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イケメン兄弟はわたしに夢中!?〜幼なじみが家族になった〜  作者: 天咲リンネ


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23/33

23:すれ違い(1)

『千聖くんを起こす』という予想外のイベントが起きてから、三十分ほど後。

 私は千聖くんと優夜くんと一緒に蒸し暑い朝の通学路を歩いていた。


「くれぐれも気を付けてね? 怪我をした千聖くんなんて見たくないからね?」

 今朝、私が見た夢は『バスケの試合中にクラスの男子、坂本くんが怪我をする夢』だ。


 今日、六年二組のクラスは五時間目に体育の授業がある。

 そして、明日と明後日の時間割に体育はない。

 だから、今日見た夢が予知夢なら、今日の五時間目に悲劇が起きる。


 バスケの試合中、コートの外に座っていた坂本くんはボールが顔に当たって気絶する。

 衝撃のせいで唇を切ったらしく、坂本くんの口からは血が出ていた。

 あの分だと頬の腫れは数日続くと思う。

 命に別状はないし、絶対に見過ごせないってレベルの怪我じゃない。

 日常の不幸な事故として片付けても良いとは思う。


 でも、やっぱり防げるなら防ぎたい。

 だから、私は千聖くんに頼ることにした。

 運動音痴の私が無理に頑張るよりも、運動神経抜群の千聖くんに任せたほうが良いに決まっているから。


「大げさだなあ。ただボールを止めればいいだけだろ? 余裕だって。任せとけ」

 千聖くんはぽんぽん、と私の肩を叩いた。

「愛理は何もするなよ。突き指とかしそうだし」

「う……」

 しないもん、と言えないのが悲しい。

 私、クラスの友達とバレーの練習してて突き指したことあるもんな。


「とにかく、坂本のことはおれに任せろって」

「……うん。任せる」

「なんの話をしてるの?」

 急に、背後から声がかかった。

 振り返れば、春川さんと木下さんが立っている。

 黄色のワンピースを着た春川さんは今日も抜群に可愛い。


 彼女の周りだけ、空気がキラキラ輝いて見える。

 彼女の紫色のランドセルでは、ケーキやマカロンのキーホルダーが揺れていた。


「春川さん。おはよう」

「おはよう」

 春川さんは薔薇色の唇を軽く持ち上げ、上品に微笑んだ。


「おはよう、成海くん」

「……おはよう」

 さすがに無視してはいけないと思ったのか、千聖くんは困ったような顔で挨拶した。

 それに気を良くしたらしく、春川さんは一歩千聖くんに近づいた。


「ねえ、成海くん。坂本くんがどうとか言ってたけど、なんの話? 教えて」

「なんでもねーよ。春川さんには関係ねー」

「……酷い。そんな冷たい言い方しなくてもいいじゃない」

 春川さんは悲しそうな顔をした。

「成海くん、本当に変わったね。前は優しかったのに……まるで別人みたい」

 夏の風が春川さんの長い髪を揺らし、太陽の光が長いまつ毛に影を作る。

 彼女の大きな瞳には小さな涙が浮かんでいた。


「あー、成海くん、すみれのこと泣かせたー。最低!」

 木下さんが鼻の穴を膨らませる。

「あーもう、わかったよ、ごめん」

 千聖くんは面倒くさそうに顔をしかめ、頭を掻いた。

「じゃあお詫びに私と一緒に学校行こ?」

 春川さんは一転して笑い、千聖くんの腕にギュッと抱きついた。

 両手で千聖くんの腕を抱きしめ、小鳥みたいに首を傾げる。

「はあ? なんでそうなるんだよ」

「いいじゃん、目的地は同じなんだからさあ」

 木下さんが割り込んできて、どんっと肘で私の腕を突いた。

 結構強い力で押された私は堪えきれず、一歩退いた。

 邪魔だから、どっか行って。

 木下さんは私を見てないけど、態度でそう言っている。


「……優夜くん。私たち、先に行こうか」

「待てよ愛理、だったらおれも――」

 千聖くんが何か言っているけれど、私は聞かなかった。

 優夜くんの腕を引っ張り、その場から逃げ出す。

 優夜くんは特に抵抗せず、私についてきてくれた。

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