EP.6 「みんな最後は燕ちゃんにアへアへさせられるんだ」
EP.1で設定変更前の名前を書いてしまっていたので、【扶桑朱音】を【芍薬霊香】に修正しました
「いやぁ、負けちゃったかー」
僕は地面に座り込み、たはーっと笑う。
「笑い事じゃないわよ! この私が、魔力のない男に! しかも運動すら碌にしたことないような奴に! ここまで追いつめられるなんて……! 屈辱よ! もう負けたも同然よ!」
僕が笑っているのとは対照的に、彼女は涙目になっていた。
今にも涙が零れそうだ。
ホントにどうしよう。
慰めたいけどこれ僕が何言っても煽りにしかならないよね。
試合中も煽りまくったし。
「あー、そうだ! 燕ちゃん!」
ハンカチで彼女の涙を拭いながら、燕ちゃんを呼ぶ。
それだけで意図を把握したのか、燕ちゃんはすぐに駆け寄り、朱音の頭を撫でた。
「よーしよしよし。朱音は偉いよー」
「大体なによ! なんで貴方が魔力操作と魔力感知が出来るのよ! 魔力がないのに!」
「魔力が無くても感知や操作は出来るよ。天才だからね」
あくまで男は魔力を貯蓄する器がないだけだからね。
自身の外部に存在する魔力を操ることは出来るんだ。
もちろん自身の中に存在しないものだから、女性に比べて難易度は飛躍的に上昇するけど。
ぶっちゃけ僕くらいの才能マンじゃないと使えないも同然だから知っててもさして意味はないんだけどね。
「こんなことが出来るならなんで今まで何もしてこなかったのよ! もっと早く改心していればアンタは家から追い出されずに済んでたのに! 私との……だって!」
まあ……うん。
それはあり得ないイフだ。
僕が改心した要因は2つ。
真々子さんに拾われたこと、そして前世の記憶を思い出したことだ。
それがなければ改心するどころか、悪化して禁術に手を染めてしまう。
いや、前世の記憶を思い出さなければ、例え真々子さんに拾われてもこうやって改心することはないだろう。
少しマシになって禁術に手を出さなくなる程度の変化は起きるかもしれないけど。
だから僕がこうして改心した状態でここにいるのも奇跡みたいなものだ。
「なんで今更……!」
本当にごめんね。
僕には謝ることしかできない。
「あー、燕、とりあえず朱音と保健室に行ってこい。2人は授業サボるの許可するから」
「はい! 分かりました!」
先生がそう言うと、燕ちゃんは朱音をお姫様抱っこした。
「ひゃあっ! ちょっと、燕!?」
「射音は……今のままじゃ悪化するだけだろうから取り敢えず落ち着くまで距離を取っておいてくれ」
確かに先生の言う通りだ。
このままじゃどうにもならないし、どうにも出来ない。
これに関しては僕に非があり過ぎる。
燕ちゃんに任せるしかない。
大丈夫、きっと朱音は大人の階段を上って立派になって帰ってくることだろう。
「それじゃあ行ってきます」
「うん、言ってらっしゃい……あ、そうそう、燕ちゃん」
「うん? どうしたの?」
顔を近づけ耳元で囁く。
「知っての通り朱音は声が大きいんだけど、喘ぎ声は特に大きいから、防音結界を張っておくことをオススメするよ」
「へっ!? 射音!? アンタ何言ってるの!?」
「い、いや私は……」
燕ちゃんは女同士無理とか言ってるけど、結局口だけだ。
ちょっと唆したらほら。
「ゴニョゴニョゴニョ」
「……へぇ? なんで知ってるかは聞かないでおくけど、ありがとね。いや、しないけど。しないけど、一応ね?」
この通りすぐ乗り気になる。
僕のしたことはちょっと朱音のよさを伝えただけだ。
主にエロ方面のを。
ここがエロゲの世界じゃなかったらキモがられて社会的に死んでた。
教師が生徒をみんなの前で全裸にしてお尻叩くのが許される世界だ、倫理観が違う。
「燕!? ねぇ!? 何する気なの!? 怖いんだけど!?」
あれ?
まだ手を出されてないんだ。
まあいいや、どうせ遅いか早いかの違いだ。
みんな最後は燕ちゃんにアへアへさせられるんだ。
「っと、その前に朱音にアドバイスと伝言を」
「な、何……!?」
「君に宿っている力の本質は『同化』と『変容』。君が操る焔、それを自身の肉体と認識するんだ。そうだね……まずは、炎の翼を生やせるようになるといい」
彼女に宿るは『熾天使の因子』。
天使は物質的な肉体を持たない。
天使は悪魔と同じく、受肉しない限りその肉体は魔力で構成されている。
だから魔術と一体化することが出来る。
「貴方……一体何を知って……」
「次に伝言だけど……朱音、まだうちと繋がってるね?」
僕との縁は切れたけど、僕の家族達とは今も普通に会話してるはずだ。
朱音は僕の家族と……特に、僕の妹と仲が良かったからね。
「え、えぇ」
「ならいい。妹……いや、追い出されたから元だけど。アイツに伝えてくれないかい? 禁書庫の入り口から見て右から3番目、前から7番目の棚の4段目、右から3冊目の本、そこに君の求めるものがある……って。それと、この紙を渡して欲しい。禁書庫への侵入方法を書いておいたから」
星見家の禁書庫には強力な魔導書や有用な知識の載った書物が山程ある。
僕も前世で何度もお世話になった。
お陰で全ての本の配置を完全に覚えてしまったよ。
「わ、分かったわ。……いやなんで貴方が禁書庫への入り方とか知ってるのよ!? さらっとヤバいこと言ってるわよ!?」
「いいからいいから。じゃあ2人とも、楽しんでねー」
「はーい」
そうして2人は保健室に行った。
「ふぅ……」
燕ちゃんに任せたのは、もちろん僕が何かしても悪化する可能性が高いというのもある。
が、もう1つ、燕ちゃんに朱音の好感度を上げてもらう為でもある。
現実になるにあたって、ゲーム上のシステムがどんな風に適用されているのか分からない。
でも『竜神の紋章』を持っている以上は、絆を力に変える能力も持っているはずだ。
上げれるだけ上げておいた方がいい。
それに、僕と彼女の縁はとっくに切れている。
僕が改心した程度でどうこうならない程に。
あの時の僕は本当に最低だった。
僕が雑魚だったから間に合ったけど、あと少しで取り返しのつかないことをする所だった。
こんなクズに優しくするなんて、朱音は本当に優しい。
「それじゃあ射音は燕のペアと組んでやってくれ」
「はーい!」
─────
そして放課後。
僕は図書館に行き情報収集することにした。
男が強くなる方法なんて書かれた本はないだろうけど、色んな本を読んで知識を吸収すれば、何かヒントになることが書かれてたり、閃いたりするかもしれないからね。
それに、魔導工学についても学びたい。
自分が強くなれないなら装備を強化するしかない。
原作知識で強力な装備を手に入れるとしても、流石にレベルアップ出来ない素のスペックで取りに行くのは厳しい。
取れる場所もあるにはあるけど……距離が遠いから学校サボらないといけないからそれは難しい。
ただでさえクズとして有名なんだから、真面目にやって信頼を獲得しなくちゃいけない。
だから取りに行けるとしたら休日かな。
ちなみに図書館に来る際、保健室を通ったが、まだヤってた。
流石に中は覗いてないけど、朱音の喘ぎ声が凄い響き渡ってた。
あれで本人はバレてないつもりなんだよね。
鈍感系難聴主人公でも気づくよ。
燕に至ってはわざと朱音の声を外に聞こえるようにして楽しんでるんだよね。
お前どの口でノンケ自称してるの?
ノリノリじゃん。
図書館に入ると、カウンターには陰気な雰囲気を漂わせた黒髪の美少女が座っていた。
図書委員の那須狼秘だ。
「ひっ! な、なんで貴方が……!」
「あー、うん。やぁ狼秘」
「せ、せっかく静かでよかったのに……」
というか女装した僕が僕だって分かるんだ?
先生たちもクラスメイトも誰一人分からなかったのに。
朱音すら分かってなかったよ?
「……? わ、分かるに決まってるじゃないですか。バ、バカにしてます?」
「してないしてない」
これは……多分因子の影響かな?
彼女は悪魔の力を持っている。
明言をされたことはないが、魂で相手を判別してる可能性がある。
「そ、それで? ま、また邪魔しに来たんですか?」
「それは本当にごめんなさい」
一瞬で土下座して頭を床に擦り付けた。
なんか僕最近土下座ばっかしてない?
まあ仕方ないけど。
カス行為がホントにクソガキだからなぁ。
作りかけのフィギュアにイタズラしたり、読んでる本に落書きしたり、スカートめくったり、カンチョーしたり。
やってることが完全にクソガキ。
しかも的確に地雷を踏んで、相手が最も嫌がる言動やタイミングでしてくる。
その洞察力を他のものに活かせなかったのか。
自分を簡単に殺せる相手に対して積極的に地雷踏み抜いてブチギレさせるのクソ度胸過ぎる。
そんなことも分からないバカだったならともかく、全部理解した上でやってるから救いようがない。
「は? な、なにそれ……」
あー、全然信じてなさそう。
うーん、燕ちゃんがいないからなぁ。
「悪因悪果一切皆苦呪怨具現──」
「やべっ」
呪詞と共に魔力が練り上げられていく。
彼女の使う魔術は陰陽術の系譜、その中でも呪術に特化したものだ。
丑の刻参りを応用した呪術で藁人形ならぬ魔法の人形的な感覚共有して気に入らない奴を人前で遠隔絶頂させたり中々えげつない。
まあストーリー中で主に被害に遭ってるのは朱音なんだけど。
朱音は狼秘と相性が悪いというか、2人の好感度を上げてイベントをこなすまでは、狼秘に対して辛辣だから仕方ない。
せっかく雪華とか言うマゾがいるのに朱音ばっかり酷い目にあってる。
まあ雪華にやっても喜ぶから嫌がらせとしては逆効果なんだけどね。
「ストップストップ!」
全力で魔力を散らす。
術式が組み上げられるそばから解体していく。
狼秘は一瞬目を見開いたが、すぐに気を取り直して詠唱を続けた。
困ったなぁ。
僕はまだ尊厳を捨てたくない。
クラスメイトの母親とワンナイトした時点で尊厳も糞もないって?
それはそう。
まあ僕はマゾじゃなくてサドだからね。
ぶっちゃけ朱音とか雪華が酷い目に遭ってるの見て凄い興奮する。
さっきの朱音の泣き顔も凄い愉悦してしまった。
危うく顔に出る所だったよ。
前世の記憶でも中和しきれないクズ成分が。
あ、リョナはNG。
軽めのスパンキングとかならともかく、重めのはちょっと……。
それにしても本当に不味い。
解体速度より構築速度の方が上回っている。
少しづつ完成に近づいている。
「はいストップー」
背後から、聞き覚えのある声が聞こえてくると同時に、狼秘の魔力が一瞬で離散した。
そこにいたのは、僕と同じく純白の長髪を靡かせた女性だった。
「うげっ、生徒会長!」
「何がうげっ、よ。それが助けられていの一番に言う事かしら? 射音?」
彼女の名前は星見紫香。
そう、僕の姉だ。




