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イケメン兄弟はわたしに夢中!?〜幼なじみが家族になった〜  作者: 天咲リンネ


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24/33

24:すれ違い(2)

「……ぼく、あの人たち嫌いだな」

 千聖くんや春川さんから充分に離れたところで、優夜くんは不満げに呟いた。

 私は無言で木下さんに押された腕を見下ろした。


「…………」

 実は私もそう思う、なんて。

 波風の立たない、平穏な学校生活を望んでいる私には、言えるわけがなかった。

 春川さんたちはスクールカーストのトップにいる人たちだ。

 あの人たちを敵に回す勇気なんて、ないよ。


「愛理ちゃんはいいの? 春川さんっていう人、どう見てもお兄ちゃんのことが好きだよね? このままじゃお兄ちゃん、取られちゃうかもしれないよ?」

「取られちゃうって……そんな。千聖くんは私のものとかじゃないし。私と千聖くんはただの幼馴染なんだし……」

 私は俯いて、スカートの裾を握った。

 シンデレラに立候補した私は、笑われたけど。

 ドレスを着た春川さんは、色んな人から可愛い、綺麗って、もてはやされていた。

 千聖くんがシンデレラと結ばれる王子様役に立候補したって、文句を言う人なんているわけない。

 みんな素敵、お似合いだって、言うに決まってる。


「じゃあ、春川さんとお兄ちゃんが付き合ってもいいの? 嫌じゃないの?」

 優夜くんは眼鏡のレンズの向こうから、じっと私を見つめた。

 優夜くんは菜摘ちゃんと同じようなことを言う。

 菜摘ちゃんもよく言うんだ。

 私に向かって、本当にそれでいいの? って。

 千聖くんと私は、ただの幼馴染。

 ねえ、本当にそれでいいの?……


「……それは、千聖くんが決めることだから。私がどうこう言うようなことじゃないよ」

 並んで立つ二人を想像すると、何故か胸がチクチク痛む。


「それに、もし。もしもだよ? 私が千聖くんと付き合う、なんてことになったら皆から笑われちゃうよ。私と千聖くんじゃ釣り合わないって――」

「何それ。皆って、具体的に誰? 誰がそんなこと言うの?」

 優夜くんは俯いた私の言葉を遮り、怖い顔で距離を詰めてきた。


「釣り合わないなんて言う人がいたらぼくが怒る。愛理ちゃんはこの前、ぼくのために田沼くんに怒ってくれたでしょう? だから、今度はぼくが愛理ちゃんのために怒るよ」

「えっ。なんで知ってるの?」

 驚いて顔を上げると、優夜くんは目を合わせて微笑んだ。


「田沼くんから聞いたんだ。あれだけぼくにちょっかいを出してきたのに、急におとなしくなったから、お兄ちゃんが何かしたのかなって思ってた。でも、実際に動いてくれたのは愛理ちゃんだったんだね。ぼくが幼稚園児のときだってそう。ぼくが本当のお父さんに連れて行かれないように、一生懸命戦ってくれた。これまで何度もぼくを守ってくれてありがとう」

 優夜くんは手を伸ばし、私の右手を両手で包んだ。


「ぼく、愛理ちゃんのこと大好きなんだ。愛理ちゃんには幸せになってほしい。だから、愛理ちゃんを傷つける奴は絶対に許さない。自分じゃお兄ちゃんと釣り合わないなんて言わないでよ。そんなふうに自分を悪く言わないで。それは愛理ちゃんのことが好きな人みんなを悲しませる言葉だよ」

 ぎゅっ、と。優夜くんは私の手を包む両手に力を込めた。


「ぼくの大好きな愛理ちゃんを傷つける人は、愛理ちゃんでも許さないからね。また言ったら怒るよ?」

「うん……わかった。気を付ける」

「わかってくれたらいいんだ。もっと自信を持ってよ。誰が何と言おうと、ぼくにとって愛理ちゃんは誰よりも素敵な女の子なんだから」

「ありがとう……」

 まっすぐな眼差しに、思いやりに溢れた言葉に、胸の奥が温かくなった。

 本当に優夜くんは優しい、良い子だ。なんだか泣きそうになってしまった。


 私が目元を擦っている間に、優夜くんは手を離した。


「――本当にもう。元はと言えばお兄ちゃんが悪いんだ。好きなら早く告白すればいいのに、意気地なし」

「?」

 優夜くんはため息交じりに何か言ったけれど、声が小さすぎて聞き取れなかった。

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