26:ファインプレー
「ああもうほんっっとにじれったい! これは二人の問題で、私が口を出しちゃいけないってわかってるけど、余計なお世話だってわかってるけど、もー無理、もー我慢できない!! とにかく、一度ちゃんと成海くんと話してきなさい!!」
菜摘ちゃんに怒られた私は、勇気を出して千聖くんに話しかけようとした……のだけれど。
私が近づいたら、千聖くんは席を立ってしまった。
それでも食い下がり、話しかけたら無視された。
春川さんは『二人が喧嘩している、これは好機だ!』と思ったらしく、まるで見せつけるように千聖くんにべったりくっついた。
モヤモヤとした時間が過ぎて、五時間目の体育の授業になった。
夢で見た通り、今日の種目はバスケだった。
授業の後半には男女混合で試合が行われることになり、千聖くんはコートの外、坂本くんの隣に座った。
坂本くんと談笑しながら、千聖くんはいつボールが飛んできてもいいように警戒している。
コートの中で、パスされたボールが佐藤さんの手に渡った。
佐藤さんは私と同じくらい運動が苦手だ。
近くにいた味方に向かって全力投球されたはずのボールは全く見当違いの方向へ飛び、コート外で応援していた生徒へ襲い掛かった。
夢で見た通り、坂本くんの元へ。一直線に!
坂本くんは間の悪いことに、体育館の時計を見ていた。
授業終了間際だったので、あと何分か確かめようとしたのだろう。
結果、ボールは半分顔を背けていた坂本くんの頰を直撃――。
するはずだったのだけど。
――バシンっ!!
千聖くんがとっさに横から手を伸ばし、ボールを手で弾いた。
軌道を逸らされたボールは、てん、てん、と音を立てて床を転がっていく。
しん、と体育館が静まり返った。
みんなの視線を集めているのは千聖くんだ。
「ごめん!!」
危うく坂本くんに怪我をさせるところだった佐藤さんは青い顔をしている。
「すげー!!」
「成海、超ファインプレーじゃん!! 完璧なカット!!」
「やばー、かっこいー!!」
クラスメイトたちから拍手喝采を浴びて、千聖くんは照れたように頬を掻いた。
それから、ちらっと私を見る。
視線を受けた私は期待に応えるべく、全力で拍手した。
千聖くんはまんざらでもなさそうな顔で笑った。




