表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/33

1-3

次に近い扉へと足を向けた時、フェンの気が抜けた声が聞こえてきた。


「ふわぁ…。」


『眠たい…のですか?』


そう言えば中庭に近付くにつれて欠伸が増えていた気がする。重たそうに目を開き、しばしばと瞬きをしている姿はちょっと可愛い。


「…ん。」


彼の薄緑を帯びた金髪が風になびいて、ふわふわと舞った。目元まで覆っていた前髪も共に風にさらわれて、金眼が垣間見える。


…綺麗。


思わず見とれてしまっていた。ただ眠気を堪える為に目を擦る仕草でさえも、何故だか気になってしまう。


「どうかした?フィオナ?」


『あ、いえ!

無理に一緒に探さなくても大丈夫ですよ?』


「…無理はしてない。」


慌てて後退ると、その行為にムッとしたのか未だ繋いだままの手を強く握り返してきた。


「この庭に来ると妙に落ち着いてしまってね、眠くなってしまうんだ。

だからよくここで昼寝してる。」


そう言うと、今度はぐいぐいと手を引っ張り緑の迷宮を突き進んで行く。


『ま、まって…!』


「ちょっとだけ休憩しよ。」


通い慣れている為か、その足取りは正確だ。フェンに導かれて迷いなく右へ左へと進んで行くと、突然視界が変化した。


「ここ、お気に入りの場所なんだ。」


薔薇の壁だらけだった風景が一変し、桜の花弁が舞う草原が広がる。そよ風が優しく駆け抜け、柔らかな日差しが2人を照らした。


数メートル先に見える小丘には大きな一本桜が立っており、寝転ぶのに丁度良い大きさの木陰を作っている。何となく、あの木陰で昼寝をすると気持ち良さそうだと考えてしまった。


「この場所は隠しルート。正確に道を覚えておかないと来れない場所なんだ。

そしてね、あれは隠し扉。」


『扉?一体何処に…。』


見渡す限り草原と青空なのだが、桜に近付くに連れて彼の言葉を理解した。


『もしかして…。』


「うん、そうだよ。」


フェンは満足そうに頷いた。


木の根元に、僅かな空間のねじれが見える。遠くからだと景色と一体化して気付かなかったが、丁度人1人分が通り抜けられるであろう枠線が見える。


直ぐ側まで来ると、それは透明色の扉だった。


「開けてみて。」


『は、はい。』


驚き過ぎてついて行くのがやっとだが、意を決してドアノブに手を掛ける。ガラスを触った時のような、無機質で冷たい感触が伝わった。


『…凄い!』


扉の先は、大木が立ち並ぶ森だった。太く大きな幹が弧を描き、ドーム状の空間を生み出している。葉と葉の間から漏れ出た陽の光は、遥か上空で遮られており届いていないが、その代わりに、枝の各所に設置されたランプが地上を照らしていた。


ランプはキノコの形を模しており、色取り取りだ。仄かな明かりが落ち着いた雰囲気を作り出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ