 言葉に言い表せないエネルギーが腹の底から沸き上がり、身体の隅々まで満たしていく。

 好き。好き。――大好き。

 そう思ったら、自然と唇が開いていた。


「千聖くん。私――」

 衝動に任せて言いかけた、そのときだった。


「成海くーん」

 叫び声が聞こえた。

 振り返れば、体育館を背景にして、春川さんが走ってくる。


 体育の時間に合わせてポニーテイルにした黒髪を揺らして。

 クラスの誰よりも可愛い女の子が、体当たりするように千聖くんに抱きつく。


 ズキッと、胸が痛んだ。


「さっきの、凄かったー! 本当に格好良かったよ! 惚れ直しちゃった!」

「くっつくな! 離せ!」

「やだ、もう遠慮しないって決めたもーん」

 腕を振り払われた春川さんはめげることなく、千聖くんの左手を掴んだ。


「ごめん来見さん、先に教室、行っててくれる? 私、成海くんとお喋りしたいんだあ。わかるでしょ? 空気読んでもらえないかなあ」

 びっしりとまつ毛が生えた、アーモンド形の目が私を見つめる。

 羨ましいくらいにまっすぐな、艶やかな髪が、気持ちよさそうに風にふわふわ揺れている。


 うん、わかった。

 そう言うべきなのだろう。

 シンデレラになれないモブは空気を読んで、美しいお姫様に王子様を譲るべきなのだろう。

 ――でも。


「嫌」

 滑るように私の口から出たのは、否定の言葉。

 自然と手が動いて、私は千聖くんの右手を掴んだ。


 さっき、互いに打ち鳴らした右手を。


「私だって千聖くんと喋りたいの。先に千聖くんと喋ってたのは私。春川さんこそ、空気読んで」


 ――もっと自信を持って。

 私は誰よりも素敵な女の子だと、優夜くんはそう言ってくれた。

 千聖くんは、私のことを、世界で一番格好良いと言ってくれた。


 私には味方が二人もいる。

 だから、相手が誰だろうと、怯える必要なんてない。

 春川さんなんか、怖くない!!


「……はあ?」

 春川さんの綺麗な顔が引きつった。

 反抗されるとは夢にも思わなかった、そんな顔。

 それはそうだ。

 私はいつもスクールカーストの頂点にいる彼女の顔色を窺っていた。


 自分の感情を殺してでも、彼女の都合を優先した。

 それこそ、お姫様に従う臣下のように。


 でも、もううんざり。


『良い子』の仮面を脱ぎ捨てた千聖くんを、見倣おう。

 お姫様の引き立て役はもう終わり。


 村人Cがシンデレラになって何が悪い?


 誰が文句を言ったって知ったことか。

『良い子』なんて、クソくらえ、だ!!


「何よ。成海くん、私と来見さん、どっちを選ぶの?」

「そんなの愛理に決まってんじゃん」

 千聖くんは至極当たり前のように言って、春川さんの手を振り払った。


 胸の奥がギュッと痛くなり、目の奥が熱くなった。

 千聖くんが迷わず私を選んでくれたことが、泣きたくなるくらいに嬉しかった。


「行こーぜ、愛理!!」

「うん!」

 唖然としている春川さんを置いて、千聖くんはずっと繋いだままだった私の手を引っ張り、走り出した。


 園田さんを助けに急いだときのように。

 運動会で私を一位にするべく走ったときのように――。


 運動会でも思ったけど。

 私は繋いだこの手を離したくない。

 千聖くんの隣を、誰にも譲りたくない。


 いまだけじゃなくて、叶うなら、これからもずっと。

 誰よりも一番、私が千聖くんの近くにいたい。

 それが私の、正直な気持ち!


「あははっ」

 無意識に私は笑っていた。

 羽根が生えたみたいに心が軽い。


 もっと早く、素直に自分の気落ちを認めれば良かった。

 これまで何度も背中を押そうとしてくれた菜摘ちゃんには後で謝って、それから言おう。

 私は千聖くんが好きだって、もう自分の気持ちをごまかしたりなんてしないって、宣言するんだ!

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